日本では、ずっとトランプを泡沫候補(ほうまつこうほ)扱いしてたんですね。
僕は「ヒラリー・クリントンが本命だろう」という予想にには賛成しましたが、昨年の秋から一貫して「なんとなく、トランプが次期大統領になるんじゃないか」と言ってたんです。
世間では「トランプ対ヒラリー」って言われてるんですけど、それ本格的に言われるようになったのはトランプが共和党の正式候補になってからです。
それまでずっと泡沫候補扱いにされてたんですね。
日本のマスコミは、すべてヒラリー圧勝を予想してました。
それで、ほぼ全員が予想を外しました。
これを評して『ミヤネ屋』という番組では、タレントの 優木まおみさんが、「専門家の人たちも意外とポンコツだった。アメリカも日本も結果を読めない人が多い。」と手厳しくコメントしたそうです。
そうネットニュースに流れてました。
でも、これは無茶なんですね。
専門家の扱うジャンルとは機能・性能が違うんです。
なぜ自分たちはトランプを予想できなかったのか?
なぜヒラリーが負けたのか?
なぜ今アメリカ国民が怒ってるのか?
「ポンコツ」と呼ばれた政治評論家たちは、それらに関して、実に見事な分析を行ってるんです。
本当に、その“分析”は見事なんです。
だから、選挙の当日までは、「なぜヒラリーが勝つのか?」に対して、すごい見事な分析をしてるんです。
選挙が終わったら、アメリカはトランプショックに覆われてる。
世界はこれからどうなってしまうのか?
なぜトランプは勝ったのか?
なぜヒラリーは負けたのか?
これ関しても、また見事な分析をしてるんですね。
本来、専門家は結果の分析に使うべきなんですよ。
分析能力がすごく高いんです。
日本の専門家は、分析能力と理由を探す能力がめちゃくちゃ高い。
なので、それに特化して使うべきなんですよ。
本来、不確定な要素が多い未来予想には使ってはいけない。
これは自動車の修理工に、自動車を発明させてはいけないのと同じです。
修理工は、すでにある『自動車』という仕組みを徹底的に知ってるんですよ。
自動車の機能を知り尽くしてる人間が、車を修理する。
そのものをよく知っていて、知り尽くしているからこそ、「車以上の発想」が出てこない。
今回の大統領選挙の予想に関しては、車専門の修理工に「飛行機を作れ」って言ってるようなものなんですよ。
選挙の専門家に関しては、ある程度の票読みや予想ができる範囲だったら、すごく予想しやすいものなんです。
たとえばこの夏、小池百合子が当選した都知事選ですね。
いろんな候補の政策とか、人気や地盤や人脈を知り尽くした人間が票読みをやると、ほぼその通りに推移するんですね。
たぶん日本の選挙では、これから数年間は、ほぼ彼らの予想で当たるでしょう。
衆議院や参議院で「どの党が何議席を取る」というのを予想する方がおられますけど、彼らの予想は、かなり精度が高いんですね。
なんでそんな事ができるのかというと、これまでの仕組みを理解して、その上での予想だから。
自動車修理工が自動車を修理してるのと同じ理屈だからですね。
でも自動車の自動操縦に関しては、トヨタとか日産とかGMとかの自動車の専門家でなくて、なぜかGoogleとかアップルというIT企業の方が先を行ってる。
それと同じでですね。
まったく違うものを作るときには、「専門家の知識」は、あまり役にたたない場合があるんですね。
全てがそうだとは言わないですけど。
なので、これまでとは違う要素が入ってきたら、専門家はあまり役に立たなかったんです。
たとえば2008年の、橋下徹さんが当選した大阪府知事選挙。
彼の圧勝を予想できた専門家は、かなり少なかったんですね。