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  • 小飼弾の論弾 #272 「AIの計算コストを激減させる1ビットLLM、ホワイトカラーから「非」ホワイトカラーへの転職を政府が支援、ヤクザが核物質密売」

    2024-03-12 07:00
    550pt

     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
     無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!

     今回は、2024年3月5日(火)配信のテキストをお届けします。

     次回は、2024年3月19日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2024/03/05配信のハイライト

    • 閏年トラブルと「NVIDIAの牙城は崩れる?」
    • 1.58ビットLLMでなにが変わる?
    • 「ヤクザが核兵器」と「ロックビット対策に日本警察」
    • 視聴者質問「弾さんにしかできないこと」と「株の高値とリストラ」
    • 「ホワイトカラーとAI」と「日米就職事情」
    • 「水素資源ラッシュでなにが変わる?」と「新属発見」「重力測定」

    閏年トラブルと「NVIDIAの牙城は崩れる?」

    山路:最初、軽い話題から行こうと思ってるんですけど、弾さん、『MFゴースト』ってアニメ見たことあります?

    小飼:アニメというのか、いちおう原作は知ってはいる、知ってはいるレベルだよな、

    山路:『頭文字D』の続編で。そのアニメで感心した設定が、レーシングマシーンをドローンで追っかけて、リアルタイムで中継するってやつなんですよね。それがけっこう現実化してきたなと。

    小飼:なんかあれだね、Red Bullが時速350キロでチェイスできるドローンを開発したという、

    山路:YouTubeで、今リンク出したYouTubeで開発している工程とかをやってるんですけど、マジでF1のやつをちゃんと、ドライバーの腕もすごいんですけど、パイロットの腕も、これが出てきたらモータースポーツの中継って完全に変わりそう、

    小飼:それこそオートパイロットできるでしょう、

    山路:でしょうね、将来的に。東京でやる「フォーミュラ E」とかでもぜひやってほしいと思うんですけどね。

    小飼:でもあれだよね、一番喜びそうなのはお巡りさんだよね(笑)。

    山路:あー(笑)、

    小飼:空飛ぶオービス、

    山路:(笑)なるほどね。日本もそこのところでドローン解禁になっていくと面白いですけどね。これとVision Proみたいなヘッドセットを組み合わせたら、めちゃめちゃすごくないですか?

    小飼:けっこうあれは面白いことになるよね。

    「ドローンはどれくらいまで速く飛ぶ?」(コメント)

    山路:なんか300キロくらいは出てましたね、YouTubeの動画では。

    小飼:大きいやつ、グローバルホークとか737くらい大きなやつですけれども、あれは本当に旅客機と似たような速度で飛べたはずですよ。少し遅いかな、翼に後退角があんまついてないから、それよりは遅いけれども。それでもまぁ時速700キロくらいは出るんじゃないか。ただあくまでもそれは超高空をずっと飛んでるタイプの、

    山路:地表近くをキューンて飛ぶわけじゃないですからね。Red Bullは面白いところに投資してるなと思って。そういうちょっと小ネタだったんですけれども。今日3月の頭ということで、閏年が、

    小飼:2月29日が、

    山路:過ぎたところなんですけれども(笑)、

    小飼:4年に一遍の、

    山路:閏年のせいでいろいろシステム障害が起こってるという(笑)、

    小飼:いまだにね。

    山路:なんなんですか、これって。そんなに閏年の処理って難しいんでしょうか?

    小飼:今、普通のパソコンに入ってるOS、macOSにしてもWindowsにしてもLinuxにしても、に標準で入っている日付処理関数っていうのは当然、閏年も処理できるようになってます。が、メインフレームとかで使ってるやつっていうのは、それよりも古いし、そもそもOSレベルではなくて、アプリケーションレベルで作られていることが多いので。日付処理が標準装備されている環境ですら、自作しちゃいがちなんですよね。

    山路:ほー、閏年の処理は。今コメントであったんですけど、「2000年問題の頃に改修終わってると思ってた」って、2000年問題ついでにやんないもんなんですか。

    小飼:ねえ、

    山路:これ、4つの県警で運転免許証を発行できずってあるんですけど、これバラバラにやっとるんですか?

    小飼:たぶん免許証に関しては責任者、公安委員会なので。公安委員会というのは確か、都道府県単位でしょ。

    山路:今の時代になんというのか、都道府県単位でそんなシステムをいちいちポコポコ立ち上げて管理してるっていうのが、

    小飼:いや、それを言ったら戸籍とか市区町村単位よ。国保とかもそうですし、

    山路:ガバメントクラウド的に集約していかなきゃまずいんじゃないのっていう、

    小飼:いや、でも紙でやってた頃はそれは理にかなってたんですよね。膨大なペーパーワークが発生するじゃないですか。だから、そのペーパーを国がいちいち窓口作ってたら間に合わないですよね。ということで、市町村にやってもらってるわけですけれども。今や、マスターデータはコンピューターの上にあって、紙は単なるディスプレイなわけですから。電算化の時に引き取るべきだったんですよね。実際にレプリカは国が持ってるんですよ。だからそっちをマスターにしちゃえば良いというのか、そうするべきだったのに。というのはある。

    山路:どっちかというと、政治的判断の遅れみたいな感じなんですかね。

    小飼:なんでなんだろうね。いや、でも、本来国でやるものを地方自治体にアウトソースしてるものっていうのはあるんだけども、あんまり国のほうで引き取ってないっていうのも可哀想なところですね。そのくせ、ふるさと納税なんかやってるから、ふざけんなと(笑)。

    山路:なんかこう、本当に無駄な仕事を作る達人(笑)、

    小飼:国単位では「税金は財源でない」っていう言葉があるじゃないですか、要は国家というのは、

    山路:国債を発行して、

    小飼:要するに貨幣を自由に作れるじゃないですか。なんですけど、地方自治体は同じことできないんですよね。だから、その意味では普通の組織と変わらないわけですよね。

    山路:だったらなおさら、本当にその辺の何をどうするかっていう配分、どっちが何の仕事をするかということをちゃんと切り分け直さなきゃいけなかった、

    小飼:日本は意外と、その意味では中央集権的ではない。

    山路:いやー、いろいろ、よくマイナンバーカードでデジタル化の遅れみたいなことが言ってるけど、それどころじゃないっていう、

    小飼:じつは国は日本国民個々人の生老病死は知らないんです。それを知ってるのはじつは市区町村なんですよね。

    山路:なるほどね。

    小飼:生誕届けも死亡届けも、出すのは市区町村でしょ。

    山路:いろいろ日本って統計データが出てくるのがすごい遅いとか、いろんなことで言われたりするけど、それもやっぱり、

    小飼:国単位でできないかって言ったら、それはできるわけです、税務署はそうしてるじゃんか(笑)。だからちゃんと地方税の事務所と国税の事務所っていうのは、違うじゃないですか。もちろん連携はされてますよ。確定申告は国に出しますけど、その結果が地方自治体に送られて、地方税を払うわけです。

    「人口調査すらままならない」(コメント)

    山路:って、スピードが遅いってことですよね。ちゃんとやってるにしても。

    小飼:タイムラグが出る。実際に届けがない場合というのは黒市民ができてしまう。

    山路:黒市民、戸籍のない、

    小飼:戸籍のない。

    山路:根本的なところでいろいろ遅れてる感がすごいですね。じゃあ、ちょっとITの話にいきましょうか。時価総額、もう2兆ドルを超えたNVIDIAなんですけど。NVIDIAの強い力の一つとして、CUDAってあるじゃないですか、開発環境。例えばAMDなんかっていうのはCUDA用に書かれたソフトウェアをAMDのGPUで動かせるような、こういう仕組みとかをオープンソフトで作ってたり、

    小飼:当然な考えですよね。

    山路:これに対して、今度NVIDIAが打ち出した方策っていうのは、そういうCUDA用のソフト、他のとこで勝手に動かすみたいなやつはダメよんっていう、

    小飼:でも、「ダメ」できるのかな。そういうのはダメではありませんっていうのが、どっちかっていうと判決として多いのね。そもそもAMDというのは、x86の互換チップを主力製品としている会社ですよね。でx86の64bit版はAMDのほうが開発して、逆にIntelのほうがライセンスしているという倒錯した状況があるんですけど。その時に出た判決っていうのは、少なくともインストラクションセットというのはそれ自体は特許にはなり得ない。

