同様のお便りが殺到しており、もうひとつ紹介します。
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以前より岡田さんが語っていた、一部の優秀なクリエイターのみが稼ぐことができて、それ以外は全て無償化、中間が存在しないような世の中が現実のものとなってきたのだと思います。
炎上騒ぎの渦中には、その中間層の人たちも多くいるのだと思いますが、その人達は今後どのように生きていくべきなのでしょうか?
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僕は「一部の優秀なクリエイターのみが稼ぐことができる」という表現をしていないと思うんです。
「トップのクリエイター」と言ったんですね。
この場合の“トップ”というのは、“優秀”という意味ではなくて、有名もしくは品質が保証されている事。
ただ単に“知名度が高い”というのも含まれています。
その意味を含めて「トップのクリエイターだけが食える世界になってきた」という流れだということですね。
この件、何が面白いのかというと、正解は無いんですよ。
なので、この問題についての考え方を展開していこうと思います。
モーリー・ロバートソンという人がいます。
ニコ生もやってますし、『ユアタイム』というニュース番組の解説もやっている。
アメリカ生まれで広島育ちの愉快なおじいさんです。
その人が『週刊プレイボーイ』の連載で「ポスト・ファクト主義」という言葉を使ってます。
「ポスト・ファクト」という言葉は、モーリーさんが作った言葉ではなくて、トランプ大統領が言った言葉なんです。
トランプ大統領は「もうこの世界にファクトはない。あるのはオピニオンだけ。」と言いました。
つまり、「この世界の真実・事実には意味がない。そこにあるのは意見の相違だけだ。」と、言っているんです。
“ファクト”というのは「20世紀の思想」という考え方なんです。
僕らはファクト(事実)というものを、「疑いようがない」と考えます。
それらは確かに、数学や物理現象のようなものではあるんだけどもね。
国際問題とか社会問題とか経済問題、いわゆる「社会的な人間関係から編み出されるもの」にはファクトなんかない。
あるとしたら、その人はまだ生きているか死んでいるかくらい。
「その人は本当は、どうしたかったのか?」というようなものは、もうすでに思想である。
そういう思想よりも、今はオピニオンというものがメインなんです。
トランプ大統領の「オピニオンしか信じられない」という意見は、とても先進的な思想なんです。
これには僕も、わりと同意する所です。
そういう本を、僕自身が20年以上前に書いてますから。
モーリーさんは、「だからこそ大事なのはファクトチェックだ」と、言ってる。
たとえば、トランプ大統領の演説を聞いたとき。
「トランプの意見は、そうだろうな」とやり過ごすのでなく、トランプ大統領が出した数字とかに対して、ひとつひとつ「本当に、そうなのか?」と、きっちりと検証していく。
「それがマスコミの役割だ」というのが、モーリーさんの考えなんですね。
そのモーリーさんの考えに対して、意味は分かる。
インテリさんはそう考える。
でももう、無駄だと思うんです。
「真実・事実は思想上の問題になってしまった」というのが、ポストファクト時代なんじゃないかな。
「ポストファクト時代だからこそ、ファクトチェックが大事だ」っていう意見も、わかる。
でもね、その考えは通用しなくなってきた。
これが、今回のキングコングの西野君の炎上のひとつの見方だと思うんだよね。
(次回に続きます)