「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
2018年11月20日(火)配信の「小飼弾の論弾」の後半をお届けします。
2018年12月18日(火)に配信する予定だった、「小飼弾の論弾」はネットワーク機材のトラブルによって配信ができませんでした。そこで2019年1月は、通常配信を含めて3回のライブ配信を行う予定です。楽しみにしてくださっていた方には、本当に申し訳ありません。
次回は、2019年1月8日(火)20:00、12月に出来なかった「2018年を騒がせた数々の「おまいう」事件を振り返る」の予定です。
お楽しみに!
2018/11/20配信のハイライト(その2)
- 「なぜ経済が大きくなるのか」をバランスシートで説明する
- バランスシートで見る持ち家vs賃貸
- 「土地の所有権」という人類の思い込み
- バランスシートで考える奨学金
- 教育ほどいい投資はない
「なぜ経済が大きくなるのか」をバランスシートで説明する
山路:日本中の会社で経理不足なんていう話が出てて、それをちょっと簿記3級が驚く程価値を持つっていう記事まで出てたりするんですけど、ただ普通の人にとって、複式簿記って物凄く面倒臭そうなイメージがあるじゃないですか。
小飼:まぁ確かにあれだよね、書く項目が倍になるという。手間が倍になります。
山路:よく使われる複式簿記の概略図っていうのはこんな感じなんですけども、映ります? この左側に資産が来て、右側に負債と資本が来る。こう……。
小飼:なんでこういうふうに書くっていうのが、大事かって言ったら、じゃあ左側に何があるかっていうと、自分が使えるもの、使っていいものが書いてあります。
山路:読み上げると、流動資産、まあ現金預金とか。
小飼:いやいやそういう言い方はちょっと後回しにしましょう。じゃあ右側には何が書いてあるかっていったら、人から借りたもの、自分自身で持っているもの。要は借りたお金だって使えるわけですよね。
山路:借金も自分が元から持っていたお金も全部合わせて、自分の使えるお金。
小飼:そう、だからまさに借金も財産のうちなんですよね。借金も財産のうちというのに、驚いているっていう、なぜ驚くかっていったら、小中学校で義務教育で教わらないからですよね。
山路:借金、ちょっとよくないものというか、そこのところで、どういうふうな借金をして、どういう借金というのはどういう意味があるのかを学校で教えてくれる授業がない。算数とか数学でも借金という項目がないですもんね。
小飼:うん、ない。単に悪いとされている。でも悪い、よくだから貸し借りはないほうがいいといいますけれども、それは本当か? というお話でもありますよね。
山路:借金も時には、悪くないこともある?
小飼:よく無借金経営っていう言い方するじゃないですか。無借金経営というのはありえますが、無負債経営というのはおよそ現代社会であれば、ありえないわけですよね。無負債経営というのが唯一成り立つのは、すべての取引が現物現金決済である時のみですよね。
山路:はっきりいって、八百屋さんですら、それは完全には出来ないですよね。
小飼:ないわけです。普通の人でもクレジットカードとかを使っていれば、来月引き落とされるお金というのがあるわけですよね。
山路:クレジットカードでもそこの部分は負債ということには、バランスシート的にはなる。
小飼:そう、売上も請求書を出してから、その場でお金をくれるということはあんましないですよね。
山路:そりゃそうですよね。
「ニコニコ現金払い」(コメント)
山路:ニコニコ現金払いを徹底したらそれはバランスシートというのはそれは負債がなくなるということですよね。
小飼:というのかバランスシートでいうと、左側の上から下までが現金、上から下までが自己資本という。これであれば、わざわざ複式にする必要はないですよね。
山路:そもそもそういうんだったら、本当にすべての人がそうだったら、複式簿記っていうのは生まれてなかったわけですよね。
小飼:生まれてなかったわけです。人から貸し借りが出来るようになってから、経済は大きくなったんですよね。じゃなぜ経済が大きくなるのかというのは、バランスシートでちょっと説明してみましょう。
じゃあいつもニコニコ現金払い人というのが、Aさん。
山路:まぁ小さな村でやりとりしているんだったら、そういうこと。
小飼:AさんとBさん。バランスシートで、これ両方共100%現金で、100%自己資本です。でもBさんがお金貸してくれ、Aさんがいいよっていって、だからここでは物事を単純にするために、Aさんの財産全部Bさんに貸したとしましょう。
山路:大胆だなあ。
小飼:それで何が起きるかといいますと、じゃあAさんのバランスシートの高さは変わるでしょうか? AさんがBさんに全額貸します。
山路:どう思われますか? 皆さん。バランスシートの。
小飼:ちょっとコメント欲しいですね。じゃあ変わると思う人?
山路:お、コメント、変わらない。
小飼:そうなんですよ。高さ変わらないんですよ。ここの現金って書いてあったところが、貸付金になるだけで。あるいは投資でもなんでもいいですけど、高さは変わらない。ここの部分というのも、自己資本が100%のままっていうのはぜんぜん変わらないわけです。じゃあBさんはどうなるか? Bさんのほうは明らかに変わりますよね。Aさんの持っていた現金というのが、Bさんのところに載ってきます。バーンと。でもこれバーンと載せただけではバランスしてないですよね?
