エリザベス女王が総裁を務める英国王立園芸協会が主催するチェルシー・フラワーショー(※)。世界最古にして最高峰の舞台に、あえて華やかな花を使わず雑草とサンザシの木だけという型破りなアプローチで挑んだ一人の女性がいた。ガーデニング世界大会に全てをかけたヒロインの奮闘を描いた本作『フラワーショウ!』で、主人公のアイルランドの田舎娘メアリーのモデルとなったのは、「世界で最も偉大なランドスケープ・デザイナー10人」にも選ばれたメアリー・レイノルズ。初めての日本でのインタビューに、終始目をキラキラさせ、笑顔を絶やさないメアリーに話を聞いてみた。
――今回自身の功績が映画化されることが決まり、どのように感じましたか?
最初は監督とのやりとりで「本当に作るの?」という感じだったのですが、映画化が決まった時は、ナーバスになりました。というのも、私は日頃から「名声」というのは、人を破滅させる要因になると考えているからです。名声によって、あらゆるネガティブなものが人生に持ち込まれると考えていたので、自分自身も子供たちにもそんな目にはあわせたくないと考えていました。
ですので、もし映画になるのであれば、【自然】、そして【大地】に対して何か役に立てるようなものでなければ、やりたくないと思ったのです。愛する自然に対して役に立つことができるのなら、自分にとってはすごくためになると考えたからなんです。
――ガーデニングの世界大会「チェルシー・フラワーショー」には何故出演されようと思ったのですか?
自分が制作している庭に自分が飽きてしまったんですね。仕事でイタリア風や英国風、日本風とデザインしていく中で、自分たちの土地を全く反映した庭ではないと思ったのです。そして、本当の意味で自然を取り入れている庭はないと感じました。
その内、自分のアイデアをカタチにしたものを作りたいと思いましたが、もちろんクライアントさんからはやらせてもらえないんですね。自分の作品をどこかで見せる場が欲しいと思っていた時に、その時唯一知っているのが「チェルシーフラワーショー」だったんです。
このイベントで自分がやりたい作品を作り、その作品が見た人に響けば、自然や大地にお返しできるのではないかと思ったんです。ですが、参加することがそんなに難しいとは知らなかったんです!(※劇中にも描かれるが参加するためにはコネやお金、経験が必要とされる) 当時27歳だから若いとは言えませんが、アイルランドから出たこともないですし、その頃はナイーブだったので(笑)。
――映画の中の主人公は、アイルランドの土地とお父さんからの影響が強いように思えますが、メアリーさん自身が幼少期に最も影響を受けたのは何ですか?
確かに映画では父親でしたが、実際は両親はフルタイムで6人の子育てをしていつも手一杯だったので、ちょっと違うかな(笑)。家族はとても温かい存在ですが、忙しすぎて構ってもらえなかったので、自分自身で子育てしていたようなものです(笑)。当時は農業が産業化される前なので、大地もまだイキイキとしていました。そんな中で私自身、【自然】と【大地】との絆が育まれていったのだと思います。今でもその絆は大事にしています。
チェルシー・フラワーショーの後、考えがすごく進化しました。特に変わったのは、大地との関わり方ですね。それは自分が大地に対するビジョンを押し付けるのではなく、大地に大地がどうありたいのか?を問いかけていくという付き合い方です。人間は【自然】や【大地】の守護者になれる、人間の地球上の役割はそうあるべきだと思っています。そのメッセージがこの映画を通して、多くの人に届けばと望んでいます。
※ロンドン・チェルシーで毎年開催され、100年以上の歴史を誇る最も権威のあるガーデニング&フラワーショー。世界の演芸のトレンドを左右するとも言われるショーは、著名な園芸家たちが競って最先端なデザインを出典し、毎年15万人以上もの観客が訪れれる世界的な祭典。
『フラワーショウ!』は7月2日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町他全国順次公開
(C)2014 Crow's Nest Productions
■参照リンク
『フラワーショウ!』公式サイト
http://flowershow.jp/
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