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旅先で、ふるさとで、とんでもない「農の哲学者」に出会うことがある。昨年の夏、ふるさと・宮崎の高千穂で初めて出会った農家のSさんもその一人。友人の父親の四十九日法要で同席したのだが、私の仕事を聞きつけ、話しかけてきた。
「あなたは、『むらの弁証法』をどう思っていなさるか?」
法要の席でいきなりそんなことを聞かれるとは思っていなかったので、答えに窮していると、「私が、いま一番気にかかっているのは『むらの弁証法』の弱りです」と、続ける。いま75歳で、小学校を卒業するとすぐに農業に従事し、7年前までは出稼ぎをしていて「東京湾のアクアラインの工事にも行きました」というSさんの話を聞いていて、「困ったな。断片的な知識をつなぎ合わせてこんな席で議論を挑まれても……」というのが正直な気持ちだった。
そのSさんと、今年の3月に宴席で再会することがあり、また話しかけられた。今度は「北海道の花崎皋
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