    山路:じゃあけっこうCUDAに関してNVIDIAが言うだけ言っても本気で争う企業が出てきたら、けっこうNVIDIAは負けちゃう可能性がある。

    小飼:その通りです。

    山路:ちなみにここのとこ、コメントで、

    「NVIDIAの株価はもっと上がるの?」(コメント)

    山路:ってあるけど、NVIDIAの市場を狙っていろんなところが参入しようとしてきているわけではありますよね。例えばジム・ケラーさん、

    小飼:日本に工場をおっ建てるよとか言ってるみたいだけど。

    山路:彼は「CUDAは沼だ」とか言って、もっとAIならAIに適したようなものがあるだろうと。

    小飼:もちろんその通り。もともとグラフィックプロセッシングユニットだったわけですからね。もともとGPUの時代っていうのは、もっと大きな精度の計算をしたかったことが多いんですよ。doubleとかfloatとか。これがAIになった時に、AIをアプリケーションにした時にそんな精度いらなくねっていうので、かつてはなかった16ビット浮動小数点とかFP16とかっていう浮動小数点型が開発されたり、いや、それでも多いっていうので8ビットでいいだろうっていうのが出てて、ついに2ビットまで下がったと。2ビットです、1ビットではないです、ここ注意してください。いちおう1ビットでやってみようっていうのを試したみたいなんですけど、それはうまくいかなくて。±1と0の3値にしたところうまくいったと。それで確かに±1と0であれば、かけ算いらないんですよね、1かける1なので。

    山路:行列計算がってことですね。

    小飼:符号が同じだったらプラスで、符号が違ってたらマイナスっていう非常に簡単な演算になるわけですよね。

    山路:これ、ちょっと1ビットLLMの話に関しては後で、この次に話していただこうと思うんですけど。こういうふうな新しい2ビットなりとか、あるいはそういう今までの浮動小数点を使わないAIに特化したようなチップとかが出てきたら、NVIDIAの牙城というのは完全に崩されることもあり得るんですか?

    小飼:それを言ったらGoogleもTPUというのを開発したじゃないですか。たぶんその延長で、AI用の、LLM用のチップも開発されるんでしょうけども。同じようなことというのはNVIDIAもやるでしょうね。今のところ、TPUっていうのはGoogleのクラウドを通じてしか間接的にしか使えないんですよね、我々は。

    山路:結局TSMCの一番最先端半導体のプロセスを抑えているのがAppleとNVIDIAだったりするから、NVIDIAがAI半導体開発したら、真っ先に市場に送り出せるのもNVIDIAということですか。

    小飼:ただNVIDIAでなくてもいいんじゃね? っていうのは出るかもしれない。こっそりマイクロソフトがそれ用のチップを開発して作らせてて、いつの間にかAzureにはNVIDIAでないAIエンジンがいっぱい積まれてるっていう可能性だって、無きにしもあらず。やっぱり最先端のfabというのは誰が抑えているのかというのは、公然の秘密なので。

    山路:じゃあけっこうAI半導体ですごい性能が仮にできたとしても、それで簡単にゲームがひっくり返されるかというと、そういうわけでもない、

    小飼:そういうわけでもない。だから、x86の時に似たヘゲモニーが続くかもしれない。ジム・ケラー先生の言う沼というやつですね。でも、ジム・ケラー自体がさ、x86沼をより深くした超本人なわけじゃん、

    山路:再生産したわけ(笑)、

    小飼:しかも実はIntelも(その沼を)埋めたかったんだよね、64bitにする時に。Itaniumっていうのを出してたわけじゃないですか。

    山路:性能出なかったんですよね、

    小飼:だからみんな沼から出たくなかったんですよ。

    山路:ジム・ケラーさんも、沼とか言ってCUDAとか批判してるけど、絶対自分が開発したAI半導体も沼を作っていくことになるんですよ。

    小飼:しれっという。最も深い沼を掘った人でしょうね、ジム・ケラー先生は。

    山路:(笑)なかなか業が深い人ではありますね。でも、ジム・ケラーさんのAI半導体には期待しますけど。

    小飼:しかもまだ終わってないんですよね。

    「NVIDIAは空売りしたくなる」(コメント)

    山路:ってあるけど、さあどっちに出るのか。

    小飼:あー、でも、すごいよね。この株価でもPER71倍っていうのはすごいよね。

    山路:これって結局、仮に例えば来期とかで利益が2倍になったりしたらPER半分に下がるわけですよね。

    小飼:もちろん。これの半分って言ったら、AppとかGoogleとかそういうレベルよ。

    山路:じゃあもう、(NVIDIAの株価は)実需を反映しているという。いつも対抗馬が出てきてひっくり返すことはいくらでも起こるから、もう万全とか言う気には全くなりませんけれど。

    「空売りしたら死ぬぞ」(コメント)

    山路:っていう(笑)、どっちに出るんでしょうね。まぁ信用取引は私は怖くてようせんですけど。

    1.58ビットLLMでなにが変わる?

    山路:じゃあちょっと1ビット、1.58ビットLLMの話いっときましょうか。マイクロソフトの中国チームでしたか、が発表した正式名称なんて言えばいいんだ? Bit.net、1BitLLMというふうには通称で言われてるんですけれども。これって何がどう1ビットなのかというところ。

    小飼:まぁ±1と0だけなので、実はBit.netというのはバズワードで、最初本当に1ビットで試してたらしいんですよね。

    山路:ここで1ビットで表してるっていうのはディープラーニングの基本的なところで使われるニューロン同士が発火するときの値の扱いってことですよね。

    小飼:具体的には行列の各要素。行列の各要素が0、1だったら、かけ算っていうのが事実上不要なわけですよね。0、1だったら、本当に両方とも1の場合のみ1でっていう。

    山路:それに比べてこれが浮動小数点とかだったら、すげえ桁のかけ算とかをいくつもいくつもせんといかんっていう、

    小飼:そういうことです。それによる計算量の減少よりも、今のディープラーニングって一番精度が悪いやつでも、行列の1要素というのは8ビットなんですよね。それが2ビットまで下がるっていうことは必要なメモリっていうのは1/4で済むわけじゃないですか。あるいは同じ演算をするのであれば、4倍メモリに詰め込めるんですよね。今一番重いタスクっていうのは、メモリから別のメモリにデータを移動することなんですよ。これが劇的に減るっていうのは、やっぱすごい大きいです。今のGPUを使っても、もちろんベネフィットがある。このメモリがガクンと減るので。

    山路:ハードウェアとかが特になくても、恩恵がすごいあるわけだ。

    小飼:なんだけども、さっきも言ったように、今のGPUだと余計な演算をしてしまう。浮動小数点同士の掛け算というのは不要だよね、この場合。プラスマイナス1であれば。

    山路:余計なその分、回路を積んでおかないといけないし。

    小飼:符号が同じであれば+1だし、符号がそれぞれ違うのであれば-1だし、0なら0だしっていう。

    山路:これってLLM、大規模言語モデルを学習するときからも、それが使える?

    小飼:そう。学習させてから後でメモリを圧縮するのではなくて、演算中にもうそれをやってしまう。

    山路:これって同じような仕組みで作られたLLMでも、この1ビット、1.58ビットのやり方でやるとぐっと小さくなってという。

    小飼:ということです、計算も楽になるし。

    山路:精度は落ちないんですか?

    小飼:そこなんだよね、面白かったのは。落ちないんだそうです。要は、例えば8ビットでやってきたところを2ビットでやるっていうことは1/4になるわけですよね、メモリが。その代わりに4倍データを処理しちゃえば、精度はほぼ変わらずか、少し上がりさえするという。

    山路:これ、2020年にスケーリング則って発見されて、とりあえず計算資源とデータぶっ込んだらどんどんAI賢くなるぞみたいな乱暴な経験則が見つかったじゃないですか。それが加速するって感じなんですか?

