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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『アラジン』の舞台は、実は中国?!歴史の偶然から生まれたストーリー」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『アラジン』の舞台は、実は中国?!歴史の偶然から生まれたストーリー」

2019-07-12 07:00

    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/07/12

     今日は、2019/06/23配信の岡田斗司夫ゼミ「『アラジン』特集、原作『アラビアン・ナイト』から、アニメ版・実写版まで徹底研究!」からハイライトをお届けします。


    『アラジン』の中の中国と日本とヨーロッパ

     じゃあ、やっと『アラジン』の話に行きましょう。
     ディズニーが隠した『アラジン』裏話ということで、「舞台は中国、アラジンは母親に寄生するニート」という話です。

     これ、ディズニーの『アラジン』なんですけど。
    (パンフレットを見せる)

    nico_190623_04604.jpg【画像】『アラジン』パンフ

     興行成績は、アメリカ国内で2億6400万ドル、全世界の興行収入は7億2700万ドル。もう、大成功です。
     1992年版のアニメの『アラジン』が、アメリカ国内で2億ドル、全世界で5億ですから、それと比べても大ヒット。リメイクとしては成功ですね。
     アメリカでは、公開4週目でもう3位なんですけど、日本では2週目でまだまだ1位を保ってます。

     今週の岡田斗司夫ゼミは、そんな『アラジン』の特集なんですけど、あんまりネタバレはしないので安心してください。

     そもそも、『アラジン』とはどういう話だったのか?
     さっき、タイトルの部分でも言ったんですけど、実は中国が舞台なんです。
    (パネルを見せる)

    nico_190623_04649.jpg【画像】アラジン挿絵1

     これ、「神秘の洞窟の中で魔法のランプを見つけるアラジン」という、19世紀末にウォルター・クレインというイギリスの画家が描いた絵本版の『アラジン』の挿絵なんですけど。
     これがアラジンなんですね。もう完全に中国人なんですよ。
     「これはアレンジなんじゃないのか?」というと、原作の『千夜一夜物語』、いわゆる『アラビアン・ナイト』に載っている『アラジン』にも、ちゃんと「中国」と書いてあるんですね。

     ここに『アラビアン・ナイト』の全集があるんですけど。
    (本を見せる)

    nico_190623_04727.jpg【画像】アラビアンナイト全集

     実は、この全集の方には『アラジン』は収録されていません。こちらの『アラビアン・ナイト 補遺』という、いわゆる付録版の方に入ってます。
     だから、『アラジン』の原作を読みたい人は、こっちの全集を買っても無駄なんですね。こっちの方で読まなきゃいけないんですけど。こっちにも「中国」と書いてあります。

     この原作の冒頭は、こんな感じです。


    おお、偉大なる王様よ。その昔、中国に貧乏な仕立て屋がいました。彼にはアラジンという息子がいました。
    仕立て屋は一生懸命にアラジンに仕事を覚えさせようとしましたが、遊んでばかりで働かない。ついに仕立て屋は、このアラジンがあまりに働かず、不良で、町で遊んでばかりいるということが心配で、死んでしまいました。
    残された仕立て屋の妻が糸を紡いで、そのままアラジンを食わせていたんですけども、アラジンは全く働きません。親不孝の限りです。
    アラジンはそのまま15歳になってしまいました。


     こんな、とんでもないオープニングから始まるんです。
     アラジンはニートでろくでなしで、父親が死んだ後も母親だけを働かせるという人間のクズだったわけですね(笑)。

     しかし、そんなアラジンには、本人にも知らない秘密がありました。
     どんなことかというと、実はアラジンの先祖はものすごい財宝を洞窟に隠していたんです。そして、その子孫でないと、洞窟の入り口の大理石の扉が開けられないんですよ。
     そんな偶然みたいなことがあったんですけど。この祖先のことは、原作の中にも、ほとんど書いてないんですよ。お話し的にどうでもよかったから、単に「実は祖先は巨大な財宝を隠してて~」ってサラッと書いてるだけなんですよね。

