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 「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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 今回は、2025年12月09日(火)配信のテキストをお届けします。

 次回は、2025年12月23日(火)20:00の配信です。

 お楽しみに!

2025/12/09配信のハイライト

  • 「Netflixのワーナー買収とスポーツ」と「土地のコンマ1パーぐらいはゴルフ場」
  • 「ランサムウェアとOS、ブラウザの穴」
  • 「ここでGoogleの独り勝ちはヤバい」と「大家よりも偉い店子TSMC」
  • 「軽自動車の規格が世界に?」と「トルコはダークホース」
  • 「対等な敵と戦ったことがないアメリカ」と「日本のインテリジェンス」
  • ダークマターは比較的新しい概念

「Netflixのワーナー買収とスポーツ」と「土地のコンマ1パーぐらいはゴルフ場」

山路:前回、30分以上遅れて始まって、

小飼:すみません、こちらの、

山路:あとでナオヤさんが原因を調べたところ、部屋自体の電気系統がダメになってたそうで、

小飼:ローカルな問題だった。たいていニコニコが悪いはずなんだけど、そうではなかったと。

山路:機材ではなく、この部屋自体の電気系統がいかれていたという、たしかに不運でしたなということで、ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。

小飼:あらためて。

山路:じゃあ早速行こうかと思うんですが、ちょっと前に入ってきたニュースでNetflixがワーナーのストリーミング配信部門とかそういうのを買収したよと、最終契約も結んだよということを発表してまして。

小飼:契約段階だと、まだその後にお上の、政府のapprovalがあって、そこで蹴られちゃうことがあるので、独禁法とかね。

山路:で、とりあえずこれ、どういううふうな、その買収が成立した場合でいうと、これってでかい話なんですかね、やっぱり?

小飼:でも、配信のマジョリティーを占めるかというと、これでもまだ占めてないでしょ。金額は大きいんだけど、配信に占める割合っていう点では、ディズニーの配信買ったとかっていうほうがでかいというのは、そもそもパラマウントって配信チャンネル、配信インフラを持ってた?

山路:パラマウントというかワーナーですよね、

小飼:ごめんごめん、パラマウントはあれだ、

山路:競合相手、ワーナーはHBO Maxですね。

小飼:ああ、そうかそうか、

山路:日本だとHBO MaxのコンテンツはU-NEXTがけっこう配信してたりする、

小飼:やってますね。

山路:それなんかもけっこう、全部こう『スーパーマン』とか『バットマン』とかのDCブランドとか『ゲーム・オブ・スローンズ』でしたっけ、そのへんが、

小飼:HBOはかなり伝統があります、世間がインターネットって言ってる前から自前コンテンツをやってます、

山路:ケーブルテレビ時代からっていうことですね、

小飼:その通りです、すごい伝統はあります。

山路:じゃあ本当に、それこそそれこそまだケーブルテレビユーザーをこれでごっそりみたいなことにもなったりする? かなり移行は進んでる?

小飼:とはいっても、例えばナショジオとかディズニーが持ってったし(笑)、結構あれなんだよね、他がかっさらってるのもあるんだよね、Amazonプライムとか。だけども、そうか、ワーナーか、HBOは、それは、日本から見るとちょっとわかんないけど、

山路:HBO Max自体は、直接のサービスをやってないですもんね、日本では。

小飼:HBOはでかい。その意味では。伝統的にたんに配信用プラットフォーム、HBO時代はケーブルだったわけですけれども、その上に載せるコンテンツも自分たちで作ってたっていうのではすごい伝統がある、Netflixも伝統があります。

山路:このタイミングででかい、11兆円、それなりの金額じゃないですか、

小飼:驚かなくなっちゃったねえ〜、

山路:まあね(笑)、一昔ではビビる金額ではあるじゃないですか、

小飼:でもさ、ワーナーといえば、

山路:AOL(笑)、

小飼:AOLの傘下に入ってたこともあって。AOLタイム・ワーナーがそれで出した損失額もそれぐらいだったね(笑)、

山路:はっはっは、

小飼:当時は大騒ぎになったんだけどね。

山路:あの急落ぶりは笑いましたね。

小飼:うん。

山路:笑っちゃいけないんだろうけど。AOLとかどこいったんだみたいな話ですけどね、

小飼:You’ve Got Mailっていうやつだけ覚えてる(笑)、

山路:ダイヤルアップ接続、

小飼:その通りです、

山路:中止したそうですけどね、もう。

小飼:その通りです、かつては使ってましたよ。本当にどこにも、ダイヤル口があったので。

山路:このNetflixの買収のやつ、競合相手、さっきちょっと出たパラマウントなんかが物言いをつけて、

小飼:うちはもっと、16億っていうのが出てはいたけど、

山路:さらにさらに、ラリー・エリソンっているじゃないですか、Oracleの、弾さんの嫌いな、

小飼:あはははは、

山路:その息子が今、パラマウントなんでしたっけ?

小飼:そうなのか。

山路:とにかくそこのところが競合として出てきて、

小飼:(コメントを見ながら)YouTubeこそ談合に入らないでしょ、だってGoogleだもん、GoogleというのかAlphabetだもん。ただやっぱり少し気になるのがあって、僕はYouTubeのサブスクリプションというのか、なんだったっけ?

山路:YouTubeプレミアム?

小飼:の会員で、そのおかげで広告なしで見放題なんですけども、最近けっこう昔の映画を流すようになったんだったんだよね。

山路:YouTubeで?

小飼:YouTubeで、

山路:プレミアム入ってるのに全然気づいてなかった、

小飼:サジェストのほうに入ってくるんだよ。けっこう昔のドキュメンタリーとか、それで見ちゃたりするだけども。これってコンテンツに手を出してるってこと、という。

山路:このパラマウントなんかがまたラリー・エリソンの絡みで、トランプの影響が強いという、エリソン一族。で、トランプがこの買収を認めないかもしれないっていうのが今はニュースの話題になってる。

小飼:トランプはあまり関係ない、

山路:え、そうなの?

