米ワシントンのレストランで、2009年8月に開かれた日本の衆院選見通しに関する在米日本大使館職員による非公式の説明会は、米議会議員の秘書に唐突に呼び掛けられたものだった。
秘書らは同月末から米シンクタンクが主催する約1週間の日本視察に関する予定だった。東京や大阪、京都を訪れ、日米関係ほか日本の政治や経済、企業動向について学ぶ計画だった。
大使館職員はどこからか議員秘書らの訪日予定を聞きつけ、日本について説明したいと一人一人に電子メールで申し出た。
説明会では2人の大使館職員のうちの「先輩」が、政権の座に就く見通しとなっていた民主党がマニフェスト(政権公約)で在日米軍再編見直しを掲げていることに強い懸念を示し、日米地位協定の改定提起公約についても言及した。
「民主党は(地位協定改定で)本質的に夢を見ている」
こう断じた後に続ける。「(改定されれば)米国は世界中の国から再交渉を求められる。(米国は)日本との再交渉には応じないだろう」。日本側から、地位協定改定は実現し得ない課題のはずだと米秘書らに理解を求めた。
〈ワシントンでの日本大使館の役割は、仮に彼らの政府が望んでいない場合でも、ひたすら米国にこびへつらうことなのだ〉
参加者の一人はこう思った。日本に詳しくない米秘書らの間に、