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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/03/13
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今回は、ニコ生ゼミ03月03日(#271)から、ハイライトをお届けいたします。

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 【 『もっと言ってはいけない』で語られる残酷な真実 1 】 知能の8割は遺伝で決まる


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タオルくん:
 今日、取り上げるのは、この本だよ。『もっと言ってはいけない』橘玲、新潮新書。

 この本の中では、例えば「黒人は白人よりも頭が悪い」とか「頭の良さは遺伝で決まる」とか「中学や高校で勉強しても時間の無駄」って書いてあるんだけど、本当かな?

岡田:
 うーん、橘さんはそこまでは言ってないんだけど。ほぼ、ギリギリそういう内容は書いてあるんですよ。
 じゃあ、今回は、このギリギリのニュアンスというのを説明してみようか。

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 今、少し話したことの、具体的な根拠から出していくね。

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 これは、『もっと言ってはいけない』の58ページに載っている図表なんだけど。

 もともとは、1994年に出版され、アメリカで大論議を巻き起こした『ベルカーブ』という本に載っている表です。


 『ベルカーブ』は、行動計量学者リチャード・ハーンスタインと政治学者チャールズ・マレイの共著で、発売と同時にアメリカで大論争が起きました。

 このデータ自体には嘘はないんですよ。

 つまり「白人の方が平均的に見て黒人より知能指数が高い」という計測結果には嘘がないんですけども。

 この嘘のないデータというのは、別に最近になって発見された事実ではないんですよね。


 1960年代にアメリカで起こった「白人と同じ権利を黒人にも与えろ!」という公民権運動でも、このデータは利用されていました。

 ただ、その時のデータの利用のされ方は「黒人は知能指数が白人よりも低い。なぜこんな格差が生まれるのかといえば環境が悪いからだ!」と。


 黒人というのは貧しい中で育てられているから、栄養状態も悪いし、教育も行き届かない。結果として知能指数を調べるIQテストの数値が白人よりも低くなってしまうのは当たり前だ。

 しかし、十分な教育、十分な栄養、十分なチャンスを子供の頃からずっと与えていけば、白人と黒人の知能指数は同じになっていくはずだ。

 当時の黒人活動家たちは、このデータの使って、そういうことを言っていたんですよね。

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「一応、筋は通ってる」(コメント)
「IQって教育と関係ないんじゃね?」(コメント)
「頭が良くても仕事できるとは限らない」(コメント)

 ふむふむ。

 まあね、そこらへんのことは、もう少し後で。

・・・

 ではなぜ、94年にこのデータが発表された時に議論を呼んだのかというと。

 『ベルカーブ』の中に書かれているデータから、「環境が悪いからIQが低いんだ」という60年代の主張と実際の計測結果が矛盾していることが、徐々にわかってきたから。

 「それではこの結果を説明出来ない」ということが明らかになってきたからなんですよね。


 「実は、知能指数には民族差というのがある」ということが、『もっと言ってはいけない』の中でははっきりと書かれているんですけども。

 なんかね、「黒人は、差別されて貧困で教育の機会が奪われているから知能テストの点数が低いんだ!」という、心優しい人が安心できるような理屈が通用するような世界ではなくなってきたんですよ。


 たとえば、このデータに書いている通り「白人は黒人より知能指数が高い」んです。

 おまけに、さっきコメントでも流れてたんですけども「アジア人は白人よりも知能指数が高い」んですよ。


 こういった話は、アメリカ人にとっては直感的に理解できることなんですよ。

 なぜかというと、アメリカのいわゆるIvy系の良い大学に行くと、アジア人がとにかく多くてビックリするからです。


 これは「アジア人が金持ちだ」ということではなく、「アジア人の入学試験の点が平均的に高いから」なんです。

 いわゆる少数民族とか民族優遇政策を取らない限り、アメリカの大学というのは、放っておいたらアジア人ばっかりになっちゃう。

 だから “黒人枠” というのをつけないといけない。

 こんなふうに、今、僕らが思っている以上に、あちら側の国では「民族間のIQの差を踏まえた上で民族の扱いを平等にしよう」、もしくは「IQの差による結果を公平にしよう」ということが、すごく複雑な問題になっています。

