「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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 今回は、2023年10月31日(火)配信のテキストをお届けします。

 次回は、2023年11月14日(火)19:00の配信です。いつもより配信開始が1時間早いのでご注意ください。行動遺伝学者、安藤寿康先生との対談回になります。

 お楽しみに!

2023/10/31配信のハイライト

  • Appleの新製品感想「27インチiMacほしい」と「コレジャナイプロダクトがまた一つ」
  • 「ドイツにGDP抜かれた」日本と世界経済の今後
  • 「自動運転とリニア」と「NTTは電話加入権返せ」
  • 「世界はシミュレーション」と視聴者質問「パレスチナ」「速読法」「禁酒したい」
  • 「ハリガネムシとカマキリ」と「腸内細菌と人間」
  • 「AIに毒を盛る方法」と「天文台に対する光害を防ぐ方法」

Appleの新製品感想「27インチiMacほしい」と「コレジャナイプロダクトがまた一つ」

山路:今日、ハロウィンじゃないですか。

小飼:ハロウィンっていうことはよくあるネタとして、“Trick or Treat”っていう言葉があるじゃないですか。
 これ、“Trick xor Treat”ではないかという、古くからのネタがあって、まずそこら辺からやろうか。

山路:え? なんですかそれは(笑)、

小飼:はい。普通”or”って言った場合、A or Bって言った場合、両方あってもいいわけですよ。TrickとTreatが両方あっても、orは成り立つわけですよね。
 で、“Trick and Treat”って言った場合、両方あった場合のみ成り立っている。あっち立てばこっち立たずって言った場合には、ORじゃなくて、eXclusive OR、略してXORって言うわけですけど、わりとよくあるネタです。

山路:それ、しかし言うなら人間で私たちが「いずれか」とか「または」っていう時ってだいたいeXclusive ORじゃないですか。

小飼:まぁ、なんですけども、一つこれはORでもいいっていうのがあって、ORだとじつはショートカットというのができるわけです。ショートカットというのはどういうことかというと、片方が真であれば、もう片方を見なくても全体が真だって言い切れるわけです。だから、Trickされたのであれば、もうTreatはあってもなくてもいいわけです。ANDの場合も、ショートサーキットは成り立つわけです。たとえばTrickがない場合っていうのはTreatもないわけですね。両方ないと成り立たないわけですから。だから、ANDとORっていうのはショートサーキットというのができるわけですよ。要は、片方だけ見て、そこで決定しちゃうっていうのがありうるんですけど、XORっていうのは両方見ないと、成り立たないわけですよね。

山路:しかし、ハロウィンの子供たちにそれをどう応用しろと(笑)。子供たちというか、応用するのは親のほうか。

小飼:でも、確かに普通の言語の中にXORに対する自然な表現というのがないというのは不思議でもあるな。論理演算ではわりとよく出てくることなので、あっち立てばこっち立たずというのは。

山路:論理演算のほうで、ORを両方の場合も含むというふうにしたのが、ちょっと人間の直感にはそもそも、

小飼:いや、人間の直感でも両方含むじゃないですか。

山路:そうですか?

小飼:どっちかが成り立てば全体が成り立つと。たとえばこの番組は、「僕か山路さんが出てたら成り立つ」という場合、両方出てても当然成り立つわけですよね。で、僕と山路さんがいて初めて成り立つ、ANDの場合っていうのは、片方だけいた場合っていうのは成り立たないわけですよね。
 どっちかで成り立つっていう場合、一緒にいた場合というのはダメだということになります。だからこれはXORではfalseいうことになるわけです。だからわりと、XORというのは、ORの厳しいやつという見方もできるわけですけど。

山路:論理学、最初に考えたやつがもうちょっと日常的な言葉に寄せてくれたらよかったのにという気はするんですけれどもね(笑)。

小飼:でも、すべての論理演算っていうのは、ある論理演算から全部導き出せるというのもあって、有名なやつはNANDですよね。だからNANDが一個あると、ANDもORも、もちろんXORも作れるわけです。