小飼:だから、それで物言いを出すのはFCCとかだから。そういう買収とかがエグゼクティブオーダーで止められるということはまずない。

山路:ほー。

小飼:そりゃそうだよ。

山路:だけど、何らかの圧力をかけるっていうのがトランプのやり方じゃないですか。

小飼:そりゃ可能。

山路:少なくとも表に出てくるものはFCCが認可をしなかったみたいな形になるってこと。

小飼:そういうこと。

山路:これって認可を下りないってことってあると思います?

小飼:わかんない。

山路:けっこうそれはもう本当に胸先三寸というか。

小飼:いや、比率で見ると、要するにコンテンツをどれだけ支配してるかっていう比率で見ると、日本円で11兆円のディールというのもそんな大きくない。だから、独禁法では止められないよね。道義的に止める理由っていうのもあるの? ただ昔であれば、無料で流れていたコンテンツが、要はディストリビューター、配信者に買われちゃって有料化される、有料化されたおかげで要は入口がなくなっちゃって廃れちゃったっていうことはいろんなところで起きてて。日本で最近それでホットなのは、要はワールドベースボールクラシック、WBCを見るためにはNetflixに入らないとダメだよっていうやつですね。前は地上波で流していたっていうね。

山路:野球ファンからはかなりブーイングが出てるっていう話ですけど。

小飼:そういう状態が続くと、そこに入るきっかけっていうのがなくなって衰退するんじゃないかと。実際にゴルフとかはそれでずいぶん衰退したの。僕ゴルフ大っ嫌いなのでザマミロなんですけど。

山路:いろいろ嫌いなスポーツあるな(笑)。

小飼:ザマミロなんですけれど。野球はそこまで嫌いではない。わりと統計フェチっていうところもあるんだけど。

山路:しかし、それで言うんだったら、サッカーって地上波放送、なんかほとんどなくなりましたけど、人気じゃないですか。

小飼:でもワールドサッカー、フットボールは流すの。

山路:なるほどね。

小飼:FIFAも流せって言ってますし。それで私有化する圧力っていうのは全部FIFAが弾いてるわけ。

山路:WBC主催してるのはメジャーリーグのほうですよね。

小飼:そうですね。

山路:メジャーリーグの方ほうはあんまり、もうそういう入り口戦略のことは考えてねえってことなのかな?

小飼:儲かればいい派が多いといえば多いですよね。USAなものというのは。

山路:スーツ着た商売人がやってるみたいな感じが、

小飼:別にアメリカンフットボールというのを世界中に普及させよう、ということもあんましてないですよね。

山路:アメフト。

小飼:そうだね、日本語のアメフトほうが楽だね。そう、だからフットボールって言った場合、米語だとアメリカンのほうを指すけれども、それ以外ではもうサッカーのことを指すので、フットボールなので。足球なので。
 ビジネスの世界ではゴルフって重要らしいんですけど、

山路:全然プレイしたことはないですか?

小飼:ごめんなさい、僕はわかんないです、それは。その辺は堀江さんとかのほうがよく知ってそうなので。よく知ってそうな人に聞いてほしいなと思います。

山路:全然ゴルフはしないんでしたっけ?

小飼:親父がゴルフ場の支配人だったんです。これはするわけないでしょ。近づくわけない。まだね、野球のほうは単にテレビのチャンネルを取られちゃうっていう、その程度のことなんだけれども。

山路:もう坊主憎けりゃ袈裟まで憎いみたいな感じで(笑)、

小飼:いや本当に。それはダメだわ。ダメだわ、もう無理。無理だしで、実際にひどいじゃん。要は土地の使い方っていうのを見たとき、日本の土地のコンマ1パーセントぐらいはゴルフ場なんですよ。

山路:え、そんなに?

小飼:そんなに、でしょ。コンマイチって聞いただけだと、あれ、そんだけっていう、

山路:だけど日本は全国の平地なんてわずかなものじゃないですか、

小飼:そうです、日本は7割が森なんですよ。だから、そういう森を無理やりひっぺ返してクマとかを追い出して作ったのが日本のゴルフ場なんです。来る人が減ったっていうんで、結構な部分っていうのをソーラーパネルでも敷いとくか、になってるわけですけども。それでほんのちょいのソーラーパネルが景観に触れたり、ちゃんと土地を造成しなくて台風の時に土砂崩れで一緒に流れたりっていうとそっちのほうが大きくなるけど、じゃあ実際に日本にはゴルフ場とソーラーパネル、どっちが多いですかって言ったら、ゴルフ場のほうが20倍くらいあんだっけ(笑)、

山路:なるほどな、そう聞くとちょっとゴルフやる気なくなってくるな。いや、私はやってないんですけどね。

小飼:あとテニスとかもある。だから、やっぱりゲームがあるスポーツというのはエンターテイメントだし、エンターテイメントというのは独り勝ちを嫌うのよ。独り勝ちを防ぐようなルールをなるべく入れるようにするの。なんだけれども、例えば、放映権という形でドジャースとかジャイアンツとかではなくてNetflixとかESPNが独占しちゃうっていう。だから、そっちのほうの独占というのはあまり気にされなかったの。独占されちゃうとやっぱりそこが廃れる元になる。ゴルフの場合とか、PGAとかどこかに独占されちゃったのかな。

山路:これってそれこそ誰かが、例えばメジャーリーグがWBCをNetflix独占にしたみたいなことに関して文句言って訴えるってことも、十分にあり得ることではある?

小飼:だからあれじゃん、一番報酬をもらってるというのか、もらってた小谷さんが文句言ってたじゃないですか、

山路:大谷さんね(笑)、

小飼:ちゃんと無料でも見られるようにしてくださいと。

山路:Netflixの買収の話に戻すと、FCCの認可とかがやっぱりいるわけじゃないですか。

小飼:そこ、どうなんだろうね。

山路:認可当局はFCCとは限らないってこと?

小飼:配信する権利っていうのはFCCはちゃんと口出せるんだけど、

山路:M&Aとかに関してはまた違う?

