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「カウントダウン感があるかもしれない。もうあまりのんびりはしていられない、やっていくか、みたいな。そう、時間ないぞって。それでなんでカエル? 意味わからないですよね(笑)」と語る三池崇史監督。
最新作『極道大戦争』は、三池節全開の"極道エンターテインメント"。日本一多忙な名監督が、『極道大戦争』に込めた熱い想いについて聞いた。



『極道大戦争』は、ヤクザヴァンパイアに噛みつかれた人間が次々とヤクザ化してしまう世界が舞台で、敏感肌の若いヤクザ影山(市原隼人)を主人公に、三池印のバイオレンスが炸裂するメガ痛快作だ。三池監督を敬愛するクエンティン・タランティーノなどが嫉妬しそうな内容だが、「『またやってるよ』って思われるな(笑)」と謙遜気味に話し始める。

まず今回は、映画監督としての"原点回帰"だと本人は言う。「体力がないと気力も生まれない。30代後半回ると誰だって体力や気力が衰えますよね。キャリア重ねたベテランの味って、僕は全然要らない。そんなもの、です(笑)。監督として手馴れてきた感触って奴も気持ちが悪い。撮る題材がだんだん縛られてくるなかで、東宝で300館規模かかるものはたくさんの人に観てもらえてうれしいですが、そうじゃないものが妙にほしくなって―」。

三池監督は50代に入って、変化を求め始めた。冒頭の"カウントダウン感"も、一因にあるという。「ハリウッドだと、後2~3本撮っておしまいですよね(笑)。で、人知れず、監督っていなくなるじゃないですか。別にいなくなる分には全然構わないけれども、クリント・イーストウッド以外は代表作が30代半ば~後半、多くの場合、デビュー作がそれだったりする。でもそれが現実で、すごく身を持ってわかる。だから、技的なことよりも勢いというか、熱みたいなモノがエンターテインメントには必要じゃないかって。正体不明のモノに対して感じる魅力というか。そういう映画を撮る時間が、もう少なくなっている」。

それに似た想いは、『極道大戦争』に参加したキャスト勢にもあったかもしれない。三池監督は、「いま役者やっている人たちって、窮屈だと思いますよ。あれやっちゃダメとか、それはやっちゃダメとか多いので(笑)」と言う。「そういうことから解放される現場って、彼らにとっても僕らにとっても必要な状況になっていたと思う。これはフラストレーションでね。それを遊びや酒じゃなく、映画を作る中で発散できることが重要。そうすると、今までのセオリー通りじゃない仕事ももっといっぱいこなせるようになる、そう思います」。



三池監督が言うような"正体不明のモノに対して感じる魅力"を持った映画は、今の日本には少ない。しかも、世の中がよしとしているため、危機感を感じにくい。「肝心なモノを、今は映画を作る側も観る側も必要としていなくなっている。自分が知っているモノを観る。隣の人が面白いと思っているモノを観る。一緒に笑って泣いて安心する。原作を越えることは決してない。テレビシリーズも元を裏切らずにまあまあなトコロで収まっている。もったいない。昔のクレージーキャッツの映画を観たほうが面白いわけですから(笑)」。

三池監督は、「今、なんか嫌な感じなんですよ。その嫌な感じは、映画そのものが象徴してんじゃないかって気もする。だからまた機会があって面白いことを思いつけば、またやりたい」と想いを新たに。
最後に頼れるのは、もはや日活と三池監督だけか!? 「やるかやらないかは自分の問題で、エネルギーは与えられるモノじゃなく、自分で火を付けていくもの。でも『極道大戦争』みたいな映画は、狙ってできるモノでもない。難しいです(笑)」。



『極道大戦争』は絶賛公開中

■参照リンク
『極道大戦争』公式サイト
http://www.gokudo-movie.com/

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