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ヨゾラ舎が選ぶ今月の一冊:幻の名盤を再現!? 60年代ロックSFファンタジーの名作『グリンプス』
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ヨゾラ舎が選ぶ今月の一冊:幻の名盤を再現!? 60年代ロックSFファンタジーの名作『グリンプス』

2014-05-10 08:30
    京都 古本・中古音盤『ヨゾラ舎』

    編集部より)『ガジェット通信』のシリーズ連載「書店・ブックカフェが選ぶ今月の一冊」の京都編です。京都編の裏テーマは「本屋に行こう」。店主さんのおすすめ本やお店の日常を京都在住のライターがほぼ飛び込みで取材を行い「本のある場所に通うたのしみ」をライブでお届けします。

    ●音楽×本好きが激しく反応する『ヨゾラ舎』の棚
    京都 古本・中古音盤『ヨゾラ舎』の本棚には音楽書籍が粒ぞろい
    『ヨゾラ舎』は、2014年春にオープンした古本と中古音盤を扱うお店だ。店主の山本浩三さんは約15年間レコード小売店に勤務したのち、子どもの頃から買い集めてきた書籍と音盤の膨大なコレクションを“手放す”ことも兼ねてお店を始めたという。

    本を処分するだけなら『ブックオフ』や他の古本屋さんに買い取りしてもらえばいい。でも、大切にしてきた本やCDを事務的に“処分”するのはやっぱりちょっと寂しいもの。「お店をやって、本やCDが次の人の手に渡るのを見届けるほうが、自分にとってはいいかなあ」と山本さんは笑う。

    「僕も若くはないし家族が多いわけでもないので、集めたものをこのまま抱えていてもいずれは散逸してしまいますよね。それなら、自分の手で……かっこよく言えば世間に返していくのもいいかなと思ったんです。次に欲しい人が買っていってくれたら一番いい。本当に必要ならきっとまた手に入れられるはずですし」。

    というわけで、今のところお店の棚にあるものはすべて山本さんが大事に集めてきたものばかり。お店の半分を占める本棚には、音楽関連書籍、古本、喫茶店、食関係、日本文学、ミステリーなど、ジャンルごとに通好みのラインナップが並ぶ。

    特に音楽関連書籍の充実ぶりは今のところ京都随一。先日紹介した『HiFi Cafe』店主・吉川さんをはじめ、音楽好きの大人達が激しく反応して通い詰めているともっぱらの噂だ。

    ●ヨゾラ舎店主・山本さんが選んだ一冊
    ルイス・シャイナー著『グリンプス』

    書名:グリンプス
    著者名:ルイス・シャイナー(小川隆・訳)
    出版社:創元SF文庫

    さて、そんな『ヨゾラ舎』の棚から山本さんが選んでくれたのは、ルイス・シャイナーの『グリンプス』。帯に「60’s ロックSFファンタジィ」と銘打たれているが、60年代ロックとSFファンタジーとはなんとも異種格闘技的なかけあわせだ。いったいどんな本なのだろうか?

    「60年代には、伝説的なロックバンドの未発表音源や幻となったアルバムがたくさんあります。主人公のレイは、父を亡くした後にある能力に気がついて、それらの名盤を完成させていくんです。この本のなかでは、ビートルズの『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』、ビーチ・ボーイズの『スマイル』、ジミ・ヘンドリックスの『ファースト・レイズ・オブ・ライジング・サン』などが出てきます。1994年には世界幻想文学大賞も受賞した作品なんですよ」。

    なるほど、このお店のロックファンなお客さん達が喜ぶ一冊であり、『ヨゾラ舎』に通い始めた人にもおすすめできるロック入門な一冊でもある。さらに、山本さんの話は続く。

    「で、ですね。この本はずっと絶版になっていて、一時はこの文庫本も3000円前後の古書価がついていたんですよ。ところが、今年一月にちくま文庫で再刊されたのでふつうの本屋さんでも買えるようになりました」。

    ちなみに『ヨゾラ舎』での店頭価格は950円。ヨゴレ、スレ、破損などまったくない美品。今でも2000円台をつけている古本屋さんもあるなかで、この値段は破格に安い。

    この本を選んだ理由として「まあ、ネットの記事で紹介いただくなら、みなさんが買える本のほうがいいかと思って」という山本さん。「でもね、表紙はこっちのほうがかっこいいですよ」とひとこと添えることは忘れない。

    たしかに、創元社SF文庫のほうがサイケデリックで60年代ロックっぽいし、かっこいいのだ。

    ●奥の棚には“ヤバいアイテム”がまだまだ眠っている!
    京都 古本・中古音盤『ヨゾラ舎』店主・山本浩三さん
    『ヨゾラ舎』ファンのおじさまたちは、「あまり知られすぎてお宝をごっそり持って行かれたら困る」と憂いているらしい。しかし、山本さんは「実際のところ、お店に持ってきている蔵書はまだ半分くらい。まだまだしばらくは大丈夫です」と太鼓判を押す。

    最後に「これはすごいんやで!というお宝はあるんですか?」と質問してみた。ら、山本さんは「ありますよ!」と不敵な微笑みを浮かべた。さっそく、“オフレコで”との条件つきで、奥の棚に眠る「ヤバいアイテム」を見せてもらう。おお、たしかにスゴい!

    「コレなんかね、すごいでしょう? 神田の古書店街のカタログでは、これの帯ナシでン万円ついていたのを見たことがあります」。

    こんなオフレコトークをしているとあたかも「敷居が高い古本屋」のようだが、店頭には100円均一のワゴンも置いてあるし、値付けはきわめて良心的。今のところはン万円の本は見当たらないし、むしろ「こんな値段でいいんですか?」と心配になるほどである。

    「100円均一本をきっかけに店内を見ていただけたらいいんですけどねえ」。

    いろんな意味で間口が広く奥の深いお店である。

    ●ヨゾラ舎について
    京都 古本・中古音盤『ヨゾラ舎』
    店名:ヨゾラ舎
    住所:京都市中京区東椹木町126-1 ヤマモリビル1F-A
    電話:075-741-7546
    営業時間:11:00〜19:00(月曜休)
    ブログ:http://d.hatena.ne.jp/YOZORASHA/
    京都市役所前と京都御所のちょうど中間あたり、『HiFi Cafe』と同じ寺町通の一本東にある新烏丸通にある古本、中古音盤を扱うお店。特に音楽書籍の充実ぶりは京都市内でも指折りである。

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