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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『もののけ姫』冒頭10分の完全攻略! 3 】 アシタカが村を追放された本当の理由」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『もののけ姫』冒頭10分の完全攻略! 3 】 アシタカが村を追放された本当の理由」

2018-11-01 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/11/01
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    今回は、ニコ生ゼミ10月21日(#253)から、ハイライトをお届けいたします。

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     【『もののけ姫』冒頭10分の完全攻略! 3 】 アシタカが村を追放された本当の理由


     呪いをかけられたアシタカは、村を出るしかなくなります。

     というわけで、アシタカは自分の髷を切り落とします。

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     アシタカの村の男達はみんな頭に髷を結ってるんですけども、これを切ります。


     ……もう「みんな何度も何度も『もののけ姫』を見てるでしょ?」という感じで喋ってるんだけど、大丈夫かな?(笑)。


     はい、髷を切るシーンなんですけど、すごく小さい刀を使っています。

     たぶん、この小さい刀が、この国に唯一ある “鉄” なんですよね。


     おそらく、彼らは石器文化と青銅文化のちょうど間くらいの文明水準なんです。

     アシタカが、後に旅に持っていく大きい刀みたいに見える武器や、女の子たちがタタリ神と戦おうとした時に抜いた大きい刀は、全て青銅製の “山刀” といわれるものです。

     山刀というのは、山の中を歩く時に、邪魔な蔦を払うための杖と刀の間みたいなものです。


     彼らには、そういった青銅文化しかなく、鉄というのは、ごく小さいものしか持ってないはずなんです。

     なぜかというと、村人のみんなが刀くらいのサイズの鉄器を持てるほど膨大な鉄を製錬しようとすると、あの土地の近くに森なんか残っているはずがないからです。

     鉄というのは「5トンの鉄を作るのに山1つなくなる」と言われるくらい、木を切らないと作れないものなんですよ。


     なので、彼らが住んでいる場所からすると、鉄というのは、砂鉄を低い温度でなんとか溶かして、形にして、研ぎ出した、こんな小刀しかないのでしょう。

     そういう文明だと思ってください。

    ・・・

     アシタカは、そんな鉄の小刀で髷を落とします。

     この「髷を落とす」ということは、「一族でなくなる」=「二度と帰れない」という意味なんですね。

     そして、なぜ、彼がそうしなければならないのかを、ヒイ様が説明します。

     ここでは、ヒイ様の表情込みで見てください。

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     ヒイ様は「西の国で何か不吉なことが起こっている。その地に赴き、曇りのない眼で物事を見定めるなら、あるいはその呪いを断つ道が見つかるかもしれぬ」と言います。

     この言葉を聞いたことで、アシタカは西に行こうと決意します。

     同時に、僕ら観客も、なんとなくそれで納得させられるというか、騙されてしまうんですね。


     そもそも、なぜ、アシタカは村を去らなければいけないのか?

     なんでヒイ様は西に行かせようとしているのか?

     いや「呪いを解く方法が見つかるかもしれぬ」って言ってるんですけど、それって何の根拠があって言ってんのよ?


     そんなふうに思うんですけど。

     これね、この映画の最初の大事なポイントなんです。

    ・・・

     アシタカは呪いを受けて、右腕にアザが出来た。

     この毒が行く行くは骨にまで達して、彼は死んでしまう。

     この死から逃れるために、西に旅をする。


     これが『もののけ姫』のストーリー展開だというふうに、今の今まで、僕らは思わされているんですけど。

     だけど、それだけなら、そもそも追放する必要なんてないんですよ。

     だって「タタリ神が死んだ場所には塚を築いてちゃんとお祀りします」って言ってますから。


     いやいや、そんなことはない。あの怪物は死ぬ時に「死んだ後も呪ってやる!」と言ったじゃないか、と思うかもしれませんけど。

     ところが、この映画の中には、犬の神様とか、イノシシの神様とか、いろんな神様が出てくるんですけども、死んだ後で祟った神様は誰1人としていないんですよ。


     この映画の中に出てくる神様というのは、たしかにすごい巨大な力を持っていて、身体も大きいんですけど、それだけなんですね。

     テレパシーみたいな超常現象みたいなものは一切使えない。

     まあ、唯一、シシ神だけが、ちょっと不思議な力を持ってるんですけど、他の神々は、そんなものを持っている描写がないんですよね。


     もちろん「死んだ神々が、死後も続く呪いを残す」なんて描写も1つもありません。

     乙事主もモロも、この映画の中で死にますけど、死んだらそれっきりです。

     つまり、死後の呪いなんていうものは、この物語の世界にはないんです。

    ・・・

     じゃあ、なぜアシタカは追放されたのか?

