『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』ですけども、インタビューが読み応えあるんだよ。
特に庵野秀明のインタビューになってからは本当に面白いんだよね。
『シン・ゴジラ』はちゃんとしたドラマでもあるから、主人公の家族のしがらみとか、いろいろと描いていこうという流れがあった。
だけど庵野秀明は「もう、そういうのはいらない」と言って、ぜんぶ潰していったって事が書かれているんだ。
庵野秀明 自身は『日本沈没』とか『八甲田山』とかが好きだから、巨大な災害に対して人の感情が動く作品も好きなんだ。
だけど今回は、いっさいソレを“なし”にした。
すべて段取りで、「人間が最も理性的にベストの行動を取っても抗えない大災害」というのを描いてみたいと。
このコンセプトで、ずっと貫かれてるんだよね。
面白い事に3月号の映画秘宝を見たら、いちばん最初の記事で『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』が取り上げられてたんだよね。
「『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』を読むと、庵野秀明 総監督の現場乗っ取りが明るみに出た」と。
「庵野秀明は、とりあえずプリビズどおりの映像でないと許さないと言って、樋口真嗣 監督のプランをすべて潰していった」って書かれてるんだよね。
プリビズっていうのは、これから撮る映画を簡単な画面で役者さんにやらせたり、CGで作ったりする映像の絵コンテの事ね。
『映画秘宝』の発行部数と『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』の発行部数って、あまりに違うじゃん。
『映画秘宝』は千円の本。
『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』は一万円の本だよね。
普通の映画ファンや怪獣映画が好きな人は『映画秘宝』は読むんだけど、『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』は高いから読めないんだよな。
なので「こんな事が書いてあったよ」って『映画秘宝』に書いてたら、それを本気にするしかないわけだよね。
『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』を読んでみたら、樋口真嗣は似たようなグチは言ってる。
だけど後で庵野君は「全部プリビズどおりではなくて、まずプリビズで自分自身の完成度を上げて、本番で変えたいと思ってるものもある。それを打ち合わせしたけど、こうなると言葉が追いつかなくなる」と言ったとこの本には書いてあったんだ。
こういう情報が出てくるので、ポスト・ファクト主義の時代では、投資金額によって得られる真実が違うんだ。
“ポスト・ファクト”というのはドナルド・トランプが言っている言葉で「ファクト(真実)は思想に過ぎない」って事。
トランプは「もうこの世界にファクト(真実・事実)は意味が無くて、あるのはオピニオン(意見)の相違だけだ」という事を言ってるんです。
千円しか払わなかったら「庵野秀明はヒドイな」って感想を持ってしまう。
一万円を払える人間は、本当はどんな事があったのかを知る事が出来る。
僕のニコ生を無料で見ている人は、僕が「こんな事を書いているよ」というのを信用するしかない。
これもポスト・ファクト主義の特長だよね。
じゃあポスト・ファクト主義に陥らない為にはどうすればいいかというと、全員が一万円を払って、読むのに10時間以上かかる『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』を読むしかない。
その末に「岡田斗司夫が言った事は本当だった」とか「岡田斗司夫もネグレクトしてるじゃないか」という事を確認しなきゃいけない。
だから大変だと思うよ(笑)。