     そんな中、遥か太陽の沈むアフリカより、1人の黒人の魔法使いがやってきます。
     魔法使いは、この財宝を30年以上も狙ってて、ついに子孫アラジンを中国の「日の昇る果て」、つまり、東の果ての、おそらく上海辺りで見つけ、声を掛けました。
    (パネルを見せる)

    nico_190623_04931.jpg【画像】アラジン挿絵2

     はい、そのシーンの挿絵がこれですね。もう本当に、どこの国だかわからなくなってます。
     扇子を持った美女がいるんですけど、もう、中国なのか日本なのかわからなくなっちゃてるんですね。下駄を履いちゃってますしね。

     この絵本が描かれた19世紀末のヨーロッパというのは、日本趣味(ジャポニズム)の真っ最中。
     なので、イラストを描いたクレインも、「中国のそのまた東の果てにある都」という原文を読んで、「そりゃ、日本のことじゃないの? だって、日本って金銀財宝ザックザクなんでしょ?」というふうに思ったのかもしれません。
     だから、こういうふうに、中国というよりは、日本趣味の絵になっちゃっています。

     日本では「アラビアの砂漠の中の話」と思われている『アラジン』なんですけど、ヨーロッパでは、実は舞台が中国だというのは当たり前の話で。
     これが19世紀末には、「『アラジン』って、中国か、もしくは日本辺りの話でしょ?」と思われていたかもしれません。

     では、なぜ、こんなことになったのか?
     なんで、こんな、日本と言ったら言い過ぎかもわからないけど、少なくとも、かなり中国の東寄りの話を、ディズニーのアニメにしても何にしても、僕らは砂漠の国の話と思うようになったのか。
     それを、ここから話します。わりとね意外ですよね? 提灯があったりとか。

     『アラビアン・ナイト/千夜一夜物語』は、その名の通りですね、アラブ世界のお話なんですけども。
     実は、この『千夜一夜物語』がヨーロッパ世界で紹介されたのは、かなり遅いんです。1700年頃なんですよ。
     そして、その当時のヨーロッパというのは、シノワズリ、いわゆる中華趣味の真っ最中だったんですね。
     どれくらいすごかったかというと、ルネッサンスの時代から、とにかく中国から輸入されるコップとかお皿の模様をみんな真似しようと必死で、貴族達はロココ調で統一された屋敷の中に、中国製の家具を置いたり、庭に変な家を建てたりしていたくらいなんですね。
     ロシアのエカテリーナ2世なんて、中国風の村1つを丸々趣味で建ててます。「ちょっと午後からそこに散歩に行って、お茶を飲む」というために、村1つ丸々建てたというのが、エカテリーナ2世の写真として残っているんですけど。
     この「中国ってカッコいいでしょ?」という文化の下地があったところに、今度はアラブ世界のちょっとエッチでエキゾチックな物語として『千夜一夜物語』という物語が紹介されました。

     なぜ、これが大きな事件なのかというと、当時のヨーロッパでは、これがアラブを理解し征服するための教科書として読まれてたんですね。
     というのも、1700年代の頭というのは、ようやっと、ヨーロッパの植民地主義というのが、アラブ世界を征服してたんですよ。
     それまで、実はアラブ・イスラム圏の方が文化的には上だったんですね。ヨーロッパ人って、ルネッサンス以前は「自分達はローマ帝国時代に比べて遅れた蛮族の一味に過ぎない」みたいに思ってたんですよ。
     それに対して「力が復帰した自分達が、大航海時代を経て、アラブ圏というのを植民地にした!」というふうに、まあ、自信もあったし、逆にいえば「これからは、もっと勉強しなきゃいけない」と思ってた。
     なので、そんな制服先のアラブ世界を理解するための教科書として、『千夜一夜物語/アラビアン・ナイト』というのが、翻訳されたわけですね。