小飼:コンテンツの場合は、そのルールが適用されるのか。例えばジブリ作品というのはジブリがどう配信するかしないかっていうのは、最終的な権利は持ってるわけじゃないですか。だから他がどうするって言っても、ジブリが首を縦に振らなければそうはならないわけじゃない、だから日本がおま国になってるわけですよね。

山路:これ、独禁法を判断する当局、この場合だとどこなんだ?

小飼:FCC、ちょっとわかんないな、

山路:ほう。で、しかも仮にその当局が差し止めたとしても、それに関して企業は訴えを起こすこともできるわけですよね。

小飼:もちろん。

山路:妥当性がないっていうんだったら。

小飼:そう、アメリカはもちろんアメリカなので、英米法なので法というのは判例の積み重ねなわけですよ。だから書かれた法があるからつって、それを読んでいけば、論理的にこうなりますというバルカン星人的には動かないわけです、実際に法廷で戦ってみないことにはわからないわけです。

山路:勝ったものがルールになるという、

小飼:そう、勝つことを積み重ねることによってルールになるっていうので。実は日本はそうではなくて、法にきちっと書いてあって、これに照らし合わせればもうこうなるだろう、だからそうならない場合っていうのはもうそれはillogical(非論理的)になるわけですよね。なんだけれども日本でも実際のところはその法をどう解釈するのかっていうのはやっぱり判例があるのとないのでは全然違うので。それは置いておいても、特に民事を法廷で裁いてもらうっていう場合っていうのは、刑事よりもはるかに判例が強いので。

山路:なるほどね。Netflixの買収、本当この先どうなるかまだまだ全然わからない。

小飼:でも、AOLタイム・ワーナーの時ほど、ときめかないという言い方も(笑)、

山路:AOLの時っていうのは、当時からしてみたら、

小飼:デカかったよ、

山路:でもこれ11兆円とかでは、同じぐらいなのか、その時の金額。

小飼:でも今はネット業界そのものがずっと大きいので(笑)、たった11兆円みたいな。

山路:時価総額5兆ドル企業とかあるぐらいですからね。

小飼:そうそうそう。

「ランサムウェアとOS、ブラウザの穴」

山路:じゃあIT絡みで、アサヒグループのランサムウェアの事件。

小飼:そっちのアサヒね。

山路:どっちだと思いました?朝日新聞のほうの?

小飼:いや、ASAHIネット(笑)、それは渋すぎるな。

山路:それは渋すぎるな。大体どういうふうに侵入されたかみたいなことも技術的なところがわかってきたそうなんですけど、

小飼:ファックスのおかげで助かったっていうので、どうなんでしょうね。

山路:どうなんでしょう。これ、いろいろけっこう詳しい情報なんかが日経のクロステックとかなんかにも載ってたりしますけど、

小飼:いや日経、信用できんからな、

山路:(笑)これ、どうです、アサヒのほうの対応っていうのは、そんなにザルだったってわけでもないようにも見えるんだけど。

小飼:そうですね。

山路:ここまでのレベルでできてる企業のほうが少ないんじゃないですかっていう気はしたんだけど。

小飼:まぁでもね、これはお前ら、いい加減Windowsから卒業しろよっていう(笑)、そういう結論になっちゃうよね。

山路:これ、全員使ってるのがMacだったら起こんなかったんですかね?

小飼:そうなったらそうなったで、MacのUIの、結局のところ、この手の事件というのは端末がやられるわけですよね。端末から入力されたものというのをクラウドでも、バックエンドでもなんでもいいんですけれども、要はヒューマンインターフェースが直付けされてないコンピューターというのは、そういうふうに解釈するので。そう、こっちなんですよ、セキュリティリスクというのは。偉い人のがこれにやられちゃうと、そこからやられちゃうわけですね。

山路:ただOSの違いというよりは、その人の用心深さみたいなところにも関わっていくんじゃないですか。特に最近ソーシャルハック的なもんだったりとか。

 

 「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
 無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします。なお、有料のYouTubeのメンバーシップでは、無料部分だけでなく、限定部分の配信もご覧いただけます(YouTubeメンバーシップでは、テキスト配信はございませんのでご注意ください)。

 今回は、2025年11月25日(火)配信のテキストをお届けします。

 次回は、2025年11月25日(火)20:00の配信です。

 お楽しみに!

2025/11/25配信のハイライト

  • 「Cloudflare障害の背景」と「SNSの未成年制限」
  • 「AndroidでAirDrop」と「上位10パーセントが支える消費」
  • 共和党の敗北と「都市のゾーニング」
  • 視聴者質問「台湾が正式な独立国となるには」と「中華民国の歴史」
  • 台湾問題の今後
  • 「台湾有事のアメリカの出方」と「トリウム溶融塩炉の将来性」

「Cloudflare障害の背景」と「SNSの未成年制限」

小飼:はい、唐突に始まりました。

山路:大変申し訳ございません、30分以上も、機材トラブルのために遅れてしまって申し訳ございません。

スタッフ:音声とかどうですかね?

山路:音声、聞こえてますかね?

小飼:画質がちょっと荒れて、

山路:画質が荒い、音も来たって、音も行ってるみたいですね 。

小飼:音も来てるみたいですね。

スタッフ:大丈夫ですか、いつもより小さくないですか、

山路:大丈夫ですかね、とりあえず。じゃあ行きましょうか。じゃあさっそく最初の話題、

小飼:すいません、我々もモニターなくて、じつは中継じかに見て、実際に言ってるかどうかというのを確認してる次第で。

山路:すごい壊れ方(笑)、

小飼:けっこう満身創痍なんですけれども。スタンバってるということで、あれ、切り替わったぞ、また。

山路:これ、たぶん自動切り替えなんですよ。スイッチングが自動でやるんですよね。

小飼:そうなんだ。

山路:障害つながりってわけでもないんですけども、最近あったでかい障害といえば、Cloudflare。このCloudflareで、それこそXが止まったりとか、ニコ生は影響受けなかったんだっけ、

小飼:幸か不幸か使ってなかったのかもしれない。

山路:これってたまに起こるじゃないですか、こういう規模の大規模なやつ。今回の障害の本質っていうのは結局何だったんですか?

