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今回は、ニコ生ゼミ02月17日(#269)から、ハイライトをお届けいたします。
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「【『ファーストマン』番外編 2 】 2歳の愛娘・カレンの死」
“X-20ダイナソア” と言われる機体です。
後に、ミサイルの先に付けることになる、もう本当に折り紙みたいな飛行機なんですけど。
そんな折り紙みたいなダイナソアという飛行機で地球に帰って来ようと考えたわけですね。
ニールが働いていたボーイング社のエメレット工場というのは、僕も昔行ったことがあるんですけど、「ジャンボジェットが6機同時に建設できる」という、世界最大のワンフロアの工場だったんです。
工場内にハンバーガーショップが14件もあるという、あまりにデカすぎる工場なんですね。
ニールは、週末以外はここに毎日毎日詰め込まれて、X-20の開発をさせられていたんです。
週末だけ、家族と一緒にカリフォルニアに帰るということをやっていたんですけども。
その結果、カレンは “脳幹腫瘍” と診断されました。
ただちに「脳にX線を直に当てる」という治療がスタートしました。
つまり「1回のテスト飛行ごとに、4分の1近い確率で死ぬ」ということですね。
そんなフライトを、ニールは毎週のように、もう何年も続けているわけです。
この4歳のリッキーは、妹に何が起きたか全然わからなくて、もう両親は急に塞ぎ込んじゃうし、妹は寝たきりになってしまってイライラして、家庭内でわりと暴れ回り始めたんですね。
これは映画の中でもちゃんと描かれています。
これらのストレスで、ニールの妻のジャネットは、段々と夫に不信感を抱くようになってきます。
この辺りがもう映画の冒頭5分とか10分あたりなんですよ。
自分を語らない男ですから、実はモハーベ砂漠のテスト飛行場で、毎週のように自分が死に掛けているということを、妻のジャネットに言ったことがないんです。
おそらく、もしそれを話していたら、ジャネットは更にストレスが掛かったはずですから。
「もうあと何ヶ月と持つかわからない娘より先に、夫が週に2回くらい、4分の1の確率で死ぬようなテスト飛行を続けている」ということを知ったら、ジャネットは耐えられないだろう。
そう思って、ニールは妻にそれを一度も話してなかったんですね。
コバルト線治療というのは、脳の一番奥の部分にガンマ線を直に当てるという方法で、これは延命処置にはなるんですけども、永遠に身体の障害が残ることになるんです。
そこでクリスマスを一緒に過ごし、もはや歩けないし話すことも出来なかったんですけど、何回かカレンは笑うことが出来た。
そういうわけで、ちょっといいクリスマスを過ごせたんですけども。
年が明けたら、どんどん病状は悪化して、1962年の1月28日、公園で転んでからわずか6ヶ月後にカレンは死んでしまいます。
映画の中では、この “悲しんでいるようには見えないニール” を描いているんですけども。
その深い穴に娘の棺を下ろす際、穴の底をずーっと見つめているニールだけを映すんです。
以後、この映画の中では常に、この “穴” というのが、死のメタファーになって行きます。
奥さんのジャネットは「仕事に行かないで!」と言ったんですけど。
これについては、奥さんのジャネット自身も、後に語っています。「はっきりとそう言ったのに、ニールは逃げるように仕事に復帰した」と。
仕事に復帰してから、もう次の日に、上層部に「テスト飛行させてください」と申し出たんですね。
上層部としては「いや、お前、娘が死んだばかりなのに……」と言ったんですけど、ニールは「いや、飛びたいんです」と答えて、4分の1の確率で死ぬようなテスト飛行をまた繰り返す日々に戻ったんですね。
この、ちょっと言いにくいワパコネタというのは、現地のインディアンの言葉なんですけど。
やっぱり「俺、死に掛けたんだ」という事は誰にも話さずに休暇していたんですね。
子羊が死んだ。伝染病か何かだったんですけど。
ニールの妹ジェーンも、同じ牧場で一緒に休暇を取ってました。
家族全員で休暇を取っていたんですけど。
彼女が言うには「この時に、すごく異常に思えたのが、ニールは羊たちがいる厩舎に、決して近づかなかったことだ」と。
それまでにはそんなことなかったのに、ニールはまるで何か怖がるかのように、羊たちに近づかなくなったんです。
まるで「自分が “死” というものを伝染させている」と思い込んだように、「自分の近くにいると、誰もが死んでしまう」と思っていたかのように、ニールは家族が何度呼んでも、絶対に羊の小屋に近づかなくなったそうです。
テストパイロットですから。
4分の1の確率で死ぬようなことを何度も何度も繰り返しているような人だから。
だけど、他人の死に関して、誰かが死ぬということに関して、極端に過敏になっていったんですね。
後になって、段々と辻褄が合うようになってきて、わかったことです。
だから、映画の中でも、それは断言せずに、徐々に徐々に匂わすようにして進行していきます。
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