「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
2018年11月20日(火)配信の「小飼弾の論弾」の前半をお届けします。
2018年12月18日(火)に配信する予定だった、「小飼弾の論弾」はネットワーク機材のトラブルによって配信ができませんでした。そこで2019年1月は、通常配信を含めて3回のライブ配信を行う予定です。楽しみにしてくださっていた方には、本当に申し訳ありません。
次回は、2019年1月8日(火)20:00、12月に出来なかった「2018年を騒がせた数々の「おまいう」事件を振り返る」の予定です。
お楽しみに!
2018/11/20配信のハイライト(その1)
- ゴーン逮捕について
- 日産の今後と「意外と地場産業的」な自動車会社
- 競馬の馬に生まれておけばよかったサイバー担当大臣
- 精度を上げるのが難しかったキログラム原器
ゴーン逮捕について
(注:番組は2018年11月20日配信 です)
山路:ゴーンさん、日産のゴーン社長が逮捕されたということが、もう昨日からすごい勢いで、号外が出たりとか。
小飼:まあ日本だけのニュースでは終わりませんからね、必然的に。
山路:じゃあゴーンさんて、なんでここまで大きな話題になってるのか、そもそもゴーンさんていうのは何をした人なのか。
小飼:まぁあれですね、根が潰れかかった日産にルノーというのか、ルノーという会社はじつはフランス国の持っている自動車会社でもあるんですけど、そこのお金を注入したことですよね、一番でかいといえば。
山路:見事にある意味再生させたわけですよね。相当クビ切り、そういうコストカットとかもして。
小飼:誰がやってもコストカットは必要だったですからね。2万人削減とか日本社長だと無理すぎたって、言いますけども、それを言ったら竹中平蔵先生なんて、もっと功績ありますよ。はい。桁が二つ違いますよ。たかだか2万人くらい出来ますよ。日本人バカにしたらいけませんね!
山路:いやいやどっちがバカにしてんだか(笑)。そういう相当世界的な経営者が逮捕された。
小飼:いやまぁ実際に世界的な経営者で、まず始めはミシュランだったのかな。ブラジルというかなり難しい国でちゃんと上手くやってたところを、当時のルノーの会社のシュバイツァーさんに目をつけられてルノーに引っ張ってきて、この人自著も出してますけども、そのタイトルがたとえば、確か『Citoyen du monde』みたいな、要するに世界市民みたいなタイトルだったんですよね。
山路:へえ、また意識の高い感じの。
小飼:自著に関わったスタッフに金出してないみたいな話も出てきて、えー? みたいな感じなんですけども。まあ仮に報道されてることが本当だったとしたら、え? こんなちっちゃな人だったの? っていう。
山路:その要は、背任とかそういうんじゃなくて、言ってみたら貰った報酬を過少申告してたっていうことで捕まってる。
小飼:というのか、いちおう直接自分ではないんですけども、資産運用会社を作っておいて、そこに日産からお金を出させてて、実際は自分が専有してたというふうに主張してますけどね。
でもあまりによくあることなので、監査で真っ先に調べることですよね。監査法人なにしてたの? と。
山路:報酬とかの過少申告って、すぐわかりそうなことですよね。ちゃんと監査法人が仕事をしていたならば。
小飼:うん監査法人が仕事をしていたならばと言ったら、じゃあ監査法人どこや? というやっぱり声もやっぱりすぐに出たんですけども、そうしたら「新日本」と。
山路:ああ。
小飼:なるほどなあと(笑)。
「検察の仕事やってるアピール感」(コメント)
「東芝も同じ監査法人と聞いた」(コメント)
今回の事件で気になったのが、逮捕されたらすぐにこの日産がもうバーンとプレスリリースというか、ちゃんとすぐに出して、数ヶ月にわたる内部調査で調べてきて、そういう検察なんかとも連絡をとって、こういうふうなことになったということをすぐに会社が出したじゃないですか。内部調査による通報だったのがビックリ。
小飼:ということはこう言うのもなんですけど、逮捕されにわざわざ来日してたっていうことは、ゴーンさん本人は知らなかったわけですよね、その内部監査というのは。そうでもなければバックレるでしょう。そういう動きがあるというのを……。
山路:感づいてたら。
小飼:本人が察知してたら。
山路:そういう報道によっては、これは西川(さいかわ)さんでしたっけ? 西川社長でしたっけ? による、ある意味クーデター的な動きなんじゃないかみたいな見立てをする人もいる。
小飼:いっぱい出てきてますけれども、この場合、たとえば東芝の経営陣の背任とかというよりも、罪状は小さめですよね。だから背任という言葉が出てこなくて。
小飼:金商法違反。
山路:背任というのは、すごく証拠を見つけるのが難しいという。だから取り敢えずは、より小さな罪で。
小飼:いや別件逮捕っていうのとも違うような気がするんですよね。
山路:じゃあ意外にもしかしたら小さな、本当にしょぼい事件だったのかもしれないみたいな?