    小飼:そうですね。

    山路:あと思ったのが、これってNVIDIAみたいなデータセンターとかで使われる、学習とかをする際のAIモデルを作るときにも効果あるんでしょうけど、推論のときにもやっぱりその恩恵ってでかいわけですよね? ってなると本当にスマホとかにGPT4クラスのLLMがひょいと乗ると、

    小飼:そうそうそう。AppleのSoCの売りというのは、Unified Memoryというやつですよね。普通のGPUというのは、CPUとは別のメモリ空間に別の物理メモリを乗っけてるので、引っ張ってこなきゃいけないんですよね。だから、ひと手間かかるんですよね。

    山路:それにしてもこのエッジ系というかQualcommとかAppleとか、そういう小さいもので、

    小飼:一家に一台AIというのであれば、すでに来てますよ。すでにAIがバンバン乗ってて、乗ってるおかげで例えば写真撮って、その中で文字認識するとかっていうのができてるわけだけど。要はLLMが乗るかどうかってことですよね。

    山路:しかも、たんなるLLMではなく、賢いLLMがってことですよね。そういう意味でいうと、QualcommとかAppleってめちゃめちゃ有利になる、

    小飼:そうですね、LLM積み込むのは大変かもしれないけれども、そうでないAIもいっぱいあるわけで。今はLLMがダントツで一番注目を集めてはいますけれども、地味に他のAIも使われてるわけですからね。

    山路:そうかそうか、べつにLLMに限らず、この1ビットLLMの技術みたいなものを応用すれば、同じように全部。

    小飼:それでだから精度足りるというふうになれば、ありとあらゆるところで使えるわけですよね。

    「前回の生放送で言ってた計算コスト下げる方法ということ」(コメント)

    山路:まさにそうですよね。ただ、前回言ったのは仮に計算コストが10分の1に下げられても、需要が20倍になったらエネルギー消費が増えるやろってことを言ってて(笑)。それが2週間でもうあっという間に現実化するような技術が出てきたっていうのがこのAI分野すごいところですけどね。

    小飼:メモリが4分の1になるっていうだけでも、すごい恩恵がある。あと、ここまでシンプルだと、メモリそのものにこういう演算ができる能力を組み込んでしまう。

    山路:ロジックとメモリが一体化されてるってこと?

     
  • 小飼弾の論弾 #271 「史上最高値の株価と景気後退が同時にやって来た、「世界」を創り始めたAI、新兵器を宇宙に配備」

    2024-02-27 07:00
    550pt

     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
     無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!

     今回は、2024年2月20日(火)配信のテキストをお届けします。

     次回は、2024年3月5日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2024/2/20配信のハイライト

    • 「H3打ち上げ成功」なんだけど
    • 今の日本の状態はデフレ? インフレ?
    • ナワリヌイ氏死去とヒューゴー賞不正問題
    • 視聴者質問「鳥と暮らします」「心理学」「脚本生成とAI」
    • 「人間が数学ができる謎」とAIの作る「私のためだけの物語」
    • 「サム・アルトマンの1000兆円調達」と「不安感の正体」

    「H3打ち上げ成功」なんだけど

    山路:最初、ちょっといいニュースからいきますかね。宇宙開発、うまくいってなかったH3がようやく打ち上げ成功という。

    小飼:はい、おめでとうございます。なんだけど、

    山路:素直に、え、なんで「ですけど」がつくの? 逆接が。

    小飼:いや、H3に限って言えば、成功しました。

    山路:ほう。

    小飼:前の打ち上げから11ヶ月経ってます。まぁ1年弱ですよね。

    山路:まぁそうですね。はい。

    小飼:その間にファルコン9は何回打ち上げがあったんですか?

    山路:おお。もう週刊どころじゃないんだっけ?

    小飼:どころではなくて、スターシップも最初の打ち上げというのが実質失敗からだから、次のやつまで半年くらいしか離れてないじゃないですか。

    山路:まぁそこでH3というかJAXAの肩を持つならば、それをできてるのってSpaceXだけじゃないかな(笑)。

    小飼:まぁそれはあります。それはあります。SpaceXに地位を一番脅かされてるのは、どっちかというとJAXAというよりもアリアンスペースなんですよ。と、あとあれですよね、ロシアの、この場合ロスコスモスになるの。で、今こういうのもなんですけども、アリアンにできることも、ソユーズにできることも、みんなファルコン9でできるんですよね。ファルコンMまで含めると。そう、ISSに人を送り込むのもできれば、静止軌道に衛星を送り込むのもできれば、だから本当に万能で、それを週2度ペースで打ち上げてるんですよね。

    山路:週2か(笑)。

    小飼:はい。

    山路:下手な離島のフェリーよりも多いっすね。

    小飼:そうなんですよ。種ヶ島の打ち上げって年間たかだか4、5回なんですよね。これ、さすがに勝負にならなさすぎねーとか。

    山路:ただ宇宙ロケットって、安全保障的な文脈もあるからやめるわけにいかないところは。

    小飼:うん、いやだからちゃっかりあっさり、スパイ衛星はH-IIAで打ち上げてたじゃん。

    山路:やることやらないといけないから。

    小飼:そう、だから本来であれば第H3号もH-IIAで打ち上げる予定だったというのをH3に、初号機に回したのはどこのどいつでしょう。はい。まぁでも次がその後継機なんでだよね。だいち4号は次のH3で打ち上げる予定なんですよね。

    「何が律速なの? 許可などの申請? それとも予算?」(コメント)

    小飼:いや種ヶ島自体がけっこうな律速になっている。

    山路:え、位置がってこと?

    小飼:位置が。うん。やっぱ日本の近海には漁船がいっぱいいるので、そのクリアランスとかも、もう。

    山路:そういうことなんですね。

    小飼:しなくてはいけなくて。

    山路:あー。緯度とかの問題とかっていうよりは。

    小飼:だから、ちゃんとNOTAMを出してっていう。そうやってやってくと。当初は年2回だったんですよ。それを増やしてもらった形跡、いきさつっていうのはあるんですよね。ちなみにSpaceXのほうなんですけれども、週2のペースで打ち上げてるのは確かですけれども、同じ射台からじゃないんですよね。

    山路:ん?

    小飼:打ち上げ箇所が3つあるんですよ。東海岸からも西海岸からも打ち上げてるんですよ。だから、そこの部分っていうのも。

    山路:もうなんか金の引っ張り方がそもそも違うというか、ちょっと本当に打つ手は。

    小飼:ただ、それを言ったら、いちおう補助金どっさりもらってるとは言っても、いちおう民間企業なわけですよね、SpaceXって。

    「ロケットって儲かるの?」(コメント)

    小飼:いや、だからずーっと儲からないもんだったんです。SpaceXのすごいところっていうのは、需要まで自分たちで用意してるんですよ。

    山路:うんうん。Starlinkという。

    小飼:Starlinkという。Starlinkの需要があるからもう、週2回のペースで打ち上げられるんですよね。

    山路:その上、アメリカ政府からのビジネスも受けてる。

    小飼:まぁ補助金も受けてっていう。だからそれを言ったら、いちおう日本も確かJAXAの予算と3分の1というのはスパイ衛星絡みです。はい。

    山路:あー、国からのお金ってことなわけなんですね。

    小飼:はい。まぁ情報収集衛星というやつですね。それもどの程度、役に立っているのかというのはあんまり国民のほうに出てこないんですけれども、本来であれば自然災害が出てきた都度、ちゃんとその性能を発揮してほしいんですけれども、こう言っちゃなんですけれども、今年の元旦の地震の時にもクソみたいな画像を出してきましたよね。それもPDFで。

    山路:(笑)PDFで、いろいろオチが。

    小飼:いや、だからそもそも今の日本の情報収集衛星って、民間の地球観測衛星よりも優れてるの? っていう疑義さえありますよね。出てる解像度がショボいんで。ただ、この解像度でいけるっていうのはそのまま出しちゃうと、スパイ衛星のスパイ衛星としての価値が損なわれてしまうっていうのも確かなんですよね。それは別の文脈でトランプがやらかしてましたよね。

    山路:え、出しちゃったってこと? 高精細な。

    小飼:高精細な画像を。特に、NSAとかに諮ることなく出しちゃったんですよね。

    山路:そういうのってどれくらいの精度があるかわかっちゃったりするわけだから、非常にヤバい話なわけなんですね。

    小飼:一枚あれば、ちゃんとドットピッチ見ればどれくらいの性能がっていうのはやっぱりバレてしまいます。確かに民間よりは高解像度でしたという。

    「宇宙で儲けるってなると通信しかないの?」(コメント)

