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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『ラピュタ』の矛盾点を発見しました!」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『ラピュタ』の矛盾点を発見しました!」

2018-04-03 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/04/03
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    今回は、ニコ生ゼミ3月25日(#223)から、ハイライトをお届けいたします。

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     『ラピュタ』の矛盾点を発見しました!

    質問:
     『ラピュタ』の矛盾を発見しました。

     ラピュタに住んでる人が全員地上に降りて生活するようになったら、ラピュタが まだ空を飛んでるのは変じゃないですか?

     ラピュタを放ったらかしにしちゃったんですか?

     岡田さんの妄想で何か面白い理由を考えてください!

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     『ラピュタ』に関する質問です。

     この方は、以前、僕が おこなった『ラピュタ』の解説を見て、もう一度『ラピュタ』を見てくれたそうなんですけど、こう言われたので考えてみました。


     基本的に、現状の、雲の上を飛んでいる無人のラピュタというのは “ゴーストタウン” と同じなんですよ。

     ゴーストタウンというのは、そこに住んでいた全員が「もうこんな街にいられない!」って言って、一斉に都会に行って、捨てられるものでは ないんですよ。

     住む人が徐々に徐々に少なくなって、最後の1人もいなくなったか、もしくは、その土地で死んでしまうということで、ゴーストタウンになるわけです。

     ラピュタも同じです。

     たぶん、最後まで残っていた人もいたんでしょうけど、その人達も、結局、地上に降りることもなく死んじゃったので、無人のまま浮遊していただけだと思います。


     “ラピュタから地上に降りた人達” というのも、たぶん、最初はラピュタに帰省する手段というのを携えていたはずだと思うんですね。

     「いつでもラピュタに帰れる」と思ったからこそ、安心してラピュタを後にすることが出来るわけですから。


     だって、地上に降りたとしても、いざという時には、たとえば、高度な医療技術とか欲しい時とかなんかには「ラピュタに帰って助けが欲しい!」と思うのが人情じゃないですか。

     なので、いざという場合の帰る手段くらいは確保していたと思うんですけど。

     そういった帰るための手段というのが、地上に降りた以降は、維持が難しくなったり、動かなくなったりして、徐々に徐々にラピュタに帰れなくなった、と。

     こんなくらいに考えておくと、矛盾というのも解決するんじゃないでしょうかね。

    ・・・

     たぶん、地上に降りるか否かということが話されていた当時のラピュタの中には、“自然派” といわれる「ラピュタから降りて大地に帰ろう!」と言う人達の他に、“福祉派” といわれる派閥があったと思うんですよ。

     「ラピュタの方が福祉環境が整っている。今、地上に降りてしまったら、この間 生まれた未熟児どうなるんだ?」とか、「うちの子、アトピーなんだけど、地上に降りた先の世界で生きていけるのか?」とか、「ラピュタの高度な科学技術があってこそ、うちの子供達は生きていけるんだ! お前達みたいに無責任に自然に帰るわけにはいかない!」みたいな、最低限、それくらいの派閥の対立はあったと思うんですよ。

     劇中で、シータはラピュタを指して「こんな不自然なところで生きていくなんて出来ない。だから人間は自然に帰りたかったの」って言うんですけど。あれは “シータが思いつく程度の理由” なんですよ。

     かといって、ラピュタに残っていたとしても、飛行石という放射性物質の塊の近くにいることになるわけで、特有の風土病みたいなものもあったんだと思うんですよね。

     そこら辺で、おそらく意見の対立があったはずなんです。


     そして、こういった対立を放っておくと、問題が発生するわけですね。

     「ラピュタから降りて自然に帰ろう!」という自然派の人達と、「ラピュタの中に残ろう!」という福祉派の居残り組が仲が悪かったらどうなるか?

     居残った人達は、地上に降りた人達をラピュタの高度な武器を使って攻撃することが出来てしいますよね。

     だから、降りるにしても、そんなことが起きないための安全措置が必要になるはずなんですよ。


     じゃあ、自然派の人たちがどうやって安全を確保するのかというと、僕なんかが最初に考えちゃうのは「じゃあ、人質として王族を一緒に地上に降ろそう」ということなんですよ。

     つまり、「ラピュタに まつわる いろんなコードキーを持っている王族を、人質として一緒に地上に連れて行く。その代わり、ラピュタの中に居残る人がいることを許す」と。

     おそらく、このあたりが収めどころのはずなんです。


     この辺の事情を、元から自然派で地上に降りることにも賛成だった王族の末裔であるシータは、ご先祖さまから伝え聞いていなかったと思うんですよ。

     ところが、ムスカの先祖は人質として無理やり地上に降ろされたので、こういうことに関して恨みを抱いていた。

     そう仮定すると、ムスカが「いずれラピュタに帰って地上を支配する!」と思うようになった動機にも繋がるんじゃないかと思います。

    ・・・

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     こういう点について、この『誰も語らなかったジブリを語ろう』という本の中で押井さんは「『ラピュタ』は矛盾しているんだよ! だから、ダメなんだよ! 俺に言わせれば、宮崎駿はアニメーターとしては天才なんだけど、映画監督の才能がないんだ! 宮崎駿というのはそういった構造的な矛盾が全然わかってないんだよ!」と、かなりボロクソに言うんですけど。

     でも、なんかね、こういうふうに「ラピュタには矛盾している部分がある。なぜなら、宮崎駿はわかってないからだ」と言っちゃうと、そこで考えが止まっちゃうんですよね。


     その先を自分で勝手に考えて、「宮崎駿は、実はここまで考えてたんじゃないかな? だとしたらスゴいな!」と考えて尊敬した方が面白いし、自分のプラスになると、僕は思うんです。


     「あ、ここが矛盾してるな。ダメだな。そんな矛盾した作品を面白いと思ってるヤツらは、まだまだ浅い見方しかしてない。俺は押井さんみたいに『ラピュタ』に関しても批判的に見てるぜ!」と言うのは、上に立っているような感じがする一方で、単なる思考停止だと思うんですよね(笑)。

     なので、なんか、これくらい考えて見た方が楽しいんじゃないかと思います。


     ……あ、今、押井さんのことを悪く言ったように聞こえたんですけど、違います。

     「押井さんが言っているようなことを借りて、『ラピュタ』を批判するのは浅い」と言ったんですからね。

     押井さんは、この本の中で、すごく面白くて色々と複雑な面を見せています。
     これについては、後でまたゆっくり語りますね。

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