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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「アメリカはホラーとスーパーヒーローで出来ている」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「アメリカはホラーとスーパーヒーローで出来ている」

2017-11-08 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2017/11/08
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    今回の記事はニコ生ゼミ10/29(#202)よりハイライトでお送りします。


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    「アメリカはホラーとスーパーヒーローで出来ている」


     大ヒットシリーズの続編として大いに期待されていた『ブレードランナー 2049』って、興行成績のトップを取ったのは、結局、初週の1週目だけだったんだよ。

     2週目で2位に落ちて、3週目で4位に落ちた。

     今では、「おそらく興行収入は1億ドルに届かないだろう」というふうに言われてるんだ。
     
     だから、『ブレードランナー2049』って、実はもう、アメリカでは「惨敗! 期待 外れ!」っていう烙印を押されてる作品なんだけども。

     その分、日本の映画宣伝会社っていうのは、アメリカでどうだったかは置いといて、「すごい映画だ!」とか「すごい映像体験だ!」というふうに持ち上げようとしているんだ。

     …まあ、それが、この映画に関しての今 現在の賛否両論な状況を更に加速させてるんだけども(笑)。


     この『ブレードランナー 2049』を破ったのは、実は、スティーブン・キングの『IT』っていう、ピエロが出てくるホラー映画なんだ。

     そして、この『アナベル』も、アメリカでの公開時には、それなりにヒットしている。

     じゃあ、なんでブレードランナーは負けたのか?
     なんでアメリカではホラー映画がこんなにヒットしているのか?

     俺はこれについて、実はホラー映画っていうのは、アメリカの建国神話の1つだからだと思ってるんだよね。


     建国神話っていうのは、それぞれの国が持っている、「なんで我々の国は出来たのか?」っていう、言ってしまえば“ホラ話”だよね。

     イギリスだったら、「アーサー王伝説というのがあって、魔法使いマーリンというヤツがいて~」という建国神話がある。

     日本だったら「イザナギ、イザナミから始まった~」という建国神話があるじゃん。

     大抵、どこの国にも、そういうふうな「うちの国は何かしら特別で、こんなふうに神に選ばれた!」みたいな建国神話というのがあるんだけどさ。


     アメリカ合衆国っていうのは、世界が文明化された後に、無理矢理 作り上げた国だから、そういった建国神話がないんだ。

     だから、「建国神話的なものを大衆芸能で作る」ということをやりたがる。

     僕は、これがアメリカ合衆国の特徴だと思ってるんだよね。


     アメリカ以外にも、建国後にそういう話をでっち上げた国っていうのはあるんだよ。

     たとえば、ナチスドイツが言い出した“ドイツ第4帝国”なんてそうだよね。


     ドイツなどという国は元々なくて、各部族が別れて暮らしていただけだった。

     そんなところにヒットラーが現れて、「ゲルマン民族はこんなに優秀だ!」とか、「我々はローマ帝国の跡を継いでいる!」みたいなことを言いだしたんだけども。

     でも、そのナチス・ドイツですら、建国神話を大衆文化から持ってくることはしなかったんだよね。

     この、「大衆文化から持ってくる」っていう部分がなぜなのかは、俺にもよくわからないんだけども。


    「第3帝国な」(コメント)


     ああ、ナチスが標榜したのはドイツ第3帝国だった。

     第4帝国は“月面にあるやつ”だったね(笑)。
     
     ※注:月に落ち延びたナチスドイツの残党が第4帝国を名乗り、地球に攻めてくるという映画、『アイアン・スカイ』より。

    ・・・

     アメリカには他にも“スーパーヒーローモノ”ってあるじゃん?

     俺、たぶん、建国神話を持てない人工国家アメリカっていうのは、スーパーヒーローとホラーという形で、自分たちのルーツを創ろうとしているんだと思うんだよね。

     それは、アメリカ建国時から強く残り続ける「悪いインディアンを退治しに来てくれる騎兵隊」と、「本当は悪くないのに殺されたインディアンの怨念」という2つの大きなイメージがあるからだと思う。


     アメリカの建国物語というのを真実のみで描こうとしたら、実は「大虐殺の末、インディアンの土地を騙して奪い盗った血まみれの歴史」っていう本音に行き着いてしまうわけだよ。

     でも、そういった本音は、アメリカ人としては絶対に自分たちのアイデンティティの中心には置けない。

     なので、まず、「何かしら悪いヤツを退治した」という騎兵隊的なイメージがある。

     「西部劇の街とかで、悪いヤツがいたら、保安官とかに頼らずに、自分たちで戦わなければいけない」という自警団とかバットマンの流れの源流にあるようなイメージがあるんだ。

     そして、それだけでは説明しきれない後ろめたさを隠すために、もう1つの「土地を奪われ、騙され殺されたインディアンたちからの恨みに向き合わなければいけない」っていうのがある。

     これが、現代のホラー映画に流れていくイメージだよね。

     この“自分たちが殺した者の恨みを背負うためのホラー映画”と、“民衆の中から立ち上がり権力と関係なく人々を守るスーパーヒーロー映画”という2つの系列がアメリカの神話を形作っているんだよね。


     今、アメリカで『ブレードランナー 2049』を押さえてトップになっているのって、“マディアおばさんのハロウィン”みたいなタイトルのコメディホラー映画のパート2なんだよね。

     (正しくは、『Tyler Perry's Boo 2! A Madea Halloween』)

     スティーブン・キングの『IT』にしても、このマディアおばさんにしてもそうなんだけど、ハロウィンだからということとは関係なく、この春くらいから、アメリカではホラー映画がすごくヒットしやすくなってくる。

     つまり、大作SF映画よりも、スーパーヒーローモノとホラーモノの方が、今のアメリカ人の民族的な同意、国民的な集合意識っていうのを作りやすい状態になっているんじゃないかな?


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