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撮影:菅沼剛弘 / インタビュー:西村綾乃
Photographs by Takehiro Suganuma / Interview by Ayano Nishimura
協力:スタジオ1(http://www.grand-net.jp/)
[2012年5月掲載]

第1回:「音楽を生きもののようにうねらせたい」 アルバム「ON FIRE」に込めた思い
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――アルバム「ON FIRE」はいつごろから制作なさったのですか?テーマなどはあったのでしょうか?
J 昨年の夏ぐらいにスタートをして、そこから少しずつレコーディングをしていました。テーマは、あったとすれば自分自身の欲求としては、「より普通になりたい」ってことだったんですよ。で、「普通ってなに?」って思うと思うんですけど、日本には普通のロックがないなって思うんですよね。なんかどっちかに寄っていると思うんですよ。速いとか、うるさいとか…簡単に言うとね(笑)。なんかそういうだけのものに対してオレの中ではもうドキドキするものがなくて。だから、ど真ん中の音をやりたいなって思ったのが始まりでしたね。そこに寄っていけば、誰が聞いてもかっこいいと思う音楽を鳴らせるんじゃないかなと思って、今回の曲を作っていました。

――「ON FIRE」の形が見えたのはいつごろでしたか?
J 音として出てくるまでは未知の部分があるからね。トラックダウンの最後の最後まで、思い描いたものが出来たか分からないものだけど、ただ去年の夏にライブで「here we go」はプレイしていて。この曲が出来上がったときに、アルバムは絶対いいものになると確信をしました。

――燃え盛るような音たちが集まったアルバムですよね。
J 自分自身が音楽に、ロックに求めるものってやっぱりエネルギーだったり、パワーとか、スリルだったり。それも、ものすごいスケールで鳴る曲というか、そういうものを集めたいなと思って作っていましたね。

――冒頭の「Bring the Light」は静かに始まりますが、自分自身の殻を破るかのように音が速くなり、駆け出したくなるような衝動に駆られます。躍動感のあるアルバムの幕開けにぴったりと思いました。
J 「Bring the Light」は生まれたときに、やっぱり1曲目かなぁと思っていました。よりバンドとしてかっこいい手法を取りたいと、シンプルなやり方なんだけどね。気持ちの昂ぶりとともにテンポが上がっていくっていう。そういう衝動を今回のアルバムには詰め込みたかった。ズレていても揺れていてもいい。それは温度や強さに変わっていくものだと思うから。

――アルバム自体が、熱でうねっているような感覚があります。
J それを感じてもらえていたらすごく、うれしいですね。自分で何枚もアルバムを出したり、音楽を作り続けていると、そういうところをより求めてしまう自分がいるんだよね。何曲も書いてきたんだけど、もっともっと曲を自由に羽ばたかせられないかな。生きもののようにうねらせられないかなって思うんだ。

――生きもののようにうねるって面白いですね。そういう感覚もありましたね。
J もっともっとできると思うんだ。レコーディングも、もっとフリーな感覚で録ればいいのかなとかさ。「録るよ」って言うと気構えたりするでしょう?だから隠し録りみたいな。そういう方が伸び伸びしていていいと思ったり。この前、海外の映画俳優さんがテレビで「プレイバックを見ない」ってしゃべっていてね。見ると、自分の良い悪いを知ってしまうから、そこに合わせてしまう…その愚かさが嫌だって話していてね。今起きたことは今しかないから、それが自然なことだし、そこで生まれたことを尊ぶというのかな。それって音楽もすごく近いところにあるなぁって思ってさ。音楽も自由さをずっと求めたい、求めていきたいよね。

――アルバムには不思議な感覚が、もう一つありました。それは歌い方なのですが、日本語詞が英語のように聴こえたりとか、日本語もなかなかかっこいいなと思ったんです。
J 英語で歌うとかっこよく響くっていうのは、自分でもよく分かっているんだ。聞いてる人たちも単純にかっこ良く感じるってことも。スコットと一緒にプレイをするようになって、もう14年目かな。その当時と比べたら俺自身、英語もしゃべれるようになってね。しゃべれるようになったら、逆に日本語をもっとちゃんとしたいと思うようになってね。日本語って英語にはない温度や角度があって、使い方を間違えなければ、かっこよく響くと思ってるんだ。流れにはめ込んだりとか、このアルバムで意識したところだね。

伝えたいことや、言いたいことは死ぬほどあってさ。過去に、それを全部詰め込んだときもあったんだけど、そうしたらどうなるかって言ったら、音楽じゃなくなっちゃったんだよね。音と言葉のバランスが悪くなるっていうのかな。言葉ばかり先行すると、曲にリンクしていかないというか。今回は音に自然に吸い込まれていくような、作りをしたいなと思っていたから、だからあえて言葉の数を少なくしたり。そうすることで、みんなのところに音が飛んでいくかなぁって。

言葉って、情報として入っていく言葉と、感覚的に入っていく言葉と二通りあると思っていてさ。感覚的でいいと思ったんだよね。感覚的に入ると、音がないところでも、それが経験や情報として血肉になって、ずっと鳴り続けてくれるんじゃないかなと思ってさ。ずっと響いていてくれるものであって欲しいよね。なんだか分からないけど、熱い!っていうさ。それでいいと思うんだよね。

だってみんな、有名なストーンズの曲の歌詞だって、ちゃんと覚えていないでしょう?(笑)。実際、パーツパーツじゃない?でもそのパーツが全部のトリガーになっているってすごいことじゃない。その一瞬や、ひとことで、記憶が呼び起こされるっていうか。そういう音楽を作りたいよね。