芸人さんたちは、ネットニュースのネタにされるのを、すごく困っている。
たとえば、お笑い芸人のラジオ番組が文字起こしされて載っているサイト。
ラジオ番組を聴いた人が勝手に文字起こしして、勝手にそのサイトに載せるシステムだ。
番組ごとにも探せるし、アクセス数をもとにしたランキングも自動的に表示される。
南海キャンディーズの山里さんとかウーマンラッシュアワーの村本さんとか、問題発言をしがちな人が発言すると、あっというまにアクセスがあがる。
テレビは表(タテマエ)、ラジオは裏(ホンネ)の顔を見せる。
そう振る舞ってる芸人さんは、あんがい多い。
テレビはメジャーだから、いろんな人に気を使った発言をする。
でも深夜のラジオを聞いてるのは「自分をわかってくれる人」だけ。
リスナーの人もそこはわかっているから、外では言わない。
共犯関係があった。
ところが、その関係に狂いが出てきた。
確かに共犯関係はあるんだけど、それは99%のリスナー。
1%はその共犯関係を持ってくれない。
文字起こしサイトを読む99%は前後関係や事情を考えるけど、1%はそこに書いている「ことば」に反応してしまう。
過激な「ことば」をその芸人さんの面白さだと勘違いし、ネットに拡散してしまう。
テレビなら流し見でもいいけど、ラジオなんだから一生懸命聞いてほしい。
聞けない時は、録音してもいいよ。
そういう風に、ふつうの芸人さんは考えてる。
でも、放送の時間に合わせて起きて聞くということを、みんなどんどんしなくなってるし、できなくなってる。
毎週、起きて聞いてるからこその「共犯関係」だ。
それが後日、自分の都合の良い時間に「聞くのは時間かかるから、サクっと読んじゃおう」と考えるとどうなるか?
サイトを読めば、5分・10分かけてしゃべったことが、30秒で読めるわけだから、コスパがいい。
だからついつい、そっちで済ませることになってしまう。
ラジオリスナーだった人が、どんどん抜けていって、ラジオを一生懸命聞いてる人は、主に文字起こしする人っていう状況になるかもしれない。
ラジオでの発言の中で、おもしろかった部分つまりちょっと過激な部分だけを抜き出して、ファンはネットで拡散する。
さあ、次はそれを見たニュースサイトだ。
過激な発言に、さらにセンセーショナルなタイトルをつけ、ニュースサイトに載せる。
その結果、いろんな芸人さんの発言が、いつもネットで炎上することになる。
問題発言したから炎上しているんじゃない。
芸人さんは、ラジオだからということで、噛み砕いていろんなニュアンスで話してるだけ。
ところが、それを文字起こしするときに、ニュアンスが抜けちゃう。
次に、ニュースサイトがそれを引用するときに、好きなタイトルを付けられる。
「●●は○○にマジ切れ」とか。
別に怒ってなくても、マジ切れと書く。
その方がインパクトがあって、アクセスあがるからね。
その結果、芸人さんの「ライブとかラジオでは本音を話す」という使い分けが、どんどん難しくなっている。
この監視社会っぷりはスゴイよね。
これまでは、「言論の自由をつぶすもの」と言えば国家権力というイメージがあった。
国家権力が、個人はもちろん、マスコミに関しても様々な言動をチェックして、不適切な発言をつぶしていると考えられていた。
国民に正しい情報を届けない、という恐怖があった。だが、今はそうじゃない
国民自身が不適切な言動をでっちあげる。
自分のブログとかのアクセス数をあげるためだ。
でもその結果、芸人さんのホンネのおしゃべりを無料で聞く機会を自分たちで潰してるんだ。
それって、ある種の「日本型テロ」だと思うんだけど、その話は長くなるので、またいずれ。
以上、情報サイト『探偵ファイル』よりお届けしました。
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