20年というサイクル

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

■20年というサイクル
日本は長い間デフレだから、みんな「デフレをなんとかしなきゃ」と思っていると、思っていた。ところがようやくインフレになりそうになったら「デフレのままでいいんだ」みたいな意見が、予想以上に多いことに驚く。

もちろん主婦とかはデフレの方がいいに決まってるからそう答えるのは予想の範囲なのだが、日本全体のことを考えている(はず)の人たちにも同じ意見が予想外に多い。

デフレが始まって15~20年。考えてみれば長い時間だ。人間の1世代分にも匹敵する。そうなるとそれが普通と考える人が増えるのも当然かもしれない。物心ついた時からデフレの世の中だった人は、インフレに言い知れぬ未知の不安を感じるのだろう。

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新しいアイディアが提唱され基礎理論の研究から実用化に向けた研究に移るのに10年、さらにそれが実際の社会に普及するのに10年かかると言われている。

面白いことにこのサイクルは研究のジャンルによらない。つまりこういうことなのだ。研究者の世代交代が10年単位であり、自分が駆け出しの頃学んだ基礎研究を、実際に実用化に向けて推進できる立場になるのに10年かかる。そして10年間ぐらい精力的に活動したあと、後進に道を譲る。人間が最先端で活躍できる期間がだいたい10年なのだ。すなわち人間の生物学的な寿命でこのサイクルは決まる。

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2000年ぐらいの頃、ちょうど小泉政権の頃は、まだ「日本の実力はこんなもんじゃない、なんとか経済を回復しなきゃ」という声の方が大きかったと思う。「痛みを伴う改革」に賭けたわけだ。

ところがあれから10年。なんかもう「日本はもうこんなもんでしかたないんだ」みたいな声のほうが大きくなっている。むしろ「無理になにかやったら、もっと状況が悪くなる」と心配している。円安にすると諸外国が怒るからダメだとかいってる人たちがそうだよね。

あるいはインフレ政策がうまくいく保証をきちんと国民に説明しろ、とかいう人もいる。だったらデフレ政策がうまくいく保証は誰がいつ説明してくれたんだ?と俺は思うのだが、ようするに「基準」が違うのだろうね。インフレの時期に生まれた人間とデフレの時期に生まれた人間だと。

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学習性無力感というものがある。

「学習性無力感」 『Wikipedia』

http://ja.wikipedia.org/wiki/学習性無力感

長年ストレス下に置かれると、その状況から逃れようともしなくなるという。奴隷は放っておくと自分の足についた足枷の重りの重さを自慢し始めるというのも、同じようなものだろう。

「奴隷の鎖自慢」 2010年09月23日 『言葉の置き場。』

http://takeit02.tumblr.com/post/1172633313

良くも悪くも環境に適応した結果だ。

この間竹中平蔵がテレビで言っていた。反リフレ派の主張というのはようするに「昨日までできなかったことは、明日もできない」というものだ、と。自分が不良債権処理に取り組んだ時もまったく同じ事を言われたという。不良債権処理などできるわけがない、と。「しかし、できたんです」と。

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ま、10年とか20年経つと、すっかり人々の考え方も変わってしまうんだな、と改めて痛感したという話。これだったら北朝鮮とか中国とか中東の国とか、日本人とはまったく違う考え方をするのも当然。もっと長い時間、そういう国の人々は、我々とは違う価値基準の国で生きてきたのだから。

同じ日本でさえ、ほんの10年や20年でこうも考えの基準が変わってしまうのだから。人々の考え方って、思った以上に変わるなぁ、と。よく親の世代から聞かされてきた。戦争に負けて世の中が一変してしまった。それまで正しいと教えられてきたこと間違いとされ、間違いとされてきたことが正しくなった、と。ただこれは占領という劇的な外部からの干渉のためだと思っていた。そういうことでもなければ、人々の考えは短期間にそう大きくは変わらない、と…。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

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