・・・

 こういった「どの民族がどういう知能指数なのか?」というデータは “双子の養子追跡調査” という調査方法で証明されました。

 アメリカは養子社会です。

 なので、貧しい家庭に双子が生まれたら、だいたい片方、または両方が養子に出されることが多いんです。

 その受け入れ先について、「お金持ちかどうか?」、「 教育に熱心かどうか?」  あとは人種ですね。

 「白人か? 黒人か?」、「都会か? 田舎か?」といったようにどんどん分類して、数十年の間、追跡調査をするんですよ。

 そうやって、数十年、追跡調査をしたデータを何百人分も集めると「遺伝というものがどのくらい影響するのか?」ということが、ほぼ分かってきました。


 たとえば、全く同じ遺伝子を持つ一卵性の双子の兄弟。

 裕福で教育熱心な白人の家庭で育てられた黒人の子供と、貧乏で教育にあまり興味のない黒人の家に養子に貰われた子供。

 この二人を比べると、確かに11歳とか12歳くらいの頃には知能指数に差はあった。

 それも、10ポイントから11ポイントくらいの知能指数の差はあったんですよ。


 この結果を受けて、最初、教育学者たちは喜んだわけですね。

 「やっぱり、人種間の知能指数の差というのは、環境によるものだ! 教育によるものだ!」というふうに。

 ところが、この2人の兄弟をさらに追跡調査した結果、わかってきたのが「この差というのは、せいぜい大学に入るまで。成人してから先は、育ちや環境による知能指数の差というのは急激に縮んでいく」ということだったんですよ。


 こういう話をするときに、まず押さえなければいけないのは “遺伝率” …

 …という言葉を使っていいのかわからないんですけども。


 たとえば「背が高い / 背が低い」というような身体的特徴には、どれくらい遺伝が関与しているのか?

 これを仮に遺伝率と言ってみるね。

 そうすると、身長の遺伝率は50%。つまり「ある人が背が高いか低いかの理由の半分までは、両親が背が高いか低いかという遺伝の問題で説明がつく」と。


 同じく、知能の遺伝率というのを調べたらどれくらいなのかというと、80%。もう、身長の遺伝率よりも、圧倒的に高いんですよね。

 僕らは「ああ、親が背が高い人だと、子供の背も高いんだ。いいねー」とか、「ハーフだから、そういう顔なんだ。いいねー」というふうに、外見の遺伝というのはあっさり認めるよね?

 でも、これが知能の遺伝という話になると「いや、そうとは限らない」とか、「育ちによる」って言うじゃない。

 だけど、実際には、それどころじゃない。

 もう、肉体的な身長の遺伝より、知能の遺伝の方が遥かに遺伝率が高いという事実がわかってきたんです。

・・・

 つまり、「知能の遺伝率というのは、かなり高い」と。

 そして、「その分岐点というのは11歳くらいだ」というのもわかってきたんです(笑)。


 11歳までの子供というのは、本来持っている資質に関わらず、「親が教育熱心であれば~」とか「友達が恵まれていれば~」という、環境による影響の方が大きい。

 ところが、11歳を超えて20歳くらいになってくると、もう、本人が頑張り屋であったりなんだりしても、徐々に徐々に遺伝による発現率の方が高くなってくる。

 さらに、30歳40歳を超えて中年くらいになってくると、男女に関わらず、遺伝因子の方が大きくなってしまう。


 「昔は勉強できたのに、最近はダメ」っていうのが、僕らにはよくあるじゃん?

