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高野孟:米中の本気の怒りに無頓着な安倍政権
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高野孟:米中の本気の怒りに無頓着な安倍政権

2014-07-30 09:00
    旧知の米国人アジア専門家と久しぶりに対話した。「日本の政府やメディアは、習近平訪韓をどう受け止めているのか」。日本ではもっぱら日朝間で拉致被害者の調査が始まるというニュースに関心が集まっている。「そうだろうとは思うが、安倍政権は、その2つの出来事を表裏一体のこととして捉えていないのか」。残念ながらその視点はないと思う。「まずいな、それは……」。

    彼の見方はこうだ。習近平が主席就任後、かつて「血で結ばれた兄弟」とまで認め合った北朝鮮をまず訪問するという不文律を破って、先に韓国を訪問し、しかも国賓として大歓迎を受けたというのは、ピョンヤンに対する強烈なメッセージで、金正恩は震え上がったと思う。それは単に外交儀礼上の順番とかいう次元の話ではない。

    実は中国は、金が中国の真摯な制止を無視して昨年2月に3回目の核実験を強行したのをはじめ、ミサイル発射やその他軍事挑発を続けていることに本気で怒っている。それは、中国とタイアップして北を何とか6カ国協議に復帰させて北の核問題を軟着陸的に解決しようと腐心してきた米国も同様で、昨年12月にバイデン副大統領が訪中した際に彼は習に「そろそろあのピョンヤンの若者を除去したほうがよさそうだ」と言い、習は「もうちょっと様子を見たいので時間をくれ」と答えたと言われている。

    様子を見たいという意味は、北が6カ国協議に復帰するつもりがあるかどうか最終的に見極めて、ダメなら中国の特殊工作機関が北の軍部を動かして宮廷クーデターで金を抹殺するということだ。中国とパイプのあるナンバー2だった張成沢はいち早くその中米の恐ろしい企図を金に伝えたが、金は「お前はどういう立場に立っているのか!」と激怒して張を処刑してしまった。習は「ふーん、そうか。あくまで俺に喧嘩を売るんだな。だけどもう一度だけ、警告のメッセージを伝えるぞ」と思ってソウルを訪問したのだ。

    そのどこが日本にとってまずいのか。「だってそうだろう、中国と米国が金の首を掻く覚悟で北を6カ国協議に復帰させられるかどうかの瀬戸際作戦を進めているときに、日本が拉致問題優先の立場で勝手に北と交渉し、しかも北の口先だけの“万全の調査体制”とかいう言葉を信じて一方的に経済制裁を一部解除に踏み切った。米中とも、安倍には戦略思考というものがないのかと呆れて果てている……。▲
    (日刊ゲンダイ7月9日付から転載)


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    <高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
    1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にインターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
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