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鳩山由紀夫:民主党政権の3年間を振り返る
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鳩山由紀夫:民主党政権の3年間を振り返る

2012-11-12 06:37
    鳩山由紀夫:民主党政権の3年間を振り返る<無料ダイジェスト版>(全編有料版は→ コチラ ←)

     鳩山由紀夫元首相は8月18日、鴨川市の「大山村塾」で「自らの反省を含め民主党政権の3年間を振り返る」と題して約1時間、講演し、その後に約40分間、会場との質疑応答を行った。以下に要旨を紹介する。(※本記事は8月20日に配信された「高野孟のTHE JOURNAL」の一部を掲載したものです)

    ※ 約80分の全編映像は11月13日 01:00まで無料配信してます。
    http://www.nicovideo.jp/watch/1352638174


    ●自民党野田派か?

    高野 この「大山村塾」のビラを鴨川市内や周辺に貼って歩くのだが、今回これを持って行くと「何で鳩山なんか呼ぶんだ!」と怒る人がいまして(笑い)、そういう時に私は申し上げたのだが、1つは、気に入らないことが1つか2つでもあるとたちまちその人の全人格を否定するといった風潮があるのではないか。私は子どもの頃に「あの子が嫌いだ」と言うと、母親に「誰にだって嫌なところの1つや2つはあるわよ。あんただってあるわよ。嫌いなところは見ないようにして人と付き合いなさい」と言われた記憶があるが、いまそういうことがなくて、1つでも嫌なことがあると、皆で寄ってたかって悪口を言い募るという、イジメにつながるような風潮があるのではないか。いいところはいいところ、悪いところは悪いところとして、もうちょっとゆったりと、お互いを認め合うという、言葉でいえばそれが「リベラル」ということだと思うが、それが大事なのではないか。もう1つは、その嫌なところの1つ2つというのは、マスコミ──まあ今日はマスコミがたくさん来ておられて悪いですが──が作り出す虚像のようなところがあって、とくにテレビというものは、ある失言1つでもすればそこだけを1000回でも2000回でも繰り返すという、錐で傷口をこじ開けるような報道ぶりが横行していて、政治家の発言にしても、いろんな大臣が失言で首が飛んだけれども、本質とは何の関係もない言葉尻を捉えてひきずり下ろすという傾向をマスコミが強めていて、それがイジメという社会的風潮となって子どもにまで影響を与えているということがあるのではないか。ま、そういうわけで、メディアを通じて見る政治家ではなくて、リアル、実物の政治家に接して自分の目で自分の耳で確かめて貰う、ということがこの「大山村塾」の1つの趣旨なので、今日は本物の元首相に来て頂いた。鳩山さん、よろしくお願いします(拍手)。

    鳩山  こんにちは。今日は高野孟さんのお招きで、イジメの対象になっている生の鳩山を(笑い)見て頂いて、ああやっぱりイジメられて当然だと思って頂くか、いや必ずしもそうではないぞと思って頂くか、私としては素の鳩山を知って頂こうと思う。これからの政治がいかにあるべきか、皆様の故郷に政治がどう関わっていくのか、是非皆様方と議論させて頂き、私もヒントが頂ければいいなと思う(拍手)。
     さて皆さん、懐かしいでしょう(笑い)、これが09年の衆院選の時のマニフェストで私が表紙になっている。では、このマニフェストはご覧になったことがあるか。ないはずだ。これは、もし私が10年7月の参院選の時に総理を続けていたならこれで戦うつもりで作った幻のマニフェストだ。ここには、「民主党政権がこれまで取り組んできたことをご報告します」として、179の政策のうち実施できたのが39、一部実施が54、着手済みが66、全く着手できなかったのが20と書かれている。とくに出来たことは何かというと、予算編成を大幅に変えて、無駄な公共事業を18%削減する一方で、社会保障費は10%近く増やし、また教育予算も5%増やして、非常にメリハリのある予算編成ができた。また天下りの斡旋禁止はできたが、天下りの根絶はできなかった。もし私が総理として参院選を戦ったら、衆院選のマニフェストがどこまで行ったのか、これからどうやるのかを選挙前にもっと丁寧に説明して、もう少し辛抱してほしい、これから必ずその先を進めていくからと言って戦うつもりだった。

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    民主党の「幻のマニフェスト」を掲げる鳩山由紀夫元首相
     

