最近よくみかける言葉に「老老介護」というものがあります。これは、介護するのも高齢者、介護されるのも高齢者というもの。子どもがいない夫婦や、子どもが家を出て行ってしまった夫婦に見られる介護のかたちです。
では、「息子介護」という言葉をご存知でしょうか?
「息子介護が耳慣れない言葉のままでいる時代は、そう長く続かない」
こう語るのは、『迫りくる「息子介護」の時代』の著者・平山亮氏です。息子介護とは、その言葉の通り、親を息子が介護するといったもの。平山氏は、この息子介護が今後、一般的になると同書で紹介しています。
その理由の一つに統計的な事実があります。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2010年)によると、介護時間が「ほとんど終日」である同居の主介護者のなかで、息子が占める割合は12.0%に。1977年ではわずか2.4%でしたので、この30年強の間で6倍弱にまで増えた計算になります。
現在の主介護者の属柄別に見ると、妻が36.8%、夫が14.3%、娘が15.6%、義娘(嫁)が17.2%となっています。この数字を見ると、息子の12.0%はまだまだ少なく映りますが、1977年には37.0%あった義娘(妻)が大幅に減少している点にも注目しなければいけません。
義娘(妻)の減少。これには様々な理由がありますが、男性の晩婚化・非婚化の影響もあるようです。政府の2013年版『少子化対策白書』によると、男性の生涯未婚率は20.1%(女性は男性の約半分の10.6%)。この30年の間に10倍化しているそうです。妻がいない息子、妻を迎えない間に親が要介護状態になる息子が増えているのです。
また、この不景気の時代、フリーターとして生きる男性も多く、経済的な理由から親元から離れられずにいる息子もいます。その間に親が要介護状態になってしまった場合は、同居している息子が介護者に。
「独身で同居している息子は、家事や身のまわりの世話も親にしてもらっていることが多い。だから、彼らは経済力だけでなく、生活能力も十分に身につける機会のないまま、親の介護役割を担うことになる」と平山氏は現状を語ります。
また、仮に息子が結婚していても、女性の仕事への意識が変わりつつある時代です。職業キャリアを追求する人も多く、無条件で夫親の世話を自分の義務として受け入れることができるでしょうか。
現実的な問題として迫っている「息子介護」。まだまだ他人事と思っているあなた、早めの準備と対応が必要かもしれませんよ。
【書籍データ】
・『迫りくる「息子介護」の時代』平山亮著 光文社
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