     それはもう「ヒイ様が追放したいから」なんですよ。

     なぜ、アシタカに呪いに関する話をする時のヒイ様が、ポーカーフェイスで語っているのかというと「演技しているから」なんです。


     村人もアシタカも気がついてないんですけど、ヒイ様の心の中にだけ、ちゃんと理由があるんです。

     それは何かというと、アシタカの呪いの正体というのは「死ぬこと」ではなく、「アシタカ自身がタタリ神になること」なんですよ。

     アシタカは、これからゆっくりタタリ神になっていくんですね。


     ついさっき村を襲った怪物と同じように、自分の痛みや苦しみに段々と耐え難くなり、自分の運命を呪うようになる。

     たぶん、襲ってきたイノシシ神も、最初はそれを理性で抑えていたんですけど、徐々に徐々に、タタリ神になってしまった。

     それと同じように、アシタカは次のタタリ神になる運命を受けてしまったんですね。

    ・・・

     アシタカは、この後、戦に巻き込まれた時に、普通に弓を構えて矢をパーンと射っただけで、相手の侍の両腕ごと落とすほどの怪力を見せます。

     それどころか、次の矢を射ると、相手の首がポーンと切れるんですよ。

     これにはアシタカ自身も驚いているんですけど。


     これは、この時点で、彼にはそういうパワーが与えられているからですね。

     そして、それは聖なるパワーであると同時に呪いのパワーなんです。

     呪いのパワーはアシタカを死に至る苦しみへと誘い、そして、聖なるパワーは彼の力を無限大に膨らませて行く。


     アシタカは、タタラ場に行った時にも、傷ついたサンを担いで「どいてくれ! 俺は行くんだ!」と、本来は何十人掛かりでやっと開けられるような巨大な木の扉を、1人で、それも片手だけでグーッと押し開けます。ここで使うのも、やっぱり呪いを受けた右手なんですよ。


     これは何かというと「アシタカの中で、怒りとか悲しみとか不条理なものへの何かが吹き出すと、無限のパワーが出てくる」ということなんですね。

     僕らは、こういった、アシタカが無限のパワーを、ある程度、意のままに使っているシーンしか見ていないので「そんなものか」と思ってしまうんですけど。

     あれは明確にアシタカが段々と怪物になっていく途中を描いているんですね。


     実は、この映画は、そんな「主人公のアシタカは、最後にはやっぱりタタリ神になってしまうのか? それとも、人間のまま生きて行けるのか?」という葛藤が、もう1つの地下構造として仕込まれているんです。

     だけど、それがなかなか伝わらない。


     やっぱり僕、わからなくなっちゃった理由の1つは、タイトルを『もののけ姫』にしちゃったことにあると思うんですよ。

     なので “恋愛モノ” に見えちゃうんです。

     でも、違うんですよ。あれは、本来は『アシタカせっ記』というタイトルの、アシタカの物語なんですよ。

    ・・・

     アシタカの心の中には、絶望や怒りというのがあるんです。

     だけど、表面上は、無表情だし、すごくジェントルに描いてあります。

     そして、こういった「礼儀正しい態度とは裏腹に、彼の中には深い絶望や怒りがある」ということは、あえて今回は描かないと、宮崎駿は言ってるんですね。


     描かない理由は何かというと、映画を作っている最中に、司馬遼太郎と対談した時、宮崎さんが彼の言葉に感銘を受けたからだそうです。

     「そうか! 弱音を吐くような人間は “弱虫” なんだ! 俺が庵野の『エヴァンゲリオン』が嫌いな理由がわかったよ! 僕は可哀想だ、僕は可哀想だって、あんなに泣きごとを言いやがって!」と。


