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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の解決!ズバっと 2014/7/27
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おはよう! 岡田斗司夫です。

昨日のメルマガで朝日新聞『悩みのるつぼ』、相談文をお届けしました。
今日は、いよいよ回答文もお届けします。
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【相談】

 30代代後半女性です。大学で講師をするようになり5年ほど経ちました。

 自分の専門分野について学生に講義をするのは楽しく、やりがいも感じています。最近は授業の評価も上がり、学生からわかりやすく面白いというコメントも出るようになりました。

 しかし受講生のうち、意欲・興味をもっているのはよくて半分で、場合によっては1割程度。多くの学生は私語やスマホ、内職ばかりで、注意しても改善されません。

 そこで私は聞くつもりがないなら出席しなくてよい、出席はとらない、試験の結果が基準に達していれば単位は与える、講義に関係ない行為は周囲の迷惑になると説明し、問題があるときは退室を求めることにしました。

 ある時何度注意しても私語がやまない学生に退室を求めると、ふてくされて舌打ちをしながら「聞きます」と逆切れされました。その後ずっと私のことをにらみつけてきました。

 大学は基本的に自由な場で、講義を聞きたくないならサボればいいし、もっと楽な、興味のある他の講義をとればいいという私の考えは通じないようです。

 講師の目の前の席で化粧、イヤホン、居眠りも日常茶飯事。こういった妨害に負けず、感情的にならず、自分の仕事(講義)に集中するにはどうしたらよいのでしょうか。

 無視すればいい気もするのですが、そうした学生が目について毎度イライラがおさまりません。



【回答】

  私も大学の教員です。

 学生に聞くと、授業中にスマホや私語するのは「当然の権利」だそうです。先生の講義を「やめろ」と言わない。だから先生が自分たちに「スマホや私語をやめろ」とは言うのは「不公平」。これが彼らの理路です。

「やる気がないヤツは、講義に来るな」もダメ。教室に行くか決める権利は、授業料を支払った彼ら側にあります。入試をパスして授業料を払ったからには、大学側には学生を選ぶ「権利」はありません。

 教室に来た学生が講義を聴くも私語やスマホをするも、それは彼らの「行動選択の自由」なのです。

 いまやほとんどの大学は大衆化しファミレスと同じになりました。ファミレスで料理に手を付けずしゃべってもスマホをしても、叱られません。ファミレスとは「そういう場所」だからです。

 高級寿司屋や天ぷら屋では、食べずにしゃべる客はマナー違反で追い出されます。同様に大衆化しなかった高級大学では、そういうマナーを守る文化も学生も、まだ存在しています。

  あなたが現状に不満なら、高級大学に転職するしかありません。学生が「教室内の行動は自由」という権利を行使するのと同じく、あなたに選べる権利行使は「マシな職場への転職」だからです。

 でも、私は転職しません。あなたにも転職して欲しくはないです。

 大学教育は、いまや総崩れの撤退戦。私たち教員は毎日の敗北から、やりがいや成果を掴むしかありません。大衆大学にも「ちゃんとした教育」を渇望している学生がいます。

  彼らが渋々、教室に毎朝来るのは「権利行使を要求する自分」とは違う自分自身や世界と出会いたいから、と私は信じています。
 私たち大学教員は、「名誉ある撤退戦」の真っ最中です。

 大学が大衆化し、学生が一人残らず「お客様」になっても、それは「教育の敗北」ではありません。「お客様」な若者を一人でも多く「学生」に育てる。

 これをあきらめるのが「教育の敗北」です。私たちは「自分の戦い」に負けることになるんです。

 学生の半分以下、1割程度しか講義を聴いてくれない? あなたは「お客様」の1割以上を学生に育てることに成功したんですよ。すごい! その実績を誇ってください。

 果てしない撤退戦の中、私たち教員だけのエールを送ります。