『もののけ姫』が作られたのは1997年。
『紅の豚』の5年後に作られました。
ジブリが久しぶりに作った作品です。
そして、最後にセルで作った作品です。
人気が非常に高く、すべてのパーツがうまくはまった作品だと僕は思うんです。
ただし、暴力表現などが強い。
ストーリーも、あまりに大人向け。
ですから、海外の評価がわりと低いんです。
腕や首が吹っ飛んだりするシーンがあるので、海外の人にはすごい抵抗があるみたいです。
特に宮崎アニメでは、そういうことを描くときは徹底的に描きますからね。
たとえば、アシタカが矢を射って、両腕がバサッと切れるシーンがありますよね。
その時に、断面の肉の中の骨があるとこまで描いちゃう。
それは絵で描いてしまうと、あからさまに“骨”と“肉”だってわかっちゃう。
特撮でやったら断面が複雑でグチャグチャになるから、あんがいそれなりに見えちゃうんですけどね。
アニメだと、かえってクールな残酷性が際立ってしまう。
だから、むこうの人にはすごく抵抗があるみたいですね。
そういう偏見もあって、海外の評価はわりと低いです。
そんな『もののけ姫』ですが、中間投票のベスト5にはもちろん入ってます。
そして、興行成績はすごい高いです。
なんと観客数1420万人です。
これまで304万人で最大ヒットだったのが、5倍近い1500万人に行ってしまいました。
撮影予算もジブリ史上最大の21億円。
それまでの15年間、日本映画の興行記録って『ET』 だったんです。
その『ET』をアニメがぶち抜いたというわけで、すごいニュースになった。
1420万人というのは、それぐらいのヒットなんです。
スティーブン・スピルバーグは、自分の映画が日本のアニメに抜かれるなんて思ってなくて、びっくりしたそうです。
今、スピルバーグは、宮崎さんがジブリ美術館で作るCGアニメのプロデューサーをやっているそうです。
なかなかすごいタッグマッチですね。
『もののけ姫』って、内容的には宮崎駿による『ゲド戦記』という言い方が出来ると思います。
「ファンタジーってのはこうやって作るんだぞ」という宮崎駿の公式作品ができたんですね。
『もののけ姫っていうのは、『ナウシカ』の事実上の続編です。
リメイクと言ってもいい。
宮崎さんが『ナウシカ』作ってたとき、
・子供向け
・ヒットさせなきゃいけない
・ヒロインは健気な女子
という制約があったんです。
でも本当は大人のキャラクターを描きたかった。
だからクシャナとかクロトワとか、大人のキャラクターに感情移入してたんですね。
なので、ナウシカでなくクシャナに焦点を当てたアニメを作りたいと思ってたんですね。
だからナウシカだったキャラクターがサンに。
ペジテのアステルだったキャラクターがアシタカに。
意外なことにユパ様がジゴ坊なんです。
ジゴ坊は中盤で活躍する悪役か正義か分からないキャラクター。
実はあれ、灰のガンダルフなんですね。
つまり、白のガンダルフでも黒のガンダルフでもなく、灰のガンダルフっていう中間的な悪役として存在してるわけです。
クシャナの代わりにエボシ御前。
巨神兵の代わりにシシガミ。
そう解釈すれば、なんで宮崎さんがナウシカの続編を作らないのかがわかる。
ペジテのアステルから見たら、巨神兵が復活して、呪いを受けてしまって、そこで出会ったサンという少女。
ところがサンという少女は、オームみたいな森の中の神々とのコンタクトに夢中になって、こちらを向いてくれない。
現実的なクシャナの分身であるエボシ御前っていうのは、正しくて強いんだけど、同時に政治家でもある。
つまり、自分が心から賛成することはできない。
アシタカの、ペジテのアステルの心は人間社会と腐海の社会、森とか神々の社会の中間にしかいられない。
「好きに作るぜ三部作」で宮崎駿は、まさかの自分の作品のリメイクをやってしまった。
これが、僕が思う宮崎駿が好きに作った作品。
もちろん、色んな人の影響もあるんだろうけど、本当に好きに作った作品だと思います。
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