もし、あなたが無職で、これから自分一人で「何でも屋」を始めるとしたら、価格設定はどうしますか?
家賃、食費、光熱費、通信費で最低限、これくらいはかかりそう。
だったら、1日に1万5000円はないと食っていけない。
それなら、1日あたり7~8時間働けるとして、時給は2000円くらいに設定しよう……。
これが普通の人の考え方だと思います。
小谷くんは、全然クレバーではありません。
生活コストがどうとか、必要経費がどうとか考えずに、1件50円でどんどん仕事を引き受けてしまいます。
悪くいえば狂っている、よくいえばアーティストですね。
でも50円だからいいのです。
あなたが何でも屋を雇って仕事をしてもらうことを考えてみてください。
1時間当たり2000円払うなら、それなりにクオリティは気にするでしょう。
庭の草むしりをしてもらうにしても、何でも屋がちんたらやっていたらイライラして、もう二度と頼まないと思うでしょうね。
西野くん曰く、小谷くんはダメな奴だそうです。
草むしりもすごく遅いし、抜き損ないもけっこうある。
どんな仕事をやらせても、だいたい似たり寄ったりなんだとか。
だけど50円なら依頼者も仕方がないと諦めます。
それに、小谷くんは相手をイヤな気持ちにさせない能力があって、仕事ができなくてもみんな腹を立てたりしません。
これまで小谷くん50円でこき使ったことのある人は、ほとんど全員が結婚式のクラウドファンディングでカンパして、ご祝儀までくれました。
さて、貯金が100万円を超えた、小谷くん。
はたと悩みました。
自分は1件50円で何でもするホームレスなのに、貯金が100万円を超えている。
これはいけない、間違っている。
どうにかしてこの100万円を捨てなければいけない。
彼が考えついたのは、フィリピンに行って、困った人たちに100万円を寄付しようということでした。
普通なら慈善団体の口座なりに送金するところですが、そこは小谷くん、フィリピンに出かけて直接現金で寄付すると言い出したのです。
フィリピンまでの旅費はどうするのか?
もうおわかりですね、クラウドファンディングです。
フィリピンまでエコノミーで行って帰ってくるだけなら、15 万円もあれば十分。
あっという間に旅費が集まりました。
小谷くんは航空チケットと寄付金の100万円だけを持って、それ以外は1円も持たずに、フィリピンに旅立ち、寄付をしてそのまま帰ってきました。
小谷くん曰く、「これでようやく貯金がゼロになって安心した」そうです。
ここまでが2014年末までの話ですが、最近また貯金がじわじわ溜まってきている小谷くんは、また何か面白い企画を考えるつもりのようです。
カリスマ論