     そういう状況にならずに、自分自身の不徳の致すところで、総理を9カ月弱で辞めることになり、せっかく民主党に期待したのにと仰しゃって下さる方々に失望感を与えることになってしまった。その後に続く消費税の問題などを見ると、民主党は変わってしまったなあと思う方も多いのではないか。いま野田総理が、民主党が総選挙間近になって、こういうマニフェストを作ると言った時に、素直に聞き入れてもらえるだろうか。マニフェスト破りばかりしてきて、どうせ今度も守らないのだろうと言われてしまいかねない状況だと思う。  今の野田内閣、私から見ると余りにも自民党に近寄りすぎている。せっかく政権交代をして、自民党政治と決別するはずだった民主党が、なぜ自民党のほうばかり向いて政策を遂行しようとしているのか、大変に気懸かりだ。その最たるものが消費税の増税という議論だ。3党合意、民主党と自民党と公明党が歩み寄って、その過程で、例えば私が3年前に約束した後期高齢者医療制度の廃止からも事実上撤退してしまった。このようにマニフェストをボロボロにされながらも消費税増税の方向に走ってしまう。
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    09マニフェストは →コチラ← から閲覧可能です


    ●原発再稼働とTPP推進 

     さらには原発再稼働の問題がある。実は私は原発については元々は推進派だった。地球温暖化をもたらす二酸化炭素などのガスが増えてきているという状況で、私は1990年比で2020年までに二酸化炭素を25%削減すると国連でも国会でも誓い、その時には原発を十分に使うことも約束した。しかし、昨年3・11であのような福島の大きな事故が起きてしまった。
     日本は、考えてみれば原発を作るには余りにも不適切な活断層が大変多い島国で、日本としては基本的には原発に頼らないで生きていけるようなエネルギー大国になっていかなければならず、それは十分に可能だと今は思っている。その問題を抱えながら、原発の再稼働が始まってしまった。実際にはまだ福島の事故がどういう原因で起きたかも判明していない。国会の事故調査委員会の議論でようやく、津波だけではなく地震そのものによっても大きな損傷が起きたことがほぼ明らかになってきた。そのような中で原発再稼働を決めるとは、どう考えても理屈に合わない話で、多くの皆さんが怒るのは至極当然だと思う。
     ただこの問題は、それならば原発に頼らないで生きていけるような保証、再生可能なエネルギー、あるいはバイオマス・エネルギーなどを駆使しながら、新たなエネルギーを開発することで生きていけることを示す責任もあろうかと思っている。
     それから、TPP推進という問題も私の時にはなかった問題で、菅総理になったとたんに推進の方向に大きく変わった。TPPについては多くの懸念が払拭されていない。確かに私も、日本をもっと開かれた国にしなければならないということには当然賛成だが、そのことと、農業だけでなく保険、医療、金融、郵政などあらゆるものを例外なく一挙に全部開こうという強引なやり方は、アメリカを利するものであって、必ずしも日本の利になることではなく、基本的に推進すべきものではないと思っている。  また、事故が続いているオスプレイを、沖縄の皆さんが米軍の基地を出来るだけ減らしてほしいという方向にあるのに、なぜ沖縄に配備することを決定するのか、非常に気になるところだ。この4つとも、自民党にすれば賛成だろうが、本来の民主党としては慎重でなければならない。この辺が「自民党野田派」──これは私が言ったことではなく、あるメディアがそう言っていると言ったところ、私が言ったということになってしまったのだが──自民党の野田さんであるかの行動ぶりが気になることは確かだ。

