━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の解決!ズバっと 2015/05/13
───────────────────────────────────

おはよう! 岡田斗司夫です。
メルマガ読者の方から、多数質問をいただいています。
かたっぱしから答えてみましょう。

───────────────────────────────────

「もしも今からSFを作るなら?」

 これからのSFはどうなると思いますか?
 また、今からSF作るんだったら、どんなSF作りますか?

※この回答は2012/09/08に行われたSF読書会「ドラッガーよりハインラインを読め!」を文章起こししたものです。

───────────────────────────────────

 SFは時代の要請で生まれるんです。
 というかメジャーな文芸ジャンルは時代の要求で生まれるんですね。

 戦争があって、テクノロジーで自分たちの生活は変わったりすると、ガーッと進化する。
 しかし、そういう要請がなかったら、スペースオペラや『ハリーポッター』みたいな形で、“日常的なお話”の中にまみれていってしまうんですね。


■ネット社会ではSFは生まれにくい

 今の世界はネットがあるから、「SFとしてはネタが出しやすいか」というと、すごく出しにくいんですね。

 前の時代だったら、「ロケットだ! 電子計算機だ! ヘリコプターだ! 空飛ぶ車だ!」と単純に予想しやすいんですけども。
 ネット社会の場合は、誰かがアイデアを思いついたら、その瞬間に”商品化”されちゃうんですね。
 これが1番大きな差です。

 前の時代は、誰かがアイデアを思いついても、それを商品化することができないぐらい技術的な障壁が高かったわけです。
 そして、そこにSF小説が生まれる余地があるんです。

 しかし、今の世界は誰かが思いついたら、ネットの力で商品化やツール化できてしまう。
 つまり、現実の商品企画そのものがSFになってしまったんですね。


■フィクションでなく、現代こそがSF

 だから僕は、iPhoneとかiPadみたいものが現代のSF作品だと思っているんです。
 あれを僕らが買う時は、便利さを買ってるんではなくて、そこにあるストーリー性とか「それによって僕らの生活がどう変わっていくのか?」という可能性込みで買ってるんだと思います。

 現代のSFとはお話ではなく映画ではなく、”今”ですね。
 1950年代までのSFは小説だったんですけども、1960年代からテレビドラマになり、1980年代から映画になったんですけども。
 2000年代、特に2010年から以降は、SFというのは商品となって僕らの中に入ってきている。

 こうなるとSF小説はなかなか生きていけない。
 「これからのSFはどうなっていくのか?」ではなくて、今回僕が薦めたように、あえて古いのを読むのが1番楽しくて、いいSFの楽しみ方だと思います。
 だから、これからSF作家になろうと思うという人がいたら、僕は全力で止めますね。


【まとめ】
 ネットの力によって、誰かの思いつきが商品やツールになってしまうのが現代です。現代こそがSFであり、そんな時代にSF作家になろうとしている人がいたら、岡田斗司夫は全力で止めます。


───────────────────────────────────

「スタートレックのSF的立ち位置」

 『スタートレック』はSF的にどの辺りの位置づけなんですか?
※この回答は2012/09/08に行われたSF読書会「ドラッガーよりハインラインを読め!」を文章起こししたものです。

───────────────────────────────────

 『スタートレック』はスペースオペラに近いんですよね。

■『スタートレック』はスペースオペラ

「宇宙、それは人類にとっての最後のフロンティア」
「宇宙にはいろいろな文明や社会があるだろう」

 ――と言っているんです。

 でも、「各船長が幾度もそこで民主主義を押し付けて終わり」という話が多いんですよ。
 なので、典型的な、”スペースオペラ”です。


「ここは火星の大砂漠、俺は宇宙の流れ者。おや、向こうから火星人が逃げてきた。やっぱり火星の空気うすいから、火星人は肺がでかい。火星の娘はおっぱいがでかいぜ」

 ――みたいな、「舞台が宇宙になっただけ」のなんちゃってSF話が、この時代は腐るぐらいあったんですけども。
 『スタートレック』はその系列なんですね。


 ただ、それにしてはやたら出来がいいから、面白く見れるんですけども。SF映像としてはどうでしょう。
 僕の中では、楽しいけど評価低いです(笑)


【まとめ】
 『スタートレック』はスペースオペラに近い分類になります。
 その割には出来がいいので、楽しく見れてしまいますが、岡田斗司夫の評価は低いです。