     司馬遼太郎から「本当に不幸な人間は、むしろ礼儀正しくなる」と言われて、宮崎駿は、本当に感動したそうなんですけど、その影響なんですね。

     なので、アシタカの内面は台詞になって表れないんです。


     『ラピュタ』のドーラみたいに「この方が便利かもしれないねぇ」みたいな独り言を一切言ってくれないんですね。

     その結果、「アシタカがどんどん怪物になっていく」という描写も、表現としては怪物じみているんですけど、僕らとしては、スーパーヒーロー的な良いことみたいに思っちゃうんです。

     だけど、それは違うんですね。


     アシタカが、指先ひとつで相手の刀をグニャっと曲げて、最後は親指と人差指だけで刀をへし折るシーンとかも出てくるんですけど。

     あれは完全に「怒りによって力が暴走していって、モンスター化している」という表現なんです。


     最初は、アシタカも、落ち着いて自分の心をコントロールしていた。

     「村から出て行け」と理不尽なことを言われても「わかりました」と言って、ため息を吐くくらいだったんですけど。

     映画の後半では「興奮すると、どんどん力が暴走して、自分でも制御できなくなる」というところがハッキリと出てきます。

    ・・・

     そして、おヒイ様は、あの村でただ1人それに気が付いているんですね。

     怖いのは死んだタタリ神じゃないんですよ。


     おヒイ様にとっては、これからタタリ神になり、人間でなくなってしまうアシタカこそが、一番怖かったわけです。

     だから「アシタカは良い子で、たぶん、うちの村を継いで良い王になってくれるだろうけど。しかし、もうすぐ彼は、痛みと恨みと自分に降り掛かってきた不条理に対する怒りで、怪物になってしまう。その前に村を追い出そう」と考えたんですね。

     その上で、さらに「このタタリ神となる若者を、我々の村にタタリを押し付けた西にある大和の王の元に送り込んでしまおう」と考えています。


     この時代の縄文人の考え方では、タタリというのは、誰かに返さないといけないものなんですね。

     こういうのを「忌み返し」と呼びます。


     何か忌むことをされた場合は、それと同じように相手を忌むことで返すのが、未開部族の間のルールとしてあるんです。

     平安時代になってくると “式神返し” とか、もう少し体系化されるんですけど。


     なので、おヒイ様は、すごいポーカーフェイスで “戦略兵器” としてのアシタカを、西の大和の国へと送りつける忌み返しを発動させたわけですね。

     でも、アシタカも村人も、これには全く気が付いていません。

     なので、アシタカは「西に行けば呪いを解けるかもしれない」と信じているし、「この村に、これ以上、呪いが感染らないように」と思ってしまって、自分自身が呪いそのものであるとは気が付いていないんです。

     数週間か数ヶ月後には、アシタカもまたタタリ神となって、変な蛇みたいなウネウネしたものが身体にいっぱい巻き付いて、西の国を襲うことになるだろうとは、わかっていないわけですね。

    ・・・

     劇中には、たぶん、おヒイ様と同様に、それに気が付いていたかもしれない人物がもう1人出てきます。

     それが、ジコ坊という、もう少し後で出てくる、なんかちょっと複雑な、ワケアリな設定のおじいさんです。


     この人も、最初にアシタカに会った時「こんな鉄の弾がイノシシに入っていました。そのおかげで、私は呪いを受けました」と言う彼をしばらく見て、急に「ここから西の端のもっと西の方に行くと、山の中にすごい神がいる。その神に会えば、君の呪いもなくなるかもよ」と言うんですよね。

     これはつまり「ジコ坊はジコ坊で、デイダラボッチという大怪物に、このアシタカという大怪物をぶつけることによって、退治しよう」と思ったからでしょう。


     このように『もののけ姫』という作品は、個人個人が持っている思惑とか戦略とかを、あえてそのまま表現せずに、あくまでもアシタカの視点だけで見られるように作っているので、そこら辺がなかなか分かりにくくなっているんです。

     
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