    小飼:かつては通信だったんですけどね、という言い方にどうしてもなってしまいますよね。通信衛星で有名なものといえば、静止軌道に上がっているやつですけれども、まぁ遅いわけですよね。光の速度があるので。やっぱり遠くにあるということ、電波ということもあるので、光ファイバーとの競争にはちょっと勝てない状態です。

    山路:あと写真なんかのビジネス、観測写真とかのビジネスってけっこうそれなりの規模はありますよね。通信ほどではないのかもしれないけど。

    小飼:そうですね、日本でもさくらインターネットさんがやってはいますよね。

    山路:ロシア関連の軍事評論家として有名な小泉先生は、個人でそういう観測写真のサービスを加入していたり。けっこうなお金がかかるらしいですけどね。そういうふうなところでビジネスやっている会社はありますけど、でもやっぱり一番でかいビジネスは通信ということですか。

    小飼:今のところ一番大きいのは同じ通信といってもLEO、低軌道なやつですよね。何しろ必要な数が多い。

    「宇宙から盗撮できるってこと」(コメント)

    小飼:いや、だからまさにスパイ衛星がやっているのはそれです。盗撮しているわけです。

    「小泉さんの画像解析手法をテレビで紹介してビビった」(コメント)

    山路:びっくりするほど、なんか昔の常識から考えるといろんなものが筒抜けだという、

    小飼:いやいやいや、冷戦の頃からじつはそれくらいのことはやってたんです。解像度は上がったんですけどね。解像度は上がったんだけど、やっていることは同じです。

    山路:単純に個人でも加入できるみたいな(笑)、

    小飼:まぁそういうことですね。

    山路:ある意味、そこが民主化されただけであって。

    小飼:で、あともう一つ重要なのは、きちっと日時を指定できるんですよね。軍事衛星の場合というのは、いざという時はそこの場所を撮るための軌道変更すら辞さないわけです。軌道変更というのは燃料を使うので、ものすごいコストの高い作業なんですけども、国防が絡んでいたら、そうも言ってられないでしょう。

    山路:個人で申し込んでいるやつでも、そういうオプションあったりするのかな(笑)。

    小飼:ただそれを言うと、さらに安上がりなのは普通の航空写真なわけですよね。だから、敵対的な空域でなければ、普通に飛行機飛ばすじゃないですか。敵対的な環境でも、U-2とかSR-71みたいなオプションというのはあるんですよね。でも、なぜかアメリカはSR-71をやめちゃったんですよね、コストが高い。

    山路:ブラックバードですよね。

    小飼:ブラックバードです。はい。

    山路:まぁなんかそんな感じで、とりあえず宇宙のビジネスいちおういろいろやってますというところで、日本は、でもちょっとビジネスという観点からはまぁ出遅れているというか。

    小飼:まぁ少なくとも。結局ものにならなかったリージョナルジェットよりはちゃんとやってるという。

    山路:リージョナルジェットがいきなり出てきた(笑)。

    小飼:少なくとも、リージョナルジェットとロケットとの一番の違いというのは、FAAのアプルーバル(approval)が、要するにアメリカの連邦航空局の認可は必要ないということですよね(笑)。けっこう大きな違いですね。

    今の日本の状態はデフレ? インフレ?

    山路:もう一つ、景気がいいんだか悪いんだかよくわからないニュース、次行ってみましょうか。史上最高値の株価と景気後退が一緒に来たよっていう(笑)。ちょっと笑っちゃいませんかと。

    小飼:笑っちゃいます。

    山路:なんていうのか、脳がバグる感じしませんか。日経新聞なんかはもうすぐ史上最高値、まだ今日はなってないのかな。

    小飼:理由はわかってるんですけどもね。

    山路:株を持てる者、持たざる者の差と、あと円安みたいな話ですか。

    小飼:だから結局、政策がどっち方向を向いてるかですよね。まぁそこなんです。お賃金よりも株価のほうが優先されたわけです、政策的に。で、その結果は如実に出ているという、それだけのことですよね。

    山路:あと円安になっているから、日本株がとてもお買い得になっているみたいなこともあるかもしれないですよね。

    「中国がコケたし」(コメント)

    小飼:それもあるんだよね。中国のコケ方がけっこうすごいんだよね。日本株のゲインよりも、中国株のロスのほうがデカいので。

    山路:時価総額が1000兆円消えたっていう(笑)、

    小飼:日本のGDPの倍くらいですね。だから中国のGDPの丸々一つ分くらい、これ、株価だけを見てると中国バブル崩壊したっていうふうに見えちゃいますよね。

    山路:しかも怖いのが、今リンク出したんですけども、中国政府が、中国経済が悪いっていうニュースを出したところは取っ捕まえるぞ的なことを言い出したという(笑)、

    小飼:前からそうだけどもね。

    山路:世界的な調査会社とかが、もう中国でそんなこと言われたらビジネスできないからって撤退、そうするとでもますます情報入らなくなるわけですよね。

    小飼:まぁ却ってそのおかげでリークするようになりはするわけですけどもね。

    山路:ただ投資家は寄りつかなくなるわけじゃないですか、そんな透明性の低い市場には。市場最高値の株価と景気後退の日本のほうなんですけど、最近、貯蓄から投資へみたいなことをめっちゃ言うように。

    小飼:ずっと言い続けてたんですけれども、道具立てが揃った感はありますね。特にNISAの枠が200万ぐらいだったのが、いくらになったんだっけ。

    山路:1800万でしたよね。

    小飼:になったというのがけっこうでかい。まぁでもそっちのほうは、日本株の上昇にはほとんど寄与してない。

    山路:まぁだいたいS&P500とかオルカンを買うわけですよね。

    小飼:そうなんですよ。海外資産なので。

    山路:これってどうなんですか。これ、円安要因にはなり得る話ですよね。だけど、そのドル建ての資産を持っているのは日本人だったりするわけじゃないですか。

    小飼:まぁそういうことです。

    山路:この場合って、日本の経済にとっては、日本人の多くが海外の株を多く買うっていうのは、日本経済への影響に関してポジティブなんでしょうか、ネガティブなんでしょうか。

    小飼:いや、まぁ日本経済っていった場合には海外の資本収支というのも入るので。だから、そこはどこに投資しようとポジティブですし、成長率というのは海外のほうが高い以上は、もし、キャピタルゲインを得たかったら、よりリターンが大きいほうがいいというのであれば、今の日本人の、俗に言うMrs. Watanabeの行動というのは全く正しいですね。

    「なんで国内投資だけに制限しなかったのか」(コメント)

    小飼:まぁ日本はまがりなりに自由主義を標榜している以上、それはできない。

    山路:NISAの手本になったイギリスのISAというんですか、あれなんかではちょっとそれ、イギリスの株とか買うように仕向けたほうがいいんじゃないのという議論が湧き起こっているらしいですけどね。イギリスの株式市場がちょっと低迷しているもので。

    山路:私の知り合いの奥さんもNISAで日本国内株の個別株を買って、それが急騰して儲かった儲かったってすごい喜んでて、やたらそれにハマっているという。

    小飼:それ、まだ含み益でしょう。

    山路:そうなんですけど。

    小飼:利確したのであればいいんですけどね。

    山路:ただ、もちろんこういう株だから相当なリスク資産ではあるから、損をすることもあるから、べつにみんなに株をしろって私、今言うつもりはないんですけれども、以前弾さんが金持ちがいかにお得か、不労所得の旨味っていうのはもらうようになってみないとわからないっていうことを言ってたじゃないですか。

    小飼:そうですね。

    山路:自分が金持ちになってみないと金持ちの旨味はわからないって。そういうことで言うんだったら、株を持っているだけでこんなに儲かるとか、あるいは配当がかかるとか、上昇するとか、そういった経験を多くの人がすること自体はそんなに悪いことでもないのかなとも思ったんだけど。

    小飼:ただ多く、というふうに言っても、パーセンタイルで言うと、3分の1とか4分の1とかでしょうね。

    山路:結局、みんなに行き渡るような話じゃねえよっていう。

    小飼:行き渡りようがない。

    山路:投資を推奨したところで、種銭ないところに火は起こらないというか(笑)。

    「バブルの時に懲りた年寄りは多い」(コメント)

    山路:確かにそれあるかもしれないですよね。

    「種銭ないと無理じゃね」(コメント)

    小飼:まぁおっしゃるとおりです。

    山路:いやー、ただ本当に景気後退って、GDPの成長が2期連続で続いた場合はいちおう景気後退って言うらしいんですけども。今、日本の状態っていうかいまいちよくわからない。今スタグフレーションになっているんですか? それともまだデフレなんでしょうか? インフレになっているんでしょうか?

