ヤマカンさんは、「アニメ業界はもう終わりだ」と言ってました。
絶望ですよ。
もはやクオリティ維持が不可能です。
10月に起こった惨劇を見てください。
これだけの本数はもうできません。
これだけ絵が細かくなったら、できませんよ。
そう言ってたんだ。
アニメスタジオの「ファンタジア」という会社が倒産して、庵野秀明の「カラー」が「ガイナックス」を提訴した。
アニメは、いっぱいあるんだ。
仕事も、いっぱいある。
だけど潰れるアニメ会社があって、提訴されてしまうアニメ会社もあるというジレンマ。
そこに起きてきたのが『君の名は。』と『この世界の片隅に』の海外での成功なんだ。
特に『君の名は。』は中国でものすごいヒットになってる。
たぶん『スターウォーズ』を抜くヒット作になると思うんだよ。
『この世界の片隅に』もメキシコでスクリーン数400館、同時公開らしいんだよ。
アメリカの広告ってイラストが多いんだよね。
高級な広告は、どれもイラストが多いんだよ。
なんでかっていうと「写真よりイラストの方が上等」という考え方が彼らにあるからなんだ。
アニメーションに関して、なぜ彼らがこれまで頑(かたく)なにセルアニメから3Dアニメにしてきたのか?
それは「その方が矛盾がなくて嘘がない」と思ってたからなんだ。
こと日本が作ってた二次元アニメを、アートとして見る習慣がなかった。
ところが、もともとアメリカ人は写真のようなリアルな絵より、イラストのような抽象化した絵の方を作品として見る素養がある。
広告の世界ではね。
アメリカで『君の名は。』が評価されている土台には「実際の風景よりも、それを人間の目で抽象化して、より美しさを際立てたものの方が上」と彼らが思ってるから。
ノーマン・ロックウェルの絵のほうが、見本の写真よりも値打ちがあるのと同じなんだよ。
コロンビア映画の冒頭に、松明を掲げた女の人がいるでしょ。
なんで実写じゃなくて、イラストっぽい仕上がりになってるのか。
あるものをどのように抽象化して、雑味・いらない情報を捨てるか。
より美しい部分をクローズアップするのか、ということを尊ぶ。
日本のアニメは、単なる「子供のための3Dでない映画の代用品」というポジションだった。
『君の名は。』の絵作りは、そこから完全に、まったく違う絵を見せている。
現実の、どの部分を捨てるのか。
現実の、どの部分のデフォルメを見せることによって、さらに美しいものを見せるのか。
僕は『君の名は。』と『この世界の片隅に』は、アメリカ人が持っている「イラストのほうが上」という領域に、ついに達したアニメだと考えています。