岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/07/08

 今日は、朝日新聞の「悩みのるつぼ」から相談分と岡田斗司夫の回答をお届けします。


<相談文>

 40代の母親です。子供の野球に悩まされています。
 小学校区には二つの野球チームがあり、うちの子は強い方に所属しています。本人の強い希望で入団しました。
 監督は、勝つことのみに重きを置き、罵声、パワハラがひどいです。お気に入りの子、試合で活躍した子以外には目もくれず、子供たちはチームを勝たせるための駒のよう。週に5〜6日、炎天下でも長時間の練習があります。
 指導されている内容を親もよく見聞きするよう言われ、練習を毎回見に行くのが当たり前になっています。私は仕事もあって、それをしないので、親子ともにハブられています。中には問題を感じている保護者もいますが、監督は王様状態で、子供に帰ってくるので誰も何も言えない状態です。
 うちの子は、野球や友達が好きなので絶対にやめたくないし、他のチームに移るのもいやだといいます。ですが、野球ばかりに時間と体力が取られ、子供の他の可能性も潰されるのが気がかりです。家族との時間もありません。また、チームの人間関係をミテいると、私自身が厭世的になって、このチームで野球をやっているうちの子どもまで嫌になることがあります。
 子どものために自己犠牲を払えない自分が駄目なのかと責めたりもします。どう乗り越えていけば良いでしょうか?

<回答文>

 最初にお断りしますが、私はスポーツ嫌いです。野球もサッカーも見ませんし、五輪にも興味ゼロ。来年の今ごろは退屈してると思います。たぶんあなたと同様に「体育会的な指導が苦手」です。でも、そんな私から見ても、パワハラ的な指導法には一定の効果があると思います。
 パワハラとは、人間関係や仕事関係の上下差を利用して、相手をいじめることのようです。その意味で少年野球監督のやってることは「パワハラ的」に見えるかも知れません。しかし息子が自分で選んだチームで、いまも「やめたくない」と言ってるのなら、その監督の指導はパワハラそのもの、つまり「いじめが目的」ではないようです。
 「強いチーム」には、大体パワハラっぽい指導者がいます。いっけんお気に入りやエコヒイキに見えるのも、すべて「試合に勝つ」ための実力主義という場合もあります。
 最近の教育現場では「競争」よりも「仲良し」が強調されるそうです。チームスポーツのような実力主義は、その意味でタテマエの多い学校より早い段階で「大人の社会」を息子に体験させているのでしょう
 と、ここまで書きましたが、「親も参加を強制」は別問題です。それは子供の弱みにつけこんで、家庭まで操ろうとする、まさにパワハラだからです。あなたが、自分の好みを超えて、そこまで付き合う必要はまったくありません。
 もし息子が「ママが来てくれないとレギュラーに選んでもらえない」と泣きついてきたら、こう返してください。
 「それはあなたの実力が足りないから。同じ実力ならゴマすり親のいる子を優先するかも知れない。でもあなたの実力が抜きんでていれば、本当に勝ちたい監督なら絶対にあなたを選ぶはず。親のチカラではなく、自分の実力で勝負しなさい」
 たぶん、同年代の子供の大部分は「実力主義」と言う恐ろしい荒波を経験せずに、いずれ社会に参加します。それに比べてスポーツを真剣にやる子供たちは、いやがおう早めに「大人の社会」を経験せざるを得ません。ひょっとしたら息子はこの後、打ちひしがれて帰ってくるかも知れない。その時まで、あなたは「息子の趣味・生きがいに無関心なダメ母」を演じてみてはいかがでしょうか?
 長いスパンで見れば、そういう無関心な態度のほうが「今は野球にすべてを賭けたい息子」のタメになる気がします。

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