 僕自身もそうなんです。

 僕自身も小学校の頃は勉強なんかせずとも出来たんだけど。でも、高校くらいになってくるとクラスの後ろの方に行ったんです。


 これはたぶん、僕が両親から受け継いだ遺伝子が、あんまり勉強が出来ないものだったので、その発現率がどんどん上がってきた結果なんです。

 今になってしまったら、もう物が覚えられない。

 僕がどんなに物が覚えられなくて、喋っていることミスするのか、皆さんならよくご存知の通りですよね?(笑)

 これはもう「地頭の良さ」という遺伝による影響が、50を越えると前に出過ぎてきているからなんですよね。


 11歳を過ぎて大学に行くくらいの歳になったとしても、“行動習慣” によって能力というのはキープできる。

 つまり、「頭が悪くても、頑張って毎日 勉強する」とか、毎日 習慣づけた行動をすることによって、能力というのはキープできる。

 しかし、30歳を過ぎると、そのような努力を維持し続けること自体が、遺伝要素によって決定されるようになってくる。


 具体的に言うと「頑張り屋の息子は努力を維持できるが、サボり屋の娘は徐々に努力を維持できなくなる」という “性格遺伝子” というのが出てくるんです。

 そして、40を超えた頃には、ついには遺伝要素は80%を超えるということで、残酷な程、無限に自分の親に近づいていくというのが、最近の遺伝学でわかってきたことなんです。

・・・

 なかなかツラいよね?

 「昔は頭が良かったけど、今は普通以下」というよく聞く話は、ここから生まれてくるわけですね。

 本の中にも書いてあります。

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 大半のひとは、赤ちゃんのときに遺伝の影響がもっとも大きく、成長するにつれて家庭や学校などで多様な刺激を受けるのだから、環境要因が強まって遺伝の影響は小さくなっていくと思うだろう。

 だが、発達行動遺伝学の研究は、これを真っ向から否定する。

 もしひとびとの素朴な常識が正しいなら、成長につれて一卵性双生児の類似率は下がって行くはずだが、実際には逆に高まっていくのだ。


 これはにわかには受け入れがたいことかもしれないが、よく考えてみると、私たちがなんとなく感じている「常識」にも合っていることに気づくだろう。

 教育関係者なら、親の言うことを聞いて一所懸命勉強する子どもは最初は成績がいいが、中学受験や高校受験の頃になると、それまで遊んでばかりいた子どもにあっという間に追い抜かれる場面を何度も見ているはずだ。


 こうした子供は「地頭がいい」と言われるが、生得的な能力が思春期に向けて徐々に開花していくと考えるなら、この現象を説明できる。

 それと同時に、世の親たちがなぜ「幼児教育」に夢中になるかもわかる。

 共有関係の影響力が幼児期・児童期に最大で、そこから減少していく一方なら、子育てが報われるのは子供が小さいときだけだ。

 私立幼稚園・小学校の「お受験」の結果は、家庭環境で決まるかもしれないが、思春期になって遺伝率が上昇してからでは親の努力はなんの役にも立たないのだ。

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 ……という。

 いや、だから言ったじゃん! これは『もっと言ってはいけない』という本で、聞いても楽しい話じゃないんですよ(笑)。


 まあ、ごめんね。でも、僕はこの話を面白がっちゃうんだけども。

 ここで面白いのは「性格というのは青年期でも伸びる」と書いてあることなんですよね。


 “真面目な努力家” という性格の遺伝率というのは50%くらいなんだ。

 「知能の遺伝率よりずっと低い。なので知能よりも融通が効く」と。

 つまり、能力を伸ばす教育というのは小学校までにして、中学校や高校では “性格を良くする習慣作り” をした方が、科学的には正しい。

 知能は11歳までしか伸びないんだから中等教育以上に税金を投入するのは無駄だという、とんでもない結論がこの本から出てくる。


 「税金を教育費に使うのは、幼稚園児、小学校まで。中学生以上は全員を寮に入れるなどの軍隊式教育をやって、規則正しい生活習慣を身に着けさせた方が、おそらく教育の効率は科学的には上がる。今の日本でやっている中学校高校大学という順番で、どんどん自由度が上がるような教育というのは、知能を下げる役割にしかならない」という、とんでもない結論が出てくるんだよね(笑)。

 まあ、なんか、すみませんね、こんな話で。


 みんなも、なかなか思い当たるフシがあると思うんだけど、「エグい話だな」って。

 俺、あとでこれをYouTubeで公開するんだよね。

 怖いよな(笑)。

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