「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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今回は、2020年01月05日(火)配信のテキストをお届けします。
次回は、2021年03月30日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
新刊『小飼弾の超訳「お金」理論』
「ブラック労働者」をやめましょう。「お金を増やさねばならない」思い込みを捨てましょう。働いたら負け。もう労働には価値はない。理想は、誰でも自由に生きて食べていける世の中。なのに、いつまでも「お金」に振り回されるのはなぜか―――。
『小飼弾の超訳「お金」理論』では、世界を動かしているお金の仕組みと、お金との付き合い方をやさしく解き明かします。
2021/01/05配信のハイライト
- コロナ絡みの話題と「ワクチンとはなにか?」
- ビオンテック製ワクチンの仕組みと残った謎
- QRコードでワクチンを合成する未来
- 糖尿病発覚とその対策
- 糖質制限と尿酸と酒と「続けるコツ」
- 糖尿病との付き合い方とGoogleの労組について
コロナ絡みの話題と「ワクチンとはなにか?」
山路:皆さんどうもあけましておめでとうございます。
小飼:あけましておめでとうございます。
山路:弾さん、どうでした、今年の年末年始。
小飼:年末年始というよりも、やっと、去年というよりも2020年終わったなーっていう。本当にあけましておめでとうというよりも、やっと開けやがった! みたいな感じでしたね。よく人というのは年々時が経つのは早く感じるようになるって言いますけれども、2020年は長かったよな。体感が。
山路:私なんかは家で仕事してることが多くて、意外に生活の変化は大きくはなかったんだけど。
小飼:まあフリーランスだからね。在宅勤務だからね、もともと。
山路:世の中の人の受けてる衝撃とちょっとギャップがあるところもあり。あ、本を買ってくださった方がけっこういらっしゃって。
小飼:そうなんですよ、ありがとうございます。
山路:ありがとうございます。けっこう力を入れて作ったものなんで、紙の本が今月終わりに出るんでしたよね。
小飼:そうなんです、紙がまだなんですよね。じつは珍しい。最近はあえて紙を先に出す方が多いですよね。電子版は後みたいな。
山路:いずれにせよ買っていただいて、どうもありがとうございました。まぁ正月気分があんまり、正月気分があったのかないのかわからないうちに、今度は緊急事態宣言ですよ。
小飼:緊急事態isなに? 緊急事態とは? 緊急とは?
山路:緊急とはなんぞやという、しかもそれが緊急事態を出すことをなんかこう予定してると言うことを予告ホームランのように言われて。しかも具体的には何をどうすんのかもわからん。
小飼:予告ホームラン……ではないでしょう。なんか、こんなこと言うのであれば、今年は緊急にオリンピックやりますって言っても通じるよ。これで緊急が通るのであれば、オリンピックだって十分緊急でしょう。
山路:これ、今まだ緊急事態宣言の内容ってのがよくわからないところで言うのもなんなんすけど
小飼:緊急事態とは? これ、まず映画館は閉まりますか、閉まりません。
山路:なんか閉まらないって、私が最初に見たニュースでは言ってたと思ったんですけど、それもなんか曖昧になってきたんでしたっけ。
小飼:飲み屋が早く閉まるぐらい? だから、これだと別に緊急事態という言葉自体はパンデミックに限ったわけじゃないじゃないですか、地震とかだって緊急事態ですし。で、普通緊急事態って言うと、サイレンがウィーヨンウィーヨンって鳴って、目の前でシャッターが閉まって「待ってくれー、まだおれ出てないんだー」みたいな、そういう。
山路:それはすごい緊急事態っすよね。
小飼:今週の終わりに出すか検討する?
