Hetzerさん のコメント
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/01/04 ─────────────────────────────────── 今回は、ニコ生ゼミ12月23日(#262)から、ハイライトをお届けいたします。
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───────────────────────────── 「 とんでもなく面白い児童小説『ブラッカムの爆撃機』 その1 」
あと、“本を読んだあとで作りたくなるプラモデル” っていうのもあるんです。
ちょっと、この話をするには、本の話からしなきゃいけないんですけども。
『ブラッカムの爆撃機』という本です。
これは、ロバート・ウィンストールという、イギリスの作家が書いた、基本的には児童書なんですね。 子供向けの小説です。
児童書なんですけども、タイトルが『ブラッカムの爆撃機』ですから、舞台は第2次大戦中の爆撃機なんですよ。 かといって、戦争モノかというと、実はそうじゃないというやつなんですね。
宮崎駿が表紙を描いていて、これはいいなと思ったんですけど。
表紙だけじゃなくて、なんか延々、こんな感じで、漫画版のナウシカよりも描き込んでいるフルカラーの漫画を、あのじいさん、24ページも描いてやがるんですね。
もうこれだけでもお買い得なんですけど。でも、この小説自体もメチャクチャカッコいいんです。
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主人公は、高校を卒業したばかりのゲイリーという男の子です。
高校を卒業したばかりだから18歳くらいですね。 このゲイリーの他に4人いる爆撃機のクルーも、全員18歳なんですよ。 高校を出たばっかりなんです。
というのも、18歳になったら “王立英国空軍” (ロイヤル・エアフォース)に入れたんですよ。
当時の若者はそんなヤツらばっかりで、訓練が終わったヤツは、行列を作って、一斉にチームに分けられるんです。
もう、爆撃手、機銃手、ナビゲーター、無線係、パイロットと、訓練が終わった若者は全員列を作って並ぶんです。 で、列の先頭から、ジェットコースターに乗る時に「はい、あなたは1番。あなたは8番~」というふうに言われて、座るじゃないですか? あんな形で、知り合いとか上手い下手も関係なく、とりあえず5人1組でどんどんチームを作らされて、爆撃機に乗せられることになりました。
これ、実際にもこうだったそうです。そこら辺の風景を、宮崎駿が描いたのがこれなんですけど。
「英国風爆撃機乗員促成養成法」と書いてありますね。 メチャクチャ細かいから読みくいと思うんですけども。
アナウンスをして、ゾロゾロと若いヤツがやってきたら、パイロット志望者は「習うより慣れろだ!」と言って、とにかく乗せられる。
あと、爆撃手とか機銃手も、1日か2日講習をやったら、いきなり飛行機に乗せられて「撃ってみろ」とか、「落としてみろ」と言われる。
無線と航法士だけは、ちょっとだけ教育期間があるんですけど、それも1~2週間で終わってしまって、彼らも卒業すると同時にどんどん飛行機に乗せられました。
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なぜ、こんなことをしたのかというと、この当時のイギリスでは “飽和爆撃” という方法が取られていて、1回ドイツを爆撃しに行くのに、100機、200機、500機、最終的には1000機くらいの爆撃機の編隊を飛ばしていたからなんですね。
それも、夜中に飛んで行くものだから、爆撃ポイントまで行く間にエンジンの不調とかでドーバー海峡に落ちて死んでしまうヤツらもいっぱいいる。
ドイツに着いたら着いたで、本当はもっと高いところから爆弾を落とせばいいんですけども、高いところから落としたら、途中で風が吹いたりすると爆弾の進路が歪んでしまう。 なので、高度200mとか300mという、高射砲がモロに当たるし、敵の戦闘機が上がってこれるような危険な高度から爆弾を落とさなきゃいけない。
まあ、ランカスターなどの新兵器は、もっと高いところから落としたそうなんですけども。 主人公が乗る爆撃機は旧式なので、すごく低いところから落とさなきゃいけなかったんですね。 なので、バンバン落とされるんですよ。
だいたい、20回だったか、それくらい出撃することを「1セット」と言うんですけども、その1セット終わった後で生き残っている確率が、なんと44% 。 2セット目に行くと、生き残り確率は20%というくらいに、とにかく損耗率が高かった、つまり、死ぬ人が多かったんです。
イギリスは、この爆撃機に18歳の若者をバンバン乗せました。
その結果、直接死んだ人間が5万5千人。 間接的に、その怪我が原因で後に亡くなった人を含めたら10万人くらい死んだそうなんですけど。
その結果、ドイツにどれくらい損害を与えたのかというと、民間人を含めて1万人に届かないんじゃないかと言われてます。
こういう、本当に無駄な戦争の世界だったんですけども。
こういうことについて、この本の作者と宮崎駿が対談する……といっても、もう作者は死んでるんですけど。 「宮崎駿の夢の中で、いろんな話をする」という、けっこう良い漫画を描いてるんですよ。