山路:その辺の論理学考えたやつ、最初からもうその辺のとこ考えて作ってたんですかね。

小飼:その辺のところを整理したのはジョン・ブールという人がいたので、その人の名前の形で、

山路:ブーリアン演算、

小飼:ブーリアンって呼んでますけれども。両方あってもいいの、両方あっても、それは喜ばれることだと思うので、これはORでいいんじゃないかというのが僕の結論ですよね。だから、Trick then Treatでもいいんだよ。両方やってもいいんだよって。

「OR判定を”|||“と”||“つのどっちでやるのと子供に返されるハロウィン」(コメント)

小飼:普通は論理演算の場合、C言語からパクった多くの言語の場合は、2つですね。だから”&“も2つ重ねるんですよ。AND演算の場合は。

山路:3つ重ねる言語ってあるんですか?

小飼:あんまないな。ちなみに一つの場合っていうのは、ビット演算。たとえば”3&1”っていうふうにやると1になる。“3|1”ってやると4になる。だから、ビット演算の場合ですね。

山路:ハロウィン、いきなり論理演算から入ったけれども(笑)、今一番、世間的な話題としては渋谷じゃないですか。

小飼:これにうまく繋げようと思ってね。いや、でも渋谷が引っ込んで、池袋が出てきたので、この場合渋谷XORは池袋になったわけです。でも、なんで? っていうね。

山路:今日の渋谷、祭りっぽい雰囲気じゃなくって、やや混んでる普通の日みたいな感じになってましたけどね。なんでしかし、こんなに行政と、寄ってくる人たちの間の関係っていうのが下手な関係になっちゃったんですかねと。

小飼:いや、渋谷ははっきり言って、整理整頓しすぎたと思いますよ。まだプラネタリウムがあった頃、まだ東横線が副都市線と繋がってなかった頃、本当に渋谷駅がターミナルだった頃っていうのは、もっと小汚かった。もっと安っぽい、チープなものもあったんだけども、今、高級なのばっかりじゃないですか。宮下公園とかも、かなりきれいにしちゃって。

山路:高級ショッピング街みたいな感じになってますもんね。

小飼:うん。だから、必要な安っぽさが失われた。挙句の果てにGoogleのオフィスだぜ。ずっと六本木にいやがれ、というわけにいかなかったのかな。

山路:そりゃ渋谷が若者の街じゃなくなっていくわな、という話ですよね。これしかし、ハロウィン、渋谷に来ないでって言うんじゃなくて、もうちょっと、たとえば池袋はわりと上手くやってるわけじゃないですか。

小飼:わりと上手くやったわけだよね。

山路:これ、渋谷のほうも、たとえば路上飲酒は徹底的にダメにしといて、もうちょっとこう、なんか祭りっぽいものを演出するみたいなことはできなかったのかなと思うんですけどね。

小飼:高層ビルだらけにすることを決めた時点で、その辺っていうのは終わってたのかもしれないね。
 いやーこういうのも、IT業界はかなりその辺では悪いことを重ねてるんだけど、渋谷の高層化を支えてきたのはIT業界だからね、ここ20年くらい。

山路:まぁなんか、でかいテナントってIT業界ですよね。

小飼:ビットバレーだとかって言って、僕も人のことは言えないな(笑)、その頃渋谷にオフィス引っ越したことがあるので。

「地方からしたら羨ましい」(コメント)
「なんで池袋のほうは成功してるの」(コメント)

小飼:だから、いい意味で安っぽさを捨ててないからだろうね。安っぽさを大事にしてたからだろうね。

山路:なんかね、コスプレのパレードみたいなものとかもけっこういい感じにいっているらしいですけどね、話では。実際に見てないからわかんないんですけど。

小飼:あとね、池袋はいまだにターミナルなんだよね。西武も東武も。

山路:あ、乗り入れの話?

小飼:乗り入れの話。

山路:あ、そうかそうか、西武池袋線の終点駅ってことね。

小飼:だから、直通のものがだいぶ増えちゃったけど、でもターミナルの部分っていうのは残っているので。そこけっこう大きいのかなって。

山路:通過駅にされないっていうことで。

小飼:そう、だから今渋谷は100パーセント通過でしょ。だから、渋谷止まりというのは今ないよね。まだ銀座線は渋谷止まりか。でも、銀座線もすごい小ぎれいにしちゃったよね。

山路:そうやって、人がいい感じに溜まるようなところがないからっていうのもあるのかもしれないですよね。

小飼:そうそうそう。

「今IT系は五反田のほうが強くない?」(コメント)

山路:そうなんですか?

