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小飼弾の論弾 #103 「『FACTFULNESS』解説、世界は思っているよりずーっと甘い!」
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小飼弾の論弾 #103 「『FACTFULNESS』解説、世界は思っているよりずーっと甘い!」

2019-03-21 07:00

    「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
    2019年1月15日(火)配信の「小飼弾の論弾」の後半をお届けします。

     次回は、2019年4月2日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2019/01/15配信のハイライト(その2)

    • アメリカの平均寿命とオピオイド中毒
    • 『FACTFULNESS』「世の中そんなに辛くない」
    • 「ディスプレイ的な労働」をやめよう
    • 「労働しなくてもお金は手に入る」というFACT
    • フェイクニュースと信頼のネットワークと暴力
    • 信頼できるソースとブロックチェーンのコスト
    • 「ヒーローを殺すFACTFULNESS」と人類を扱うための「システム主義」

    アメリカの平均寿命とオピオイド中毒

    山路:アメリカで、なにか死亡率ででかい変化が起こってるんですか?

    小飼:でかい変化というよりも、皆さんご存知の通り、アメリカというのは世界一医療にお金を使っている国です。だから絶対額でもそうですし、一人頭でもそうですし、そう、GDPに占める医療費の割合って今17%くらいなのかな。

    山路:すごく多くないですか!?

    小飼:すごく多いです。すごく多いにも関わらず、平均寿命はキューバの下だという。

    山路:アホとしかいいようがないじゃないですか(笑)。

    小飼:そうなんですよ。上手くいってないものの代表なんですけど、なんで上手く行ってないかっていったら、医療を国営化してないからですよね。少なくとも医療費勘定を国営化してないからですよね。日本はこの点ではもう世界一の優等生だと。

    山路:アメリカって非常に合理的な行動をとって、それで企業を育てたりとかするのが上手な国だったりするじゃないですか。たとえばマクドナルドなんかも徹底的なマニュアル化して、それこそ検証のサイクル回して、1番最適な方法をやって、世界企業に育てるとか。シリコンバレー企業なんかもそうだし、そういうスーパーマーケットのチェーンなんかでもデータに基づいて検証してやっていくみたいな。なんで医療制度に関してはそれが成り立たないんでしょうね。

    小飼:国営を認めないからですよね。

    山路:もう単純にイデオロギーのとこに囚われてる?

    小飼:まあ囚われてるというのか、国営のほうが上手く行くっていうのは、確かに直感には反しますよね。でも直感には反しますけども、エビデンスは積み上がっているわけですよね。にも関わらず採用できないというのは、もうアメリカの駄目なところと言い切っていいでしょうね。

    山路:第二次世界大戦後の共産主義に対するアレルギーみたいなのが、まだ続いていたりするっていうのもあるんですかね?

    小飼:うん、でもその一方でフリーウェイはフリーなわけですよね。だからそこはちょっと不思議なところで。

    山路:ああ。なんか自分たちの理解できることに関しては、割とそういうことを素直に取り入れるのに。

    小飼:理解できることに関してではなくて、フリーウェイがフリーというのも、直感的とはいい難いですよね。日本のように一々金とって受益者利益というほうが、だからむしろ資本主義の直感には合いますよね。

    山路:そうか、ちょうど逆のことしてるんだ。医療と道路では、日本とアメリカは。

    小飼:道路に関しては日本のほうがはるかに上手くいってない。道路を建設する地形が、日本はだいぶ不利だということを差っ引いても上手くいってない。だけれども、どっちがトータルで金がかかるっていったら医療のほうなんですよね。

    山路:GDPの17%ってどうかしてますよね。

    小飼:たぶんこのまま行くと、20%を越えてもおかしくないんですけども。

    山路:流石にそろそろもう皆保険にしようっていうのが、オバマケアとかでだいぶ進んだとは思うんですけどね。

    小飼:しかも医療費払えなくて破産というのが、だいたい個人破産の4割っていうね。

    山路:アハハ、すげえな。

    小飼:本当にアメリカの医療制度というのは、徹底的にクソなんですよ。なんですけれども、その一方で、じゃあ世界で1番いい医療、金に糸目をつけなければどこが1番いい医療を受けられるかっていうのも、アメリカなんですよね。

    山路:うーん、でもいい保険って、1か月に40万円とか50万円とかかかるっていうふうには聞きましたけど(笑)。

    小飼:そうですね、まともなブルークロスの保険というのは、だいたい月2000ドル位とりますね。ただし、日本の保険よりもカバレッジも深くて、たとえばメガネとか歯科治療とかもカバーしてくれますね。そういういい保険だと。

    山路:しかしほんとにアメリカというのは、合理的なところと非合理なところというのがごちゃまぜになってて、ほんとに。

    小飼:アメリカという国を一つだと思うとわかんないんだけれども、その国の名前の通りに、The United Statesというふうに、要はStateが集まって出来た連邦だというふうに考えると。だから、田舎州がすごい下駄履かせてもらってるわけですよ。人口3千万を越えるカナダよりも人口が多い、カルフォルニア州もあれですよ。