    小飼:いや、はっきり言って要はマイルドスタグフレーションでしょうね。

    山路:マイルドスタグフレーション。

    小飼:はい。なんでGDPが伸び悩んでいるかって言ったら一番はあれでしょう、民需が下がってしまったからでしょう。だから、こう言うのもなんですけども、いつの時代も一番金を使ってくれるのはお金持ってない人たちなんですよ。なけなしのお金を使ってくれる人たちなんですよ。そこにお金が行かないことには。こういう時というのは無理やりにでもお金を回しちゃうのがいいんですよね。パンデミックの時に10万円配ったじゃないですか。あれをもっと続けていれば、こうはならなかったでしょうね。

    山路:よく言われるのが、金融緩和したけどぜんぜん効果なかったから、そんなん意味がなかったみたいなことを言う人いるけど、その緩和した金の行き先が金を必要としてた人じゃないでしょっていうことに尽きると思うんですけどもね。

    小飼:うん。そうなの。そうなの。直接配るっていうやつ。

    山路:この日本のGDPというか財政みたいなことに関して言うと、よく緊縮財政みたいなこと、日本政府ってよく財政健全化とか言って緊縮財政しようと、

    小飼:特に文科省のほうがずっとやってるよね。

    山路:って言われてますけど、これって素朴な疑問なんですけど、これから日本がぜんぜん成長しないと思っているから、彼らは緊縮財政をしちゃいがちなんでしょうか?

    小飼:こう言うのもなんだけども、緊縮したほうが、かえって自分の懐に入るお金が増えるからと睨んでるからという可能性も大きいですね。

    山路:だけど、国に入るお金って、まだ民間の企業がお金を蓄えるってわかるんだけど、国にいらないお金があっても、

    小飼:待って。その国のやることを決めてる人というのは、国ではないんです。彼らも個々人なんですよ。個々人だからこそ、個人口座に余ったお金を突っ込めるわけですよ。こう言うのもなんだけども、国全体が緊縮財政になっても、その国のやることを決めてる人たちの財布の中はそうではないという状態はあり得るわけで、実際にそうなっているわけですよね。

    山路:なんていうのかな、そんなに金持ちじゃない私からすると、今そうなっている人ってもう十分なお金を持っている人じゃないですか、だいたい。

    小飼:まぁ十分なお金を持っているかどうかっていうのは、本当こう言うのもなんですけど、心の持ちようなので。

    山路:10億円、100億円あっても足らないと思う人は足らないし。

    小飼:足らないと思う人は足らないし、はい。

    山路:えー、そんな感じで国の財政というのは方針が決まっていく?

    小飼:いや、マスクとか6兆円でも足りなかったわけじゃないですか。

    山路:ああマスク、ヘタレでしたね。マスク、お金もらい損ねて裁判所ともめてる。

    小飼:お金というのか、現ナマではなくて、確かストックオプションの行使だと思ったんですけれども。まぁでもそれは報酬をお手盛りすぎて、それはありえないって、他の株主から、株主代表訴訟だったわけですよね、それを止めたのは。

    山路:イーロン・マスクって世界の長者番付で、本当に一番とか二番とか。

    小飼:まぁ一番ですね。再び。

    山路:そんな男が「お金でまだ消耗」してんすかっていう(笑)。

    小飼:それは本当感じますね。でも、こう言うのもなんですけど、本人は普段の生活ではそんなお金使わないタイプなんですよね。今も、普段はトレーラーハウスに住んでるそうですし。

    山路:へえ。そうなんだ(笑)、トレーラーハウスに住んでるというのは。

    小飼:要するに、ステレオティピカルなお金持ちの生活ではないんですよね。

    山路:これちょっとイーロン・マスクじゃないからよくわかんないかもしれないんですけども、イーロン・マスクはなんでお金にそんなにこだわると思います?

    小飼:いや、それないと火星まで行けないと思ってんの、どうなんだろうね。

    山路:だって個人の財布と、会社として調達する資金ってまた別の話じゃないですか。

    小飼:なんだけども、Twitterはまさに個人の財布で買ったわけですよね。で、個人的に借金をして買ったんですよ。そこの部分っていうのがある意味すげえなというところではあるんですけど。

    山路:そうか、テスラとかSpaceXは違って、Xは彼のお財布からだから。

    小飼:そうなんですよ。ポケットマネーなんですよ。

    山路:だから、ちょっと自分のポケットマネーというか、お財布の状況もやっぱり気になって気になってしょうがないわけだ。赤字がガンガン。

    小飼:いや、だからこの場合、Twitterくらいの企業であれば、当局の許可も取らなきゃいけないと思うでしょ。いや、でもSNSはもう幸か不幸かそのカテゴリーではないので。たとえばNVIDIAがARMを買い取ろうとして。

    山路:ダメって。

    小飼:あるいはAdobeがFigmaを買おうとして、当局にダメ出しされたじゃん。SNSってまだそのカテゴリーに入ってないんだよ。

    山路:おおー(笑)。

    小飼:で、マスクが買い取る前のTwitterっていうのは上場してたじゃないですか。だから、それがまさに、ある意味、状況を悪化させたんだよね。

    山路:買えちゃったってところがある意味、

    小飼:というのか、それを防ぐためにはマスク以上にいいオファーを出すホワイトナイトが現れるしかないんですよね。これが未上場の企業であれば、水面下の交渉とかっていうのがあり得るわけですけれども。確かあれかな、オファーを出した当時の公の株価の5割増しぐらいで出したのかな。みんな明らかに高すぎとは言ったんだけど、それで買うって言った以上は。

    山路:何重にも予想外の想定外がちょっと重なったところではあるんだ。

    小飼:そういうことです。

    山路:それは彼にとってもけっこう想定外だったわけなんですね。

    小飼:通っちゃった以上は買わなきゃいけないということで、マスクもわざわざ借金して手に入れたわけですよね。

    山路:へー(笑)。

    「マスク以上の金持ちが生まれて、すべてのSNSを一元化してほしい」。(コメント)

    山路:それはしかし、そのSNSがしでかしたら、一巻の終わりじゃないですか(笑)。

    小飼:そうだよね。

    「Blueskyは品行方正な優等生の楽園って偏見が」(コメント)

    小飼:それはない。

    山路:これ、言っちゃ悪いですけど、まだユーザーが少ないってだけなんじゃないですか(笑)。

    小飼:そういうことですね。

    山路:結局、なんていうんですかね、世界の人口が、80億人がみんな使うようになれば、同じようなカオスが再現されるだけだと。

    小飼:というのか、これスケールするのかなっていうのはずっと。

    山路:Twitterの話? Xの話?

    小飼:Blueskyのほうの。要するにTwitter以外のSNSですよね。前にも言ったように、技術的にスケールアウトするのがすごい難しいですよ、SNSっていうのは。

    山路:Blueskyって、たしかActivePubでしたっけ?(※編注:Blueskyが採用しているのは、ActivePubではなく、AT Protocol)そうしたような仕組みを使って、それに対応したSNS間でのメッセージ、投稿のやり取りというか、そういうことが可能になるというようなことを言ってますけれど。

    小飼:言ってはいるけれども。

    山路:それって、弾さんから見ると、コストの高い、つまりコンピューターリソースの必要とされるやり方になりますかね?

    小飼:分散型の場合、同じだけの投稿を処理するのに必要なリソースというのは、一元型よりは絶対に多くなります。

    山路:もう本当に、決まったところとやり取りするよりも、それがもっと増えるわけだから、n乗になっていくって感じですか?