小飼:どうなの? それは。

山路:渋谷のほうが高すぎて五反田に行ってるみたいなところもあったりするのかな。で、このハロウィンの日に発表されたのが、こちらなんですけど。なんか、Appleもべつにハロウィンに合わせてわざわざ発表するほどのことではなかったんじゃないか、

小飼:アメリカ時間では1日前ということになる、アメリカ時間というのが、太平洋時間では、太平洋夏時間では(笑)。

山路:夏時間は固定されるんですよね。

小飼:そうそう、夏時間だけになる。

山路:これ、弾さん、MacBook Proのっていうか、M3チップの、

小飼:M3になっただけやんっていう、

「Macのtrickだったのか」(コメント)

小飼:やっぱ一つ気になるのは、メモリーのスケールの部分だけれども、でもさあ、メモリーの積み方が変だよね、36GBとかさ。なんかM1の頃はきれいに2のべきだったんだけど、それがM2の頃に崩れて、M3だとちょっと変だよね。

山路:今回、個人的には驚いたのがそのM3、スタンダードのM3、M3 Pro、M3 Max、いっぺんに出してきたじゃないですか。

小飼:あー、まぁでもそれは規定路線だったんじゃないかな、

山路:そういうふうにブランドとかをきちんと整理していっぺんに出せるような体制ができて、M3作ったら、もうすぐにそれを二つ組み合わせたような形でM3 Pro作って、Maxやってみたいなことっていうのがスムーズにできる、

小飼:それよか大きなiMacが出てこないかな、もうMac Studio1本なのかなぁと。

山路:24インチってもう、今となってはそんな広い画面じゃないですもんね、でかい画面が必要な人にとって、

小飼:27インチのが欲しい、あれくらいがちょうどいいんですよ。それよりも大きなやつ使ってたり、横にすごい長いの使ってたり、あとマルチディスプレイにしてる人とかっていうの少なくないんですけど、Macの場合、バーチャルデスクトップをいくつでも持てるので、それを3本指でシュッシュッとっ変えてたほうが、僕は視線を動かさなくて楽なので、今の27インチが理想なんですね。

山路:なるほどね。そういう需要もけっこう。まぁでも全体としては、意外に少なかったのかな。でかいのが必要な人はマルチディスプレイとかのほうに行っちゃうっていうのがトレンドだったっていうことかもしれないですけどもね。

小飼:それでいちおう、27インチのStudio Displayも出してやったぞっていう理解なのかね。いや、だけども、MacのディスプレイではFace IDできないじゃん、なんでFace IDつけねーんだよ、カメラをつけてるくせにさあ、

山路:確かにな、Studio Display自体の出来はなかなかいいんですけどね。

小飼:何のための(MacBook Proの)ノッチだよ!

山路:(笑)まぁ、これでiMacの話が出たところでiMac、マウスついてるんですけど、あれ、Lightningなんですよね(笑)。

小飼:ですよね、まだ更新してないですよね。

山路:Magic Trackpadに関しても(笑)。で、弾さんが思わずトホホになってたUSB-Cポート付きのApple Pencilを出したんですけども。

小飼:ちょっとなんて言えばいいのかなぁ、Appleのコレジャナイプロダクトが一つ増えたね、Apple Pencilは。最低の出来だ。唯一まともなのは第二世代のやつですね。僕も第二世代のやつにしてます。第二世代のやつにしたいので、すっぴんの無印iPadでなくて、iPad Air以上になっちゃうんですけどね。

山路:これって、結局Appleが安いiPadと、高いiPad Proを2つのラインを用意して、iPad Proを買わせるために安いやつも残していると思うんですけど、

