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作家・桜庭一樹さんによる第138回直木賞受賞作を、『海炭市叙景』『夏の終り』の熊切和嘉監督が映画化した『私の男』。父と子の禁断の純愛をテーマにした、近年の日本映画の中でも、ひと際スキャンダラスな本作が6月14日より公開となります。

本作はオホーツク海に面した北海道・紋別で暮らす、家族を失った少女・花(二階堂ふみ)と、花を引き取った遠縁の男・淳悟(浅野忠信)を中心に、2人が守り続けるある秘密を描いた傑作ミステリーです。

「原作を読んですぐに映画化したいと思った」と話す熊切監督にインタビューを敢行。美しくも恐ろしい物語を作り上げた、苦労話や映画への想いなどを伺って来ました。

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――まず、原作を読んだ時の感想を教えていただけますでしょうか?

熊切:単純に読んでいて引き込まれたのと、二人の関係が信じらたというか、愛があるなと思いました。ダイナミックに時間と場所が飛ぶドラマティックな展開も魅力的で。自分が北海道出身なのでで、紋別という土地も知っていましたし、北の果ての街だからこそ成立する話だなとイメージが膨らみやすかったです。後は、原作の中では奥尻の地震であったり拓銀の破綻であったり、90年代の北海道での負の出来事が描かれているのですが、それがちょうど自分が大阪の大学に行っていて、北海道を離れていた時期だったのでなおさら興味深く感じました。

――映画を拝見して、原作とは違う時間の組み立て方が面白くて、恐ろしい出来事が起きているはずなのに映像がとても美しくて見入ってしまいました。原作を読んだ時は映像化は難しいだろうなと思っていたので、非常に驚きました。

熊切:日本映画ってこういう題材を避けがちだと思うんです。文学だと実現出来るのに、映画だとはねられるという現状への反発もあります。後は、僕自身はこれを暗いお話だとは思っていないんです。世間一般の常識からいったら歪なのかもしれないけど、すごく愛にあふれている。

時系列については迷った所ですね。3.11の震災があったので、原作通りに映画の最後に津波が来てしまうと全く違う意味を持ってしまいますですから、最初に津波が来て、映画全体を通してそれを乗り越えていくような、そんな印象で描いてみたかったんです。

――二階堂ふみさんが演じた花は日本映画史に残るファム・ファタールだと感じました。中学生からOLまで、一人で演じきっているのもすごいですね。

熊切:最初は中学生までは子役にお願いしようと思っていたのですが、二階堂さんから「もし可能なら中学生からやってみたい」と提案をいただいて。最初高校生の部分から撮って、中学生になって、最後に大人の花をやって、順番がバラバラな中、幼く見えるように、大人に見えるように、彼女からもアイデアを出してもらいながら進めました。ハッキリとしたイメージを持っていてくれたので助かりました。

――二階堂さんを起用した理由を教えていただけますか?

熊切:出会ったのは彼女が16歳の時で、僕の別作品のオーディションででした。その頃同時に『私の男』の企画もスタートしていて、「花は誰がいいだろう」と頭を悩ませている時だったので、二階堂さんをみて「彼女が花だ」とすぐに思いました。オーディションって、特に若い女性の場合「○○事務所の○○です!」みたいな、教育されたハキハキとした喋り方をする子が多いのですが、その中に一人どこか不機嫌な美少女がいて、それが二階堂さんだったと。全然前に出ようとはしないんだけど、すごく華もありましたし、周りの子とは目指している所が違うなと惹かれました。

――浅野忠信さんについてはいかがですか?

熊切:元々浅野さんをイメージしながら原作を読んでいたんですよね。淳悟が持っている空虚感、いつも心がどこかにある感じというか。ダメなんだけど色気があるっていう、どこまで崩しても格好良いですからね、浅野さんは。撮っていてもやっぱり格好良いです。

――最近は海外でもご活躍でしたから、浅野さんを日本映画で久しぶりに観る事が出来て嬉しかったです。流氷のシーンは、映画の象徴ともなっていますね。

熊切:流氷のシーンは一か八かでした。元々は流氷観光船が出ていたりする場所なのですが、やはり温暖化で減ってきているようで、実際今年は来なかったようです。もし、流氷が来なかったら人口海水浴場で再現して撮影するしかなく、それは嫌だったので、本当に運が良かったです。

――本作はモスクワ国際映画祭コンペティション部門に出品も決定していますが、海外の観客の反応も楽しみですね。

熊切:海外では、宗教的な理由で日本以上に厳しい意見もあるかもしれませんが、どういった意見が出てくるか楽しみですよね。これまでいくつか海外で作品が上映されていますが、いつもすごいなと思うのが、人種も違って言葉も違うのに、良い俳優を見抜く所なんです。二階堂さんもすごく話題になると思います。そして、彼女の演技がすごすぎて本当の中学生だと勘違いする人も多そうなので、本当の事を教えないとなと思っています。

――今日はどうもありがとうございました。

『私の男』ストーリー

10歳で孤児となった少女・花は、遠縁の男・淳悟に引き取られる。ともに孤独な2人は北海道紋別の平穏な田舎町で暮らしていたが、ある日、流氷の上で起こった殺人事件が報じられる。そのニュースを聞いた2人は、逃げるように町を後にするが……。

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(C)2013「私の男」製作委員会

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