岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/08/13

 今日は、2019/07/28配信の岡田斗司夫ゼミ「【月着陸50周年記念】アポロ宇宙船(後編)月着陸と月面歩行」からハイライトをお届けします。


 じゃあ、今週の『なつぞら』の話をしようかと思います。

 『なつぞら』、舞台は一気に1963年、昭和38年に飛んじゃいました。なつも、もう26歳ですよ。1週間の間に「東洋動画初の女性原画家になった」という、5年後の世界になってるんですね。
 そんな5年後の中で、なつ達がいつもいる、おでん屋の壁に、ちょっと見逃せないものが貼ってありました。
(パネルを見せる)

nico_190728_00310.jpg【画像】おでん屋の壁に貼られたポスター ©NHK

 これ、何かというと、この5年の間になつが作っていた作品のポスターなんですけど。
 『わんこう浪士』というのと、『アラジン少年とランプの魔人』。他にも『真田十勇士』というのを作っていたようです。

 この『わんこう浪士』というのは、もちろん、東映動画の『わんわん忠臣蔵』が元ネタですね。『アラジン少年とランプの魔人』は、手塚治虫が原作と企画で入った『アラビアン・ナイト』。『真田十勇士』は『少年猿飛佐助』です。
 こんなふうに、順調に東映動画パロディが入っています。また、このポスターの出来が、結構、良いんですよね。

 なつの友達の、お菓子屋に勤めたのに新劇俳優になろうとしている雪次郎君。彼は、アメリカドラマの吹き替え俳優になりました。
 その吹き替え俳優としての仕事というのが、まあ雪次郎君が劇中で読んでる台本にタイトルが書いてるんですけど、『ビューティフル・ナンシー』という作品です。
(パネルを見せる)

nico_190728_00355.jpg【画像】『ビューティフル・ナンシー』 ©NHK

 これは『ビューティフル・ナンシー』の一部分の吹き替えをしている最中のシーンなんですけど。
 これ見て、一瞬「あれ?」と思って引っかかって、次の瞬間、爆笑したんですよ。
(パネルを見せる)

nico_190728_00400.jpg【画像】『アイ・ラブ・ルーシー』

 これ、何かというと、1950年代から60年代に放送された、アメリカの有名なモノクロのテレビドラマに、『アイ・ラブ・ルーシー』というのがあったんですね。
 まあ、皆さんはわからないでしょうけども、これがもう、本当に大ヒットしたテレビドラマだったんですよ。
 あまりにもヒットし過ぎて、アメリカでは、テレビがカラーになった1980年くらいまで、再放送されていたそうです。モノクロのテレビドラマですよ? 家のセットの中で2人で演技してたら、客席から笑いが入るアメリカドラマってよくあるじゃないですか? それなんですよ。人気がありすぎて、1970年代になっても何回も何回も再放送されてたんです。

 アポロ13号が打ち上げられた時、実は、生中継されなかったんですね。
 アポロ11号が成功した時はものすごい視聴率だったんですけど、アポロ12号の時には、そんなに視聴率が取れなかったので、アポロ13号ではテレビで生中継されなかったんです。
 じゃあ、その13号の打ち上げの時刻に何をやっていたのかと言うと、『アイ・ラブ・ルーシー』の再放送。
 「そっちの方が視聴率が取れるから」という理由でこちらが放送されていたもんだから、実は、アポロ13号の打ち上げを生で見た人って、ほとんどいないんですよ。

 まあ、そんないわくのドラマなんですけど。雪次郎くんはこういうものの吹き替えをやってました。
 60年代のメガヒットドラマなんですけど。

 そして、ついに『鉄腕アトム』が登場して、テレビマンガの時代になりました。
 この「テレビマンガ」という言葉は、1960年代から70年代の半ばくらいまで使われていた言葉です。当時は「アニメ」っていう言葉がなかったんですね。
 「アニメ」とか「アニメーション」と言うのは、あくまでも玄人というか、マニアの人だけで、特にテレビでやっているものは「テレビマンガ」というふうに言ったんですね。アニメじゃありません。

 なので、宮崎駿も高畑勲も、東映動画出身でジブリに行った人というのは、自分達の作品をすべて「アニメーション」って言うんですね。「アニメ」って区切って言わない。
 「アニメなんていうのは、例の手塚治虫が始めた安っぽいテレビマンガのことだろ?」というふうなことで、あえて「アニメ」って言わないようにしているんですね。