小飼:いやー、一番安いやつだったらさ、いさぎよくPencil非対応でいいじゃん。

山路:それそれ、そう思った(笑)。

小飼:だって一番の需要はキオスク端末じゃん。いや、でもキオスク端末用には、無印のここが四角いやつ、要はホームボタンがないやつもオーバースペックなんだよね。

山路:結局、無印買う人って、本格的に漫画やろうという人ではないじゃないですか、絶対に。サードパーティーとかのタッチ式のペンみたいなんで良かったんじゃないのって。

小飼:指でよかった、いや、

山路:なんかね、本当にどこか抜けてるというか。

小飼:あれが通っちゃうというね。いや、でもそれにしてもやっぱりなんだかんだ一番許せないのは、マウスだよね。

山路:あの刺し方ね(笑)、ポートの。テストしてる時に、誰も気づかなかったのか? あれを何年も売ってますけど(笑)、Appleは。

小飼:『ボボボーボ・ボーボボ』のつけもの以下だよ、はっきり言ってあれは。本当、あれは恥を知りなさいってやつだよな(笑)。恥部。あれね、何だったっけ、見せない芸をしてる人いるじゃん。

山路:アキラ100%?

小飼:もそうだけれども、イギリスで受けた人。

山路:とにかく明るい、あ、安村でいいのか、ごめんなさい、安村でよかった(笑)。

小飼:まぁ、こうやって隠すためのものなんじゃないか、あれは。あの大きさでたぶん隠れるんだろうな。

山路:(コメントを見ながら)とにかく明るい安村、ありがとうございます。

小飼:それもいいんだけどさ、トラックパッドもさ、あれもLightningで、せめてTrackpadぐらいUSB-Cにしたの出せって、

山路:そんなに難しいことなんかって思う、

小飼:マウスも変えなきゃいけない、マウスじゃなかった、キーボードも変えなきゃいけないんだよな。キーボードもよな。まだLightning充電のはず。

山路:ああ、そっか充電できたか。そうか、乾電池だけじゃなくて。でも、そんな難しいことですかっていう。

小飼:うちのやつはとても古いので、ダブルA、単3×2ですけどね。

「3ナノメートルはやっぱりすごいのでしょうか」(コメント)

小飼:すごいけども、やっぱりどんどん先に進むのが苦しくなっているというのがわかるよね。

山路:どういうあたりで?

小飼:いや、まだMプロセッサが出る前っていうのはさ、性能が倍になるとかって当たり前だったけどさ、今は数十パーセントじゃん、頑張って、頑張って、頑張って。

山路:まぁちょっとM1が良すぎたからというのもあるんだけども、

小飼:あるんだけども、いや、やっぱりなんだかんだ言って、ムーアの限界は近づいてるんだなぁと。

山路:Armを採用したところで。

小飼:その一方で必要な性能っていうのも、かなりサチってるところがあるよね。

山路:必要な性能のほうが?

小飼:AIとかのおかげで、またもっと演算力をくれーっていう需要が再び喚起されているあの一方で、今やスマートフォンとかでも、何年も使うのが当たり前になってきているでしょ。ということはもう、何年も使えるのよ。

山路:特にLLM(大規模言語モデル)使おうというわけでなかったら、

小飼:特にMacのメモリーとかさ、16とか32で停滞している感じはあるよね。だってIntelの頃から変えてないもん。だって僕のiMac今や型落ちしちゃった、要するに最新のOSが普通にはインストールできない古いモデルになっちゃったんだけども、それでもメモリー32GB積んでるもん。

山路:メモリーの使い方が今ほど効率的でなかったということもあるかもしれないけど、

小飼:あとSSDが今ほど速くなかったというのもあるよね。それもけっこう大きいよね。

山路:ただ本、今のLLMとかのモデル、それこそWhisperとか動かすと、もっとメモリをくれとは思いますよね。今のMシリーズとかって、2、3年前とかには設計は完了してるじゃないですか。生成AIがここまで伸びるとは予測はできなかったんじゃないですか。

