「辺野古ノー!」を掲げて沖縄県知事選に圧勝した翁長雄志新知事は、当選の喜びを語る中で何度も「自己決定権」という言葉を強調した。自己決定権とは「自らの生命や生活に関して、権力や社会の圧力を受けることなく、本人自身が決定できる権利」(大辞林)で、この場合に即して言えば「自分たちが暮らす土地や海、空をどう使うのかを決める権利は自分たちにある」(18日付東京新聞こちら特報部)ということである。

知事選の翌日、翁長陣営の先頭に立って選挙を戦った糸長慶子参議院議員(沖縄社会大衆党委員長)と語り合う機会があって、それが今回のキーワードであることで大いに一致した。私自身、選挙戦さなかの8日に那覇市内で「沖縄の自己決定権/スコットランド独立投票から沖縄が学ぶもの」と題したシンポジウムに参加し、地方自治論・スコットランド政治史が専門の島袋純琉球大学教授らと議論したが、糸数議員は「あの催しも、この言葉の大切さを広めるのに大きな役割を果たした」と評価してくれた。

それで私が「自己決定権が大事なのは原発の問題も同じで、例えば川内原発の再稼働をめぐって、事故が起きれば大被害を受ける30キロ圏内の人びとがどんなに不安を訴え反対を唱えても、そんなものは蹴散らして進めるというのが政府の姿勢だ。そうではない、命に関わる大事なことは自分たちで決めるということでしょう」と言うと、彼女は「そうなんですが、原発と基地が違うのは、原発は建設なり再稼働なり、現地の知事や市長が手を挙げて賛成しているわけですが、沖縄の場合は、戦後の米軍占領下で銃剣とブルドーザーで一方的に土地を取り上げられて基地が作られたのであって、誘致した人は誰もいないんです。それで、国土の0・6%に米軍基地の74%が集中する状態が戦後70年続いてきて、この負担にもう我慢ができないと県民が声を上げている時に、仲井真前知事は、自分で手を挙げて辺野古に新しい基地を作ることに賛成し、それに許可を出したんです」と。

なるほど、そこに仲井真の裏切りに対するオール県民の怒りの深さがあり、その中から、自分たちの命は自分たちで守る──国が何と言おうと、力で脅そうと金をバラ撒こうと、自分たちの運命は自分たちが決めるという自己決定権の毅然たる思想が沸々と涌き上がってきたのである。われわれ本土の人間はそれに学んで、安倍政権のやりたい放題に鉄槌を下すことができるのかどうか。▲
(日刊ゲンダイ11月20日付から転載)

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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にインターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。