 ついに『鉄腕アトム』が登場して、視聴率をメチャクチャ取ったので、東洋動画も黙っていられなくなって、『百獣の王子サム』というテレビマンガを制作します。
 先週、「『狼少年ケン』をやるぞ」と言ってたら、本当に『狼少年ケン』をまんまやってて。『なつぞら』では、『サム』のオープニングがかかったんですけど、笑うくらいそっくりでしたので、興味がある人はそこだけでも見てみてください。
 「狼に育てられたケン」という『狼少年ケン』の設定が、「ライオンに育てられたサムになる」という。本当に、パロディというよりは悪ふざけみたいな話だったんですけども。

 そして、まさかの、本編内で「こういうのが「フル・アニメーション」。こういうのが「リミテッド・アニメーション」」という、すごい良い説明もありました。
 よく「1秒間に24枚とか12枚使うのがフル・アニメーション。そうじゃなくてなんか3枚とか4枚しか使わないのが、リミテッド・アニメーション」という解説があるんですけど、正しくは「動かす部分と動かさない部分を思い切って分けちゃうのがリミテッド・アニメーション」なんですね。
 例えば、「サムが画面からパッと走って消える時に、消える部分の流線だけ書いちゃう」というのが、リミテッド・アニメ的な方法なんですけど。
 それを、NHKの朝ドラの中で、もうバッチリ説明してるので、もう、すごい面白かったです。

 そんなふうに「先週までの、うんざり恋愛展開と本当にどうでもいい恋話がなくなって、良かったな」と思ってたら。思ってたら、ですよ。
 今度はまた、雪次郎の恋愛話が始まります。
 雪次郎、まさかの十勝に帰るやのなんやのとUターンしちゃったんですよ。まあ、たぶん、彼は声優として、もう一度、帰って来ると僕は思ってるんですけども。
 また、どうでもいい話にちょっと行ってました。

 あとは、先週までなつ達が作ってた短編アニメ『ヘンゼルとグレーテル』。劇中での高畑勲である坂場君の初監督作品は、まさかのお蔵入りになってしまって、5年間、劇場で掛けてもらえず、誰にも見てもらえないということになっていました。
 何が悪かったのか、お蔵入り。まあ、社会批判がちょっと混ざってた、鳥達がデモをしてたのがいけなかったのかどうかはわからないんですけど。お蔵入りになって、5年間公開なしになってます。

 そんな中での、僕的な見どころは『サム』の制作をしている作画スタジオの机の上。
 ここにライオンと男の人形が置いてあるのがわかりますか?
(パネルを見せる)

nico_190728_00838.jpg【画像】ライオンと男の人形 ©NHK

 まあ、木を彫って作った上から色を塗った、簡単なライオンと男の人形なんですけど。
 さあ、これはなんでしょうか? わかりますかね? ちょっとコメントを待ってみようかな。

「そんなの気付かねえよ!」(コメント)

 と、言われてしまったんだけれども(笑)。

「キャラクター人形」(コメント)
「モデル」(コメント)
「サム」(コメント)

 はいはい。
 これね「キャラクター人形」と言われるものです。商品サンプルじゃないんですよね。
 これ、何かというと、ディズニー社もやってたんですけど、アニメを作る時にイメージの見本にするために一体だけ作る人形なんですよ。作り方もいろいろあって、この『サム』の場合は木彫りなんですけど。
 東映動画でいうと『狼少年ケン』とか、あとは『遊星少年パピィ』とか、そこら辺の、主に原作がない作品に多いんですよね。
 マンガの原作がないような作品を作る時、キャラクターの表情とか、体型スタイルがわかりにくいので、それを理解できるように、一体ずつ作る人形なんですよ。
 これがね、たまに「まんだらけ」のオークションとかに出品されるんですよね。僕もまだ、実物は見たことがないというか、そのまんだらけのオークションの写真くらいでしか見たことがないんですけど。『宇宙パトロールホッパ』とか、そういうやつの写真は見たことがあります。

