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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/01/29
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今回は、ニコ生ゼミ1月20日分(#265)から、ハイライトをお届けいたします。

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 【 漫画版『攻殻機動隊』を掴むための3つのキーワード 2 】バブル経済
 

 第2のキーワード、『攻殻機動隊』が出現した前提としてあるのが「バブル経済」です。

 このバブル経済というのは「『北斗の拳』との違い」と言ってもいいんですけども。


 『北斗の拳』は1983年から連載を開始したものですから、当時、景気が良かったと言っても、1986年から後のいわゆる “バブル経済” の恩恵を受けてはいないんです。

 なので、「核戦争が起きた後、もう世界は滅びて、水を奪い合って殺し合う。バイクに乗ったヤツらがウェーイ! みたいな世界だ」って考えちゃうんですね(笑)。


 でも、バブル経済と同時期に連載されている『AKIRA』では、大友克洋は「大戦が起こった後でも、日本はどんどん復興していて、もうすぐオリンピックが始まる」という世界を描くんですね。

 この2つの世界観の差は何かというと、バブル経済と後に呼ばれることになる、未曾有の好景気の時代にあります。

・・・

 資料によりますと、バブル経済というのは「1986年12月から91年2月までの51ヶ月、5年近くの期間に日本で起こった資産価値の上昇と好景気、及びそれに付随して起こった社会現象」と言われています。

 この原因は、もう最近ではハッキリとわかっていて。もう10年以上も前にNHKが特集していたんですけど、“プラザ合意” というのがあります。

 1985年に、ニューヨークのプラザホテルというところで、フランス、西ドイツ、イギリス、アメリカ、あと日本のそれぞれの財務大臣、日本は大蔵大臣だった竹下登が出席して、「円高ドル安に誘導する」という結論をまとめたという国際的秘密会議です。

 そんなことを、経済担当の大臣が集まってやってるんです(笑)。


 なんか最近、中国が為替操作をやってるらしいんですけど、プラザ合意はそんなもんじゃないわけですよね。

 先進国の一番偉い人らが集まって、なんかホテルで秘密会議を大っぴらにやって「とりあえず、ここから先、ドル安になるようにしよう。円高になるようにしよう」と。

 このおかげで、円の価値が一時的にガーッと上がるというのは、この段階からわかってたんですね。

・・・

 85年のプラザ合意の後、86年から、その効果がどんどん表れ始めて、不動産や株式に対する投機を促し、バブル景気というものが起こりました。

 その当時は円高によって…

 …これ、僕も当時を生きていたからわかるんですけども、“半額セール” と言われたんですね。


 アメリカの資産の買い取りとか、ビルとか、もう本当に島とか、そういうものをガンガン円で買えた時代があったんです。

 海外旅行のブームも起こりました。

 つまり、海外にあるものは、全てがそれまでの半額に思えたんですね。

 海外旅行であれ、海外の不動産であれ、海外の会社であれ、全てがこれまでの半額で手に入るということで、空前の投資ブーム、旅行ブームというのが起こりました。


 その結果、賃金の安い国に工場をガンガン移転する企業が増えたんですね。

 なので、現在の東南アジアの好景気というのは、実はこのプラザ合意におけるドル安円高誘導のおかげでもあります。


 日本にいたら、別に同じなんですよ。

 「急に景気が良くなった」といって、100円のものはやっぱり100円でしか買えないんですね。

 ところが、海外では100円が200円の価値で使えるという半額セール状態ですから、海外の物がいきなり安くなっちゃうわけです。


 普通の人は輸入品を安く買っていたんですけども、そこら辺、ちょっと利に聡い人は、海外の物件に投資したり、海外で生産拠点を作るために工場を作ったりし始めたんです。

 これによって東南アジアでは日本が作った工場がガーッと出来たんです。

 そして、日本というのは、工場を作る時に、とにかく工場で働く人達を教育するし、言葉は教える。

 科学技術も教える。

 あとはみんなに “タイムレコーダー” という仕組みまでも、骨の髄まで教え込む。

 ということで、実は現在の東南アジアの好景気というのは、ほとんどが、このプラザ合意における円高誘導の結果、東南アジアに多大な投資を、別に政府からでなくて、民間から、皆が勝手にやっちゃったおかげで今の発展があるわけですよね。


 まあ、それに比べて日本がショボくれた状態になってしまったんですけど。

 でも、後に「そんなショボくれた状態になることも、プラザ合意の時点でわかってた」っていうんですよね(笑)。

 これは、10数年前のNHK特集で言ってたことなので、今さら言ってもしょうがないことなんですけど。

・・・

 何が言いたいかと言うと、「奇跡とも言われる東南アジアの経済発展を促すことになった」、これが『攻殻機動隊』のベースになってるんですね。

 それが2つ目のキーワード「バブル景気」です。

 1つ目の「終末戦争とサイバーパンク」だけでは、この第1ページに出てくる巨大なビル群というのは説明できないんですね。

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 この『攻殻機動隊』の連載期には、日本にはバブル景気というのがあり、単行本が発売された頃、ようやっとそのバブル景気というのが終わります。

 そういう時代だったので、『攻殻機動隊』における未来像というのは、今の僕らが考えているよりは、ずっと明るい……ということはないんですけど。

 経済が発展している状態になっています。


 さて、『攻殻機動隊』の成立条件となった3つ目のキーワード「シリコンからニューロチップへという変化」については、次回の第1話の解説の中で説明しようと思います。

 第1話の冒頭に、この漫画の中でも有名な、いきなり半導体チップを5万倍に拡大したデカイ絵が出てきて、「これは播磨研究学園都市で研究されたナントカである」みたいなページがあるんです。

 だいたい普通の人は『攻殻機動隊』を読もうと試みても、あのシーンを見て逃げちゃうんですけども(笑)。

 そんな、難しいと言われる原因となったページで、もうちょっと説明しようと思います。
 

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