アムロを迎えに酒場まで来たフラウ・ボウは、ジオン兵につかまり、ハモンやランバ・ラルの前に引きずられてくる。
何も考えず「アムロ!」と名前を呼ぶフラウ・ボウ。
フラウ・ボウを、連邦軍のスパイだと主張する部下。
「そうなのか?ハモン。」 と尋ねられて、「さぁ、そうらしいけどその娘、この子のガールフレンドですって。」 と答えるハモン。
ランバ・ラルは、そのままアムロの方に真っ直ぐ歩いて行きながら、「離してやれ。」 と言う。
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それまで真っ直ぐ自分を見ようとしなかったたオドオドした少年が、フラウ・ボゥが捕まって、「ほう、そう(おまえのカールフレンド)なのか」と言われた瞬間、自分(ランバ・ラル)を真っ直ぐ見返してきたんです。
ランバ・ラルは、この時、初めてこの少年の決意に気がついたんです。
「いい目をしてるな。」と言いながら、真っ直ぐアムロの方を見ながら、アムロのマントをバッとひろげます。
全く目を動かさずに、バッと広げる。
この連続ですね。
http://livedoor.blogimg.jp/okada_toshio/imgs/3/7/3755aa38.png ランバ・ラルの方をまっすぐ見てたアムロは、マントをバッと広げられて、「マズイ!」と思って下を見ちゃうんですね。
それに対してランバ・ラルは、「へえ。」と言ってアムロの手元を見る。
で、こうアムロの顔を見上げる。
アムロとランバ・ラルのにらみ合いです。
アムロが下を見ていた、ランバ・ラルが下を見ていた目線をアムロに見上げる。
まだこの時点では、そこに何があるのかは出てこないんですよ。
「フフフ、それにしてもいい度胸だ。ますます気に入ったよアムロ。アムロとか言ったな。」とここでようやっとアムロの名前を覚えてくれる。
いつもの気まぐれなハモンのお気に入りの男の子だと、あんな男の子が欲しいのかなと思っていたアムロが、実は1人の男、恐らく1人の敵として、ランバ・ラルに記憶された瞬間ですね。
バッとアムロのマントを広げた時に、何かを見たランバ・ラルが目線を上げて、アムロの目を初めて見て、「ますます気に入ったよ。」と言う。
ちょっと怖い構図ですね。
これ有名なシーンなんでいちいちフリップを作らなかったんですけども。
「アムロとか言ったな。」 と言われた時に 「はい。」 とアムロが答える。
アムロの顔からカメラがずーっとパーンダウンする。
ランバ・ラルに持ち上げられたマントがあって、その下にアムロの手が、腰に差した連邦軍の銃をグッと握ってる。
つまりこの環境でアムロは撃つつもりだったんです。
ランバ・ラルがあまりに早くマントをバッと広げたから、アムロはその場で動かずに止まってしまった。
もしランバ・ラルがあのままゆっくり近づいてきて、「お前は一体誰だ?」とか言ったら、アムロは同じようにランバ・ラルを正面から撃とうとしていた。
お母さんに会った時に、いきなり その場 でジオン軍の兵隊を撃ったように。
でも、それが撃てずに固まっていたのだな、というのがわかるシーンです。
これが、連邦とジオンという敵同士だということをお互いに明確に認識した瞬間です。
ランバ・ラルは、その銃を見てアムロから離れます。
離れながら、ゆっくりと右から左へ歩いて、「しかし、戦場で遭ったらこうはいかんぞ。頑張れよアムロくん。」 と言います。
含みのあるセリフですよね。
「戦場で遭ったら、こうはいかんぞ。」 というのは、「戦場で遭ったらお前を見逃すことはない。お前を殺すぞ」という意味です。
「でも、こんなところで会って、1回 “気に入った” って言っちゃったし、飯を奢ると言ったから、とりあえず今日は見逃してやる」ということです。
「頑張れよ、アムロくん。」 というふうに名前を覚えて励ましまでしてしまうんです。
ランバ・ラルが、大人の余裕を見せて見逃すと宣言しているように見えます。
でも実はこれ、狡猾なランバ・ラルの戦略だったのです。
ただ、まだこの時のアムロにはそれがわかりません。
(中略)
アムロはフラウ・ボウに 「行こう。」 と声をかけます。
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で、行くときに、一瞬ハモンさんの方をもう1回見てしまいます。
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そうすると見られたハモンさんは、「フッ。」って手を挙げて挨拶してあげるんですね。
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ランバ・ラルとアムロの関係、ハモンとアムロの関係って全く別に描かれてるんですよ。
ランバ・ラルはあくまで背中しか見せない。
「これ以上お前と顔を合わせるわけにいかない。だって実は俺とお前、敵と味方だろうと、だから俺は今見逃してやるけど、お前の顔を見るなんていう馴れ馴れしいことはしないぞ」って、背中を向けている。
でもハモンさんは、アムロがチラッと見たら、わざわざ手を挙げて挨拶してあげるんですよ。
ランバ・ラルとハモンは、一心同体のようでありながら、全く別のロジックで動いているのがわかります。
第19話「ランバ・ラル特攻!」