昨年11月の本欄で「民主党の岡田克也代表の参院選へ向けた戦略の腰が定まらない」と指摘したが、3カ月が過ぎてもその状況は変わらない。原因は二重の優柔不断で、一方では、東京維新からの解党して新党をという誘いに対して「それなら結構です」とキッパリとした態度をとれないこと、他方では、シールズや学者の会など昨年の反安保デモを担った「市民連合」からの「1人区で全野党の統一候補を」という求めに対して真正面から応える決断ができないこと、である。

維新は、単独で選挙に臨めば壊滅しかねないので、ワラをも掴むつもりで民主にすり寄っているだけで、何のための、国民のどういう希望をよりよく表現するための新党なのかは何ら語っていない。こんなものは、国民とは無関係の永田町内の談合にしかならないから止めたほうがいい。「来たい方はどうぞ。歓迎しますよ」と言っていればいいのである。

それに対して、市民連合の野党統一候補の要求は至極まっとうなもので、誰が考えても、安倍政権に改憲に必要な3分の2の議席を与えず、あわよくば自公を現有より13議席減らして過半数割れに追い込む可能性がわずかでもあるとすれば、これしか方法がない。痩せても野党第一党の民主党としては、その市民たちの切実な願いに応えて、率先して東京維新をはじめ社民、生活、共産などを糾合して、32の1人区の少なくとも半分に安保法制に反対し立憲主義を擁護する統一候補を押し立てて安倍に挑戦する姿勢を示さなければならないはずだが、党内保守派や連合の右翼幹部の「共産党嫌い」に阻まれて、大胆に踏み出せない。そこを見越して、官邸筋からはさかんに「シールズは共産党のダミーだ」といったデマゴギーが流されている。

永田町の選挙プロに「民主党がこんなだと、参院選はどうなるのか」と訊くと「このままでは、1人区で野党ゼロでしょう」と明快なお返事。「でも、熊本や岩手では地方で先行して統一候補の調整を進めているし、市民連合も業を煮やして自分らで候補選定を始めた。他にもネット上で『選挙ジョッキー』を開く放送作家の座間宮ガレイが全国行脚して各地に30もの『民主党の議席を防衛する勝手連』が生まれているが」「そういう動きが実ったとしても、1人区で4つか5つが精一杯でしょう」。さあどうする岡田、安倍改憲に手を貸した民主党という汚名を歴史に残すのかどうかの瀬戸際である。▲

(日刊ゲンダイ2月11日付から転載)


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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944 年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレ ター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェ ブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にイ ンターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
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