三田紀房さんの『インベスターZ』は、今年『モーニング』での連載が終わったマンガです。
この漫画をベースに、司令型の漫画は「絵が図解みたい」というのはどいうことかを、具体的にコマを見せながら説明しようと思います。
これは、主人公の財前くんのお宅に保険のオバちゃんが来て、保険に入って下さいって大説得するシーンです。
でもお父さんは数学の教師で合理的な人だから、全然入ろうとしない。
だからこの保険のオバちゃんは、まずお母さんを説得しようとします。
オバちゃんが説得しようとしているのを見て、「なるほど」。
「お母さん。お母さんを攻めようとしている。」
ここで、パートナーのお母さんから攻めるという言葉が出ます。
そうするとこの司令型作者は次に、もういきなりこんな絵を描いちゃうんですね(笑)。
「城を落としたかったら、まずは外堀を埋めよということですね。」
「まずはまずは外堀を埋めよ」という説明で、「自分の頭の中に出て来る1番安直な絵」を描くんですよ。
1番 安直な図解を描くことに何の躊躇いもない。
これが司令型の特徴ですね。
たとえばその『社長島耕作』シリーズでも、良い者 悪者というのが出てきて、悪者はもう徹底的に品性に下劣なんですよ。
それに対して、島耕作は物凄く高潔で公平な人格なんですね。
そのようなステレオタイプ、言っちゃえば漫画を大人として読む人にとっては「なんだよ、これ」っていう設定です。
僕らは、「お前みたいなヤツは『ジャンプ』で成功しねえぞ」とかつい思っちゃうんですけど。
でも、そう思っても、これで売れちゃうんですよね。
司令型っていうのは、それを身をもって知っているんです。
頭の良さのピラミッドを考えればわかります。
トップの人数は少ない。
難しい話を描いても、分かってくれる人は数が少ないのです。
そして人数というのは下の方の階層に、より多く存在しているわけです。
だから、よりわかりやすく、わかりやすくした方がいいに決まっている。
これが、司令型の勝ちの考えであり、司令型の正義なのです。
自分が本当におもしろいものを描いていてはいけない。
それは仕事ではなく、趣味だというのが、司令型の考え方です。
だからね。
まずは外堀を攻めるという説明で、「本当に外堀の絵を描くやつがいるか!」とか、そういう場面で、平気で描いちゃう(笑)。
それが、司令型的には正しいのです。
保険のオバちゃん「家族は保険というのは愛情の証なんですって」
お母さん「愛情の証、なるほど。」
主人公「うわあ、お母さんグラグラ来てる」
「外堀は完全に埋められて本丸へ」
っていうセリフで、また本当に完全にその例え話の絵を描いちゃうんです。
基本的に、ストーリーとかシチュエーションを説明する一番安直な絵を描くわけです。
その結果、図解っぽくなっても気にしない。
司令型も、自分のスタイルを確立するまでは色々と模索するんですよ。
「こういう構図で描きたい」とか、「このキャラクターの、こういう表情を描きたい」とか。
だけど、一度確立しちゃうとそのジャンルであまり競争しようとしない。
そういう特徴を見つけたら、それは司令型の漫画家です。
「俺より絵の上手い漫画家なんかいくらでもいる」
「でも、俺のウリは何かって言うと、このストーリーとかこの見せ方だ!」っていう風に割り切っちゃう。
とことん割り切ってしまえる。
この割り切りの良さが司令型の特徴とも言えます。
司令型の漫画って、中身は基本的に勝負と説教です。
勝ち負けと説教、この2つで出来ます。
漫画を読んでいて、どっちが勝つか負けるかで、ハラハラドキドキで楽しめて、しかも説教が出てきたら、「ああ、なんか司令型の漫画だな」という風に思って頂ければいいです。
だからその説教が楽しめる人は、物凄く面白いんですね。
色々な言い方をしましたけども、『カイジ』の作者福本さんも、『インベスターZ』の作者、三田さんも、僕は大好きです。
それは、その勝負の見せ方と説教があまりに面白いからですね。
なので、あのホリエモンが漫画の中に出てきても全く違和感がない面白さだなという風に思います(笑)。
ちなみに、絵がうまい司令型の漫画家も大勢います。
というか、多くの司令型漫画家は上手い絵を武器にして、漫画を書いています。
ただその場合も、ある時点で絵が変わらなくなるという、まったく同じ現象が見られます。
本日は、4タイプを、漫画家に当てはめて、ちょっと話してみました。
来週やる時は、また4タイプを、司令型以外で、また漫画家か、あと お笑い芸人みたいなもので説明してみたいなと思います。