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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2016/10/24
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おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は「貧乏と貧困」について語ります。

“貧乏”と“貧困”は違うんですよ。
“貧困”というのは『火垂るの墓』みたいな世界のことなんですよ。
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「“貧乏”と“貧困”の違い。『火垂るの墓』から語る“貧困”」


 『火垂るの墓』というのは、原作者の野坂 昭如(のさか あきゆき)というオッサンが試写会から逃げて「もう二度と見たくない!」と言ったので有名な映画です。

 原作者が子供のころにあった、本当の話なんですね。
 実際と違うのは、主人公が死ななかったところだけです。

 「後に主人公は文学者になって、野坂昭如になりました」というところだけが違うんです。

 物語では、母親が入院してしまって、“清太”と“節子”の二人の兄妹は親戚の家で暮らすことになりました。

 でも親戚の家とはあまり仲が良くなくて、清太と節子は二人で家を飛び出しちゃう。

 それで防空壕で暮らし始めるんですけど、お兄さんの清太は今で言う“コミュ障”なんですね。
 大人の人と、うまくコミュニケーションが取れない。

 おそらく、お父さんが海軍の偉い人だったので、プライドが高すぎて、他の人と話をする事が、あまり出来なかったんです。

 なので、あまりご飯を食べさせたもらう事が出来ず、親戚の人に冷たく当たられて、ついつい外に飛び出してしまった。

 妹の具合が悪くなったとき、妹をお医者さんに診せることは出来たんです。
 そして、お医者さんに「栄養のあるものを食べさせなさい。」って言われた。

 そのときに「どこにそんなものがあるんだ!」「どうやればいいんだ!」
 そう心の中では思うんだけど、お医者さんに相談が出来ないんですね。

 そのまま、帰ってきてしまう。
 結果的に、節子は死んでしまうんです。

 節子は、貧しくて死んだんじゃないんですよ。

 映画の中でも語られているんですけど、清太はお母さんから、いざと言うときのために預かった銀行口座があったんです。
 その中には、七千円も入っていたんですよ。

 当時は、「五百円生活」って言われてて、「五百円あれば、一ヶ月暮らしていける」って言われてました。
 なので、貨幣価値は現代の100分の1ぐらいだと思ってください。

 つまり七千円というのは、七十万円ぐらいの値打ちはあったんです。

 なので、清太は節子にご飯を食べさせる事は出来た。
 医者に診せることもできたぐらいです。
 だから、飢え死にさせることは無かったんですね。

 でもそれは、後から見ている「金を払えば物が買えることが当たり前の僕ら」だから言える事なんです。
 当時は、お金はあっても、物が売ってないんですよ。

 物が欲しければ、物々交換をしないといけない。
 物を買おうと思ったら、どこで物を売っているのかを教えてもらって、そこに行って買わないといけない。

 だけどコミュ障の清太には、そんな能力が無いんですね。

 銀行にお金はあるんです。
 だけど、「これは、どうしたらいいんですか?」と人の頭を下げて聞くことも出来ない。

 「妹のために、ご飯を盗んできてやろう!」と、行動は出来るんです。
 そのときに見つかったら「すみません!すみません!」って殴られる事も出来るんです。

 だけど「妹が飢え死にしそうなんです!助けてください!貯金はあります!」って、人に頼ることが出来ない。

 結局、僕は“貧困”っていうのは、『火垂るの墓』みたいな状態だと思うんですよ。
 お金が有るとか無いの問題ではない。
 そのお金を使うことが怖くて、自分を追い込んでしまう。

 今の言葉で言うと“情弱”かもしれない。
 清太は“コミュ障”かもしれない。

 だけど、どう振舞えばいいのか分からない結果、妹が死んでしまう状況なんですね。
 
 決して戦争が悪いわけではない。
 貧乏が悪いわけではない。

 自分の頑なな心とかが、妹を死に追いやってしまうという。

 清太がいたのは、明らかに“貧困”なんです。
 つまり「貧しくて困っている状態」ですね。

 でも、その困っているのが「貧しいが故」ではないんです。
 「貧しさ」とか「自分が弱者だ」とか「何も知らない子供だ」という結果、動きが取れなくなった。

 本来だったら七千円の貯金があったんです。
 絶対に、二人とも戦後の世界を生き延びれたハズなんですよ。

 それが見えなくなった「視野が狭くなってる状態」というのが、“貧困”の恐ろしさだと思います。


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