山路:右側に。
小飼:じゃあ右側が変わるわけです。ここの部分が負債になるわけですよね。
山路:だけどBさんはお金を借りたことで、今までよりもすごい大きな金を動かせる。
小飼:はい、じつは経済のサイズっていうのは、これの合計です。
山路:なんか不思議ですね。
小飼:この分、経済が大きくなったんですよ。ただ一つ勘違いして欲しくないのは、今のやりとりを見ての通り、バランスシート自体というのは、バランスはしてるけども、保存量ではないです。エネルギー質量保存の法則みたいな保存するものではないです。
山路:今、不自然に増えましたもんね。
小飼:不自然に増えたけれども、これで全体のバランスシートを出すという時には、これ足しちゃいけないんです。経済のサイズはこれ足しちゃっていいんですけれども、バランスシートを連結するっていうのは、Aさんの貸付金と、Bさんの借り入れ金というのを相殺しなければいけないので、結局のところもとのサイズのままになるんですね。連結決算した場合というのは。
山路:それが親会社子会社いる場合の、最終的な決算で出すのはそうなる。
小飼:そういうことです。
山路:これって結局GDPを算出する時とかも、全部ある意味そういう消し込みとかを行った上で。
小飼:消し込んでないんですね、それが。というのも、ありとあらゆるところで使われてはいないじゃないですか。もし本当の本当にありとあらゆるところで使われているのであれば、やっぱり遅くとも中学校で教えてくれると思いますよ。でもね、やっぱり陰謀説でないけれども、義務教育のうちにこれをやっておかないというのは、絶対陰謀だと思うね。
だって2次方程式は教えるじゃん。確か2次方程式とバランスシートの発見というのはだいたい似たような時期なんですよ。
山路:そうなんですか? 確かバランスシートって中世のベネチア14世紀だったか15世紀かその辺、2次方程式もそれくらい?
小飼:2次方程式もそれくらいというのか、でも最初出た時には解なしだったんですけども、だから虚数を入れて、そう複素解まで認めれば必ず答えが出るよ、二つ出るよというのははい、でもそれは置いといても。
山路:2次方程式を日々使うというよりも、複式簿記、バランスシートを使う機会のほうが多そうな気がするんですけどもね。
小飼:こっちのほうがずっと多いので、はい。
山路:そういうふうに出来上がったバランスシート、まあ企業会計なんかではこう当たり前のように資産の状況とかを見るのに使われているじゃないですか。
小飼:本当に義務教育の範囲でPLは作れるわけです。
山路:プロフィット&ロスで。損益計算書といわれるやつですよね。でもBSはそもそも概念を教えてもらっていない。
企業会計の場合っていうのは、企業って色んな所からたとえば借り入れしたりとか、そういうことで管理しないと訳がわかんなくなっちゃう、その自分の資本、自己資本がどれくらいかとか、そういうことがわかんなくなってしまうから複式簿記を使うっていうのはわかるんですけども、個人でもこういう複式簿記っていうのは必要なものなんですか? 普通の人が生きていく上で。
小飼:そうですね、本当に100%現金払いの人であれば、それ、いいのかもしれないですけど。
山路:そうでない、多少なりともクレジットカードやったりとか、あるいは給料も言ってみたら払うよって言われてその場で貰ってない限りは……。
小飼:はい、あれも経営している人からみれば、月給というのもまだ貰ってないものというのは、「売掛金」なんですよね。accounts receivableなんですよね、英語で言うと。
山路:個人の人生ででかい意味持って来るのは、でかい借金をする時なのかな。
小飼:特に大きな借金をする時ですよね。基本は。だから確かで全体の額、借りた分、自前の分という書き方をするわけですけれども、でも書く項目で、書く順番がありますよね。左のほうは、上に現金とか書きますよね、キャッシュとかね。下のほうに行くと……。
山路:土地とかそういう……。
小飼:はい土地とか。
山路:株券みたいな。
小飼:はい、これ明らかに順番がありまして、現金に近いものほど上に書く、左側は。
山路:うんうん。よく流動資産とか固定資産みたいな言い方をされている区別だったりするんですか。
小飼:はい、なんでこういう順番で乗っけるかというのは、意味があるんですよ。さっきバランスシートのサイズというのは、保存量ではないというふうに言いましたけども、確固たるものでもないんですよね。
山路:確固たるものではない?
小飼:確固たるものではない。じゃあたとえばそうですね。話をわかりやすくするために、現金2億円持っている人がいたとします。これが2億円でーす。自己資本2億円ですと。この人が1億円借りましたと。
山路:更に借りたと。
小飼:1億円借りましたと。1億円借りて何をしたかといいますと、2億円の家を買ったと。
山路:また剛気な買い物を。
小飼:そうするとこれのトータルのサイズというのは。
バランスシートは1億円借りたことによって、1億円増えましたと。もとが2億円でした。はい。2億円の不動産がここに来ましたと。じゃこの人の家というのは、果たして本当にここに書いた通り、2億円の価値があるのでしょうか。あるいは2億円に過ぎないのでしょうか。
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