    ●原点は旧民主党

     旧民主党が今から16年前、1996年に発足した。これは、高野孟さんの理念でスタートした政党と言って過言でない。今までの政党と違う発想をしよう、と。
     1つは、2010年、すなわちその時点から15年先に日本をどういう国・社会にするかを議論しようということ。「地域主権国家」、すなわち、何でも国におんぶに抱っこしているのではなしに、町おこしをしようという時に予算のために東京に陳情に行かなければならないというのではなしに、地域のことは地域でしっかり権限と予算を持って決められるような社会をつくろうではないか。もう1つには、「時限政党」ということで、そういう国を15年後までに作る役目を果たしたら解党して、蝶が脱皮するように、必要ならばもう一度作り直そうということだった。そういう15年先を見た「未来からの風」のような政党として民主党を立ち上げようじゃないかということになった。
     それから[その時に対米政策の第1に掲げた]「常時駐留なき安保」は極めて重要な考え方で、以来私が常に主張してきたことだ。日本という国がアメリカによってある意味で守られているお陰で、戦後、一切戦争がない国として今日まで辿ってきたことについては、アメリカに感謝の念を持たなければならない。しかしだからと言って、日本の領土の中にアメリカの軍隊がずっと居続けて、未来永劫守られ続けて行くと考えるのは、世界史の中でも極めて異常な姿だと言わなければならない。一国の安全と平和を守るのはその国の人たちであり、50年、100年かけてもそういう環境を作らなければならない。そういう発想の中で、いま沖縄で起きている[普天間移設問題の]状況を考えなければいけないというのが私の視点だった。アメリカ軍が常時駐留するのでなく、一朝有事の時に駐留できるような態勢を新しい安保体制の中で作るべきではないかという主張だった。
     また「自立と共生の友愛社会」を唱えている。一人一人が自立した考えを持ち尊厳をもって行動したとしても、一人では生きていけない。だから多くの方々と共生する──考え方が違うことをむしろお互いに喜び、認め合うような社会を作ろうではないか。それを「友愛社会」と呼んできた。国と国との関係も同じで、考え方が違うことをむしろお互いに尊敬し合うような、尊厳ある国と国のお付き合いを考えなければならない。私はその先に「東アジア共同体」という構想も述べていた。このような旧民主党[の理念]の中に今の民主党の原点をもう一度掘り起こしていくことが必要ではないかと思う。

    ●私がめざしたもの

     私は[09年10月の]所信表明の中で「戦後行政の大掃除」をしようと言い、それはまさに明治維新に匹敵するような「無血の平成維新」なのだ、そのためには一人一人の覚悟が必要だと言った。並大抵の政策転換ではない。今までの官僚中心の、官僚任せの政治ではなく、天下りもなくして無駄遣いをなくす。そして社会としては、一人一人が「居場所」があり、それだけでなく一人一人が「出番」を見いだせる社会を作りたいということで、その先に後で述べる「新しい公共」という発想があった。私の総理在任の9カ月間に前月比で若干自殺者が減ったのが嬉しかった。もちろん年に3万人が自らの命を絶つ状況は続いていて、政治の大きな責任を感じるが、ひょっとしたら自分にも「居場所」があるのかな、「出番」が見いだせるのかなと思って頂いたのだとすればありがたいことだ。
     「コンクリートから人へ」という標語を使って、コンクリート業界からは相当怒られたが(笑い)、これはイメージであって、公共事業に余りにも頼っているハードな予算の使い方よりも、一人一人が幸せになるための予算のあり方をどう考えるかを言いたかった。別の言い方をすれば「人間のための経済」を生みだしたかったということだ。公共事業の予算を18%削り、教育には5%、社会保障には10%増やして、「コンクリートから人へ」を実現した。当時、「地域医療が崩壊する」ということが言われたが、診療報酬を2年続きで2回上げることで、そのようなギリギリの状態から少しは改善されてきたのではないか。 
     また「地域主権」も所信表明の中で大きな位置づけをした。このように、かなり新しいことを所信表明に盛り込んで、「命を守りたい」──命という言葉を26回使って野党からそればかり言うなと批判されたが──命を大切にする政治に変えようじゃないか。そして、何でもかんでもお金をくれてやるからありがたく思え、ありがたいと思うなら選挙の時に1票をくれというような、上から目線の政治はやめようじゃないか。政治は、頑張って自立しようとする皆さんに、それとなく、そっと背中を支えるのが本来ではないか、ということを盛んに申し上げた。

    ●私が出来なかったこと

     それに対して、私がやらなければならなかったこと、十分にできなかったことは、既得権益との戦いだ。いま発想を変えて、例えば予算ひとつでも大きく変えていこうとすると、今まで予算の下で甘い汁というか利権にありついてきた人たちからすると、とんでもない奴らだということになり、強い批判が出て来る。最初は、政権交代に戦々恐々として模様眺めだった人たちが、自分たちの既得権の問題と分かると、相当に厳しい反応を示すようになった。
     既得権とは1つには官僚機構そのものだ。もう1つは大手の企業、財界である。そしてもう1つは、今日も揃ってお出ましのようだが、大手のメディアも既得権そのものだ。本来なら官邸の記者会見なども海外メディアにもまったく公平公正に開かれるべきだと思っているが、いまだにそれは行われていない。もう1つは、アメリカ、あるいはアメリカの意向を忖度した官僚たちというべきかもしれないが、アメリカと仲良くやらなければいけないんだということで様々な仕掛けをしてきたのが実態。さらにもう1つ言えば自民党で、自民党政治は既得権そのものだった。今はその既得権の中にむしろ入り込んでしまったのが野田政権なのかもしれない。鳩山が既得権と戦って敗れた。ならば既得権の中に、こちら側に身を置いた方が得策で、そうすれば大手メディア、財界、財務省、あるいはアメリカから「これはいい内閣だ」と評判を頂くことになるんじゃないかという発想で行動している節がある。