小飼:Cloudflareの場合は、要はCloudflareっていうのはいろんな状況というのをプログラムで処理した上で流してるんですよね、単純なキャッシュではなくて、スマートキャッシュというのか。そこのプログラムにバグというのか、見落としがあったというのが。

山路:へええ、そんないろんなサービスにまでいっぺんに影響しちゃうようなバグ、

小飼:いったんプログラムを書いたら、それを各エッジサーバに配るわけです。

山路:しかしこれってプログラマーとしてはけっこうゾッとしません? こんなエラーって。しかもCloudflareがやってるようなシステムのエラーって、大量の接続があるとかっていう状況でないと起こらないエラーみたいなことがあるわけじゃないですか、

小飼:全くもってその通り、

山路:だからそれこそ弾さんがよく言うように、はっきり言ってどういうふうな状況になるかによって、

小飼:だから少なくともCloudflareはたぶんケイオスモンキーみたいなやり方はしてないわけですよね。

山路:Netflixなんかが時々動いてるシステムちょっと壊してみて、

小飼:わざと壊して、ちゃんとフォールバックとか見るというところまではやってないのかなと。

山路:そうかそうか、本当にNetflix、ケイオスモンキー、頭おかしいんじゃねえかと話聞いてて思いましたけど、

小飼:じつは実に正しい、あれは。

山路:めちゃめちゃ役立ってるってことなんですね。

小飼:現代としては実に正しいんだけども、これがたとえば物理に来ると、そうだ、消防団のテストをするために本物の建物を消火するような、

山路:コストかかりすぎやろみたいな(笑)。それはやっぱNetflixがめちゃめちゃ稼いでるからできる、でもCloudflareのそうとう稼いでますよね。

小飼:もあるし、Cloudflare、そうね、でもどっちが利が厚いかって言ったら、たぶんNetflixのほうでしょうね。コンテンツそのものをやっぱりけっこう握っているっていうのはでかいと思います。

山路:しかし改めてインターネットってよく動いてんなと思いますね(笑)、そんなことないですか?

小飼:まぁ止まりそうになると、こうすれば動くよっていうやつが出てきて、でも昔インターネットの理念としては、ホストとホストがあるだけでホストが送りつけたものというのは何も加工しないで、もう一方のホストに送れっていうふうにしてるんですけど、そういうモデルというのがすぐに動かなくなるというのはもうわかってて。そこを最初に解決したのが、商業的に解決したのがAkamaiなわけです。

山路:ちなみに最近こういうCDNなんかの文脈の話で、

小飼:完璧なシステムでないからうまくいってるという設計、というのともちょっと違うんですよね。だからインターネットというのはこういうものだという理想があるんだけども、理想通りにやるとみんなが不満足なものになるので、お金を出せばそういうところを解決しますよっていうところがいっぱい出てきて、最初はAkamaiが出てきて。でFastlyとかCloudflareとか、もう少しスマートなキャッシュサービスが出てきて。

山路:Netflixはある意味自前でCDNやってるみたいな感じでもあるんですよね、

小飼:そうですね。

山路:これ、ちょっと関係ないんですけどAkamai、一時期話題になってたのがなんでCloudflareが、

小飼:今もやってるはずですけどね。

山路:そういうCDN業界でこんなに熾烈な争いがあるというのもびっくりだというか、

小飼:少しだけコンテンツというのか、ウェブページをエッジのほうでいじってしまったら、もっとうまくいくんじゃないかっていう状況が出てきて。だから単純なキャッシュじゃないんですよね、Cloudflareとかがやってるのは。それでいうとこの間の角川が原告になった判決、Cloudflareの、

山路:ああ、マンガ村とかの絡みのやつ。

小飼:そうそうそう。

山路:Cloudflareがそれを止めなかったみたいなところで、訴えられたわけですよね、

小飼:そうそう、本来であれば本当にただの純粋なキャッシング業者であれば、それも良かったんですけど、それであればお前のキャッシュの裏のほうに下手人がいるから、それ差し出せって言った時に、差し出さなかった。だから共犯ということで。

山路:なるほどね。それにしても、さっきの「完璧でないから動く」みたいな話の続きっていうわけでもないんですけど、困った時にいろんな人が工夫する余地があるからなんとかなってるってことだったりするんですかね? インターネットっていうのはある意味。

小飼:インターネットっていうのは村井先生が1995年に、95だったっけ、6だったっけ、岩波新書で出した頃の姿とはぜんぜん違います。ただ単にネットワーク同士がつながってるっていうところだけが共通点。いちおうすごいローレベルではTCP/IPっていうプロトコルを使ってるんですけれども、たとえばHTTPというのも最初はTCPで動かしてた、だからTCP/IPっていうのはインターネットのコンピューター同士を通信するときにどうしたらいいのかっていうプロトコルですけれども、最新のやつというのはTCPじゃなくてUDPというのを使ってるんですよね。どういう違いがあるかっていうと、TCPというのはパケットはバラバラに送られてくるんですけども、本当に専用線でつながってるように見えるんですよね、つながってるときに。だからバーチャルサーキットといいます、仮想回路といいます。仮想回路ができてて、仮想回路の間をやりとりしてるというのがHTTPやHTTPSの基本だったんですけども、それじゃやってられないということで、たとえばGoogleがQUICというのを出して、それがHTTP2の基本になってます。

山路:結局それっていうのはサーバなんかのネットワーク機器の処理が上がってきたから、言ってみたらパケットなんかをすげえ高速に処理できるようになったから、そういうことも可能になったということ?