山路:なんかこの微妙な肩透かされ感っていうのかなあ、あるんだよなぁ。
小飼:微妙じゃなくって。
山路:大きな肩透かし(笑)
小飼:これは何と言えば、「緊急という言葉に謝れ」レベルな
山路:そこに謝るのか(笑)。なんか学校とかは基本的に休校にしないらしいっすよね。
小飼:学校は開いてますと。
山路:で、センター試験もやると。去年の段階でセンター試験、みんなが不安になるから慶応はしませんと言っていたという。それどうなんだろうな、ほんとどうやってこの状況でセンター試験をやるのかっていうがあるんですけどもね。今んところただ、比較的小さな子供とか、まあ10代はあんまりコロナの影響が出てないっていうことなんですけども。
小飼:ただ最近の感染者は若い人メインになってきたよね。20代30代が感染させるのメインを占めて。
山路:あとイギリスの方の変異種。
小飼:変異「株」ね。
山路:変異株か。
小飼:種で変わったら、これコロナウイルスでなくてたとえばノロウイルスとか、それくらいの違いが種で、種と株というのも長い長い話になっちゃうんだけど。まぁとにかく株と言いましょう。
山路:それは若い人でも重症になる可能性があるかもしれんみたいな風なことをちょっと研究者が言い始めてたりもする。
小飼:まぁとにかく広がりやすいと。
山路:重症化率が同じだとしても、広まり易かったらそれだけ患者が増えるてことですもんね。
「センター試験はリモートでやればいいのに」(コメント)
山路:これの制度がまぁねえ。
小飼:結局、不正をどうするのかというので、日本以上に大学入試が大事な韓国ではすごい厳重な管理をしてますよね。
山路:本人確認?
小飼:本人確認だけではなくって、感染してても接触してても受験はできるけど、ちゃんと別会場とか用意してという、ものすごいコストかけてます。コストかけてでもやるものはやるんだと言う。だから、あれはすごいなと思うけど、でも、そういうのであればさ、もう少し入試のAO化を進めといた方が良かったんじゃねっていう気も。
山路:AO入試かぁ、あんまり最近聞かなくなりましたね。そういや。
小飼:でもアメリカが基本AOなんですよね。共通試験の結果というのどう使うかというのは、もう大学側の裁量に任されてて。で、今後使えませんっていうのがバカバカ出たでしょ。
山路:日本もそっちの方向に持ってった方がいいって言う人と
小飼:だから検索前提の問題を、要するに作問が大変すぎるんだろうね。
山路:先生の作る側の手間の方がでかいってことなんですね。
「スマホもこみち」
山路:あ(笑)、「持ち込み」ね。
「持ち込み可でやればいい」(コメント)
小飼:でも基本的に、でもあれだなあ、僕の行ってた大学は基本、大学内での試験というのはオープンブックって言って、本持ち込み可なんですけども。持ち込むぐらいであれば暗記したほうがいいというのか、各自で持ち込み用のメモを作るというところで落ち着いた感じがありますねっていうのも、アメリカの教科書っていうのはでかい、分厚いんですよ。だから、こんなのあるの何冊もを持ち込むというのはなかなかの苦行になってしまうので。
山路:さすがのアメリカでも、電子機器はまだ駄目ですか。
小飼:ですね、スマートフォンは駄目ですね。要するにscientific caluculatorはOKでも、もうcomputerは駄目ですね。
山路:本当、センター試験、
スタッフ:共通テストに
山路:あれ、今年から共通テストか。失礼、センター試験って言っちゃったか。
小飼:センター試験どころか、共通一次って言いかねないよね。
山路:そうっすね、わたし共通一次でした(笑)。
小飼:僕はそういうのもうすっとばしちゃったんで、完全に外野ですね。
山路:そうかそうか、共通テスト、失礼しました。まあもしも受験生の方がこれを見てたら、頑張って下さいと。受験生見てなさそうな気がするが。
小飼:いや名前だけじゃなくて、いろいろ、特に英語とかいろいろ変えようとしたんだけれども、現場から総スカンが出て、今のところはまだ
山路:結局、同じようなもんすよね。
小飼:似たようなもんかな。
山路:いやいやいや。もしもこれでセンター試験やって、後で感染とかがひどくなったら、二次試験はもしかしたらセンター試験の点数だけになるんじゃないかという観測をしてる人もいましたけどもね。