     当時のヨーロッパ人の意識でアラブ世界というのはどこなのかと言うと、「アフリカ・インド・中国・その先の日本までも支配していた大帝国」というふうに思い込んじゃってたんですね。
     「ローマ帝国は世界を支配してた」って言うじゃないですか。
     でも、実際にローマ帝国が支配したのって地中海周りだけなんですよ。地中海周りと、あとイギリスの辺りまで行ってたんですけど。この範囲の中だけど、ヨーロッパ人は「世界」と呼んでいたんですね。
     それに対して「ヨーロッパ以外全てを支配していた国が、アラブである」というふうに思い込んでいたんです。
     だから「中国の話であろうと、インドの話であろうと、それは全部アラブの話だ」というふうに、1700年当時のヨーロッパ人は考えちゃったわけですね。

     まとめると、まず、18世紀のヨーロッパ人というのは、もともとシノワズリという中国趣味の真っ最中だった。
     そこに植民地時代がやってきて、新たにアラブ世界というのがヨーロッパの支配地域、植民地として下層に入ってきたんですね。
     そのアラブ世界の民話を集めた『千夜一夜物語』の翻訳がフランスから始まって、大ヒットした。
     そして、地球という全体図が見えてない時代だったので、ヨーロッパ人は『千夜一夜物語』の中で「地の果て」として語られてた中国やアフリカも、「かつてはアラブの支配下にあった部分だ」というふうに考えてしまった。
     これが、原作の『アラジン』は中国が舞台という理由です。

     なので、19世紀になって出版された、さっきのクレイン版の絵本でも、クレインは当時のジャポニズムを取り入れてしまったし、アラジンと魔法のランプの原作の舞台を中国の果て、上海辺りのイメージとして捉えてたんです。
    (パネルを見せる)

    nico_190623_05504.jpg【画像】アラジン挿絵3

     これは、黒人の魔法使いが、「綺麗なランプと汚いランプを交換しまっせ」と言って、アラジンの魔法のランプをなんとか盗もうとするシーンなんですけど。これも、完全にアジアとして描かれています。

    nico_190623_05529.jpg【画像】アラジン挿絵4

     この女の人なんかそうですよね。王様の娘としてアラジンが惚れ込むお姫様、ディズニー版によるとジャスミン姫も、完全に日本人のイメージで描いてしまっているんですね。

     それでも、まあ、やっぱり疑問が残るのが、「なぜ、イスラム世界の民話なのに、中国が舞台なのか?」ということ。
     さっきも言ったように、原作にも「中国のある都で~」って描いてるんですけども。なぜ、それがアラブに昔から伝わっていたのか?
     これには、意外な理由があるんです。

     さっきもちょっと話したんですけど、「原作である『アラジンの魔法のランプ』というのは『千夜一夜物語 補遺』に収録されている」と言ったんですけども。
     正確に言うと、これは『千夜一夜物語』じゃないんですよ。実は『千夜一夜物語』の中に、『アラジンと魔法のランプ』は入っていませんし、それどころか『アリババと40人の盗賊』もまるっきり入ってない。全て『補遺』の中に収録されています。
     これ、なぜかというと、実は、今回ディズニーが映画化した『アラジン』というお話自体が贋作だった。いわゆる、歴史上の偶然によって生まれてしまった偽の話であり、もともと、アラブ世界にはこんな話はなかったからなんですよね。
     それが、これまたいくつかの偶然の結果、贋作とは気付かれずに大流行して、おまけに大ヒットしてしまったという、すごくヘンテコな歴史があるんです。

     ここから先は、すみません。もう時間になりましたので、有料のほうでお話しようと思います。
     いやいや、無料版では「ジャスミン姫は日本人だった」というところまで話してしまいました。
     そうなんですよ。いわゆる同人誌みたいな偽物の話だったのに、本編を抑えて、一番有名になってしまったんです。もう本当に『アリババと40人の盗賊』とか、あとは『シンドバット』も、実は『千夜一夜物語』じゃないんですよね(笑)。
     その辺も、あんまり触れられない話なんですけども。

     後半は、いよいよ『アラジン』の話から、「ディズニーのアラジンには、実はいろんな矛盾があって、それには理由があるんだ」という話に行こうと思います。


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