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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2016/09/27
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おはよう! 岡田斗司夫です。
今日は2013年の『岡田斗司夫の毎日メルマガ~力尽きるまで』から、セレクトしてお届けします。

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「オタクはなぜ、現代アートなのか?」

 今日は「おたくとアート」の話。

 10年近く前の今ごろ、世界イチのフィギュア工房・海洋堂の社長の宮脇さんとヴェネチアに行きました。
 ヴェネチア・ピエンナーレ日本館の参加作家として呼ばれたからです。

 僕も宮脇さんも、タダのオタクです。
 本来はそんな立派な席に呼ばれるようなモノじゃありません。

 そのイベントは「都市」がテーマのアート展です。
 
 『おたく:人格=空間=都市』というタイトルで、僕や海洋堂さんの作っている色右岸フィギュアが出展され、僕たちは「公式作家」として呼ばれることになってしまいました。

 いったいなぜ、日本のオタク文化が西洋のエスタブリッシュメントからは「アート」として認識されるようになったんでしょうか?
 ヴェネチアで僕たちに合流した現代アーティストの村上隆さんは語ります。

「現代アートというのは、”歴史の解釈”でもあるんです。
 この世界はいったいどうなってるのか?
 どの民族の、どんな事件が果たして後世に意味を持つのか?

 アーティストの作品は、現代のいろんな”マイノリティ”を取り上げ、これが後世から見たら『たしかに歴史の変革だった』と評価されるわけです。」

 あいかわらず、村上さんの話は難しいです。
 僕なりにはしょって説明してみます。

 なぜアートは偉いのか?
 
 この質問に対するもっとも単純で正直な答は「生き残ったから」です。
 数百年・数千年という風雪や動乱、文明の興亡に対して「生き延びたこと」が、実はアートの最高勲章です。

 では、なぜ「生き延びる」のか?

 「この作品は価値があるから、保管すべきだ」と人々が考え、ちゃんとした保管場所に収めたからです。

 その作品が生まれた時代に「残すべきだ」と思われた作品はいくらでもあります。
 しかし、100年もすると「あれ?別にこの作品、要らないんじゃない?」ということになる。
 200年もすると、「単なる下手くそな落書きだなぁ」と捨てられてしまうかも知れない。

 「生き延びる」作品とは、時代や価値観が変わっても、保管者たち(権力者の近くにいる人たち)から「この作品はまだ保管する価値がある」と思われている&これからも思われ続ける作品なのです。

 では、どんな作品が「保管する価値がある」のでしょうか?
 
 上手い作品?
 そんなの山のようにあります。
 
 感動させる作品?
 時代が変わると、人はもう感動してくれません。

 昭和の歌謡曲に目を潤ませるのはオジサンばかりです。
 感動とは、同時代を生きている人同士でしか、なかなか共有できません。

 「本当に感動できるもの。それがアートだ」
 
 こんな言説は耳には快いですが、アート業界では通用しません。
 
 「美しい」「感動できる」だけでは、決定的に足りないのです。

 生き残るための唯一の方法、それは「歴史に関係する」です。
 オタクは、数百年後の歴史家から見ても「面白い」現象だ、と村上さんは読んでいます。

 世界史の中で日本や日本人は、いつも「不思議な人たち」と捉えられていました。
 江戸時代のサムライやニンジャ、昭和の超ファシスト。
 なんとも危なく、しかし不思議な独自文化をもった民族です。

 この日本が「世界の歴史」に残るとき、どのように記述されるのか?
 自身がアニメファンだった村上さんは、「オタクとして日本人は世界史に残る」と考えました。

 「日本のアニメやマンガ表現は、平面的な二次元の絵で世界をエロチックに描いている。それは三次元にすると矛盾だらけかもしれないけど、ひとつの宇宙を作っている。

 この”二次元表現”こそ、浮世絵の昔から日本人の世界を作ってきた表現法だ。
 ダ・ヴィンチなどが絵画に二次元空間を持ち込んだが、日本人はあえて三次元を捨てて二次元を選んだ。」

 (これは僕の勝手な「スーパーフラット論」の飜訳です)

 そしてフィギュアとは、「マンガやアニメという二次元」を無理やりに三次元化したものであり、そこに「アートとしての新しさ」がある。

 数百年・数千年先の未来、20世紀から21世紀の歴史はどのように記述されるかわかりません。
 でもアートの歴史では、「この時代の日本は、オタク文化で世界を揺るがした」とされるでしょう。

 そんな村上さんの歴史観・アート観が評価・支持されているからこそ、彼の作品には数億円という値が付くのです。

 ・・・とこんな話をされても、僕や海洋堂の社長はポカーンとしていました。

 それよりも、美味いピザ屋はないの?
 ヴェネチアって、どこ行ってもドブ臭いの?
 やっぱり、僕たちはただの「おたく」でした。

 じゃあ、また明日。
 バイバイ!

以上、『岡田斗司夫の毎日メルマガ~力尽きるまで』よりお届けしました。
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