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今年20周年を迎える日本を代表するロックバンド・BRAHMANを描いた話題のドキュメンタリー映画『ブラフマン』。あまり見られることのなかったBRAHMANの素顔を映し出したのは、数多くの広告を手掛ける稀代のクリエイティブディレクター・箭内道彦。

撮影も手持ちカメラを使って自身で担当し、本作から生まれた主題歌の「其限 ~sorekiri~」のMVの作者でもある箭内監督に話を伺った。
【前編】映画『ブラフマン』箭内道彦監督に直撃、BRAHMANとの出会いと関係性とは



――箭内さんとTOSHI-LOWさんは、実は性格が似ているのでは?と思いました。似すぎているから最初はあまりウマが合わなかったのかなって、お話を聞いていて思ったんです。

箭内:マジで!?・・・俺はTOSHI-LOWより、もうちょっと優しいけどなあ、あんなに失礼じゃないし(笑)。
でもTOSHI-LOWを見てて「もっと上手くやればいいのに」って思うことはいっぱいあって。もしかしたら、似ているから気になるのかもしれないんだけど、TOSHI-LOWは器用ではないんですよね。すごく細やかな気遣いで色んなことを見てはいるんだけど、ただ真っ直ぐガーッとて行ったりしてるのを見ると、「TOSHI-LOWの良さってそれだけじゃないのにな」って思う部分はあった。
いま言われて初めて気づきましたけど、この映画を観た人が「あ、TOSHI-LOWってこれまで抱いていただけの印象とは違うな」と感じてくれたらいいなって、きっと自分でも思ってたんでしょうね。りょうちゃんが言ってくれて嬉しかったのは「箭内さんが撮らないんだったら、この映画自体やるべきじゃなかった」って。ボーカルの嫁に言われたのは救われましたね。

――確かに箭内さんの存在に必然感があるというか、"箭内さんありきの映画"という感じがしました。

箭内:そうやって綺麗に言っていただいてますけど、「なんで監督がこんなに出しゃばってんだ?」って映画ですよね(笑)。ナレーションはするわ、その場でいろいろ指示も出すわ・・・。
撮影はすべて手持ちカメラです。インタビューカットとかは三脚で、録音もカメラに付けたマイクで。ワンカメで4人のメンバーを撮るのって難しいんですよ、カメラの動きが喋ってるメンバーを追わなきゃいけなかったり。でも、すごく面白かったですね。



――求めたものをそのまま返してくれるメンバーではないじゃないですか。ある意味、箭内さんが牽引しているというか、線を引いていたと感じました。

箭内:まあそうなんでしょうね、それはそうだと思います。他の人が監督だったらメンバーはもっとカッコつけたでしょうね。

――バンドというものの生々しさやリアルな感じが、まるまる映ってると感じました。

箭内:たぶん彼らは、こんなに色んなこと話すのは初めてなんですよね。僕も映画を撮るのが初めてだったこともあるけど、実は話したいことがお腹の中にたくさんあったんじゃないかな?って。
それとインタビュー以外のところは、今までカメラが入ってこなかった場所で起きてる現象で、たぶん毎日おもしろいことが起きてるんだと思うんですよ。特にスタジオの中はマネージャーも入れないし、誰も見たことがない場所だったから、いま撮り始めても映画1本できちゃうくらい、常に何かが起きてるんだと思いますね。

これは意外と、"4人っていう小さな組織の運営の難しさ"にも置き換えができるな、と思ってて。バンドと会社はもちろん違うけど、やっぱり会社のリーダーは社員たちに対して、胸の張り方だったり、どうすればみんなが付いてくるのかとか考えるわけで。
TOSHI-LOWも言ってるけど、「ただ強さだけでみんなが付いてくるわけじゃない」とかね。だから中小企業の人が観ても、なにか示唆があるんじゃないかなあなんて、ちょっと思ったんですよね。大学のサークル運営とかもね、色んな考えの人たちがいて、その人たちがどうやって力を合わせるのかっていうヒントがあったら、嬉しいですけどね。

――主題歌にもなっている『其限(それきり)~sorekiri~』が劇中で出来上がっていく過程が映し出され、かつMVが予告編にもなっている。そのリンクしている感じが新しくて面白いと思いました。

箭内:最初は何も決めてなかったんですよ。カメラ買って、ひとりで撮ったら何が映るだろう? って思ってて、クランクインは今年の2月19日からでした。
その時点では初代メンバーに話を聞きに行こうとも思ってなかったし、メンバーひとりひとりにインタビューしようとも思ってなかった。かなり行き当たりばったりというか、考えながら撮ってた部分があって。

MVに関しても、4月末くらいに<トイズファクトリー>の西村さんが「どんな内容にしようか悩んでるんです」って言ってて。なんかMVが得意な監督がカッコよく撮るような曲じゃないなって思ったので、大変になるだけなんですけど「僕が撮ります」って伝えました。

あとは、"仕組み"になってるっていうかね。リリースがあって、映画の中で曲が生まれて、MVが予告編として1カ月前から存在してて...っていうのは、話だけ聞くとプロモーションチックというか商業的/広告的なんだけど、そこは自分の本職である広告の「どうやったら少ない予算で作ってるプロジェクトを最大化できるだろう」っていう部分です。
でも、それが商業的にならないのは、たぶん僕とBRAHMANの関係性であったり、あとは本当に「最初で最後の...」っていうくらい無欲で撮ってるから。この映画でアカデミー賞を獲りたいとか、ドキュメンタリー界に鮮烈なデビューを果たしたいとか、全然ないんですよ。「BRAHMANが喜んでくれるものって何だろう?」って撮ってるだけなので、自分の広告の作り方と想いの寄せ方が上手いことミックスされたんじゃないかなと思うんですよね。

映画の題字も、チラシのコピーとかも俺が書いてるんです。いまパンフレットも作ってて、監督がそんなに全部作る映画なんて他に絶対ないと思うんですよね(笑)。でもこれ、誰にも作れないんですよ。なぜかというと、出来上がる前に作らないといけないから。誰もどんな映画になるか知らないし、僕の頭の中にすらない状態なんです。5月くらいに入稿しようとすると 誰もコピーとか書けないんですよね、結局。



――TOSHI-LOWさんに本作で取材した時に「10年後のことを考えてる」と言っていたのですが、箭内さんは10年後のことを考えていますか? BRAHMANにどうなっていてほしい・・・とか、あるのでしょうか?

箭内:全くないですね。TOSHI-LOWホントに考えてんのかな? あいつ考えてるフリしてるだけじゃないの?(笑)。たぶん「10年後もこの4人でやってたい」みたいな、それくらいだと思いますよ。わかんないけど...でも、なんか考えてるのかもしれないですね。

――10年後にもう一度BRAHMANを撮ってくれって言われたらどうしますか?

箭内:絶対嫌ですね!(笑)


映画『ブラフマン』は7月4日(土) 新宿バルト9ほか全国公開

映画「ブラフマン」■予告
https://youtu.be/1whMXP0BNjQ


BRAHMAN「其限 ~sorekiri~」MV
https://youtu.be/jx-gqVt8Z_k


■参照リンク
映画『ブラフマン』公式サイト
http://brahman-movie.jp/

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