小飼:まずそういうことが可能になったというのがひとつと、あともう一つ重要なのは端末側がモバイルになったということなんです。モバイルになったということはどういうことかっていうと、通信環境が変わる、だからもともとのTCP/IPの前提っていうのはIPアドレスの双方とも変わらないっていうのが、いったん繋がったら、それはずっと固定だというのがあったんですけれども。それをノートパソコンとかで繋ぐつど変わるというのはあったけども、一度繋がった時に繋ぎっぱなしで変わるという。たとえばWi-Fiからセルラーで、同じセルラーでも、たとえばセルラー会社AからBというのはまだそんな想定してなかったんですよね。今、そういうのがむしろ当たり前じゃないですか。

山路:iPhoneの最初の頃って、携帯電話網からWi-Fiの切り替えとか、その時によく切れてたような気がする、その頃はまだモバイルに対応したインターネットにはなってなかったという、

小飼:今でも基本の部分っていうのはなってないというのか、HTTP2とかであれば、それができるんだけどという、そんな感じですね。

山路:インターネット生きてるわって感じしますね、つくづく。

小飼:インターネットも、もう一つ想定してなかったのがおま国。そう、インターネットにつながっていればどこも一緒だよっていうのが最初の理念だったんですけれども、本当に金盾の内側なのかとか。国内のかっていう。

山路:金盾みたいなものとかっていうのは、新しい技術を持って、既存のインターネット関係のプロトコルを使って実現はしてるわけですよね、金盾みたいなものも。

小飼:もちろん。

山路:だけど、中か内かどうかということでどうにかするみたいなことでまた、

小飼:理念としてはオープンがデフォなんですよ。ファイアウォールというのは後付けなんです。

山路:それにしてもまぁ本当に危ういものの上に私らは乗っとるなという気が(笑)。

小飼:もともとそうだったといえば、そうだったわけですよね。

山路:なんかいい加減だからどうにかなっているのかなという気もするし、ガチッとしたプロトコルが決めてあったとしたら、

小飼:それはもうその通り、

山路:本当にやったら、何か誰かがシクったら、もう本当に復旧不能みたいなことになってたかもしれないわけですもんね。

小飼:ただ、それはどんなものでもガシッとしてたらダメだっていうものではなくて、そんなのいくら緩くてもいいというものもあれば、ガシッとしてなければダメだっていうものもあって。

山路:橋とかは、土木とかはそうですけどね(笑)、

小飼:それのたぶんガシッとしてなければダメの代表っていうのはもう、単位ですよね。

山路:そっちに行きますか。

小飼:時間の長さであり、長さの単位であり、こういうものはガシッとしなければダメで。もっとガシッとしようというので、今の時間の単位というのはセシウムの出す電波の周波数を元にしてて、マイクロ波単位なんですよね。100億分の1秒単位ではないんです。それよりもゆるんですね。91億の1ぐらいなんですよね。でも、一挙に150兆にしようという(笑)、

山路:光格子時計?

小飼:光格子時計。をもう秒の単位しようというのがもう始まってるらしくて。

山路:ファイルシステムもナノ秒単位はなくなってくるのかもしれないですね、そのうち。

小飼:ナノ秒でも遅すぎるでしょうね。

山路:いやいや、恐ろしい。

小飼:というのか、

「重力場によって変わってくるということ?」(コメント)

小飼:ましてや宇宙インターネットとかっていうふうに言ったら、軌道上の時間と地上の時間っていうのは明らかに違うわけですよね、もうGPSはちゃんとキャリブレーションしてあります。軌道上のほうが少しだけ遅くなる。

山路:宇宙インターネット、テーマにしたSFもうすでに書いてる人はいそうな気にしますね。

小飼:ただ今度こそ冷却問題を扱ってほしい。冷却問題というのは『2001年 宇宙の旅』でも、この番組でも何度か話している通り、シカトされたんですよね。翼に見えちゃう、

山路:ディスカバリー号の放熱版ということですよね。

小飼:そうそうそう、

山路:しかしそれでちょっと最近気になったのがNVIDIA、あるじゃないですか、宇宙データセンターみたいな、弾さんが冷却どうなんよと言ってる。あれ、11月にもう衛星打ち上げるらしいですよね、AI、実験レベルですけど、AI搭載衛星を。

小飼:いや、だからそんなの持ち上げるの、簡単で。チップ1個乗っけといたやつをポンと打ち上げれば。で、アルファ線でおしまいとかっていうのはオチかもしれないけど。

山路:もう一つ、Googleがまたこの宇宙データセンターに関するサンキャッチャー計画みたいなことを、太陽電池搭載型の、なんかそういう宇宙データセンター、

小飼:全部冷却のことごまかしてる、

山路:いちおうこのサンキャッチャー計画に関しては、冷却に関しては重大な課題とは認識してると書いてる(笑)、

小飼:だからごまかしてるじゃん、

山路:しかしこれって素人目からすると、こんなビッグテックの頭の良さそうな人がそんなこと気づかないの? みたいなことあるんですけど、そんなことってあり得るんでしょうか? そんな大きな見落としが、このわざわざ衛星ロケットで打ち上げようという人たちが、そんな単純なところを見落としているってこと、

小飼:けっこうある、そういうものって、

山路:そうか(笑)、

小飼:そういうものは全部見落とさないんだったら、Google、今ごろ世界のSNSというのはもうGoogle+になっている、

山路:あはははは、そこでGoogleのディスるところに出てくるのがGoogle+ってのがいいですよね(笑)。じゃ、ちょっとSNSの話が出たからってわけではないんですけど、最近のXの新機能、話題になってるそうじゃないですかと。Xの新機能で、ユーザーがどの場所から主に利用してるのかっていう、ユーザーの所在地というか、正確な位置じゃないんですけど、どの国にいるとか。そんなのが明らかになって。

小飼:明らかになっているようで、ぜんぜん明らかになってない、

山路:違うことも多いみたいなことらしいんですけどね(笑)、NHKが、

小飼:工作員、バレてないのもあるから。

山路:MAGAの関係者っていうのが、ほとんどロシアからじゃねえか、みたいなこととか(笑)、これってこの影響ってどう見ます? 仮にじゃあこの所在地が正確だったとしましょう、それの場合、