なので、是非とも読んであげてください。
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主人公のゲイリーは、今言ったように、5人1組でチームを組まされて、爆撃機に乗せられます。
そんな中、タウンゼントという謎のオヤジがやってて、機長として配属されるんですね。 このように、機長だけはベテランの人が来るんですけども。
このタウンゼントという人が、何を考えているのかわからないんですよ。
機長のタウンゼントは、次々と科目にないような訓練をやらせるんですね。 もう、5人とも「あの機長は頭がおかしい!」と、みんな反発するんですけど。
「とにかく、町中を飛行する時は、家の煙突にこすれるまで低く飛べ!」と言うんですよ(笑)。 「下の民家の煙突にガリッとこすれるまで低空飛行しろ!」と。
海の上を飛ぶ時も、トビウオが機内に入ってくるか、もしくは水面に浮いている海藻が、終わったあとに腹についてないと納得してくれないんです。森の上を飛ぶ時は、「木の枝がですねボキボキ折れるまで低く飛べ!」というふうに言うんですね。
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おまけに、メチャクチャな旋回をさせるんですよ。 「とにかく、何かが見えたと思った瞬間に、それが何であっても、舵を思いっきり切って、思いっきり低く高度を取れ!」と。
学校では「まずは、高く飛んで安全なところからドイツに侵入し、ドイツに着いたら高度を下げて爆弾を落とせ」と教えられるんですけど、タウンゼント機長は、あくまでも「ギリギリまで低く飛べ!」と要求するんですね。
「他の飛行機全然そんなことしてませんけど」って言っても、「いや、俺の機はそうだ!」と。 だから、みんなもう、文句タラタラなんですよ。
特に、飛行機の中には “簡易便器” っていうのがあるんです。 とは言っても、バケツに蓋がしてあるだけなんですけど。
バケツが床に固定してあって、その上にボルト留めの蓋がついてる。 飛行機の上でトイレ行きたくなったら、オシッコでもウンチでも、そのボルト留めの蓋を開けて、その中にして、またボルトで留めるんですけども。
そんな飛び方をするもんだから、機内がもう本当に振り回されるわけですね。
タウンゼント機長の指示する操縦があまりにも荒いから、だいたい、どこで飛行訓練をやっても、そのバケツごと床から外れてしまって、最終的に機内がウンコまみれになるっていうので、みんな、すごい嫌がるんです。
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ところが、この訓練のおかげで、ゲイリーたちは、どの爆撃プロジェクトでも生き残ることが出来たんですね。
さっきも言ったように、ドイツへ行くための夜間飛行だけでも落ちる飛行機がかなりあって、そして、ドイツに着いて爆弾を落とす時にも、かなりやられる。 さらに、どうにか戦場で生き残って、疲れ切ってドーバー海峡を渡って帰ってくる時にも、かなり墜落するのが、もう本当に当たり前だったんです。
1回の出撃で半数近く……というか、生き残るのが2割以下というのが当たり前だったんです。
しかし、訓練でタウンゼント機長の言った通りにやってると、必ず生きて帰って来られた。 ということで、皆は徐々に徐々に彼を「親父」と呼んで、すごく尊敬するようになるんですね。
そんな彼らに与えられたのが、こいつです。
“ウェリントン”という爆撃機です。 僕はですね、調子に乗って48分の1という、超巨大な模型を買ってしまったんですけど。 48分の1のウェリントン3型というやつです。
・・・
ゲイリーたちは、そんなウェリントン3型という旧式の爆撃機を与えれらました。
新鋭機なんて、もちろん貰えません。
その上、工場から出荷したばかりの新品ではなくて、もう何度も爆撃に行っている古い機体を貰います。 これで、ドイツの爆撃に出かけるんですけども。
さっきも言ったように、このドイツ爆撃自体、実は、ほとんど意味がないものだというのがわかっています。
イギリスの若者10万人を死に追いやってまで得た戦果というのが「線路を破壊した」とか、「敵の工場の端っこを燃やした」という、もう本当に「ドイツに爆撃に行かなければイギリス人はこんなに死ななくて済んだ」と言われているような作戦の繰り返しだったんですけど。
その後、アメリカが参戦しての連合国全体での爆撃になると、全く話が違ってくるんですけども。 こと、イギリスが5年間続けた独自の爆撃というのは、あまり効果がありませんでした。
爆撃する際に高度を落とすせいで、高射砲とか戦闘機の餌食になりやすく、無事に逃げたと思っても、さっきも言ったように、大半が中古の機体なので、エンジンがすぐに止まって、ドーバー海峡に落ちてしまったりして、死んでしまうパイロットが続出しました。
せっかく戦闘が終わって生き残れたのに、ただ単に古い機体だったからという理由で、故障して落ちちゃうということが本当に多かったんですって。
ゲイリーたちは、そんな中でも、タウンゼント機長の指揮の元、生き残り、徐々に自分たちのタウンゼントチームというのを誇りに思うようになりました。
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