ただし、入手方法には注意が必要です。というのも8001ミニは単体発売はされず、同時発表された500台限定のモバイルノートPCのセット品として入手するか、期間中に同社製PCの購入で応募できるプレゼントキャンペーンでの抽選による入手のみとなるためです(こちらも詳細は後述)。
なお、この8001ミニの開発は『星のカービィ』シリーズなどのゲームソフトウェアで有名なハル研究所(以下、HAL研)によるもの。歴戦のEngadget読者であればピンと来た方が多いと思いますが、同機はもともと2017年5月にHAL研が『PasocomMini MZ-80C』に次ぐ製品として予告していたモデル。
これが約2年の紆余曲折を経て、本家NEC PCの下で登場する――という、事情を知っている方にとっては非常にアツい展開となるわけです。
▲2017年5月にHAL研が開催した説明会で展示された試作機(筆者撮影)。まさに手のひらサイズで、この時点でさえミニチュア模型としての萌え度(燃え度)も非常に高いレベルです
「8001ミニ」付きの500台限定モデルも!! PC-8001色のPC40周年記念ノートPCをNECが発売
PC-8001発売から40年。NEC PCが「PC-8001誕生40周年記者会見」を8/5に開催
8ビットパソコン名機MZ-80Cが手のひらサイズで復活!「PasocomMini MZ-80C」 (2017年5月)
蘇った名機、「PasocomMini MZ-80C」実機レビュー (2017年10月)
▲背面はこのようなレイアウトに。端子はHDMI×1、マイクロUSB×2(電源用とキーボード用)となりますが、電源スイッチの形状などは実機に合わせたものです
8001ミニの特徴は、109.5×67×21mm(幅×奥行き×厚さ)という手のひらに載るサイズの本体ながら、色や形状といったPC-8001の外装を可能な限り忠実に再現している点。ただし接続端子は(当然ながら)現行の仕様にアップデートされており、他のミニチュア復刻機と同様、画面と音声出力はHDMIに、電源やキーボードとの接続もUSB経由。そのため専用の周辺機器やACアダプタの準備は不要。手軽に使えます。
【ギャラリー】PasocomMini PC-8001実機ギャラリー30
本体で実行できるソフトは、BASIC言語である『N-BASIC』。もちろん、Nのうしろに数字の付かない、初代PC-8001仕様です。
そして目玉となるのが、PC-8001用の名作ゲームタイトル16本が収録されたSDカードが同梱される点。タイトル一覧は以下の通りとなります。
- SPACE MOUSE
- LUNAR CITY SOS!!
- SNAKE WORLD
- ASTEROID BELT
- CHECK P.
- PC-ジャン!
- PARACHUTE
- SUB-MARINE
- SPACE SHIP
- ROCKET BOMB
- MARINE BELT
- 平安京エイリアン
- JUPITER LANDER
- モールアタック
- オリオン80
- 走れ!スカイライン
これらタイトルは、それぞれが発表された時の最先端を走っていたと呼べるほどの作品ばかり。中でも2017年に35周年特別版としてWindows版が登場したほどの人気作『SPACE MOUSE』や、アーケードゲームとしてもヒットした『平安京エイリアン』、さらにはPC-8001では速度面で実用ではないと思われていた4方向スクロールを高速に実現した『ROCKET BOMB』などは、当時のユーザーにとって印象深い作品でしょう。
さらにはPC-6001(PC-8001の弟分的モデル)からのアップグレード移植となった疑似3Dシューティング『オリオン80』や、当時はアーケードゲームでも珍しかった疑似3Dレーシング『走れ! スカイライン』など、プログラム技術と画面構成の工夫などで、ハードウェア仕様を超えたかのような作品も収録されています。
とくに『走れ! スカイライン』の収録にあたっては日産自動車の協力により、当時のタイトルや自車グラフィックを変えない状態での収録を実現する──といった、NEC PCとHAL研側の本気度を感じさせるエピソードもあります。
▲2017年5月HAL研説明会で展示されたPC-8001実機(もちろん右)。この写真ではサイズ感が迷子になりますが、8001実機のキーボード(キートップ)は現在のデスクトップ向けとほぼ同じサイズ。なのでそこまで大きいわけではありません