小飼:いや、でもぜんぜん見てないじゃん、そういうところを見ればさ、明らかなことで、そのままデマ流すじゃん、明らかにさ、ちょっと見ればデマだってわかるのを。

山路:その所在地とかはXが見られるようにしたところで、あんまり変わんねえだろうと、

小飼:いや焼け石に水だろうと。

山路:(笑)そうですか。あとそのSNSで言うんだったら、オーストラリアがとうとうSNSの16歳未満利用の閉鎖を始めるみたいで、それに先立ってインスタとかFacebookがアカウント閉鎖なんかをユーザーに通知するようになってきているって話なんですけど。

小飼:ちゃんとあれなんだ、コンプライするんだ、SNS各社は。まぁでもそうだよな、たとえTwitterといえども、ドイツでナチスを称揚するようなコンテンツというのはバンするわけで、

山路:弾さん相変わらずペアレンタルコントロール否定派じゃないですか、このSNSの16歳未満禁止のやつが、前にも取り上げましたけど、いざ実際に施行するとなるとなんかでかい影響あると思います?

 

 「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
 無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします。なお、有料のYouTubeのメンバーシップでは、無料部分だけでなく、限定部分の配信もご覧いただけます(YouTubeメンバーシップでは、テキスト配信はございませんのでご注意ください)。

 今回は、2025年11月04日(火)配信のテキストをお届けします。

 次回は、2025年11月25日(火)20:00の配信です。

 お楽しみに!

2025/11/04配信のハイライト

  • 「ライブ翻訳レビュー」と「外国語はむしろ読み書きのほうが大事」
  • 「ビッグテックの決算」と「NVIDIAの戦略」
  • EVアンチと「酸っぱいぶどう」
  • 「ビル・ゲイツと気候変動」と視聴者質問「人工精子」
  • 「プーチンは核を使えない」と「SSRの国は?」
  • 「スペインのメキシコの歴史問題」と「銀座のママみたいな総理大臣」

「ライブ翻訳レビュー」と「外国語はむしろ読み書きのほうが大事」

山路:今日iPhoneとかiPadとかのOSのアップデートあったじゃないですか、弾さん、アップデートしました?

小飼:しました、言われて。これがでかいんですよね、

山路:そうそう、ライブ翻訳という機能がiOS26で入ったんですけれども、このiOS26.1から、それが日本語対応したという。で、このライブ翻訳、要は翻訳こんにゃくですよね。どうなるかというのを、弾さん英語ペラペラ喋るから、それで試してみるかなと。AirPods Proをこんな感じでつけてですね、じゃあちょっとiPhoneの画面を共有しましょうかね。このリファレンスモードと。じゃあ行きますか。行ってるかな、あれ、なんだろう。あれ、さっきまでうまく行っていたのに、リアルタイムデモで失敗するというIT起業家のような(笑)、

小飼:もう一度、

山路:あ、行った。私のほうは日本語で話して、

小飼:なんかAirPodsにつながってるのか、

スタッフ:じゃあ、せっかくなんで達也さん、これのライブ翻訳機能でどんなことができるのか、がっつり説明してもらっていいですか?

山路:そうですね。あ、そうか。ここのところでそのまま喋ったら、ちゃんと英語に訳してくれる画面に出るわけだよね。

小飼:あれ、なんで音声があれなんだろうな。ちょっと待ってね。

山路:もう1回AirPods Proを外してはめ直してみては?

小飼:それやったんだけどね、

山路:このライブ翻訳機能、リアルタイムで翻訳ができるんですけれども、AirPods Proと組み合わせることで、AirPodsってビームフォーミング機能っていうのがあるのかな、要は対象、頭を向けている方向の人にフォーカスして音を聞き取るみたいなことができるようになっている、

小飼:でもおかしいな、明らかにAirPodsは機能してるんだけど、再生できてないな、これ。

山路:すいません、これまだライブ翻訳の機能がベータ版だからなのかな。

小飼:わかった、こいつが奪ってる、

山路:なるほどね、

小飼:あえて閉めて。今度来たね、今度来たね。Macに取られてやがった。

山路:でも、なんか弾さんが話してることが私のAirPodsには認識されてないんですよね、音が。これ、本当は弾さんが話していることを相手方の発言として認識してちょっと出るんですけれども。ちょっともう1回、私の方っほうもやり直しますね。では、よろしくどうぞ。あ、いたいた! じゃあ私はとりあえず日本語で話しますので、弾さんなんか英語で話してください。

小飼:OK、You start(画面:わかった、やめた), I didn’t say, I said you start(画面:私はあなたにやめろとは言わなかった). You suck a listening(画面:あなたは最悪です).

山路:かなり、喧嘩になりそうな会話になってますけどね(笑)。

小飼:喧嘩になりそうな会話というよりも、これの翻訳機能がアホなんです。ちゃんと聞き取りができてない。

山路:やっぱり日常会話のところ、聞き取りっていうのが難しいところはありますね。家でCNNのニュースで試してみたんですよ。それ、かなりいい感じに訳してはくれたんですけれども、さすがに日常の非定型なこういう文章ってなかなか訳しづらいものなのかもしれないですね(笑)。

小飼:Well, my English doesn’t suck that much。オーケー、

山路:じゃあ、とりあえずこんなところで。これ以上やると、なんかボロが(笑)、ライブ翻訳ディスりまくる話になっちゃいそうな。

スタッフ:でも、達也さんの文字起こしは正確ですよね、喋った言葉をちゃんと聞きとってますよね。

山路:これ、一つこのライブ翻訳擁護するとするならば、日本語と英語ではかなり語順が違うから、たぶんリアルタイム翻訳のところのバッファがたまりすぎるみたいなことはあんのかなと思いました。そこのところでお互いに言うじゃないですか、そういうことのやつのズレが大きくなってくる、処理がたまってズレが大きくなってくるのかもしれないなと思いましたね。

小飼:えーとね、そうじゃない、そのはるか手前、

山路:はるか手前(笑)、

小飼:はるか手前に元言語をきちっと聞き取ってない、僕が英語で話してもその英語をきちっと聞き取れてない、

山路:日本語のほうの認識はわりとよくなかったですか?