    ●普天間移設問題

     私がやるべきは、そのような既得権ととことん戦う姿を見せることだった。だが、普天間問題で立ちはだかった壁に対して自分自身が勝利を掴むことができなかったのは力不足で、申し訳なかった。   私の沖縄への想い、これは私のみならず民主党全体で選挙の前に作った「沖縄ビジョン」というものがあって、その中に、普天間の移設先について「将来的には海外が望ましい」と、また「最低でも」という言い方をしていたかどうかは分かりませんが「県外に移設されるべき」であると書かれてあった。何も私が一人で勝手にそう言ったのではなく、党としての考え方として「最低でも県外」ということだった。当然、総理になったので、私が中心となりこの方向性を指し示してきた。沖縄の皆さんは、年来の彼らの想いを総理がそこまで話してくれるということに喜び、期待もしてくれた。私としてもできる限り県外に移設をしたいと最後まで思い、徳之島などにも当たらせて頂いた。最初は前向きに考えていた方々も、メディアの壁というものがあったと思うが、メディアなどで伝えられると急激なカーブを切り、徳之島はダメだということになって、退路を断たれることになってしまった。
     私自身の力不足を晒すことになるが、官僚機構というものの壁は厚かったということだ。私が沖縄の側に立って「最低でも県外」と言ったのに対して、当時、平野官房長官以外の大臣は誰一人、私が説得することが出来ず、むしろ防衛省、外務省といった役所にとってみれば、鳩山の言っていることはとても無理だ、もう決まっていることなんだから辺野古案に戻すしかないのだということで、最初から壁が厚かった。先ほど言ったように、既得権と戦いを強引にでも行わなければならなかった鳩山自身が、この普天間の問題で壁の前で挫折してしまい、それが総理辞任の1つの理由になったことは間違いない。  ただ、私がありがたかったことは、今年の5月15日に沖縄を訪れたときに、沖縄の皆さんに怒られるかと思って、私自身の不徳、力不足を詫びたが、沖縄の皆さんは暖かくて優しくて、誰一人、私に対して文句、批判をする方はいなかった。「いやあ、鳩山さんだけですよ、歴代の総理の中で沖縄の側に立って『最低でも県外』と発表してくれたことはありがたいと思っている。ただ、上手く行かなかったことは残念に思っているが、私たちとしてももはや態度は決めています」ということで、沖縄の人びとはほとんど辺野古案に対しては極めて否定的な気持になっていることは間違いないと思っている。  ここで、もう一度、立ちはだかった壁を打ち破らなければならないと思っているが、ひょっとするとアメリカ自身が、このまま行けば普天間が固定化されてしまう、それはおかしいんじゃないかということで、レビン議員など有力な一部の議員が考え始めていて、これは大変おもしろい方向が出て来る可能性があると思っている。私も沖縄の皆さんに迷惑をおかけし、そのことが総理を辞める理由の1つとなった以上、極力、沖縄の皆様にご理解頂けるような最終的な解決を見いだして行きたいと思う。その考え方の根底にあるのは、最初に申し上げたように、自分たちの国は自分たちで守るという気概を日本人が持つことが大切だということである。
     ただ、もう1つ総理辞任の真相を言えば、政策、すなわち普天間問題だけが原因で辞めたわけではない。余り皆さんの前でもう一度口にするのは控えたいという気持もあるが、「母から莫大な子ども手当を貰っていた」という批判の方が私にとっては痛烈に厳しかった。沖縄の問題以上に、自分の身に関わる問題で、多くの国民の皆さんに不信を与えてしまったことが、総理辞任の一番の真相である。母には今でも感謝しているが、母が内緒で、「お前たち、資金がなかなか苦しいならば」ということで、援助をしてくれていたことを鳩山自身が知らなかったということ、またそのことを私に知らせないように秘書が行動したことが事実として明らかになり、皆様方にご迷惑をかけることになってしまった。  そもそも鳩山自身、政治家になる時に、自民党の政官業癒着の政治ではダメだ、それを打破するには徹底的にクリーンな政治を作らなければいけない、自分自身が一番クリーンな政治だと思っていたところに、このような不祥事を招いたことは、青天の霹靂だったが、皆さんにご迷惑をかけてしまった。