小飼:それもあるんだけども、前々から僕言ってるじゃないですか、何で各学校で作問しなければいけないほど、入試というプロセスに頼るんだと。上位校というのは要は成績がいい、出来のいい、飲み込みの早い生徒を入れるところでしょ。要するに学校の側から見たらイージーモードなわけです。そういうところがいい学校とかってふざけんなと。
山路:手間かけてねえじゃねえかと(笑)。
小飼:そう。元からできがいいやつに。イージーゲームじゃん。
山路:なんかあらゆるところの選抜がそうなってますけどもね、本当に。
小飼:だからもしそういうのでいいのであれば、最低限でいいと思いますよ。それこそ、今はもう落ち着いたかもしれないですけど、出たばっかりの時のSwitchだとかPS5だとかと同じで、抽選でいいじゃん。本当にそう思う。速いもの勝ちで多くなっちゃったら、もう抽選でいいじゃん。
山路:じゃあこれ、コロナをめぐる話題、もうちょっと軽いニュースとして
小飼:本当に大学試験というのか、入試はないんです、アメリカの場合。共通テスト、SATだとかACTだとかというのは、あくまでも参考点を出すためのものであって。テスト受けます、志望校に送ってくださいって言うとスコアが送られてきます。でもそのスコアをどう解釈するのかっていうのはもう各大学のアドミッションオフィスの胸先三寸なんで。
ただやっぱり学校と相性が悪い子は、僕とか典型的ですけれども、そこで挽回するっていうところがあるんで。だから僕は共通テストに救われてるはずなんですけど、どの程度救われてるのかというのはもうアドミッションオフィスの中の人しか知りようがない。
山路:ある意味、欧米とかの大学のほうがブラックボックス的な要素は大きいわけなんですね。じゃ、ちょっとコロナがらみで、ワクチンの軽い話題。ロシアのほうでワクチン接種をしようとしたら、ワクチン接種したら2ヶ月飲酒を控えてくれと言ったら国民が大ブーイングを。
小飼:あー、でもそれは俺でも辛いかもしれない。2ヶ月だよね。2ヶ月だよね。そうか、飲酒がストロングゼロになるんだ(笑)
山路:これを2ヶ月完全禁止じゃなくてもいいから、みたいなことなんか医療の担当大臣とかが火消しに追われてるそうだけど、だいたいロシア国民がお約束通りの反応してくれるっていうのはまあちょっといいニュースですけどね(笑)。まぁ肝心のワクチン、いろいろそれを巡って混乱がもう既に出てるようで、ニューヨーク州の方でワクチンの不正入手がもう起きてるそうなんすよね。
小飼:どころか、日本でも起こってるよ。しかも、だから認可前のやつ、密輸入にしてきたのを打ったというニュースが。
山路:そこまでニュースでもうわかってるわけなんだ。
小飼:だから、中国の、だからまだ中国ですら認可が下りてない、少なくとも当時は降りてなかったんですけど
山路:どういうルートで……なんか怖すぎますけど、さすがに。それ、普通に家にいてマスクしてるほうが安全じゃねえかって気がするんですけど、認可されてないワクチン打つよりは。
「そんなわけのわからんもん打ちたいか」(コメント)
山路:ほんとそう思うわ。
小飼:ほんとに闇ワクチンですよ。(コメントを見ながら)酒は飲みます。そうだ、今日この後ちょっと話、出てきますけれども。
山路:ちょっと弾さんの健康絡みで限定のほうで。で、ワクチンでかなり面白いニュースがあったんですよね。元は英文の、これちょっとURL入りきらないかな。じゃ、日本語で翻訳されたやつの方をちょっと。
小飼:あー柞刈湯葉さんが訳したやつね。
山路:そっちを流した方がいいかな。SF作家の方がこれ、翻訳したやつかな。
小飼:横浜駅SF
山路:はい、ビオンテックが開発したのmRNAワクチン、はいそれの中身が公開されて解説されているという、凄い未来チックな話なんですよね。
小飼:けっこう僕が思ってた疑問にも答える形になっててくれて、そこは嬉しかったなあと。
山路:そもそもビオンテックのワクチンって、メッセンジャーRNAのプログラミングというか配列を作った……
小飼:その前に「ワクチンが何なのか」っていうのから話した方がいいと思います。で、ワクチンというのは、要は免疫系に予めこういう病原体が来たら抗体を作れるようにしといてねと、まぁ例えると指名手配書みたいなものですね。だから本当に犯人が来た時にすぐ捕縛できるように。まぁメッセージなわけです、要するに。