小飼:だから日本語のほうが音素数が少ないので、そう、日本語は変換ミスが大変で、あと語順問題もあるんだけども。英語の場合、一番後ろの子音をかなり聞き損ねてる、今やってみた感じでは。

山路:なんか今YouTubeとかなんかの自動音声認識なんかでも、英語のほうの語はかなり認識率が高いような気がするんだけども。AppleのSiriなんかでも、英語の認識わりと良かったような気がしたんですけどね。

小飼:ニュースアンカーなんかが読み上げてるようなやつというのは、それはうまくいくことが多いです。

山路:まあそりゃそうだわな(笑)。思ったよりはうまくいかなかったけれども、これがもうちょっとブラッシュアップされたら、もうちょっとインバウンド需要の多い業種ではけっこう助かるかもしれないですよね。

小飼:Losing is not an option.

山路:(笑)山本由伸のセリフより、みたいな。

小飼:でも、あれはなんかすごいというのか、負けるわけにはいかないっていうのは、普通の人が普通に言うセリフですよね。だから英語だとWe mustn’t loseとかWe can not afford to loseとか、その程度っていうとなんだけど、

山路:普通なコメントですよね。

小飼:個人的な自分を、あるいはせいぜい自分たち、選手同士を鼓舞するセリフだったはずなのが、Losing isn’t an optionっていうのは、ぜんぜん立場が違う人のセリフなんですよ。ボスのセリフなんです。

山路:選択権のあるというか、主導権を持った人間の。

小飼:だからあの場であれば、ロバーツ監督が言うのであれば、それはありかなというセリフなんだけども、いつの間にか、山本さんのセリフということにされて(笑)、ちなみに翻訳者の人はそういうふうには言ってないらしいですね。ちゃんとインタビューの記録とかもあって、その時点ではそういうセリフが出てなかったんですけど、

山路:ある意味SNSで生まれた名言という、名訳というのか、

小飼:ソーシャルメディアの中で出てきて、Tシャツにされて(笑)、なんというビッグマウスなんだと、要するに本人が言ってないことを言ったことにされちゃうというのだけれども、何がすごかったかって言ったら、その後、また勝ったわけじゃないか。勝って、凱旋パレードして、スピーチの順番が回ってきた時に、英語で本人の口で言い直したというね(笑)。これはすごい。

山路:オフィシャルな言葉になっちゃったんだ。

小飼:だからもう本人の決め台詞になった、これで。これすごいよ。大谷さんから持ってった感じがするね。

山路:これってやっぱり台詞を日本人が言ってる面白さみたいなものもあるんですか? そういうことっていうのは。

小飼:というよりも、翻訳者を普段挟んでますよね。日本のMLBプレイヤーというのは、大抵の場合。かなり自分自身が流暢に英語を話せる場合でも、そうしてますよね。特徴としては。だから、要するにロストイントランスレーションという状態が起こりやすいわけです。

山路:なんかニュアンスが漏れちゃう、こぼれちゃうみたいな。

小飼:あるいはもう大言壮語したことになってしまうというね。で、それを本人が引き取ったっていうのが非常に面白いというのか。いや、だから翻訳者をつけるっていうのは確かに日本のプレイヤーズの特徴ですね。他の国からもけっこう来てるじゃないですか、特にラテンアメリカからはけっこう来てて、スペイン語がネイティブランゲージだっていう人もけっこういるわけじゃないですか。そうだ、ドジャースだとあれかな、ロハス選手がベネズエラ出身で。本当にスペイン語なまりの英語を話してますけど、でも特に通訳はつけてないわけじゃないですか。

山路:まぁスペイン語と英語近いっちゃ近いですからね。

小飼:まあね。

山路:なんかよく知ってる地域の言葉でもありますしね、アメリカ人とメキシコ人ってめちゃめちゃ、

小飼:でも最近は韓国の選手も来て、彼らは翻訳者使ってる?

山路:そう言われてみるとそうか、そのところでやっぱりなんか日本人の英語苦手意識が出てるのかな、

小飼:苦手意識じゃなくて実際に苦手なわけですよ、難しいわけですよ、でも翻訳者がいても、実際にプレーしてるわけじゃないですか。だから英語よりも大事なものがあるっていうのが、何重にも面白かった。僕は本当にベースボールってすごい嫌いというよりも苦手で、日本で一番人気のスポーツですよね。テレビのチャンネルの占有率もすごい高くて、日頃やってる番組がプロ野球中継に奪われるというのは、今だったら考え難いことも知れないですけど、日常だったわけです。で、当然のように嫌いになりました。

山路:私もアニメが野球中継で流れてしまうことが多くて、

小飼:なので僕の野球の知識というのは最近、最近でもないか、『サンキューピッチ』という、

山路:面白いですよね、『ハイパーインフレーション』の方が書いてる新作ですよね、

小飼:たぶんあの阿川先生ぐらいしか知識がないんだけれども(笑)。それでも今回のnot an option騒動というのは。

山路:本当にいろんな意味でグローバルな話題になりましたよね、日本と世界がつながって行き来することの面白さみたいなものもありました。

小飼:あと今の首相の英語はどうよという議論もあるんだけれども、僕は話すべきでないと。

山路:正確なニュアンスが、正確な意味が伝わらないから?

小飼:違う!

山路:どういう意味で?

