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何度見てもこの映画は面白い。興味深く、不気味で、ユーモアもあり、最後は安堵と切なさが交錯するなんとも複雑な心境になる。
主人公の博士は、ある革命的な装置を開発する。
ふたつの装置が一本のケーブルで繋がれており、片方に入れた物体は瞬く間にもう片方の装置へと転送される。これが実用化されればインフラに革命が起き、世界の常識が変わってしまう程の大発明だ。
しかし、ひとつだけ転送実験を行なっていないものがある。それが人間だった。
博士は自らモルモットとして装置に入り、転送実験を行なう。
しかし、装置には一匹のハエが紛れ込んでいた…。
『THE FLY』は、ジャンルとしてはモンスターパニック、ホラーなどに分類されるのだろうし、実際に怖いと感じる人も多いだろう。
しかし僕は、この映画から悲しさと惨めさを感じて仕方がない。鑑賞後沸き上がってくる感情はとにかく悲しい、その一言に尽きる。
人間には必ず何かしらの欲求が付いてまわる。その中でも強烈なものが“承認欲求”だ。
誰かに認めてほしい、受け入れてほしい、居場所が欲しい…。人は常に「今現在のありのままの自分を認め、自信に繋がる、そんなレスポンスが欲しい」という欲求を抱えている。
博士がいくら異常な行動(※)を取ろうとも、それはすべて人として当たり前に持っている部分を基軸にしたものだ。だから誰も彼を責めることはできない。しかし彼の行ないを肯定することもできない。この映画には救いがない。悲しくてしょうがないんだよー、おーいおいおい!
※作中では、博士の奇怪な行動はハエと遺伝子融合を果たしたからとされているが、そうなる前から予兆はあるように見える。
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