    ●改めて民主党の基本

     民主党の基本は、1に「地域主権」、2に「新しい公共」、3に「東アジア共同体」である。これを私は「友愛3原則」と呼びたいと思っている。友愛という考え方の下で国と地域の関係を考えた場合に「地域主権」、その下で一人一人の個の立場[と社会との関係]で考えた場合に「新しい公共」、そして国と国とのあり方で考えた場合に「東アジア共同体」ということで、これを私がやりたかった3大原則と考えている。

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     「地域主権」、いま橋下市長なども唱えているようだが、どこまで本来の意味での地域主権となるかはこれから試されるところである。地域主権とは何か。この図(写真参照)を見て頂くと、今までは、市町村より都道府県が偉くて、都道府県よりも国が偉くて、国が[都道府県を通じて]市町村に対して大きな権限を行使する関係だった。私は自分自身の憲法試案の中で書いていることだが、まず市町村がど真ん中にあって、その市町村の権限を必要であれば都道府県に、あるいは必要であれば国に対して行使していくという発想であって、問題はなるべく皆さんの身近なところで解決をすべきだという考え方だ。

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     夫婦喧嘩が起きた時には、それはコミュニティの中で解決すべき問題ではなく、夫婦だけで解決すべきだろう。自分たちだけで解決出来ない時にコミュニティで解決する、コミュニティで解決できないものはさらに大きな組織で解決するというやり方で、国の役割は限定的にして、権限と財源は出来るだけ地域に委ねるということだ。これは「補完性の原理」に基づくもので、さらに国も主権の一部を東アジア共同体に移譲するということも考えていきたい。

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    「新しい公共」というのは、時間がなくなったので簡単に説明するが、今まで公の仕事はほとんど官が行ってきたが、これからはそうではなく、[公のことであっても]例えば市民の皆さんがグループを作って解決しようというやり方になる。そのような活動を担う団体には寄付の優遇政策を世に問うている。今までのような、公のことは何でもお上に依存していたのに対して、個人、地域、企業それぞれが出来ることを協力して支え合ってやっていこうということだ。 

    「東アジア共同体」は、いま教育の分野では、日本、中国、韓国が協力して大学生の単位をお互いに認め合うようにしようという制度が出来上がってきて、国と国の関係も友愛精神を基調にしていきたい。東アジアが我々の生活空間と考えるからだ。  韓国の李明博大統領の最近の発言は大変遺憾に思うし、また中国・香港の方が尖閣諸島に上陸して逮捕され帰されたという事件もあった。実は、2010年9月に尖閣諸島で漁船が衝突する事件が起きて以来、ロシアのメドヴェージェフ首相が北方領土を訪れるなど、近隣との間で様々な事件が起きていて(写真参照)、このすべての事象は、私が辞めてから起きているということを申し上げたい。私は「東アジア共同体」ということを言い、それに対して中国も韓国も非常に納得してくれていた。従って、中国や韓国との間で、少なくとも私が総理の時にはこういう事件は起きていない。ロシアについても同じだ。これは大変残念なことだという事実だけを申し上げておく。

    ●これからの展望

     民主党はもう終わりなのか、ということだが、今のこの状態のまま民主党が選挙に突入したら、大変な惨状を招くことは間違いない。従って、民主党が本当の意味で原点回帰が出来るのかが問われている。原点回帰ができるかできないか、本来こういうことでスタートした民主党がどうしてここまで変貌してしまったのかということが、もう一度問われて、そして立て直すことができるんだという判断をなされるように民主党を仕組んで行く必要があると考える。自分としても、何も捨てるものはない立場なので、常に政治は国民の側に立って議論して行かなければならないので、皆様方の気持ちを大事に考えながら積極的に行動して参りたい。総選挙の見通しは、今日メディアの皆さんが一番聞きたい話なので、一切お話ししない。お暑い中、私の話に耳を傾けて下さった「大山村塾」の皆さんに感謝します。ありがとうございました。

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    この講演をもとに編集された「民主党の原点──なんのための政権交代だったのか」発売中!

    ────────《質疑応答》────────

    高野  会場の皆さんから質問を受けます。
     
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