で、それをどうやって人の免疫系に教え込むかというので、いろんな種類があるんですけれども。で、ワクチン、英語だとvaccineですけども、ていうのがもう名前からもわかるとおり、最初は弱毒化した天然痘に近い牛痘、牛の天然痘。
山路:ワクチンという言葉自体がもう牛痘からきてる言葉なのか。
小飼:そう、牛痘から来てるんですよ。何で牛痘が天然痘のワクチンになれたかって言うと、要はウイルスって、ものすごいぶっちゃけた言い方をすると、遺伝物質と殻しかないんですよね。殻のところをenvelopeっていますけれども、たいていタンパク質が生えてるんですよ。
で、そのタンパク質を使って細胞にくっついて、遺伝物質、DNAの時もありますしRNAの時もありますけど、を宿主の細胞の中にぶちまけてっていうのをやるんですけど。だとしたら、病原体、この場合はウイルスですけれども、の表面に栓をしちゃえば細胞にくっつけなくなります。これが抗体なんです。
で、その抗体を作るための情報をあらかじめ伝えればいいので。だから表面だけ、原理的には表面だけあればいいわけですね。表面に生えてるスパイクっていますけれども。
山路:ほうほうほう。その情報を伝えるのにmRNAをぶち込む。
小飼:だから、待ってよ。
山路:あ、ごめんごめん。
小飼:だから、実はウイルスそのものも、ワクチンになりうるわけですよね。宿主の中に遺伝物質が入っちゃわなければ、だから表面だけ何らかの形で届けられればいい。じつは生ワクチンというのもあって、それはもうウイルスそのもの。なんだけども、あんまりひどい病気にはならないというやつですね。
山路:それってどうやって調整してるんですか。生なのにひどい病気にならない
小飼:だから株なんです。それがだから弱毒「株」なんです。同じ種だけれども、ひどい病気にはならない。
山路:そういうやつを選んでくるわけだ。
小飼:そういうことです。ポリオとかそうです。そうですというのか、そうでしたね。ソークワクチンと言いますけれども。だから初期にはやっぱり事故も起こったんです。弱毒株だと思ったら、けっこうvaccinationで発症しちゃうっていうのは今も昔もけっこうあるんですよね。
山路:それはやっぱり何か変異的な物があったりとかも
小飼:そうそうそう。だから毒性が復活しちゃったみたいなのもあるわけですよね。そういうこともあるので、ワクチンの開発っていうのは大変なわけですけれども。普通何年もかかるんですよね。
山路:それがなんかえらい今回、どのワクチンもめっちゃ速いスピードで。
小飼:速い。で、やっとビオンテックのやつなんですけど、ビオンテックのやつは違うんです。だから根本的な原理が違う。
山路:同じワクチンと名乗ってても。
小飼:そうそうそう。今までのワクチンというのは弱毒株だったり、あるいは失活、要は遺伝物質のないウイルスの死体といえば死体ですね。虎死して皮を残す、ウイルスは死してenvelopeを残す(笑)。
山路:envelopeだけでも効くこともある
小飼:そうそう。だから表面が大事なんです、ワクチンは。
山路:なるほどね。なるほど。
小飼:でもビオンテックのやつはそうでなくって、その表面を作らせる部分をコードした遺伝物質なんです。だから二段ロケットなんですよね。べつの言い方をすると、今までのワクチンという考えをすると、ヒト細胞自身にワクチンを作らせるんですよ。
山路:なんか学習させるというんではなくて、それ自体を作らせる、細胞に。
小飼:そう。人に限らず、生物のタンパク質っていうのは、みんな遺伝子をもとに作られてるわけですよね。この場合欲しいのはウイルスの表面に生えてるスパイクのタンパク質だけなので、そいつだけを作らせられればいいと。
山路:しかし話聞いてると、ふーんなるほどと思うけど、めっちゃ難しそうな、よくそんなこと、
小飼:めっちゃ難しいだけでなくって、逆説的に言うと、もしこれが簡単だとしたら。で、さらに逆説的に言うと何でウイルスというのには殻があるのか。ただの遺伝子物質だけで、要するにDNAだとかRNAそのものというのはウイルスにならんの、という。で、ならんとです。
山路:なぜに?