小飼:ChatGPTの隆盛って、ほんとここせいぜい1年ぐらいのものでしょ。

山路:ニューラルチップなんかはかなり早くから搭載してましたけど、

小飼:ハードウェアの場合、これで行こうっていうふうになってから実物が上がるまでやっぱ3年ぐらいかかるから。

山路:それは読み違えたんじゃないかなっていう気もしますけどね。Appleも、

小飼:だけれども、本格的にLLMやりたかったっていうふうに言ったら、さらに桁が2つぐらい違うわけで。なんだけれども、とにかくメモリを一番多く積めるMacというのはもうディスコンになっちゃって。1.5TBまで積めたんだよね、いちおう。

山路:しかしそのマシンで仮に今時のLLM動かしても、そんなに速くはないんじゃないですか。メモリーは積めたにしても。

小飼:速くないじゃなくて、オーバーフローしちゃう。
 だけれども、演算力が必要なものというのはクラウドに飛ばせるようになっちゃったじゃん。それもけっこう大きいんだよね。

山路:そういう、ちょっとMacの話が出たところで、それはそれとして、CPUのほうも競争、また激しくはなってませんか。MacがMシリーズとかでかなり画期的な性能は達成したんですけど、他のところも追いついてきてませんかという。Qualcommが最近発表した、そういうSnapdragon X Eliteだっけ、なんかそのあたりとか、Mシリーズ追い抜くぜみたいなことを。

小飼:Surfaceとか積んでくれるのかなあ。

山路:MicrosoftもARMのWindowsのほうに本腰を入れたそうでして。

小飼:っていうのか、ぜんぜん遜色ないんだけどね、(MacBook Airを示しながら)これでParallels Desktopで動かしてる感じでは。ぜんぜん遜色ない。

山路:でも、他のPCメーカーはそれ、Mシリーズ使わせてもらえるわけじゃないですからね(笑)。Windowsマシン作っているところはWindowsが快適に動くARMマシンが、そりゃ欲しいだろうし。これ、ARMシリーズ、ARM技術を使ってそのCPUを使うというトレンドなんかっていうのは、どこかでもう結局、頭打ちになってくるってことはないんですか?

小飼:いや、すでにARMだろうが、Intelだろうが、単純にコアの密度が上がるっていうこと、おいそれとは期待できなくなってるよね。なんだかんだ言って、毎年ごとに進歩してたんだけれども、前は次の年には面積半分になってたとかだったけども、今は数十パーセントになってるからね。

山路:もう、じゃあなんかそれはARM技術だろうが、Intelだろうが、なんかそれがRISC-Vだろうが、結局それは50歩100歩というか。

小飼:だからより複雑化してるよね。単純に半導体の性能がそのままリニアに倍に上がるということを期待するのではなくて、たとえばAIはそれ用の専用のコアを設けましょう、GPUはGPUでもうずいぶん昔に分かれたじゃん。アプリケーションスペシフィックなもの、だからヘテロジニアスになってるよね。でも、大昔のCPUっていうのは本当にCPUしかなかったんだよ。そもそも、浮動小数点演算ですら、別の石を使ってたわけよ。

山路:オプション、

小飼:うん、FPUって言い方をしてたよね。

山路:なんでしたっけ? 80387とかなんかそんなような型番の付いた、浮動小数点プロセッサがあったような気がしましたけどね。

小飼:それがない場合っていうのはソフトウェアエミュレーションでやらなくちゃいけなくて、ものすごい重たかったんだよね。
 その頃もあったので、浮動小数点演算というのおいそれと高くて使えないっていうイメージが、前世紀の終わり頃まであったよね。僕も自分のプログラムで平気で浮動小数点を使うようになったっていうのは、今世紀に入ってから。

山路:え、そんなものなんですか(笑)?

小飼:そんなものですよ、だからまだ20年くらいですよ、まだFPUを当てにするっていう。今やGPUは当てにできるじゃん。普通にあるもの。っていうのか、なければまともに、これですらGPU積んでますからね。次はもう本当にニューラルエンジンとか、AI用のTensor Chipとかそういうふうになってきてはいますよね。

山路:ジム・ケラーがAI半導体の会社立ち上げて。

山路:彼が言ってるのはもう、そんなNVIDIAもARMもIntelも、そんなのはもう全部不要みたいなことを言ってるんですけど、これはCPUを作るって話じゃないんですかね、このジム・ケラーとかが言ってるのは。結局AI、そういうLLMなんかの処理をやる時に使うための浮動小数点、コプロセッサ的な位置づけを狙ってるんですかね?

