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「【『ホモ・デウス』とはどんな本か? 1 】 現代の人間はパンがないからお菓子を食べている」
では、上巻の第0章、「人類が新たに取り組むべきこと」という、メチャクチャ長い前置きの話から始めましょう。
宗教も、科学も、国家や政治も、家族や恋愛も、全てこの3つの害悪と戦って生き延びるためのツールだったわけです。
では、その3つとは何か?
それが “飢餓” と “伝染病” と “戦争” です。
なので、女性の骨盤は大きく開かざるを得なくなり、おまけに脳が大きくなるまで胎児をお腹に入れておかなければいけないので、10か月の妊娠期間が必要になる。
そして、妊娠期間の後半の方は、女性はろくに動けなくなる。
となると、エサを獲りに行けなくなるので、“オスがメスを見捨てないシステム” が必要になった。
その結果、人間には恋愛とか家族という概念が発達したんですね。
恋愛も家族も、飢え死にを避けるため、絶滅を避けるために、人類が長い時間をかけて得た社会性の1つ。これが、人類の進化の過程なんです。
これについて、著者のハラリは「歴史は空白を許さない」と書いているんですよ。
人類は、これまでずっと、この3つと戦っていたわけですから「もう戦わなくてもいいよ」と言われると、ポカっと開いちゃうんですよね。
こういった現状について、この本の中の表現では「火事がなくなってしまった世界の消防士たちの話である」と書かれています。
人類というのは、すでに戦わなければいけないと思った相手がなくなってしまったんです。
その周りには、チーズの山や、ワインの海、ソーセージのなる木が生えていて、パンやケーキが生い茂る草原がある。
火山ではマカロニを茹でていて、豚やガチョウは焼かれながら歩いていて、お皿の上でパタッと倒れて「食べてください」と言う。
さらには、若返りの泉まで沸いている、と。
こういう楽園を描いています。
そんなふうに、「とりあえず “バベルの塔” というものが存在するとしたら、絶対にこういう工具があって、こういうふうにレンガを引き上げる機械があって、人がこういう導線で働いているはずだ」というリアリティを詰め込んで描いている。そういう画家なんです。
馬を走らせようと何をしようと、運んでいる間に食べ物が腐ってしまうわけです。
たとえば、ルネッサンスが過ぎて、大航海時代が過ぎた17世紀の末。
割と最近の話ですね。
1692年から1694年あたりに、ヨーロッパでは大規模な飢餓が起こりました。
この時、フランスでは人口の15%の280万人が餓死しました。
この飢餓はすごかったそうです。
「草の根を食べる」なんてのはもちろんのこと、猫を食べてまで、みんな生きようとしたんです。
しかし、それも全て無駄骨に終わりました。
まあ、そんな中、ベルサイユ宮殿の中では、太陽王ルイ14世が毎晩パーティーをしていたんですけど。
もちろん、フランスだけで飢饉が起きているわけでもなく、同時期に、エストニアでは人口の20%、フィンランドでは人口の30%が、1692年から1694年の飢饉で餓死したと言われています。
この「3年間も飢餓が続き、おまけに人口の30%が死ぬ」なんていうのは、現代の感覚からすると、とんでもない事態ですよね。
かつては、これが当たり前のように起こっていたんです。
「国民はパンがなければお菓子を食べればいいのに」って。
今の我々は、それをやっている最中なんです。
「21世紀を生きる現代人は、マリー・アントワネットの助言を入れた」とハラリは書いているんですよ。
貧乏人はパンを食べられず、安いお菓子しか手に入らなくて、カスタード入りの甘いお菓子をバクバク食べている。
それに対して、“太り過ぎ” の人口は21億人なんですね。
栄養不良に対して、太りすぎの人口が倍以上ある。
その上、飢餓や栄養不良で死んだ人間は100万人ぐらいなのに対して、太りすぎで死んだ人間は300万人以上。
さらには、「2030年には成人の半数以上が肥満になっている」という予測すらあります。
今でも、飢え死にするような貧しさは政治が原因で起こってはいるけれど、でも、相対として見れば、人類は何万年と続いていた飢餓という問題を、この100年足らずの間に絶滅させることに成功した、と。
こういう状態なんです。
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