小飼:いや、でかいんですよ。でかいんです。それはなぜかと言ったら、「顔」だから。東芝にしろ、オリンパスにしろ、捕まった人たちの顔というのは思い出せますか? 僕もう名前も思い出せませんよ。当時の立場は思い出せても。
山路:はいはい。ゴーンって言ったら誰でも……。
小飼:そう、だから単なる、こう言うのもなんですけども、単に日産やルノーの偉い人じゃないんですよ。
両社の顔だったわけですよね。今、三菱もそうか。顔だったんですよね。だからじつは、何といえばいいのかな、一番明らかなその視点をプロの皆さんが欠いているように思えますね。むしろ普通の人が、ゴーンって言ったらビーンっていうふうに言ったほうが的を得てると思うな。
山路:あのビーンというイギリスのコメディ映画の主人公にちょっと似てるっていうことですか、それは(笑)。
小飼:単なる経営者ではなくて、看板だったんですよね。
敢えて捕まえるっていうのか、立場上、微罪でも駄目ですよね。たとえばセブン‐イレブンで、万引きしちゃったとかでも駄目ですよね。
山路:ただ思ったのが、皆が偉いさんというのかな、金持ちというのかって、こういうちょっとした旨味みたいなことっていうのを、どうせ奴らうまい汁吸ってるんでしょっていうことは、みな薄々思ってることではあったりするじゃないですか。世の、そういう経営者だったりとか、あるいは、え? それくらいのことで捕まるの? ってもしかしたら思ってる人もいるかもしれない。
小飼:ただ今回は、ゴーンさんだけではないでしょう。
山路:取締役のケリーさんでしたっけ? も、一緒に捕まっている。
小飼:内部告発の結果、証拠を固められたっていうふうに言ってるわけで、要するに1人では出来ないわけですよね。
山路:あとその証拠固めということころで言うと、「司法取引」っていうキーワードも記事を見てると出てきて。
小飼:要は内部告発した人も、もし司法取引がなければ、有罪になるようなことをしていた人であるということですよね。司法取引が必要だということは。
山路:これはじゃあ日産が、言ってみたら報酬のところの監査をしそこなったということじゃなくて、そもそも経理かなんかのレベルで、何か不正があったと。
小飼:そう、だから不正に携わっていた人が内部告発したということになりますね。司法取引ということは。
山路:これ、ただそのこういうふうなことできちんと立件して捕まえるっていうことっていうのは、別の見方をすると会社のコンプライアンスがきちんとしてるという見方もできるんですかね?
小飼:いやきちんとしてると見るべきかな。というのも、まあスーパービジネスマンであるけれども、雇われ経営者なわけですよね、ゴーンさんは。にもかかわらず、20年ルノーと日産のトップにいたわけですよね。これってなんか長すぎませんか?
今回言われてみて気がついたけど、ちょっとまだゴーンさんなの? ゴーンさんだったの? という、感慨がありますよね。
山路:じゃあこのゴーンはクビになるのか? 取り敢えず日産のほうは、そういう解任というのを取締役会に出しているみたいですけどもね。
小飼:まあ実際に役員ですから、正式に馘首(かくしゅ)するためには株主総会が必要ですよね。取締役会からはパージ出来ても。
山路:有罪が決定したら、いちおう自動的には解任されますよね。
小飼:そういう約款は置けるし、大抵そういう約款は置いてるんだけれども、でもじつはそういったものがないと、お縄になっても経営者のままというのはあり得ますよ。でも日本の場合はもう、容疑者って呼ばれるようになった時点で止められちゃいますよね。
日産の今後と「意外と地場産業的」な自動車会社
山路:今後、先行きが不透明になって日産の株が下がりそうかなって個人的には思ったりしたんですが、弾さん的にはどうですか?
小飼:ルノーと日産の提携がバラバラになるという意見もあれば、ルノーに日産が今度こそきちっと買収されると。
山路:え? 日産が買収される?
小飼:される。だから今ルノーは日産の筆頭株主ではあるんですけども、支配的株主ではないんですよ。
山路:50%を越えてないという。
小飼:50%を越えてない。その一方で日産もルノーの株を15%くらい持ってるんですよ。じつは持ち合い状態なので、あくまでも強い提携なんですよね。
山路:でもゴーンさんが、そういうふうに逮捕になったら、なんでルノーが買収するんですか? 日産を。
小飼:それはルノーだけでは世界市場でやっていけないから、だからじつはルノーが日産を買収したというのも、このままではフォルクスワーゲンとかにもう太刀打ちいかないと。だから全世界で戦えるようにするためには、ルノーがマーケットを持っていないところのマーケットを持っている会社が絶対に必要になるだろうと。それで白羽の矢を立ったのが日産だったわけですよ。
山路:じゃあつまりゴーンさんがいなくなると、ルノーとしてはやっていけない。
小飼:そう、GMとかトヨタとかっていうのはもう、自前で全世界やってましたからね。でもGMもドイツに関してはオペルという会社でやってたんですけども、でもじつはそのレベルでも提携解消しちゃうことが珍しくないというのが自動車業界でもあるんですね。たとえばマツダはかなり長いことフォードの傘下だったんですけども、リーマンショックでアメリカの自動車業界がヤバくなった頃に手放しちゃいましたからね。
ルノーが日産にお金をボーンと注ぎ込んだ頃というのは、自動車会社というのも大規模化が進むんじゃないかという意見が圧倒的だったんですよ。だからトヨタとGMくらいは自前で全世界でやっていくだろうけども、あとはいろんなところを買収して大きくなっていくだろうと。そうでもしなければやっていけないだろうと。ホンダとかBMWとか小さすぎて、もう駄目なんじゃないかって言われてた時代だったんですけども、今はそういう声っていうのは随分小さくなっちゃいましたね。
山路:意外にそれぞれの国に複数の自動車会社があって。
小飼:そうそう。けっこう地場産業的な要素も強いんじゃない? という意見がまた出てきて。
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