    小飼:そうです。nの自乗ですよね。2倍なら4倍、3倍なら9倍という具合ですよね。

    山路:じゃあ分散型を謳ったSNSとかも、それぞれの規模が小さいうちはまだいいにしても、増えてきたら、今のX的な使い勝手というのは果たしてそれで実現できるのかという。

    小飼:結局、Mastodonもそれで大きくならなかった。少なくともTwitterの代わりにはならなかったわけですよね。

    ナワリヌイ氏死去とヒューゴー賞不正問題

    山路:いやー厄介な話ではありますね。じゃあちょっと国際ニュースのほうに行って、これがやっぱりでかいなと思ったのが、ナワリヌイ氏死亡。

    小飼:まぁ死亡なのか、暗殺なのか。

    山路:普通に考えて暗殺ですけどねっていう(笑)。暗殺というか。

    小飼:まぁこう言うのもなんだけど、よく今まで生きてたというのが、そもそも国外で殺されかかったわけですよね。それで、でも死ななくて、生き延びて、生き延びてはいいんだけれども、また祖国に戻ってきたというのは、それはすごいですよね。本当にもうクオバディスの時のキリストみたいですよね。

    山路:それに関連して、まさに『ナワリヌイ』という映画が一昨年かな。

    小飼:今、アマプラでやってるんだっけ?

    山路:そうですね。無料じゃないんですけど、500円くらい、400円かな、レンタルできて。私もApple TVで配信されたやつを買って見てみたんですけど、キャッチコピーが「どんなスパイ映画よりもスリリング」って、何を大仰なキャッチコピーでつけてんだと思ったら、本当にそうでしたっていう。このナワリヌイ氏側のチームっていうのもすごいんですけど、それ以上に恐ろしいのが、ロシアの愚鈍さなんですよね。本当にアホなんですよ。その本当に愚鈍なチームが、ものすごい数の要人とか、自国の経済資本家だったり、あるいは記者だったりとかを暗殺してきた。その暗殺の事実の一環をナワリヌイ氏がやっているYouTubeチャンネル上で全世界にリアルタイムに公開したっていう(笑)。すごい、そのシーンを見るためだけでも、この映画見てほしいと思うんですけど。

    小飼:いや、でも当局が意外とアホ間抜けっていうのは、もうロシアに限った話じゃなくてさ。いや、たとえばさ、日本の公安とか、税金泥棒じゃん。はっきり言って。

     
  • 小飼弾の論弾 #270 「移民問題を解決するたった1つの冴えたやり方、EU規制にAppleも折れた、SNSに渦巻く憎悪と分断」

    2024-02-13 07:00
    550pt

     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
     無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!

     今回は、2024年2月6日(火)配信のテキストをお届けします。

     次回は、2024年2月20日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2024/2/6配信のハイライト

    • 日米の株高と「Appleがいかに健全か」
    • Vision Proについてと「EUの規制と人材」
    • AIと電気、核融合と太陽光発電
    • 視聴者質問「光の速度は超えられる?」「クジャクなみに頑張らないと結婚できない?」
    • 「移民問題のたった一つの冴えたやり方」と「中国恒大はどうなる」
    • 『セクシー田中さん』問題と「原作者の地位が強い日本」
    • 鬱への対処法と「独身男性の寿命」

    日米の株高と「Appleがいかに健全か」

    山路:今日はメガネするの忘れたな、そういや(笑)、まぁいいや。あと、番組の開始遅れて、どうもすいません。なんか新しい、いろいろスタジオを新しく内装を変えたりとかしてたせいで、準備が遅れてしまいました。

    「背景がいつもと違う」(コメント)

    小飼:そうなんですよ。

    山路:かなり凝って、ボードゲームでおしゃれっぽくして頑張ったみたいですけれども(笑)。以前のベニヤ板張りとかね、それよりはまだマシかもしれないんですが。ということで、最初、軽い話題からいきましょうか。

    小飼:軽いというのか、

    山路:アホな話題から(笑)、

    小飼:これはアホだったな(笑)。

    山路:ご存知でしょうか。最近Twitter、Xってインプレッションで収益化できるようになったじゃないですか。

    小飼:いわゆるインプレゾンビというのが湧くようになったんですよね。バズった投稿に対して、自動でコメントをつける。

    山路:その自動でコメントつけるボットを悪用するハックが発見されたという、

    小飼:そうそう、

    山路:クソリプを自動でやるやつっていうのは、ChatGPTを使っていることが多いらしいんですけれども、

    小飼:そのクソリプに対して質問を投げかけると、ボットが素直に答えてくれると。今晩の献立、どうするのがいいと思う? とか、そういうのを言うと答えてくれちゃうというね(笑)。

    山路:あれってそういう質問に対して答えないように設定ってできますよね、おそらくは。

    小飼:もちろんできる。

    山路:インプレゾンビとかはわざわざやるやつがそこまで手間をかけてないみたいな、

    小飼:まぁそうだね。

    山路:これでAIに人類が勝ったというには、まだちょっと早計なんですけれども。

    小飼:そもそもイーロン・マスクにSNSというのか、少なくともX、あるいはTwitterが勝ててないわけだよね。

    山路:(笑)SNSの混迷というか、ひどいことになっているというのはもうちょっと後のほうで触れようと思うんですけれども。その先に、まずはアメリカのビッグテック、いわゆるマグニフィセント7とかGAFAMとか、そういう界隈のやつらの決算がめちゃめちゃよかったと。Appleの株価、その中で冴えないねって言われてても、前年同月比で何パー増になっていて、大変なことになっているという。これですね、ニューヨークダウの株価が最高値を更新と。すごいのが、この米国企業の時価総額というのが、世界の株式の5割に迫ってるっていう話なんですけど。

    小飼:まぁあんまりいいことではないんだけども、それでも株式の時価総額どころか、GDPの5割だった時代もあるのよ。だから2次大戦の直後っていうのはアメリカが半分だった、世界の。

    山路:へええ。

    小飼:それに比べれば、それよりもバブることも多い株価の5割というのは。でも一番の理由は中国の株式市場が(下がっていくジェスチャーをしながら)こうなったことなんだよね。

    山路:よく言われてるのが、直近で言えば、不動産の状況が悪いっていうのも言われてますし、あとはIT企業とかをめちゃめちゃ締め付けたせいなのではと。

    小飼:それが一番大きい。

    山路:アリババでしたっけ、アリババとかもガツンと締め付けたりしてましたよね、

    小飼:テンセントとか、マグニフィセント7に入っててもおかしくないのよ。

    山路:中国企業、(世界時価総額の)上位にテンセントとかアリババ出てたのが今、全部消えましたよね。

    小飼:そのおかげで東京株式市場が世界2位に返り咲いたと言う。東京株式市場も、市場最高値をやっと更新しつつありますけどね、バブルの頃の。

    山路:ビッグテックの、それぞれの業績みたいなところで、もうちょっと見ていこうと思ったのが、一番びっくりしたのがMetaが1日で20パーセントぐらい株価上がったり、

    小飼:日本と違ってストップ高とかストップ安とかっていうのがないので、けっこう安易にそうなるんですけどね。その逆にいつだったっけな、Netflixの株価が25パー、決算直後に失われたっていうこともあるので、それだけの値がさ株でも動くときにはそれぐらい動いてしまう。

    山路:値がさ株っていうか、アメリカのビッグテックって本当に普通に時価総額が1兆ドル超えてるじゃないですか。

    小飼:そうね。

    山路:1兆ドル超えがもうデフォみたいな、

    小飼:Microsoftは3兆だもんね。

    山路:これって本当にその時価総額に見合った分の価値がある?

    小飼:少なくともAppleはあるね。というのか、かなり安く見えるよ。“AAPL”で検索と。やっぱりその時に一番よく見るべき指標というのはPERだね。要は現在の利益を何年分重ねると、その株を買えるかという。今AppleのPERが29、でもだいぶ上がってきたね。それでも。1兆ドル超えたとかっていったときには20切ってた、たしか。

    山路:普通の製造業やんけ的な。ものづくりの企業だったらそれでも順当なところですけど。Microsoftは、弾さん的には(Appleよりも)もうちょい割高に見えるってこと?