小飼:コプロでいいじゃんっていう意見なんでしょうかね。今や普通の、SSDに飲み込まれちゃった感もありますけど、Fusion-ioという、コプロみたいな、SSDみたいな、RAMみたいな製品が昔あったんだけれども。

山路:へえ、それは知らないなぁ。

小飼:よく考えたらGPUも、CPUと同じ石に入っているMプロセッサみたいなものもあれば、デスクトップPCの世界みたいに、GPUだけ別にボーンと存在している世界っていうのもあるじゃないですか。

山路:それで言うと最近、チップレットっていう言葉をよく聞くようになってきたじゃないですか、

小飼:ああ、要するに一つのチップのように見えて、中にチップがいっぱい入っているというやつ、SoCってそうですよね。

山路:それって今言っているSoCと、これからはチップレットだって、チップレットってイコールなんですか? あれは、つまりチップレットってわざわざ言わんでも、今SoCってチップレット的なものじゃないですか、何が違うんだろうなと思って。

小飼:それは別々に作って、後で組み合わせるっていうことだよね。そのほうが歩留まり上げられるからね。
 でも単純に、単の純に速度を上げるっていうことだけを考えたら、一つのチップの中に作り込んじゃったほうがいいわけよ。だけど、それだともう歩留まりが上げられないから。

山路:じゃあ、SoCほどには最適化はできないけど、

小飼:SoCもチップレットなんだって、あれは。チップレットとして実現してるわけよ。

山路:単純にこれって、言葉の定義が人によって違うっていうだけなの?

小飼:狭義のチップっていうのは、本当にウエハーから切り出された1個の集積回路だよね。今パッケージとして一つに見えてても、それをさらにThrough-Silicon Viaとかで複数のチップが一つのパッケージの中に入ってるのね、一つのチップみたいに見えて。特にSoCとかそうだし、SoCでなくて、普通のいわゆるCPUとかって言われるものでも、Ryzenとかもそうなっている、かなりそうなっている。

山路:中にGPU的なものも入ってたりとか、

小飼:入ってるやつと、入ってないやつがある。入ってるやつは、AMDはAPUって呼んでるよね。CPUプラスGPUみたいなのってAPUって、

「そろそろNVIDIA」(コメント)
「(IntelのCPUには)EXとSXがあった」(コメント)

小飼:懐かしいよな、本当に。それで486で一緒になって、で586は単に586ではなくて、ペンティアムというチャラい名前がついて、そこでFPUのバグが見つかってという(笑)。

山路:でも、そのバグ見つかったのって相当、後の話じゃなかったですか?

小飼:相当でも、なんか、いや意外と、わりと早く見つかったよ。
 普通の計算結果がおかしいっていうのが見つかったきっかけだったのかな。実務上で出たんだよね。

「そろそろNVIDIAの株買ってもいいですか?」(コメント)

小飼:そろそろって、どうなんだろう。でもNVIDIAもトリリオンダラークラブに、

山路:もうとっくに入っちゃいましたもんね。時価総額が1兆ドル超えた状態でずっと安定してます。NVIDIA、これからまだまだ伸びると思いますか、それともAI系はまたそのGPUとかと違った、AI用にも設計されたAIチップなんかの企業が伸びてくると思いますか?

小飼:どれどれ(NVIDIAの株価を調べながら)、伸びる余地はあるよね。だって、PERいちおう二桁だしね。

小飼:Appleとかに比べればやっぱ高いは高いけれども、今見たら98.34だって。

山路:かつてのAmazonとかのほうがよっぽど高かったような。

小飼:うん。

「米国株買うならテック系は避けたほうがいい」(コメント)

小飼:確かにいっぱい上がったが、どれも、上がったからなぁ(笑)。いや、今さら買うの感は、なきにしもあるんだけどね。

山路:AIバブルも、弾けるまでバブルかどうかわからない、

小飼:バブルではないけれども、CPUの性能を上げるのが年々難しくなっているがごとく、時価総額を上げていくというのは難しくなっているよね。