小飼:人に限らず、細胞が勝手に外からホイホイとDNAなどRNAなど入れたら、それこそ
山路:突然変異が起こりまくるみたいな
小飼:代謝が狂っちゃうでしょ。
山路:それを弾く仕組みがいる。
小飼:弾くというよりも、遺伝物質というのは高分子ですよね、大きな分子ですよね。そもそも大きな分子というのは簡単には入らないようになってます。で、大抵そういったものというのは剣呑な、悪者なのに、要するにコンピューターウイルスのウイルスとかと同じですよ、簡単に実行できちゃったらダメなわけです。基本的に細胞と言うのは、細胞の外にある高分子というのはそのまま入れません。バラバラにします。食べる時とかっていうのもバラバラにします。タンパク質もアミノ酸までバラバラにします。
で、核酸もDNAもRNAも、それこそ一個一個、モノマーまでバラバラにしてから吸収します。もう消化管の段階で。なのに、待て。RNAそのまま注射しても、それこそバラバラにならない? っていうのがまず一つの疑問ですよね。
山路:何でも入れられちゃうことになる
小飼:生物のこと知ってたら、簡単に受け入れられないよなと。で、これが普通のウイルスの場合、だからこそ殻をかぶってるんですよ。殻の中に遺伝物質を閉じ込めて、細胞にくっついて初めて細胞の中に押し込めるわけですよ。だから注射器になってるわけですよね。で、その注射器というのはもうウイルス毎に特徴があるので、中身が入ってない、空の注射器だけがワクチンになるんだけども。今回はそれでもなく、注射器の作り方を書いた、注射器の中身なので。
ビオンテック製ワクチンの仕組みと残った謎
山路:どこが、やっぱりブレイクスルーだったんですかね。そんなのってできないとも言われた訳ですよね、これちょっと前までビオンテックの方法って「先進的だけど実現できないんじゃないの」ってことも言われてたような。
小飼:で、ここで一つの特徴はビオンテックのワクチンというのはメッセンジャーRNA、RNAなんですよね。なんでDNAではないのか。
山路:RNAっていうのは、まあDNAなんかを一時的に複写するために利用されるみたいなイメージがあるんですけど。
小飼:えーとですね、じゃ一つ問題です。DNAとRNAどっちが先に登場したと考えられてるでしょう。
山路:最近RNAの方が先に登場したんじゃないかと
小飼:最近ではなくて、ずーっと昔から
山路:言われてた
小飼:言われてたじゃなくて、RNAの方が先でなきゃいけないの
山路:いけない?
小飼:DNAの方が先というのありえない。
山路:ありえない?
小飼:ありえない。
山路:ほーう。何かDNAで聞いたのは、DNAってそれこそDNAを使ったストレージみたいなものがあるぐらい安定した、けっこう安定して長持ちする物質っていうふうに聞いたんですけど、それと関係あるんですか
小飼:DNAというのは記憶しかできないんです。記録を残すという機能しかないんです。
山路:本当にストレージの機能しかない。
小飼:ストレージしかないんですよ。じゃあ実際にそれを読み出して、そこからタンパク質を合成してって言うのは、別のものがいる。で、そこがRNAとの違いで、RNAは単なる記憶物質ではないんです。それ自身に機能がある。
山路:ほう。
小飼:単なるメモリではなくてプロセッサ、自身がプロセッサでもあるんですね。mRNAっていう言い方をしたじゃないですか。mRNAっていうのはDNAと非常に機能も似てて。RNAウイルスって言った時には実質mRNAみたいなものなんですけれども。その他にもtRNAというのとrRNAというのもあります。ribosomeというのがあります。
山路:tはトランスポーテーションとかでしたっけ
小飼:transferRNA。
山路:トランスファーか。移送。
小飼:今のセントラルドグマというのは、まずDNAに記録されているものをmRNAに複写してそれを、真核生物の場合はそれを編集して、それをスプライシングって言いますけど、それがタンパク質合成系に送られて、ribosomeに送られて、そこでmRNAにそってタンパク質が、アミノ酸がくっつけられて、それからタンパク質になるって言われてますけど。じゃあタンパク質と核酸を何が繋いでるからって言ったら、これもRNAなんですよ。それがtRNAなんです。
で、それもやっぱり酵素が合成してるわけですけども。タンパク質だけじゃないんですよね。RNA自身がその酵素にもなってるんですよね。
山路:RNA自体が酵素
小飼:RNAだけでも、生物というのは理論的には作れるわけですけれども。
山路:じゃあ実際、だから本当に大昔、そもそもの誕生時点ではRNAだったかもしれないというのはそういうこと
小飼:そう、だからプロセッサがないとコンピューターにはならないでしょう。DNAというのはメモリーの機能しかないんですよ。少なくとも今知られてる中では。まぁ後で見つかったりするんですけどね、往々にして。そう、心臓が内分泌器官だったとかね。そういうことというのは後でわかっちゃうものなんですけど、でも少なくとも今知られている限りではDNAは基本的に記憶しかやんないと。だから、どう考えても出てきたのは後でしょと。
山路:いや、本当にそれはそうですね。そこのところで、じゃあmRNAでそういうスパイクの形、注射器の形に合ったものを作らせるようなアイデアが出てきてという。
小飼:そう、なんだけども、普通、注射器見たら注射させないですよね、ぶっ壊しますよね。その場で叩き壊しますよね。だからなんで叩き壊されないの? というのがまず真っ先に出てくるまっとうな質問ですよ。
山路:つるっとその細胞がそれを入れてくれる仕組み
小飼:つるっとではないですけども、じつは普通のmRNAではないんですよ。