    小飼:ただし、Microsoftはどっちかっていうとソフトウェア企業だからね。ハードウェア企業のほうがPERは低く出る傾向があります。でもMicrosoftにしてもPERは36なんだね、今。

    山路:Microsoftもすごい業績良かったのに、ちょっと期待外れだったって、その次の日には下がってたりするんですよ。どんだけ投資家っていうのは今のビッグテックに期待を寄せとるんだと。

    小飼:期待を寄せてるんではなくて、少なくともAppleとMicrosoftは同じビッグテックでも、もう配当してる企業なんだよね。世界一配当してる企業なんだよね、巨頭なんだよね。だからグロス株ではなくて、バリュー株なんだよ、じつは。

    山路:なるほど、安定志向の人が買う株に(笑)。

    小飼:そうなんです。安牌なんですよ。

    山路:いや、恐ろしい世界ですね。そのバリュー株の株価が伸びてるわけですからね。世界時価総額の5割とかをさらに超えて、デジタル経済自体が大きくなっているのは確かじゃないですか、スマホをみんな使うようになって、これからはあんまりスマホを使ってなかった人たちも、

    小飼:何をするのもネットを通すようになって、

    山路:インドの人も使うようになり、アフリカの人も使うようになり、デジタル経済自体が伸びていくのは確かだと思うんですけど、それにしても株価の伸びの勢いが尋常じゃなくないですか。

    小飼:そう、だから大きいやつがますます大きくなるっていうね。

    山路:それこそ10年経たない前には、1兆ドル株、時価総額1兆ドルの企業なんて世界に存在しなかった。それが3兆ドルがたぶん当たり前になってくる世界線じゃないですか、もう。

    小飼:とは言っても、まだAppleとMicrosoftだけだけどね、その線を越えて、

    山路:でもNVIDIAも、もうすぐ2兆ドルになりそうだし。この気持ち悪さ(笑)。大丈夫なんだろうかみたいな不安はありません? いわゆる、ただの雰囲気だけで値が上がっているバブル株ではないだろうなとは思うんだけれども、

    小飼:NVIDIAはハードウェア企業にしてはPER高すぎるな、90だって。高いね。

    山路:たとえば弾さん、今からNVIDIAに投資しますか? ちょっと割高だと思います?

    小飼:今買うか?という感じではあるよね、このPERを見ると。やっぱり期待が高いっていうのはPERを見るとすごいわかりますね。Appleなんて、たったのとは言っても、30いってないもんね。本当にバリュー株の数字だよな。

    山路:恐ろしい(笑)、じゃあ堅実な利益を出し続ける企業と判断されているということで、

    小飼:そういうことです、実際その通りなわけです。

    山路:ただMetaってなんでそんなに伸びたんでしょうか、株価がガッと上がったんでしょうか、

    小飼:もしかしてVision Pro効果かもしれない、

    山路:AppleのVision ProのおかげでMetaの株が上がる(笑)、

    小飼:そう、だからPS5が売れると任天堂の評価も高まるみたいな(笑)。

    山路:もうその業界自体が盛んになるという。Vision Pro高すぎて買えないから、とりあえずMeta Quest買っとくかみたいな。

    小飼:それはあり得る、まぁ決算が良かったというのもあるんですけどね、もちろん。

    山路:それにしてもなんていうか、言っちゃなんですけど、Facebookってクソ広告だらけじゃないですか(笑)。皆さん、本当にあの広告を出して、それで効果を得られてるんでしょうか(笑)。

    小飼:むしろ逆広告になっちゃうよね。だからもう、うざいからこいつら見ないとか。広告ブロッカーもだいぶ普及したじゃないですか。今広告業界ってのはブロッカーとの戦争になってますよね。

    山路:ブロッカーはいちおう入れてるんですけども、なんかガンガン今広告表示されてますよ、私のブラウザ、ぜんぜん追いついてないですね。

    小飼:ガンガン消してる。

    山路:あと、これも好調だったAmazonなんですけど、Amazonのほうは株価自体は好調なんですけれども、AmazonはiRobotの買収を却下されちゃったっていう。

    小飼:却下というよりも、この場合は断念ですね。だからこれは、却下というのは当局にこれはダメですって言われてるのではなくて、当局がOKを出してくれない、似てはいるんだけども。

    山路:そうか、OKを出さないっていうのは却下ではないわけなんだ。いつになったらできるかわからないみたいな状態に置かれてるから、それには耐えられないということなわけなんですね。

    小飼:だから違約金を払ってでも、買収断念しちゃうほうが安上がりと見られたんだよね。でもどっちかと言うと、救済合併っぽいところはあったんですけど。

    山路:iRobotを救済するっていうね、

    小飼:そうそうそう。中国の製品にだいぶ食われてるので。

    山路:なんかエヴァ、なんていうかいろいろありますよね(笑)、ちょっと社名ド忘れちゃいましたけど(※編注:エコバックス)。もうなんていうか、ドミナント(支配的な立場)じゃない、なくなりつつあるんだから、

    小飼:まぁでもブランドはまだ、Roombaのブランドは強いと思いますよ。競合製品はべつに中国だけじゃなくて、日本も作ってパナソニックとかも作ってはいるんだけど、

    山路:まぁ(日本企業は)存在感あんまないですけどね(笑)。

    「うちも中国の会社のお掃除ロボットを使ってる」(コメント)
    「なかなか優秀」(コメント)

    山路:そうでしょうね。お掃除ロボット、とりあえずiRobotが出してからその勝ちパターンをみんなかなり真似てきているところはありますもんね。Amazon自体の業績、どう見ます? Amazon自体は、

    小飼:でもな、かつての赤字上等の時代を覚えてると、えらい変わったなあという。だから今のAmazonのPERって60切ってるんですよね。いや、でも、今株式市場全体のPERが上がってて、だからそれ自体はあんまり良くないです、それが上がりすぎると、60を超えたりすると崩壊するんです。日本のバブルが崩壊した時の東証のPER平均って、確か60とかそんな感じだったと思います。

    山路:もう、均して60?

    小飼:そう、均して60。

    山路:怖(笑)、

    小飼:いや、でもハイテク企業とかが、Amazonも4桁の時ありました、1000を超えてたことがあった。

    山路:そうか、それは肝に銘じとかんといかんということですね。

    小飼:だからAppleの30を切ってるPERというのがいかに健全かってことですよね。いかにがっつり利益を上げてるか、だよな。

    Vision Proについてと「EUの規制と人材」

    山路:じゃあそのAppleのことでちょっと言うならば、もうApple Vision Proをアメリカに行って買って使ってる人たちまで出てきたという感じですけれども(笑)。弾さん、そろそろ買う気にはなりました?

    小飼:欲しいね、はっきり言って。さすがに都米してまでとは思わないんだけど、でもやっぱりネガティブな点として、みんなが挙げてたのは「重い」。そりゃああれだけ詰め込めばな。Mac Proの上位モデルをここに、よりも、シリコンで言うと、トランジスタの数で言うとたぶん多いはずなんだよね。

    山路:iFixitの分解動画出てましたけど、あれとか見るとお得な感じがしますよね、ずいぶん詰まっとんな、みたいな。

    「何年くらい使えるんでしょうね」(コメント)

    山路:まぁ廉価版が出るまでじゃないですか(笑)。

    小飼:だから、欲しいのはVision ProではなくてVision Airなんだけどね。だから次の製品なんだけどね。

    山路:それって1年後には出ないじゃないですか、さすがに。

    小飼:どうなんだろう?