    山路:ワイオミング州と同じ扱いみたいな(笑)。

    小飼:うん、鳥取よりも人が少ないワイオミング州も上院議員の数って2人なんですよね。だから国連と同じなんですよね。ちっちゃい国も大きな国も票数は同じだっていう。

    山路:なんか一票の格差のハンパなさっていうのがすごいですよね。

    小飼:うん、ハンパなくなっちゃうんですよね。だから州という制度のお蔭で。

    山路:『FACTFULNESS』とはずれるんですけど、アメリカのやつのちょっと続きで、最近、死亡率とかで、またアメリカの統計って不思議なデータ出てますよね。

    小飼:はい、オピオイド中毒で死んだ人がついに交通事故死者を上回ったという。

    山路:オピオイドっていうのは、ケシから作られたいわゆるモルヒネ。モルヒネとか、ああいう医者が処方する鎮痛剤というのかな。

    小飼:はい、辛さから逃げるための薬ですね。

    山路:それを乱用して薬中になっちゃう人が。これって何なんですかね? っというか、ここまで乱用とかが広まるというのは、何なんだろうという。

    小飼:いや、やっぱり辛いからでしょうね。

    山路:現実が?

    小飼:はい。彼らにとっての現実が辛いからでしょうね。

    山路:別のニュースで読んだのは、ゲームとか、あとエロコンテンツにもうハマって、結局労働をしなくなる若者がすごい増えて、要は引きこもりになって、それで労働人口が減っているという、もう統計に表れるくらい減ってるそうだったり。

    小飼:ああ数万のオーダーでは出てるっていうことだよね、統計に反映されるっていうのは。

    山路:そんなにアメリカは生きるのが辛いところになっちゃった。

    小飼:いや辛いところだと思いますよ。だから今言ったように、自業自得をよしとするところがすごい強いですからね。けっこう、だからその一方で人助けのニュースはすごい取り上げられるじゃないですか。でも、じつはそれがニュースになること自体、不健全の兆候なんですよね。

    山路:美談に頼っちゃうというか。ヒーローが出る国というのはよろしくないっていうのと同じみたいな。

    小飼:そうそう。

    『FACTFULNESS』「世の中そんなに辛くない」

    「自己責任の国か」(コメント)
    「GAFAのような富裕な企業がある一方で落ちぶれる人もいる」(コメント)

    山路:さっき『FACTFULNESS』では、現実というのはそんなに厳しいもんじゃないよっていうことがここで語られていると。

    小飼:はい、ただ『FACTFULNESS』も一つ言いたいことがあって、『FACTFULNESS』のFACTっていうのは、statisticalなんですよね。だから統計的factなんですよね。
     確かに世界というのは、統計的に良くなっていて、特に先進国の人たちが思い込まされているよりは、全世界的に人類のおかれている状況というのは、すごい良くなっているし、これから悪くなる兆候というのは、あんまりないと。地球温暖化くらいですね、はい。地球温暖化も決して小さいことではないんですけれども。
     なんですけれども、統計的っていうのは、それが自分に当てはまるかどうかっていうのは、別問題なんですよね。たとえば、今や癌の多くは助かる病気なわけですよね。でも、それもどの癌かというのによって違うわけですよね。

    山路:膵臓癌とかだったらかなり。

    小飼:前立腺と乳癌というのは、もう滅多なことでは死なない病になったんですけど、著者の1人も羅患した膵癌というのは、すごい助からない。

    山路:まあジョブズの命も奪ったやつですよね。

    「進行の早い癌もあるから」(コメント)

    山路:そうですよね、本当に。

    小飼:だから、世界が良くなっても俺良くなってないじゃないかという設問に対しては、うん、もう無力感は出てきちゃうよな、というふうにちょっと穿った見方ですけれども。

    山路:あともう一つ、ちょっとこの本って本当に素晴らしい本だと思って、私も読んで明るくなるところもあったし、何というか元気が出る本でもあるんだけれども、その一方で思ったのがこの著者、世界を、まぁ1番わかりやすいところでいうと、4つのレベルに分けて考えると、物事っていうのは非常にわかりやすくなると言って、所得のレベルに応じて、レベル1、レベル2、レベル3、レベル4って分けてるじゃないですか。

    小飼:なってますね。

    山路:先進国はもう皆ほぼレベル4。

    小飼:はい。

    山路:レベル4に入るという、要は1日の給金が32ドル以上でしたっけ? それくらい貰えるところっていうのは、もう皆、はっきり言って、そんな生きていくのに苦労はしねえところなんだと、生き死にの問題じゃないんだっていう。
     ただそれを聞いて先進国で苦しんでいる人が心穏かになるかっていうと、そんなことではないような気もするんですよね。

    小飼:そうなんですよね。だから、むしろ世の中こんなに良くなってるのに、俺は良くなってないんじゃないかっていう見方をしちゃう人は少なくないんじゃないかなというふうに思いますけども、それがマジョリティになるかっていうのは、流石にそこまではわかんないけども、でも少なくとも、人類世界はどんどん甘くなっているという、このことはまあ少なくとも、そこまでは知っておくべきですよね。

     
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