結局女子とまともに話すタイミングもないまま、放課後が来てしまった。

「ふぅーっ!終わった終わったぁ!
  健斗〜、一緒に帰ろうぜ〜」
近づいてくる武志を、俺は手で制止した。

「ん?」
「悪い、俺ちょっと予定あるから」
そう言って足早に教室を出た。

何を急いでいるかというと、さっき帰っていく女子の会話が聞こえたのだ。
そしてその話題とは、そう! U・RA・NA・I!
このチャンス、逃してなるものか!

1階へ降りる階段途中でターゲットを見つけた。

「今日のラッキースポットがシュークリーム屋さんだったから〜朝から気になっちゃって〜」
スマホの占い画面を見せながら話しているのは河原木だ。1年のとき同じクラスだったけど、話という話はした記憶がない。

「じゃあブロンドママ行こっか」
会話相手は長峰か。今年初めて同じクラスになったものの、まだ関わりはない。
ちなみに"ブロンドママ"とは、そこそこ有名なシュークリームのチェーン店だ。最初店名だけ聞いたときは美容院かと思ったけど。

「あぁっ!そ、それ、占いアプリ?最近ハヤリの…」
俺は勇気を出して話しかけた。

「え⁈ あ、うん…そう、だけど…」
河原木が驚いて答える。3段上からいきなり声がしたらそりゃそうなるよな。

「そんな流行ってなくない?」
長峰が冷静にツッコんでくる。初めて交わした言葉が否定的なツッコミとはこれいかに…。

「え〜?テレビで『中高生の間でブーム』とかやってたよ〜?」
そんな特集は見てないけど、流行ってることにしちゃえ。河原木のアプリはどうか知らないけど、少なくとも占い自体は人気コンテンツだし。

「山城って占い好きなの?」
河原木が尋ねてくる。
「あぁ、うん。最近ちょっと気になっててね〜。」
「何占い見てんの?」
「え?あ、えーと、星座とか、血液型とかかなぁ…」
なんとか乗り切れぇぇっ。必死に受け応えする。

「あ そう、血液型で思い出した!ユキってAなんだって!」
「ウソ⁈あの性格で?」

河原木が別の女子友の話を始めてしまった。

ーーそれ以降は数分女子トークをして、ブロンドママに行くから、と2人は帰っていった。
話を聞くどころか、こっちが聞き出されてしまった。

「ハァァ〜…」

動画の学びを実践をするところまで漕ぎ着けなかった俺は、深くため息をついた。