    山路:え、それ、1年後に出たら、50万円で買った人なんかこう、何ていうか、憤死しそうじゃないですか(笑)、

    小飼:よくある話じゃん、かつては半年で陳腐化するもんだったんだよね、PCとかって。

    山路:いや、さすがに、どうだろう……。やりかねないな、確かにApple。ただ、今この瞬間に3500ドルでVision Proを買う人は1年後に安いのが出ても、ぜんぜん気にはしなさそう、

    小飼:だからVision Airなんですよ、まだまだ改善の余地はあるはずですよね、冷却ファンもついてるし。(MacBook Airを示しながら)これにはついてない冷却ファンがついてるし。

    山路:半導体チップのほうの高性能化でやってくるかもしれないですしね。そのへんのところは。

    小飼:でも、やっぱり重量調整だよね。(ヘッドセットのジェスチャーを示しながら)こっちに全部載せるしかないのかな。たとえば、Lightningが変わったようなケーブルが、いちおう今は電池しかついてないけど、につながってるわけじゃないですか。だからこっちのほうにオフロードできないかとかね。

    山路:最初に出たPSVRなんかでは、処理をPS本体側でやらせるみたいなことやってましたよね。PSVR2でもそうかな。

    小飼:Vision Proはそんなもんじゃないからね。

    「電脳メガネ実現した?」(コメント)

    小飼:つけた状態でこうやって普通に本は読めるらしいですし、ちゃんと普通に歩けますし。でも電池の持ちがなんだったっけ、

    山路:2時間とかそんなものですね、

    小飼:それもありますよね、ToDoとして。でも、2時間もつけてたらやっぱり重たくて疲れちゃうのかな。

    山路:まぁテスラ運転してる強者とかもいますけど。

    小飼:でもなんか閾値を超えた感はありましたよね、Questの時にはこれほどの大騒ぎにはならなかったんですよね。やっぱり(手に持つコントローラーのジェスチャーをしながら)これがないっていうのがでかいのかな。

    山路:あとはやっぱり本当単純に高精細で、肉眼で見たのとあんまり変わんないっていうのが。パススルーがそういうふうな高精度っていうのは高いのかもしれないですけどね。

    小飼:そのためにカメラをいくつつけてるんだっけ、12だったっけ(笑)、

    山路:いやーこう、なんか弾さんと私で買って、とりあえずはつけてやってみますかね、2人つけてニコ生でカメラで映してるだけだったら意味はないんですけれども(笑)。

    小飼:いやでも、しつこいようだけど本当に人欲しいのはVision Airなんですよね。先に出るのは仕方がないとして。

    スタッフ:聞くところによりますと、FaceTimeか何かで、なんかVTuberっぽい感じでできるらしいじゃないですか。

    山路:アバター、ペルソナね。

    スタッフ:じゃあその時はなんかアバター使って、初オンラインでなんかやってみます、『論弾』で(笑)、

    山路:FaceTimeでやってるやつを画面にこう出しておけば、

    小飼:でもみんなが電脳メガネとでも言いましょうか、っぽいものをかけてる時代というのは、笑い男をやりやすくなるわけですよね。そっちを、視界をハックしちゃう、

    山路:そうそう、つまり実物をどうにかするんじゃなくて、見てるほうの認識のほうを変えちゃうという。

    小飼:そうそうそう。で、見るっていうのは単純にレンズに入った像をラスタースキャンしてるだけのものではないんですよね。人間の場合。本来それをやってる画像センサーしかなさそうな目ですら、情報を加工してるんですよね。視細胞というのは1億くらいあるんですよ。なんだけども、視神経というのは100万なんですよね。すでに100分の1にする情報処理っていうのを目の段階でやっちゃってる。

    山路:へぇー。イメージセンサーがいろいろ仕事してんだ、

    小飼:仕事してるのというのか、もうすでに目ん玉の時点で嘘ついてるんだよね。さらに脳が嘘をつくんだよね。

    山路:もう私らが認識してる世界とは……っていう気になってきますけども。

    小飼:そう、だから遠隔手術っていうのは、いや、でも遠隔手術はじつは実現してる久しいんですよね。da Vinci(ダ・ヴィンチ)という、2億円くらいする手術マシンがあるじゃないですか。

    山路:前立腺とかの手術やってませんでしたかね、

    小飼:あれ、もちろん遠隔ができるわけですね。

    山路:このApple、Vision Proなんかで話題にもなってるんですけれども。医療のほうでも、

    小飼:久しぶりに祭りになったね。そう、これでついにブラウザ開放かという。

    山路:今までiOSとかに載せるものに関しては、WebKit、Safariで使っているWebKitのエンジンを使ったものしか認められてなかった。

    小飼:アプリ内ブラウザというのは実質一種類しかないんですよね。iOSや、iPadOSを使っている場合というのは。

    山路:これがChromeなんかで使われているBlinkとか、あるいはFirefoxで使われているもの(Gecko)も使えるようになるんだけども、そこでまたAppleのイケズなところというのがEUのみっていう(笑)。じゃあEU内とEU外で別々のアプリにせんといかんのかいっていう、そんなことをやってられるかということをMozillaが、

    小飼:本物のChromeはEUでないと配布できないのかっていうね。

    山路:これ、さすがにちょっと意地悪すぎやしませんと思ったんですが、いかがでしょうか(笑)。

    小飼:こう言うのもなんだけども、EUは少なくとも自分たちができることをやったということで。他の政府というのはもっと勤勉でもいいんじゃないという意見はある一方、だからChromeやSafariは載ってほしいんだけど、App Storeに関してはどうだろう、サイドローディングはどうだろうっていうのはあるんだよね。

    山路:第三者というか、サードパーティー、Apple以外の公式ストアを設けることを強制したということなんですね。ただ、今のところもう一つのサイドローディングのストアからダウンロードをするのにはすごい手数料をかけるみたいな感じで、ユーザーにとってはあんまりメリットがない。

    小飼:なんか頓智合戦になってはいるんだよね。

    山路:ただAppleとしても、とにかくiOSの信頼性を、ブランドイメージを守りたいっていうことがあるから、外部のストアから変なものが入って、まぁまぁそういうマルウェアだらけになりますみたいな評判が立つっていうのが、

    小飼:マルウェアがなくても、SNSは広告だらけなわけじゃん。広告ブロッカーも、AppleわざわざAPI用意してるんですよね。そうです、ブラウザに対する裏のプラグインを書くためのAPIが用意してあるんですよね。それ使ってるんですよ。

    山路:これ、でもAppleがそういうある意味きれいごとというか、消費者のためみたいなことをできるのも、自分たちはリアルなモノを売って金を稼いでるからっていう、

    小飼:そうなんですよ。だから、毎年iPhoneだけで2億台売ってるからね(笑)。2億。

    山路:Appleの広告なんかのプライバシーとかの姿勢に関しては共感するところもあるんですけれども、ただみんながみんな、あらゆるモノに対して有料のお金を払ってくれるわけでは絶対ないじゃないですか。広告ビジネスってやっぱ伸びるんでしょうか、これから、

    小飼:伸びるんでしょうかというのか、逆広告効果というのがやっぱ出てきてるよね。

    山路:だけど、Metaとか、Googleはちょっと下がっちゃいますけど、Metaなんかの業績が伸びてるというのは広告ビジネスにまだ期待されてるってことですよね、おそらくは。

    小飼:まぁでもMetaの株価上げっていうのは、やっぱりQuestへの再注目なのかなというふうに見てはいるんだけども。

    山路:広告というよりは?

    小飼:広告ビジネスが好調というよりも。

    山路:そうか、じゃあ広告ビジネスがガンと伸びるとみんな必ずしも思ってるわけじゃない?

    小飼:同じ広告であれば、Facebookのほうがいける、我々にとってはクソ広告でも、一般の人たちにとってはそうでない可能性というのはけっこうある。

    山路:それなりにプロファイルに応じた広告が表示されて、そんなにイヤじゃないっていう人も多いかもしれない。それにしても詐欺多いですけどね、あのへんとかはしっかり取り締まれよと思ったりもするんですけれども。
     そのEU規制、さっきこのAppleのことなんかでもEUがガンと規制を入れてきたし、あと先に挙げたそのAmazonのiRobot買収に関しても、それをOK出さなかったのはEUの判断に、

    小飼:おかげでネットが取っ払ったはずの国境が再び出現している感じは、すごいするね。

    山路:これ、『ウォール・ストリート・ジャーナル』がちょっとこの、なんと言いましょうか、皮肉というか、な記事を上げてるんですけど、EUの規制というのは結局EU自体の首絞めることになるだろうという、

    小飼:それはすごい感じる。っていうのも、Yahoo!Japanとかは諦めちゃったもんね。諦めて、EUからのアクセスを遮断しちゃったからね(笑)。アメリカに留学してて、そこからオランダに一学期留学していた次女が嘆いてましたよ、Yahoo!が見えなくなったって(笑)。