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(岩手県遠野市/撮影:THE JOURNAL)
新米の美味しい季節になりました。全国的にも田んぼでは収穫を終え、比較的かる時期の遅い東北地方や山間地でもコンバイン(稲刈り機械)が走った後が見えるようになってきました。
この時期といえば、生産者の農家にとっては春から手をかけてきたコメの品質や収量がわかる時期でもあります。そして何より、買取価格がいくらになるのか、つまり自分の一年間の仕事の報酬がどれほどになるかがわかる時で、内心ドキドキしている農家も多いことでしょう。
全国各地で2015年産のコメの買取価格が発表され始め、日本農業新聞によると、一俵(60キロ)あたり1,000円程度の上昇で(7月の早場米)、全国的にも1万円以上の値はついているようです。どこのメディアも「上々」「改善」という報道ですが、昨年のコメの値段はこれまでにないほどの落ち込みでした。
昨年訪問した群馬県高崎市の農家に提示された米価は6,500円。経費を差し引くと5,800円に。1キロあたり農家が手にするお金は、なんと100円にも満たない。そんな農業現場が、各地で広がっているのです。
高崎市の農家のひとりは、コメの生産にかかる経費の上昇に触れながら、「他人の生産まで手がまわらなくなってきます」と肩を落としていました。生産現場の危機は、いつ消費者の側にまわってくるか、時間の問題かもしれません。
農民作家・山下惣一と農村ドキュメンタリー「それでも大地に生きる 〜揺れる村からの往復書簡〜」
「農業と食料の問題は農家の問題じゃない。都市の消費者の問題ですよ」
40年以上言い続けている作家が、佐賀県唐津市にいます。作家と言ってもコメやミカンを育て続けている農家で、日本で最初で最後の「農民作家」ともいわれている山下惣一さんです(「『誤解』だらけの農業問題」 などに記事参照)。日本だけでなくアジアの農村現場にも足を運び、「消費者にとっても、農業問題は他人事(ひとごと)ではありませんよ」と訴え続けてきました。
さて、前置きが長くなりましたが、山下惣一さんが出演し、94年地方の時代賞映像コンクール優秀賞を受賞したドキュメンタリー「それでも大地に生きる 〜揺れる村からの往復書簡〜」が明日27日の午後からNHKで放送されます。台風や冷害が起こり、日本全土を襲った1993年。コメの大凶作の農村現場を撮影し続けたドキュメンタリーで、貴重なアーカイブ再放送です。山形県高畠町の星寛治さんとの往復書簡をもとにした作品です。
つやのある新米は美味しく、私たちの空腹を満たしてくれます。電車や車から眺める黄金色の田園風景は美しく、山につくられた棚田には多くの観光客も集まります。そんな田んぼを耕し続けている生産者の現場で何が起こっているのか。東日本の大雨の影響も心配です。映像をみながら、思いを巡らすのもいかがでしょうか。(編集部・上垣喜寛)
【関連記事】
■NHKスペシャル「それでも大地に生きる 〜揺れる村からの往復書簡〜」(2015年9月27日13:30〜/1993年に初回放送ドキュメンタリー)
http://www.nhk.or.jp/archives/nhk-archives/
■山下惣一(農民作家)×星寛治(農民詩人):農は輝ける(2013年、THE JOURNAL)
http://www.nicovideo.jp/watch/1377321096
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