昨日のメルマガで朝日新聞『悩みのるつぼ』、相談文をお届けしました。
今日は、いよいよ回答文もお届けします。
【相談】
28歳の独身女性です。
父親を高校1年生のときに自殺で亡くしました。
膵臓ガンの手術は無事に終わったはずでしたが、術後も体調がすぐれず、原因のわからない痛み、苦しさに耐えかねて自ら死を選んだのです。
家族思いでいつも私のことを大切に育ててくれた父親が大好きでした。
父親の自殺は自分にとって大きなショックでしたが、私以上に強い悲しみを抱いているであろう母親の前で涙を流すことができませんでした。一度も父親の死を辛い、と口に出せないまま生きてきました。
知り合う人々にも「父親は膵臓ガンで亡くなった」と言い、自殺を隠しています。
大人になり、恋人ができても父親が自殺したと言ったら、嫌われるのではないか、と思い、本当のことを話せないまま噓をついている心苦しさに負けていつも別れを選んでしまいます。
自殺する者は世間では生きることから逃げた弱虫だと言われます。
しかし、当事者にしかわからないこともあります。
私は父親の死は間違っていないと思っていますが、周りには正直に話せないというのは、どこかで父親の死に方を軽蔑しているのではないか、自分自身の矛盾ではないかと心が痛むのです。
この先、父親の死とどう向き合えばよいでしょうか。
私は性格も思考も父親そっくりです。自分も同じように自死を選びのではないかと考えて眠れないこともあります。
【回答】
あなたはお父さんが大好きだった。
この感情は本物です。
でも、同時に「自殺した父がどうしても許せない。認められない」と思ってるんじゃありませんか?
高校一年当時のあなたにとって、父親はすごく身近な存在です。その人を失ったんだから「許せない」という気持ちは自分でも認められなかったんだと思いますよ。
だって、あなたの隣には「最愛の夫を失って、悲しんでいる母」がいるんです。
父親の自殺を嘆いて悲しむのならOK。
でも「なんで自殺したの!バカ!」と非難するなんてできなかったんでしょう?
隣にいるお母さんをもっと悲しませることになるから。
だから、母の前では一度も涙を流せなかった。辛いとも言えなかった。
あなたは自分の感情を封印しました。
それどころか、「父の自殺を恨んでいる自分」すら封印してしまった。それを認めると、「お父さんが大好き」という自分すら失ってしまいそうだから。母にまで恨み言を言うのは、絶対に避けたいから。
だから、あなたはせっかくできた恋人と別れてしまうんです。
別れてしまう原因は「父の自殺が恥ずかしい」からではありません。
「父の自殺を恨んでる自分を見せるぐらいなら、別れた方がマシ」だからです。
でもですね、もう12年も経ってるんです。
「父の自殺を恨んでる自分」をそろそろ認めてあげてもいいんじゃないでしょうか?
母の前で「すごく辛かったけど、泣けなかった。お母さんがかわいそうと思ったから。お父さんを恨んでると認めるのが怖かったから」って話してみませんか?
お母さんにとっても12年経ってるんです。
死んでしまった夫よりも「彼氏とすぐ別れちゃう娘」のほうが心配に決まってますよ。(笑)
母の前で泣かなかったあなたは、もう充分すぎるほど親孝行しました。
10年以上、恨み言を言わなかったあなたは、死んだ父にも充分以上の供養をしたんです。
すごく長かったあなたの喪中は、やっと終わりました。12年間、母の前で泣かなかったあなたは強くなった。
絶対に自殺なんかしません。
お父さんの思い出を、恨み言や悪口や楽しい思い出もぜんぶ、母と話してみましょう。
きっと、お母さんの喪も明けます。
2人でキレイな服とか探しに行ってください。
コメント
コメントを書く素晴らしい回答です。悩みを極限まで共感しつつ、あくまで理性の光のもとで質問者に救いの示唆を与えてる。