 こういった「キャラクター人形みたいなものが、何の説明もなく作画机の上にポンと置いてある」というところが、この『なつぞら』のアニメ制作描写のちょっとすごいところですね。
 僕は、こういうドラマの中で、ここまでやってくれると思わなかった。それも、解説もなしにトンと自然に置いているところを見て「すごいな。調査再現員、仕事をしてるな」と思いました。

 ドラマの方では、この『サム』が、大好評のうちに終わって、来週辺りからは、またなつ達は、映画アニメーションに戻るみたいです。
 「となると、いよいよ『ホルス』かな?」と思うんですけど。でもね、『ヘンゼルとグレーテル』で、かなり『ホルス』のネタはやってるんですよね。悪の魔法使いグルンワルドとかをやってるので、どうするのかなと思ってるんですけど。

 さて、ここからは、例の僕の「大穴予想」です。
 「なつの妹は最終回でデヴィ夫人として復活する!」みたいな感じの。まあ、あれはあれで、大穴として、僕は半分以上、信じてるんですけども(笑)。
 今回も、僕の妄想なんですけど、僕自身は半分くらい信じている、クライマックスの予想です。このドラマのクライマックスとなる、8月後半から9月前半にかけての『なつぞら』の展開なんですけど。

 なつ達は、東洋動画から独立して『アルプスの少女ハイジ』を作るんじゃないかと思っているんですよ。
 もちろん、『ハイジ』のアルムおんじのモデルは、泰樹じいちゃんになるんじゃないかと思います。
 テレビアニメの『アルプスの少女ハイジ』というのは、「お母さんが死んでしまったんだけど、不景気で引き取り手がなくなったハイジを、デーテ叔母さんが、無理矢理アルムおんじに預ける」というシーンから始まるんですね。
 同じく、なつ達が作る……まあ、『狼少年ケン』が『百獣の王子サム』になったように、ドラマ内では『アルプスの少女ハイジ』とは言わないと思うんですよ。たぶん、『スイスの少女サマー』とか、そういうタイトルになると思うんですけど。
 その『スイスの少女サマー』も、第1話は「戦争で孤児になった女の子が泰樹じいちゃんみたいな人のところに預けられて、チーズを作る」という話になるんじゃないかと思うんですよね。
 そうすると、もうこれまでの伏線が全部回収できる。

 そうするとですね、その『スイスの少女サマー』というのは、どんな絵かというとそれが毎回『なつぞら』でかかるオープニングじゃないかと。
 『なつぞら』のオープニングのアニメーションってですね、ちょっと凝ってるんですよ。アニメ作っている女の子の何だろうな紙の上から飛び出して、走り出すという構造になってるんですけども、
 それが最後の最後にドラマの最後の最後に『なつぞら』でですね、なつ達が作る『スイスの少女サマー』のですね、第1話というかオープニングの映像になると、こうすべて巨大な円環がガチャンと音をたてて、繋がったというですね、例のやつになると、なんかいい感じがするじゃないですか(笑)。

 というわけで、「デヴィ夫人が登場する!」に続く、岡田斗司夫の大穴大予想の第2弾は、「ラストは『スイスの少女サマー』として、オープニングのアニメーションに繋がって行く!」という形で、伏線回収をやるんじゃないかと思います。
 それすると、ちょっとゾクゾクするくらい感動するんですけど。やって欲しいな」って思います。

 『なつぞら』に関してはここまでです。
 じゃあ、アポロの話に行きましょうか。もう10分以上使っちゃったな。

 ……あっ! これ、さっき見せるの忘れてた! これが、僕がそうなると思う根拠なんですけど。
(パネルを見せる)

nico_190728_01409.jpg【画像】『アルプスの少女ハイジ』と『スイスの少女サマー』

 『ハイジ』のオープニングと、『なつぞら』のオープニングのラストシーン辺りって、なんか、うまく繋がりそうな絵になってると思いませんか?(笑)
 「ああ、なんか似てんじゃん」というか、「これ、イケるよイケるよ」というふうに思うんですけど。
 ここにこう繫げると、うまく行くんじゃないかと思います。

 すみません、今、ちょっと分けて話しちゃったんで、明日の夕方にYouTubeで公開する時は……もうノーカットでいいか。ここは、ノーカットでこのまま繋いでおくれ。
 そんな、岡田斗司夫の大予想でありました。


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