小飼:ものすごいこなれた言い方をすると、日本で一番偉い人だから。

山路:ほうほうほう、

小飼:習近平は英語話せるんですよ、アメリカにいたこともあるし。本当、切り札なんですよ。普段はいくら話せても、話すべきではないんです。

山路:ほー。ある意味それは自国民に対するアピールでもあるから、っていう、

小飼:そうなんです。でも、じゃあ欧州の首相たちは英語話してるじゃないかと、あれほどフランス語に固執しなきゃいけないはずのマクロンですら、英語話してるじゃないかと言ったら、それはヨーロッパの英語、言語がいろいろありすぎて、しかたなく話してるんですね。

山路:じつはどれも、たとえばフランス語みたいなこと言ったらドイツ語圏の人からみたいなものもあるし、

小飼:EUで足並みを揃えてっていう場合には、悔しいことに英語にしてるっていうのが、

山路:なんかちょっと前まではかなり、外交の場ではフランス語が使われるってことが数十年前はよくありましたけど、それってやっぱりヨーロッパの地位低下でもあるんですかね? フランスの地位低下ってことでもあるんですかね?

小飼:なきにしもあらずかな、いちおうあれフランス語も公用語入ってますね、

山路:つまり外交の場でかなりフランス語が使われてたっていうのがあるじゃないですか、数十年前は。

小飼:どころか、英語の難しめのボキャブラリーってフランス語由来のばっかりですよ、英語由来の言葉よりも、フランス語由来の言葉のほうが多いんだから、これは日本語のボキャブラリーでも漢字のほうが多いっていうのと似たような現象ですよね。

山路:それが外交の場で使われなくなってきたら、英語のほうがやっぱり広まったからでもあるんですかなと、

小飼:そうですね、

山路:結局あまりにも英語が世界標準になっちゃったからっていう、

小飼:のがある。エクストリームな例だと、ベルギーって公用語が二つあるんですよね。オランダ語寄りのワロン語とフラマン語だ。ワロン語とフラマン語なんだけども、それだと国が割れちゃうという理由でブリュッセルの議会は英語で話してる(笑)。

山路:あとちょっと前に見たので、英語がすごい広まった理由の一つとしてアクセント記号もなかったのがでかいんじゃねえの、みたいな議論もあったりとかして(笑)。つまりコンピューター化するときに英語圏の人にとっては、いちいちアクセント記号とかない英語でやることに関する抵抗がめちゃめちゃ少なかった、だけど他のアクセント記号の多い人は、

小飼:それは違うと思うなー、

山路:そうか(笑)、

小飼:やっぱりネットの普及っていうのは大きいと思います。まだネットが、初めての人たちがダイヤルアップでつなぎ始めたぐらいの時ですね、その時は皆さんあまり英語話さなかった。英語で聞くと怒られたもん。ほんとに、たとえば、僕はバチカンで、当時出たてのデジカメをスられたんですが、バチカンというのは、正確にはバチカンから帰ってくるバスの中ですね、混んでたバスの中で見事にスられたんですけれども。それをまず最初に交番で状況を伝えようとして、I got my camera stolen! って言っちゃったら、No English! って、

山路:ええっ、交番で(笑)。

小飼:で、ガイドブックを片手に、片言のイタリア語で、

山路:それはひどいな。

小飼:盗まれましたって言ったら、これは盗難証明が欲しいからどうしたらいいかって言ったら、それを一括してやってるところがあるから、そこに行けというのをホテルのコンシェルジュの人に教わって、それで行った時にはやっと普通に英語でも届けるわけですよ。だから、住所名前、パスポートの番号、どこで盗まれたとかっていうのを、用紙も6カ国語くらいあって、その一つが英語で。当然パスポート見せるわけですけども、いくらパスポート見せても、お前はアメリカ人か、お前はアメリカ人か、

山路:英語話すから(笑)。アホやからな、本当にイタリアの人。こんなこと言うといかんか(笑)。

小飼:そういう状態だったけども、今の欧州人の人はいちおう英語話すようになりましたね。

山路:私もイタリアでそんなノーインググリッシュって言われたら困るな、。“Il conto, per favore”(会計お願いします)ぐらいしか話せないですからね。

小飼:それはすごい。あと”Scusi”(すみません)が言えれば、けっこう。

山路:でも本当、英語のことで関して言うと、やっぱりアメリカ企業がそういう電子化、最初にデジタルを広めちゃったっていうのはやっぱりとにかくデカかったって気がするんだけどな。

小飼:意外と英語化されてないものというのが街の看板で、欧州でいちばん英語流暢に話す人というのはおよそオランダ人かデンマーク人なんですけれども、その話だったらいくらでも、オランダでも看板はオランダ語なので、少し慣れないと読めないんですよね。たとえば国立美術館というのはライクスミュージアムって言うんですけれども、慣れればすぐ読めるんだけど、たとえばオランダ語だとJは「やゆよ」の発音になるんですけど、そういうのを少し知ってないと、その程度でも読めないんです。それでかなり困るのが韓国なんですよね。

山路:どうして?

小飼:ハングルを読めないと、発音もできない、文字が読めない、すぐには。慣れてくるとこれはソウルなんだとか、地下鉄とかは日本語の教示もしてくれるんですよね、その辺は日本の地下鉄とかも似てるんですけど。文字が意外と困る。

山路:合理的に作られているとは聞くから、本気になったらすぐ覚えやすいんじゃないかとは思うんだけど、なかなか手出せてないですね。

小飼:公共交通とかまではいい、駅までは何とか行けるんだけど、町に出てしまうと、もうネイティブスクリプトだけなわけですよね。いきなり牛肉面って、それって石仮面の牛肉版みたいなのかーみたいに思ったりするけど、普通に牛肉が入った麺なんですけど。一番中国でありふれた食べ物かもしれないんですけど、日本人が簡体字の「牛肉面(ニューロー麺)」を見ると、卒頭するという。

山路:なるほどね(笑)。

「日本人も数十年後には英語を使わなきゃいけなくなる?」(コメント)

小飼:むしろ読み書きのほうが大事になってくるんじゃないかなというふうに思ってます。看板に英語がないっていうのはこれはもちろん日本も同様の状況なので。だからといって、全部英語化する必要とかっていうのは僕はないと思います。それくらいやっぱり合わせてくれよというのはあります。やっぱり要所要所で英語というのか、ローマ字表記の部分っていうのも設けてほしいなと。後の部分っていうのは、スマホが解決してくれる、

 
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