「健斗、おはよう!!昨日はちゃんと勉強やってきたか!?
今日は、数学のテストが激ムズって噂だぜ??」

朝イチで、武志に声をかけられる。
イヤホンしながら動画を観ていた俺は、
後ろからずっと声をかけられている事に気づかなかったようだ。

「お前、また変な動画観てるのかよ??
そんなん観てるヒマがあったら、公式のひとつでも覚えたらどうだ?」

オカンよろしく、武志のチマチマした小言をサラッと受け流し、
俺は早速、動画で得たテクニックを試そうと女子の姿を探す。

「おっはよ!!二人とも、ノロノロしてると遅刻しちゃうゾ〜!!」

のぼりが後ろから急ぎ足で僕たちを追い抜いていく。

「ちょ、ま、待って〜〜〜!!!のぼりぃ〜、今朝の星占いって…」

流石、のぼりは陸上部だけあって、あっという間に姿が小さくなってしまった。

女子は、星占いが好き!
そんな鉄則から、共感力とうなづきの力を試してみたかったけど。。
まぁのぼりとは割と話せる方だし、
あんまり話したことがない女子がいいのかな!

そんなこんなでバタバタしつつ、朝礼になんとか間に合ったが、
女子とまともに話す機会のないまま、一限目の数学のテストが始まった。

もちろん中身はちんぷんかんぷん。
暗号みたいな数字の羅列に、頭がはやくもパンク寸前!!

「いやぁ〜、なんとか答えだけは全部埋めたぞ、ふぅぃ〜〜〜い」

「山城くん、今回の中間テスト、だいぶ苦戦しているようね」

休み時間で一息していると、声をかけてきたのは、会長!
ただ生徒会長をやっているってだけで、あだ名が会長になった子で、
テストの成績は、常に学年で1〜2を争う超エリート。

ただし、才色兼備とはいかなかったようで、
残念ながら、俺の結婚する候補からはずっと圏外のままだ。
しか〜し、今日の俺は違うゼ!!
あまり興味がない女性の話しをしっかり聴くことが、
モテる男への第一歩!!!

「あのさ、会長。今日のおはテレの星占いってチェックした?
 えっと、会長って何座だったっけ??」

軽蔑したような眼差しで、会長からのひと言

「あんたさ、占いなんかに油を売らないで、ちゃんと勉強したら?
 そんなんじゃ本当に浪人しちゃうわよ。ま、私はどーでもいいけどね」

大して上手くもない言い回しで嫌味を言われつつ、
動画のアドバイスの実践は、いきなり躓いてしまった。

どいつもこいつも、口を開けば勉強、勉強…。
俺はいま、人生の勉強をしてるっつ〜の!!!

そうこうしてる間に、2限目が始まるチャイムが鳴り響いた。