なお、8001ミニの「元」となったPC-8001は、1979年9月に16万8000円で発売された8ビットPC。当時としては画期的なお手頃価格(現在の水準では高価ですが)な点に加え、それまで「マイコン」では組み立てキットが標準だった──しかも電源ユニットなどが別で、電子部品ショップでの入手という難行が待っていた――のに対して、最初から組み立て済みの製品として発売されるなど、以降のトレンドとなる標準を打ち立てた製品。
加えて性能面でも、当時は珍しかったカラー表示が可能だった点や(ただしディスプレイ側は高価でした)さまざまな拡張端子を搭載していた点などから、最終的な販売台数は20万台以上となる大ヒットに。
結果、日本における「パソコン」という製品ジャンルを造り、さらには後の大ヒットモデルとなる「88」ことPC-8801系や「98」PC-9801系など、パソコンメーカーのNECを確立させたと呼べる、歴史を変えたモデルです。
NEC PC、40年の歴史を40秒で☆ https://t.co/o7ck7EiJSypic.twitter.com/INYqObDXl0
- 矢崎飛鳥@エンガジェット日本版 (@ACCN) August 5, 2019
そしてその開発には、当然ながら様々なエピソードが生まれています。Engadget読者にとってはは非常に胸が熱くなるドキドキの冒険譚は、富田倫生氏の書籍『パソコン創世記』に詳しいので、興味を持たれた方はぜひご覧ください(テキスト版やXHTML版は、冨田氏が呼びかけ人でもあったインターネット上の電子図書館『青空文庫』でも公開されています)。
▲同時発表された『PC-PM750NAA』。NEC PC製13.3型モバイルノート『LAVIE Pro Mobile』のCore i7/8GB/512GB NVMe SSDモデルをベースにした特別カラー仕様。『NEC』ロゴは8001当時使われていたデザインになっています
こんな8001ミニですが、冒頭でも触れたように、入手方法には注意が必要です。確実な入手方法は、同時発表された500台限定のモバイルノートPC『PC-PM750NAA PC 40 th Anniversary Edition Premium Package』(販売予定価格は20万1800円から)を購入すること。同モデルは8月5日14時より予約販売が開始されています。
そしてもう1つの方法は、LAVIEシリーズPCを購入したユーザーが応募できる抽選によるもの。こちらの当選人数は2000人。応募方法は特設キャンペーンサイト経由で、購入が確認できる書類を添えての応募となります。
対象となる購入期間は2019年8月6日の予約販売分から11月4日の購入分まで。対象店舗は全国主要NECパソコン取り扱い店と、NEC Direct(同社Web直販)となります。 このように8001ミニは、本家となるNEC PCからの登場となる点や日産とのコラボなど、気合いの入ったエピソードが生まれた激アツな一品。
本体の仕上げなども、筆者が触れた2017年5月の試作機(HAL研側がPasocomMini MZ-80Cの発表会で参考出展したモデル)の時点でさえ、非常に高い完成度となっているものでした。記念品扱いとはいえ「本家」NEC PCが扱うモデルとなった最終版は、PC-8001ユーザーの期待にも答えられるものとなっています。何分入手難度が高いモデルのため、気になった方は急いでチェックしてください。
【ギャラリー】PasocomMini PC-8001ギャラリー19
(C) 2019 HAL Laboratory, Inc.
N-BASIC/(C)1979-2019 Microsoft
SPACE MOUSE/工学社I/O 1981年10月号
LUNAR CITY SOS!!/工学社I/O 1981年4月号
SNAKE WORLD/工学社I/O 1981年6月号
ASTEROID BELT/工学社I/O 1981年8月号
CHECK P./工学社マイコンゲームの本 3
PC-ジャン!/工学社I/O 1982年9月号
PARACHUTE/工学社マイコンゲームの本 3
SUB-MARINE/工学社マイコンゲームの本 2
SPACE SHIP/工学社マイコンゲームの本 2
ROCKET BOMB/工学社マイコンゲームの本 5
MARINE BELT/工学社I/O 1982年7月号
オリオン80/アスキー出版局
走れ!スカイライン/工学社PiO 1984年10月号 本商品は、日産自動車(株)のライセンス商品ではありません。同社のご厚意で、発表・発売当時のゲームを収録しています。
この記事はEngadget 日本版からの転載です。